114 / 220
第113話 強さ4
しおりを挟む
目を開くと、ミディの前には、少し大きめの檻があった。
戻ってきたようだ。
「何故……、あの時の事を、思い出させたの?」
触れていた檻から手を離し、ミディが少女に問いかける。
少女は、不思議そうに首をかしげた。
「私はただ、あなたの奥深くに閉じ込めていた記憶を、揺り起こしただけ。あの記憶を選んだわけじゃない」
ミディは、何も言わなかった。
先ほど見た記憶は、ミディにとって誰にも話したことのない特別なものだった。
予言。
四大精霊との対話。
そして、今ある自分の強さを作った、あの事件。
これからどうすればよいのか分からなかった自分に、道を指し示してくれたのが、あの男性だった。
ミディにとって、幼い彼女の命だけでなく、打ちひしがれた心に光を灯してくれた恩人なのだ。
彼女は名も知らぬ男に、とても感謝していた。
あの事件をきっかけに、ミディは武術を始めた。
ミディを救ったあの男性の強さが、自分に必要とされているものだと思ったからだ。
彼女は、強くなった。大陸中でその名を轟かせる程に。
強くなったはずだった。
―――強く。
再び視線を、前に戻す。
目の前には、自分のために用意された檻が、黙って誰かが中に入るのを、待っている。
ミディは檻に近づくと、開かれた扉に手をかけた。
戻ってきたようだ。
「何故……、あの時の事を、思い出させたの?」
触れていた檻から手を離し、ミディが少女に問いかける。
少女は、不思議そうに首をかしげた。
「私はただ、あなたの奥深くに閉じ込めていた記憶を、揺り起こしただけ。あの記憶を選んだわけじゃない」
ミディは、何も言わなかった。
先ほど見た記憶は、ミディにとって誰にも話したことのない特別なものだった。
予言。
四大精霊との対話。
そして、今ある自分の強さを作った、あの事件。
これからどうすればよいのか分からなかった自分に、道を指し示してくれたのが、あの男性だった。
ミディにとって、幼い彼女の命だけでなく、打ちひしがれた心に光を灯してくれた恩人なのだ。
彼女は名も知らぬ男に、とても感謝していた。
あの事件をきっかけに、ミディは武術を始めた。
ミディを救ったあの男性の強さが、自分に必要とされているものだと思ったからだ。
彼女は、強くなった。大陸中でその名を轟かせる程に。
強くなったはずだった。
―――強く。
再び視線を、前に戻す。
目の前には、自分のために用意された檻が、黙って誰かが中に入るのを、待っている。
ミディは檻に近づくと、開かれた扉に手をかけた。
0
お気に入りに追加
66
あなたにおすすめの小説
【完結】悪役令嬢の断罪現場に居合わせた私が巻き込まれた悲劇
藍生蕗
ファンタジー
悪役令嬢と揶揄される公爵令嬢フィラデラが公の場で断罪……されている。
トリアは会場の端でその様を傍観していたが、何故か急に自分の名前が出てきた事に動揺し、思わず返事をしてしまう。
会場が注目する中、聞かれる事に答える度に場の空気は悪くなって行って……
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
【完】あの、……どなたでしょうか?
桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー
爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」
見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………
「あの、……どなたのことでしょうか?」
まさかの意味不明発言!!
今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!
結末やいかに!!
*******************
執筆終了済みです。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました
余命六年の幼妻の願い~旦那様は私に興味が無い様なので自由気ままに過ごさせて頂きます。~
流雲青人
恋愛
商人と商品。そんな関係の伯爵家に生まれたアンジェは、十二歳の誕生日を迎えた日に医師から余命六年を言い渡された。
しかし、既に公爵家へと嫁ぐことが決まっていたアンジェは、公爵へは病気の存在を明かさずに嫁ぐ事を余儀なくされる。
けれど、幼いアンジェに公爵が興味を抱く訳もなく…余命だけが過ぎる毎日を過ごしていく。
婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。
束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。
だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。
そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。
全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。
気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。
そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。
すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる