13 / 28
空波遥の章
担任教師
しおりを挟む「改めまして、クラス担任の永沢です。担当教科は理科です。よろしくね」
目の前に座る30歳くらいの男性は、そう言って微笑んだ。ニット生地の白いベストがあちこちほつれている。
「よろしくお願いします」
と、オレはお辞儀をしかえす。
しまった。口元がへの字に曲がってた。
顔を上げ、慌てて笑みを作りなおす。永沢先生は特に気分を害した様子もなさそうで、とりあえずほっとした。大人・・・・・・、特に教師の前で表情筋が死ぬ癖がまだ抜けない。
「学期途中での転入になるけど、きちんとサポートしていくから学習面は心配しないでね。・・・・・・と言っても、テストの結果を見させてもらったところだと、かなりしっかり勉強してるみたいだから、特に問題はなさそうだね」
永沢先生は片手で書類をパラパラめくる。
「勉強は好き?」
「はい」
「ふむふむ。それは大変結構!」
書類に顔を向けたまま、永沢先生は目を細めた。
「うちはこう見えてなかなか優秀な教職員が揃ってるからね。志望校とか今の段階であるのかな?」
「はい。堀澤大学の理学部に進学希望です」
「ほうほう!明確だね。・・・・・・もしかしてもう赤本とか見てたり?」
「あ、はい・・・・・・。先々月のオープンキャンパスにも参加しました」
「そりゃすごいや!頼もしい!」
永沢先生は嫌味のない笑顔で穏やかに言う。よく見ると、先生のベストはほつれているだけでなく恐らくコーヒーでつけたものと思われる茶色いシミが点々としていた。
「うちこう見えて掘澤へのノウハウあるからね。いい環境だと思うよ」
「はい。だからこの学校に転入したんです。毎年合格者30人前後出てますよね?」
「うん。ここまではっきりと目標を持っている生徒がいると、教える側としてもモチベーション上がるよ。一緒に頑張ろうね」
「よろしくお願いします」
オレはペコリと頭を下げる。
( よし、・・・・・・いける)
五月という半端な時期にやってきた転校生として、変に目立たず静かに学園生活を送ろうとしている少年としてはなかなかの滑り出しなのではないか。
そう、間違いなく順調だった。この時点までは。
0
お気に入りに追加
59
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
性的イジメ
ポコたん
BL
この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。
作品説明:いじめの性的部分を取り上げて現代風にアレンジして作成。
全二話 毎週日曜日正午にUPされます。
三限目の国語
理科準備室
BL
昭和の4年生の男の子の「ぼく」は学校で授業中にうんこしたくなります。学校の授業中にこれまで入学以来これまで無事に家までガマンできたのですが、今回ばかりはまだ4限目の国語の授業で、給食もあるのでもう家までガマンできそうもなく、「ぼく」は授業をこっそり抜け出して初めての学校のトイレでうんこすることを決意します。でも初めての学校でのうんこは不安がいっぱい・・・それを一つ一つ乗り越えていてうんこするまでの姿を描いていきます。「けしごむ」さんからいただいたイラスト入り。
昭和から平成の性的イジメ
ポコたん
BL
バブル期に出てきたチーマーを舞台にしたイジメをテーマにした創作小説です。
内容は実際にあったとされる内容を小説にする為に色付けしています。私自身がチーマーだったり被害者だったわけではないので目撃者などに聞いた事を取り上げています。
実際に被害に遭われた方や目撃者の方がいましたら感想をお願いします。
全2話
チーマーとは
茶髪にしたりピアスをしたりしてゲームセンターやコンビニにグループ(チーム)でたむろしている不良少年。 [補説] 昭和末期から平成初期にかけて目立ち、通行人に因縁をつけて金銭を脅し取ることなどもあった。 東京渋谷センター街が発祥の地という。
女装とメス調教をさせられ、担任だった教師の亡くなった奥さんの代わりをさせられる元教え子の男
湊戸アサギリ
BL
また女装メス調教です。見ていただきありがとうございます。
何も知らない息子視点です。今回はエロ無しです。他の作品もよろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる