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第1話
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「アリス・ウェストリカ。貴様との婚約を破棄する」
学園卒業パーティーが開かれているホールで怒号にも近い声が私に降りかかる。
声が聞こえる方に顔を向けると、私の婚約者であるオートリア王国の第二王子クレセント・フォン・オートリアが鋭く私を睨みつけている。
私はなにかしたのでしょうか。
ウェストリカ伯爵家で育ち、5歳の頃からクレセント様の婚約者として恥の無いように努力してきたつもりだ。
外国の言語、国の歴史、領地経営、魔法に商売。
この国で学べる内容は全て学んだつもり……。
なにが気に入らなかったのでしょう。
震えるからだを抑え、その理由を聞いてみるべく口を開く。
「な、なにがいけなかったのでしょうか」
「貴様はこのエリスに嫌がらせをしていたな。俺とエリスが仲いいからと言って、嫌がらせをするとは貴族令嬢として恥ずかしくないのか」
クレセント様の隣にはピンク髪の大変お胸が発達した女性が寄り添っています。
嫌がらせですか……
エリスと呼ばれた女性には見覚えがないのですが。
それでもクレセント様がそうおっしゃるのなら、何か不快な思いをさせたのかもしれません。
「すみません。私はなにをしたのでしょうか?」
「ここまできて、とぼけるつもりか。教科書を破り捨てる。階段から落とす。エリスの悪評をばらまく。どれだけのことをしてきたかわかっているのか」
クレセント様はまくし立てて状況を説明してくれていますが。
やはり、身に覚えがありません。
「あの。いつごろでしょうか?」
「エリスが入学してきた今年の春からだ」
再度の質問によりクレセント様をさらに怒らしてしまいました。
それにしてもやはり私にはその記憶はありません。
「今年の春から隣国に留学していたため、エリスさんを見たのも初めてなのですか……」
「なに?留学していたのか?」
婚約者である私の行動を知らないのはどうかと思いますけど。
クレセント様はお忙しい方ですので仕方がないのかもしれませんね。
クレセント様とエリスさんは小声でお話ししているみたいですが、どうなさるのでしょうか。
「そ、それにだ、貴様には国家の秘宝を盗んだ容疑がかけられている。貴様のスキル透明で盗んだのではないのか」
秘宝を盗む?私は一年間この国にいないと言っているではないですか。
それに私のスキルのことは王族が国家機密としているはずなのですが、こんな大勢の前で言ってもいいものなのでしょうか?
「もういい。近衛兵よ。こいつを捕らえろ」
私が思考しているのを、言い出せないと捉えたのかクレセント様が騎士に命令をしました。
近衛兵は王子の命令により、私を囲んでいます。
ここで捕まえられるとそのまま容疑者として刑に処されるのでしょうか。
それはよくありませんね。
家に迷惑をかけてしまうかもしれません。
スキルを発動し、透明になった私はそのまま近衛兵の横を歩き、会場を後にします。
学園卒業パーティーが開かれているホールで怒号にも近い声が私に降りかかる。
声が聞こえる方に顔を向けると、私の婚約者であるオートリア王国の第二王子クレセント・フォン・オートリアが鋭く私を睨みつけている。
私はなにかしたのでしょうか。
ウェストリカ伯爵家で育ち、5歳の頃からクレセント様の婚約者として恥の無いように努力してきたつもりだ。
外国の言語、国の歴史、領地経営、魔法に商売。
この国で学べる内容は全て学んだつもり……。
なにが気に入らなかったのでしょう。
震えるからだを抑え、その理由を聞いてみるべく口を開く。
「な、なにがいけなかったのでしょうか」
「貴様はこのエリスに嫌がらせをしていたな。俺とエリスが仲いいからと言って、嫌がらせをするとは貴族令嬢として恥ずかしくないのか」
クレセント様の隣にはピンク髪の大変お胸が発達した女性が寄り添っています。
嫌がらせですか……
エリスと呼ばれた女性には見覚えがないのですが。
それでもクレセント様がそうおっしゃるのなら、何か不快な思いをさせたのかもしれません。
「すみません。私はなにをしたのでしょうか?」
「ここまできて、とぼけるつもりか。教科書を破り捨てる。階段から落とす。エリスの悪評をばらまく。どれだけのことをしてきたかわかっているのか」
クレセント様はまくし立てて状況を説明してくれていますが。
やはり、身に覚えがありません。
「あの。いつごろでしょうか?」
「エリスが入学してきた今年の春からだ」
再度の質問によりクレセント様をさらに怒らしてしまいました。
それにしてもやはり私にはその記憶はありません。
「今年の春から隣国に留学していたため、エリスさんを見たのも初めてなのですか……」
「なに?留学していたのか?」
婚約者である私の行動を知らないのはどうかと思いますけど。
クレセント様はお忙しい方ですので仕方がないのかもしれませんね。
クレセント様とエリスさんは小声でお話ししているみたいですが、どうなさるのでしょうか。
「そ、それにだ、貴様には国家の秘宝を盗んだ容疑がかけられている。貴様のスキル透明で盗んだのではないのか」
秘宝を盗む?私は一年間この国にいないと言っているではないですか。
それに私のスキルのことは王族が国家機密としているはずなのですが、こんな大勢の前で言ってもいいものなのでしょうか?
「もういい。近衛兵よ。こいつを捕らえろ」
私が思考しているのを、言い出せないと捉えたのかクレセント様が騎士に命令をしました。
近衛兵は王子の命令により、私を囲んでいます。
ここで捕まえられるとそのまま容疑者として刑に処されるのでしょうか。
それはよくありませんね。
家に迷惑をかけてしまうかもしれません。
スキルを発動し、透明になった私はそのまま近衛兵の横を歩き、会場を後にします。
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