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しおりを挟む「そんな風に怯えなくて良い」
予想外に優しい声音に驚いて、勢いよく視線を上げる。
自分でもよく分からないとでも言いたげな複雑な色を宿した瞳がそこにはあって、再び心臓がザワリと騒いだ。
「……で。話ってなに」
使い慣れてきた空き教室の片隅で、希輝に手首を繋がれたまま向き合う。
緊張でドキドキと鳴る心臓をそのままに、顔色を窺うように希輝を見た。
「噂」
「え?」
「何であんな嘘をついたんだ」
一瞬だけ、希輝が何の話をしているのか分からなかった。
首をかしげかけて、昨日の自分の言動を思い出してハッとする。
そう言えば、希輝のクラスメイトの女子に「俺が希輝に告白して振られた」と伝えた気がする。
「あー……と、聞いた?」
「皆の態度が前と同じ状態に戻っていたから。……おかしいと思って聞いた」
希輝の瞳に困惑の色が見え隠れしていて、不覚にも笑いそうになった。
きっと、何故自分が不利になるような発言をしたのかと聞きたいのだろう。
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