婚約破棄、処刑されるなら透明スキルで壊します

朱音 アキ

文字の大きさ
上 下
1 / 4

第1話

しおりを挟む
「アリス・ウェストリカ。貴様との婚約を破棄する」

 学園卒業パーティーが開かれているホールで怒号にも近い声が私に降りかかる。
 声が聞こえる方に顔を向けると、私の婚約者であるオートリア王国の第二王子クレセント・フォン・オートリアが鋭く私を睨みつけている。

 
 私はなにかしたのでしょうか。
 ウェストリカ伯爵家で育ち、5歳の頃からクレセント様の婚約者として恥の無いように努力してきたつもりだ。
 外国の言語、国の歴史、領地経営、魔法に商売。
 この国で学べる内容は全て学んだつもり……。
 なにが気に入らなかったのでしょう。

 震えるからだを抑え、その理由を聞いてみるべく口を開く。

「な、なにがいけなかったのでしょうか」
「貴様はこのエリスに嫌がらせをしていたな。俺とエリスが仲いいからと言って、嫌がらせをするとは貴族令嬢として恥ずかしくないのか」

 クレセント様の隣にはピンク髪の大変お胸が発達した女性が寄り添っています。 
 嫌がらせですか……
 エリスと呼ばれた女性には見覚えがないのですが。
 それでもクレセント様がそうおっしゃるのなら、何か不快な思いをさせたのかもしれません。

「すみません。私はなにをしたのでしょうか?」
「ここまできて、とぼけるつもりか。教科書を破り捨てる。階段から落とす。エリスの悪評をばらまく。どれだけのことをしてきたかわかっているのか」

 クレセント様はまくし立てて状況を説明してくれていますが。
 やはり、身に覚えがありません。

「あの。いつごろでしょうか?」
「エリスが入学してきた今年の春からだ」

 再度の質問によりクレセント様をさらに怒らしてしまいました。
 それにしてもやはり私にはその記憶はありません。

「今年の春から隣国に留学していたため、エリスさんを見たのも初めてなのですか……」
「なに?留学していたのか?」

 婚約者である私の行動を知らないのはどうかと思いますけど。
 クレセント様はお忙しい方ですので仕方がないのかもしれませんね。
 クレセント様とエリスさんは小声でお話ししているみたいですが、どうなさるのでしょうか。

「そ、それにだ、貴様には国家の秘宝を盗んだ容疑がかけられている。貴様のスキル透明で盗んだのではないのか」

 秘宝を盗む?私は一年間この国にいないと言っているではないですか。
 それに私のスキルのことは王族が国家機密としているはずなのですが、こんな大勢の前で言ってもいいものなのでしょうか?

「もういい。近衛兵よ。こいつを捕らえろ」

 私が思考しているのを、言い出せないと捉えたのかクレセント様が騎士に命令をしました。
 近衛兵は王子の命令により、私を囲んでいます。

 ここで捕まえられるとそのまま容疑者として刑に処されるのでしょうか。
 それはよくありませんね。 
 家に迷惑をかけてしまうかもしれません。

 スキルを発動し、透明になった私はそのまま近衛兵の横を歩き、会場を後にします。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】婚約破棄されたので国を滅ぼします

雪井しい
恋愛
「エスメラルダ・ログネンコ。お前との婚約破棄を破棄させてもらう」王太子アルノーは公衆の面前で公爵家令嬢であるエスメラルダとの婚約を破棄することと、彼女の今までの悪行を糾弾した。エスメラルダとの婚約破棄によってこの国が滅ぶということをしらないまま。 【全3話完結しました】 ※カクヨムでも公開中

《完結》愛する人と結婚するだけが愛じゃない

ぜらいす黒糖
恋愛
オリビアはジェームズとこのまま結婚するだろうと思っていた。 ある日、可愛がっていた後輩のマリアから「先輩と別れて下さい」とオリビアは言われた。 ジェームズに確かめようと部屋に行くと、そこにはジェームズとマリアがベッドで抱き合っていた。 ショックのあまり部屋を飛び出したオリビアだったが、気がつくと走る馬車の前を歩いていた。

ざまぁの後~妹への復讐と私の幸せ~

ぴぴみ
恋愛
“妹への復讐と私の幸せ”のその後の話。

悪役令嬢ズが転生者だったとある世界

よもぎ
恋愛
よくある貴族学園を舞台にした乙女ゲームで「婚約破棄される悪役令嬢たち全員が転生者だったら?」を形にしました。学園での話は割とすぐに終わります。その後のお話が主体です。 ざまぁはここにないのでないですね。

婚約破棄します? あの、人違いです

真咲
恋愛
「ロザリー、お前とこれ以上一緒にいるのはもう無理だ! 婚約破棄させてもらう!」 ごめんなさい、ロザリーはわたしの双子の姉なんです。 人違いですね。 さらっと読めるショートストーリーですです!

寡黙な侯爵令嬢が笑う時

夜桜
恋愛
「アイナ、婚約破棄する」 口数少ない侯爵令嬢・アイナはその時を待っていた。 彼はきっと沈黙するって――。

【完結】婚約破棄されるはずが、婚約破棄してしまいました

チンアナゴ🐬
恋愛
「お前みたいなビッチとは結婚できない!!お前とは婚約を破棄する!!」 私の婚約者であるマドラー・アドリード様は、両家の家族全員が集まった部屋でそう叫びました。自分の横に令嬢を従えて。

卒業式に断罪イベントは付き物です

七地潮
恋愛
卒業パーティーに付き物の、王子、ピンク、高位貴族令嬢の断罪イベントのお話し。 【婚約破棄ですか?ありがとうございます】の王家の第二王子のお話ですけど、この話だけでも読めます。 小説家になろうさんでもアップしています。

処理中です...