赤い糸のさきに

アtorica@基本ツイッターにいます

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「それは、だって、紡久が」

 モゴモゴと何かを呟く希輝の口元に耳を寄せれば、小さな声で「彼女を作ってみるとか言うから」と拗ねてみせるから、何も言えなくなった。
 まさか、あの希輝が感情を剥き出しにして俺に怒ったのも、全て俺に彼女が出来てほしくなかったからとでも言うのだろうか。

「はは、なんだよそれ。まるで俺が誰かに取られると寂しいみたいな言い方」

 突然心臓が騒ぎ出して、誤魔化すように茶化そうとするも、希輝の顔が真っ赤に染まっていくのを見た瞬間に何も言えなくなった。

「はじめて出来た友達なんだから、仕方ないだろ!」
「あ……そ、そうだよな」

 戸惑う俺に何を思ったのか、慌てたように希輝が口を開く。
 友人に向ける感情にしては少々いきすぎな気もしたけど、希輝の場合は生まれて初めて心を開いたわけだから、そう思うのも当然なのかも。

「言われてみれば、彼女とばっかり過ごすようになった友樹に寂しさを感じてる気がするな。あんな感じか」
「はあ?」

 いきなり不機嫌丸出しになった希輝に、慌てて口を噤んだけど手遅れだった。
 照れくさそうな表情をしていた希輝が、一瞬で再び不愉快そうに顔を歪める。

「それはちょっと違う」
「な、なんでだよ」
「俺もよく分からないけど、むかついたから違うと思う」

 その理由はどうかと思いつつも、しかめ面の希輝に何も言えなくなる。
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