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第2話
しおりを挟むこのまま家に帰るとお父様やお母様に迷惑をかけてしまうかもしれませんね。
今日は図書室の休憩所でもお借りして眠らせてもらいましょうか。
もちろん透明を解くことはできませんが……
図書室のソファーで目を覚ました私は時間を見て驚きました。
時計が示しているのは昼を過ぎているのです。
昨日のことは思ったより精神的にダメージがあったようです。
昨日のことを思い出しても、やはり私には身に覚えがないものばかり。
とりあえず、こっそりとお父様、お母様に相談してみましょうか。
学校を出て、街中を歩いていきます。
なにやら街中はいつもより喧騒にあふれているようです。
なにあったのでしょうか?
透明になっていて話しかけることができないので、街の人の話を盗み聞きしてみます。
「あの伯爵様がまさか国家転覆を目論むとはな」
「領民にも優しい立派な領主でしたのにね」
「人って不思議なもんだな。いい人に見えて心の内には悪が蔓延っているのかもな」
「処刑場って噴水広場だよな?まだおいてあるのか?」
「そうよ。確か明日まではそのままのはずよ」
私には聞こえてきた声が何を意味しているのかわかりませんでした。
伯爵様?国家転覆?それに処刑?
この国で処刑をされるのは珍しいことです。
殺人を犯した人でも処刑をされないこともあります。
その人たちは何をしたのでしょうか?
ちょうど家に行く途中に噴水広場があるので、そこで話を聞いてみましょう。
「えっ……おえぇ」
噴水広場でつくと、目に入るのは首を切られた男性の死体と女性の死体でした。
広場中に血の匂いや死臭が充満していて、気持ちが悪くなります。
「ウェストリカ伯爵は優しい人だったのにな」
「えっ」
隣の男性から思わぬ単語が耳に入ってきます。
「お父様、お母様」
気持ちが悪くなった死臭の出所をよく見ると、お父様、お母様の首が転がっています。
なんで?
理解ができない。
お父様とお母様は何をしたの?
国家転覆?そんなことするはずないじゃない。
いつも領民のためを思い、私財を投入し領地に尽くしていた。
領地には学校、病院、孤児院。様々な政策をしてきた。
それなのに、なぜお父様やお母様が国家転覆を目論んでることになったの?
どれだけ、頭を回転させても答えがみつからない……
「なぁー。娘さんがやらかしたんだろ?本当に伯爵様はなにかやっていたのか?」
「貴族の間では娘さんが何かを盗んだって話だぜ。娘は逃げたがその親も罪にかぶせたのだとよ」
「えっ」
冒険者の風貌をしている男性が話している声が聞こえる。
私のせい?
私はなにもしていない。
国の何かを盗んだ?
そんな時間など私になかった。
昨日のクレセント様が言っていたことが脳裏によぎる。
もしかして、本当に私が犯人になっているの?
なんで?もっと調べればわかることでしょ?
私のスキルが透明だから?
証拠がないから私が犯人?
ふざけないでよ。
お父様とお母様を返してよ。
噴水広場でただただ泣き崩れるしか私にはできなかった。
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