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空波遥の章
名前で呼んで
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空波はうーんと伸びをして、その場を後にするように振り返る。その直前、オレに少し顔を向けた。
「ちょっと困らせちゃったみたいだから、お詫びにアドバイスあげるよ。見たところ筋肉ないから制服似合ってないのもあるんじゃないかな。学ランってやっぱガタイ良い方がどうしても見栄え良くなるから。もっとさ、背中鍛えるのがオススメだよ。うん、背中と肩周りって筋肉大きいからさ、そこ鍛えるのが効率良いよ。もし聞きたいことあったら教えてあげる。いつでも大歓迎♪」
「え、ああ・・・・・・」
一気に告げられて、調子が狂う。
「ありがと。・・・・・・空波」
それでもどうにかぽつりと礼を言うと、空波はふふっといたずらっぽい笑みを浮かべながら。
「名前で呼んでよ。僕もそうするから」
「へっ?」
なんだこれは。なんの実績解除なのだ。
「ほら、・・・・・・“遥”って」
ねっ?とまたウインクされて、オレの口からは・・・・・・。
「遥・・・・・・」
と勝手にこぼれていた。空波の深緑の瞳が、春の朝の陽光を受けて、きらりと瞬く。
とたんにオレの心臓がありえないほど大きくバクンッとバウンドした。
(なんだ・・・・・・。なんなんだよこれは・・・・・・)
もはや周囲を憚ることもできず、胸を押さえておろおろと目を泳がせているオレに、空波はにいっと口の端を持ち上げた。そうして・・・・・・。
「ふっふっふ、我らの絆が確かなものであれば、この先も相間見えることは必然であろう~!」
「はっ?」
相変わらず演技臭い口調で言い放つとスカートを翻し・・・・・・、片手をひらひらさせながら消えていってしまった。
「恋をしたくない聡くーん、じゃあねーっ」
「いや、普通に“また会おうね”って言えんのかい!」というツッコミをし損ねたまま、オレはその場に棒立ちになる。
別れ際のあいつの言葉・・・・・・。
なんかやたら男子の制服の着こなしに詳しかった。過去あいつが実践した方法なんだろう。何となく口調から分かった。
・・・・・・。
「あいつ・・・・・・。本当に男子なんだなあ」
へなへなとその場にへたり込んだオレの頭上から、快活な声が降ってきた。
「君、もしかして結城聡くん?」
今度は大人の男性の声だ。驚いて見上げると、眼鏡をかけた柔和そうな男が立っていた。
「おはよう。もうあまり時間ないから、急いで職員室行こっか。・・・・・・どしたの、そんなとこで座り込んで」
「ちょっと困らせちゃったみたいだから、お詫びにアドバイスあげるよ。見たところ筋肉ないから制服似合ってないのもあるんじゃないかな。学ランってやっぱガタイ良い方がどうしても見栄え良くなるから。もっとさ、背中鍛えるのがオススメだよ。うん、背中と肩周りって筋肉大きいからさ、そこ鍛えるのが効率良いよ。もし聞きたいことあったら教えてあげる。いつでも大歓迎♪」
「え、ああ・・・・・・」
一気に告げられて、調子が狂う。
「ありがと。・・・・・・空波」
それでもどうにかぽつりと礼を言うと、空波はふふっといたずらっぽい笑みを浮かべながら。
「名前で呼んでよ。僕もそうするから」
「へっ?」
なんだこれは。なんの実績解除なのだ。
「ほら、・・・・・・“遥”って」
ねっ?とまたウインクされて、オレの口からは・・・・・・。
「遥・・・・・・」
と勝手にこぼれていた。空波の深緑の瞳が、春の朝の陽光を受けて、きらりと瞬く。
とたんにオレの心臓がありえないほど大きくバクンッとバウンドした。
(なんだ・・・・・・。なんなんだよこれは・・・・・・)
もはや周囲を憚ることもできず、胸を押さえておろおろと目を泳がせているオレに、空波はにいっと口の端を持ち上げた。そうして・・・・・・。
「ふっふっふ、我らの絆が確かなものであれば、この先も相間見えることは必然であろう~!」
「はっ?」
相変わらず演技臭い口調で言い放つとスカートを翻し・・・・・・、片手をひらひらさせながら消えていってしまった。
「恋をしたくない聡くーん、じゃあねーっ」
「いや、普通に“また会おうね”って言えんのかい!」というツッコミをし損ねたまま、オレはその場に棒立ちになる。
別れ際のあいつの言葉・・・・・・。
なんかやたら男子の制服の着こなしに詳しかった。過去あいつが実践した方法なんだろう。何となく口調から分かった。
・・・・・・。
「あいつ・・・・・・。本当に男子なんだなあ」
へなへなとその場にへたり込んだオレの頭上から、快活な声が降ってきた。
「君、もしかして結城聡くん?」
今度は大人の男性の声だ。驚いて見上げると、眼鏡をかけた柔和そうな男が立っていた。
「おはよう。もうあまり時間ないから、急いで職員室行こっか。・・・・・・どしたの、そんなとこで座り込んで」
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