赤い糸のさきに

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「なっ、き……希輝？」

「希輝を助けようとしたのに何で」とでも言いたげな男子の顔と、周りで黙って俺たちの動向を見守っていた生徒の視線がいたい。

「これは俺たちの問題だから。何もしなくて良い」
「お、俺はお前のことを思って……！」
「それより、告白の噂は嘘だから。紡久は俺に全く惚れてない」

　無理やり俺と男を引き離した希輝が、爽やかな笑みを浮かべるが、目は全く笑っていなくて鳥肌が立った。
　さっきまでは、俺を前にして戸惑うような素振りを見せていたというのに、一瞬の変わりように唖然とする。
　俺の手首を掴んだ男も何かを感じとったのか、おずおずと俺たちから距離をとった。

「……それで、何の用だよ」

　明らかな作り笑いを浮かべた希輝を睨みつけて、今度は俺が希輝の手首を掴む。
　周りも希輝も俺の行動に驚愕していたけど、さっきの希輝の言動と、ちょうどチャイムが鳴ったおかげか、誰も俺の行動を嗜めることもなく教室へと帰って行った。

「これだけ聞いておきたい」
「……なんだよ」

　帰っていく皆の背中をチラチラと見て、帰りたそうにしている希輝の頬を両手で包んだ。
　驚きで目を瞠った希輝に無理やり視線をあわせて、ズボンのポケットから取り出した携帯を突き付けた。