赤い糸のさきに

アtorica@基本ツイッターにいます

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「げ」

 お弁当の具材を箸に挟んだ女子に囲まれて、爽やかな風を吹かせながら微笑んでいる希輝の姿に、口端がヒクリと引き攣った。
 頬を赤く染めた女子が希輝の口に卵焼きやウインナーを放り込むたびに、希輝の顔色が青ざめていく気がする。

(何やってんだ、あいつ)

 他クラスからも駆けつけているのか、廊下から教室を覗こうとする女子が増えてきて、グイグイと背中を押される。
 数分は両足で踏ん張って耐えていたけど、何人もの恋する女子を相手に、敵う筈がなかった。
 徐々に体が傾いて、気づけばふらついた足取りで希輝の視線の前に飛び出ていた。
 希輝へと向けられていた視線を、いつの間にか俺が全て独り占めしていて、困惑する。

「紡久?」

 俺の存在に真っ先に気づいた希輝が、自然な素振りで席を立って俺に駆け寄ってくる。
 希輝に一生懸命餌付けしようとしていた女子たちが、不服そうに突然現れた俺を睨んでいた。

「……よう」

 引き攣った頬のまま片手を上げれば、呆れたように希輝が溜息をついた。

「何の用だよ」
「いや、えっとだな」

 さっきの言葉の意味を聞きにきたんだけど、皆の視線が集まっている今聞くわけにはいかない。
 希輝の背後から、箸で卵焼きを摘んだまま見つめてくるピンク色の髪をした女子を見て、ぴんときた。
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