赤い糸のさきに

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　ハンバーガーを主に取り扱うファーストフード店に入った瞬間、店員や客の視線が希輝に釘付けとなった。
　一瞬でモブと化した俺は、希輝がボリュームのあるハンバーガーとポテトを頼むのを横目に、お肉とチーズのみが挟まれたシンプルなハンバーガーを注文する。
　この視線の中では、希輝も緊張して飯が喉を通らないだろうと思っていたのに、希輝はいつも通り不快そうに眉を顰めただけだった。

「希輝って本当にすげえよなあ」
「なにが？」
「……なんでもない」

　希輝にとっては日常的すぎる光景なのだろう。
　なんだかモヤモヤとするものを心に抱えながら、なるべく人の少ない場所へ向かい席についた。
　俺の後を優雅な足取りで追ってきた希輝が、俺の前へと座る。

「それで？　紡久があんなに考え込むなんて、一体何があったんだ」
「それ……なんだけどさ」

　相手にとっても俺にとっても朗報な筈なのに、唇が強張ってしまう。
　膝の上でギュッと強く拳を握り、まぶたを固く閉じ、下唇を噛んでから口を開いた。

「前、俺が話した、赤い糸がついてる友人についてなんだけど」
「ああ」
「友人が……その赤い糸をハサミで切った」

　ハンバーガーをくわえかけた希輝の手から、ぼとりとハンバーガーがトレーの上に落ちた音がした。
　固く閉じたまぶたを開けば、あおざめた希輝の顔があって動揺する。