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第3話
しおりを挟む誰もいない家のソファーで三日三晩泣き、とうに涙は枯れた。
初めは突然のお父様、お母様の死を受け入れることはできなかった。
何を行わず、ただ天井を見上げるだけ。息をするだけの時間が続いた。
涙が枯れて、声もかれ、悲しむことさえできなくなった。
三日たった今、ようやく冷静に物事を考えれるようになってきた。
私のスキル透明。
5歳の時に覚醒し、自由自在に操れるようになり、両親にも大変喜ばれた。
両親と行ったかくれんぼでは負けなしだった。
そんな時に国からクレセント様との婚約の話が来た。
どうやら私のスキルを危険視したため監視として婚約者に選ばれたらしい。
でも、当時の幼い私は王子様との婚約で浮かれていた。
王子さまの隣にいて恥ずかしくないように、勉強、美容に力を入れていった。
そこからは努力、努力でただひたすらに走り回った。
その結果が婚約破棄で両親の処刑。
笑えない事実をこの三日間でただただ思い返していた。
私のなにがいけなかったのでしょうか。
何回も抱いた疑問。
その答えはいまだ見つかっていない。
どうして両親が処刑されなければいけなかったのか。
頭の中で湧いてくる疑問に誰も答えてはくれない。
そうか。クレセント様がいけないんだ。
あんな場所で婚約破棄や私のスキルのことを言わなければこんなことになっていない。
婚約だって、結ばなければこんな未来なんてこなかった。
優しいお母様とカッコいいお父様と楽しく領地経営していたかもしれない。
きっと私の王子様はクレセント様じゃなかったんだ……
それに、処刑したのはこの国だよね。
誰も止めることをせず、昨日の今日で処刑されたんだもん。
みんな同罪だよね?
罪なき者を処刑したんだもん。
みんな犯罪者だよね?
「そんな国壊しちゃえ」
私のスキル透明は国には知られているけど、本当の意味で透明を理解できてはいないだろう。
透明は姿を消すだけではなく、私の魔法、持ち物すら透明になる。
私の放った魔法は透明で誰にも見えない。
それに他からの干渉を受けない。
ただ見えないものが物質に対して干渉している。
それを避けることや対処することはできない。
「さて、誰から壊しにいきましょうか?やっぱりクレセント様ですかね」
誰もいない静かな部屋で私だけの声が響く。
お父様の部屋にある剣を拝借し、王城へと向かいます。
あたりは暗闇に包まれており、以前の私なら怖くて街中を歩けなかったかもしれません。
だけど、今は楽しくて仕方ないのです。
私が犯罪を犯した国を壊しにいくんですから。他の国も喜んでくれるでしょ?
多くの人が喜んでくれる。罪を犯した国を裁いて喜んでくれる。
ルンルン気分で私は明かりの少ない王城への道を歩いていきます。
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