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第103話 目的2
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「果たしてそのチャンクって野郎、今もエルザ城にいるかな?」
「アクノリッジさん、それはどういうことですか?」
眉根を寄せ、ジェネラルが問う。
あの事件は不審な点が多く見られた為、首謀者たちをエルザ城へ連れて行き、徹底的な取調べを行う予定だった。
予定通り進んでいるなら、今頃チャンクはエルザ城にいるはずだ。取調べは終わったとしても、長い時間をエルザの牢獄で過ごす事となるので、彼の身柄は城にあるはずなのだ。
「噂が聞かれなかったという時点で、チャンクとメディアには繋がりがあるって俺は考えるぜ? レージュとの繋がりがばれる事を恐れ、メディアが事件を内々で処理したんだ。誘拐した上に人身売買だろ? んなでかい事件、絶対に表に出ないわけがないぜ」
「でもメディアさんじゃない、別の誰かが隠蔽したっていう可能性もあるんじゃ……」
「それなら、メディアが事件の追求をしているはずだ。奴の目からそうそう事件を隠ぺいできねえよ。結局は表ざたになってるさ。その事が、シンクの耳に入らないわけがない」
アクノリッジの言っている事も、一理ある。
青年は、シンクを納得させるため、さらに言葉を続ける。
「確かに、偶然メディアとレージュが関係あっただけかもしれない。だが、その偶然がいくつも重なるか? 普通」
偶然の不自然な重なり。一つならまだしも、複数重なっていると、偶然だと片づけるにはちょっと無理がある。
となると結局、レージュ王国とメディアが繋がり、今回の一件を引き起こしている、という解になってしまう。
エルザ王国に留まらずどんどん大きくなる話に、ジェネラルは慌ててその場に立ち上がった。
「メディアさんが、エルザ王国を何かしらの目的で狙っているのは明らかですが……。もし、レージュ国の命令で、今回の陰謀を企んだとしたなら、レージュ国の狙いは一体何なんですか!」
「そりゃ決まってるじゃないか」
アクノリッジの瞳が、すっと細くなる。
「エルザ王国。そして、ミディ自身だ」
「ミディ自身!?」
領土を広げたいと思うのは、どの国も同じなので分かる。
だが領土だけでなく、ミディ自身も狙っているとはどういう事だ。
魔王の表情から、考えている事が分かったのだろう。
シンクが、説明する為に口を開く。
「エルザ王国は、元々資源豊かな国だ。だけどミディ姉が生まれ、四大精霊が祝福を与えてから、さらなる恵みが下ったんだ。モジュール家がエルザにあるのも、それが理由なんだ」
「……ミディを手に入れる事が出来れば、四大精霊の祝福を国が受けられる。それを狙っているわけですね」
「そうだな。さすがにエルザ王も、他国の妬みを買わないように、支援を行うなどしてるから、表立って侵略は出来ない。でもミディ姉と結婚出来れば、四大精霊の祝福が受けられるし、婿入りしたとしても、エルザの資源を自国に流す事が出来る。いい事尽くしなわけだ」
シンクの顔に、ちらちらと侮蔑が色が見える。
国の利益になる事を考えるのは普通だが、大切なミディがその道具になっているのが、許せないのだろう。
理性と感情は、別なのだ。
アクノリッジも、弟の気持ちに気づいているみたいだが、どうにも出来ないと言いたげに息を吐いた。
そして他国がミディを狙う、もう一つの理由を告げる。
「それだけじゃない。ミディには、強大な魔法の力がある。ミディが国にいるだけで、他国への牽制になる」
少し寂しそうに、上に飾ってある絵に視線を向けた。
ジェネラルの体に、一瞬にして熱いものが駆け巡った。
「それじゃまるで……、戦いの道具じゃないか!!」
頬を怒りで赤くし、ジェネラルは叫んだ。
政略結婚は国の繁栄の為に、昔から使われてきた方法だ。国の為に、皆が彼女の力を求めるのは当たり前と思う。
ジェネラルの中でも、分かっている。
それでも、許せなかった。ミディを道具としか見ない人々に。
「ミディは……、そんな事の為に、四大精霊から祝福を受けたわけじゃない!!」
彼女には、世界の秩序を取り戻す大きな役目がある。
その為に与えられた、四大精霊の力なのだ。こんな世俗の欲に使う為のものではない。
溢れる怒りを抑えられず、音を立ててジェネラルは座った。
無言で唇を噛みしめる少年を、どこか気の毒そうにアクノリッジとシンクが見つめている。
「とりあえず……」
勢いを付けてアクノリッジは立ち上がると、シンクに向けて指示を出した。
「結婚までに時間がねえ、早急に動かねえと。部外者は城に入れないから、何とか城関係者を何人か取り込めねえかな? とにかく城内が今どうなっているのか情報が欲しい」
「もちろんだ。すぐに手配するよ。レージュ時代のメディアの事も徹底的に洗おう。レージュ王家の動向も探らないとな」
「後は、ここ数年で移動した城関係者を洗う必要もあるな。ジェネラルの話からすると、メディア直属の部下がいるようだからな。どれだけいるのかを把握しておきたいな」
「了解。病気や事故なんかで辞めた者もいないかも含め、調査するよ」
「あっ……、あのう……」
メディアの陰謀を探る為、準備を進める二人に、恐る恐る口を挟むジェネラル。
彼らの会話が止まり、ジェネラルの方に視線が向けられた。
「僕に出来る事、何かありませんか!? 何でもしますから!」
胸の前で手を強く握りながら、ジェネラルは尋ねた。
真剣な表情で、二人を見返す。
シンクがアクノリッジを見た。
弟の視線から言いたい事が分かったのか、アクノリッジは一つ頷く。
そして口を開いた。
「お前は、魔界へ戻れ」
「アクノリッジさん、それはどういうことですか?」
眉根を寄せ、ジェネラルが問う。
あの事件は不審な点が多く見られた為、首謀者たちをエルザ城へ連れて行き、徹底的な取調べを行う予定だった。
予定通り進んでいるなら、今頃チャンクはエルザ城にいるはずだ。取調べは終わったとしても、長い時間をエルザの牢獄で過ごす事となるので、彼の身柄は城にあるはずなのだ。
「噂が聞かれなかったという時点で、チャンクとメディアには繋がりがあるって俺は考えるぜ? レージュとの繋がりがばれる事を恐れ、メディアが事件を内々で処理したんだ。誘拐した上に人身売買だろ? んなでかい事件、絶対に表に出ないわけがないぜ」
「でもメディアさんじゃない、別の誰かが隠蔽したっていう可能性もあるんじゃ……」
「それなら、メディアが事件の追求をしているはずだ。奴の目からそうそう事件を隠ぺいできねえよ。結局は表ざたになってるさ。その事が、シンクの耳に入らないわけがない」
アクノリッジの言っている事も、一理ある。
青年は、シンクを納得させるため、さらに言葉を続ける。
「確かに、偶然メディアとレージュが関係あっただけかもしれない。だが、その偶然がいくつも重なるか? 普通」
偶然の不自然な重なり。一つならまだしも、複数重なっていると、偶然だと片づけるにはちょっと無理がある。
となると結局、レージュ王国とメディアが繋がり、今回の一件を引き起こしている、という解になってしまう。
エルザ王国に留まらずどんどん大きくなる話に、ジェネラルは慌ててその場に立ち上がった。
「メディアさんが、エルザ王国を何かしらの目的で狙っているのは明らかですが……。もし、レージュ国の命令で、今回の陰謀を企んだとしたなら、レージュ国の狙いは一体何なんですか!」
「そりゃ決まってるじゃないか」
アクノリッジの瞳が、すっと細くなる。
「エルザ王国。そして、ミディ自身だ」
「ミディ自身!?」
領土を広げたいと思うのは、どの国も同じなので分かる。
だが領土だけでなく、ミディ自身も狙っているとはどういう事だ。
魔王の表情から、考えている事が分かったのだろう。
シンクが、説明する為に口を開く。
「エルザ王国は、元々資源豊かな国だ。だけどミディ姉が生まれ、四大精霊が祝福を与えてから、さらなる恵みが下ったんだ。モジュール家がエルザにあるのも、それが理由なんだ」
「……ミディを手に入れる事が出来れば、四大精霊の祝福を国が受けられる。それを狙っているわけですね」
「そうだな。さすがにエルザ王も、他国の妬みを買わないように、支援を行うなどしてるから、表立って侵略は出来ない。でもミディ姉と結婚出来れば、四大精霊の祝福が受けられるし、婿入りしたとしても、エルザの資源を自国に流す事が出来る。いい事尽くしなわけだ」
シンクの顔に、ちらちらと侮蔑が色が見える。
国の利益になる事を考えるのは普通だが、大切なミディがその道具になっているのが、許せないのだろう。
理性と感情は、別なのだ。
アクノリッジも、弟の気持ちに気づいているみたいだが、どうにも出来ないと言いたげに息を吐いた。
そして他国がミディを狙う、もう一つの理由を告げる。
「それだけじゃない。ミディには、強大な魔法の力がある。ミディが国にいるだけで、他国への牽制になる」
少し寂しそうに、上に飾ってある絵に視線を向けた。
ジェネラルの体に、一瞬にして熱いものが駆け巡った。
「それじゃまるで……、戦いの道具じゃないか!!」
頬を怒りで赤くし、ジェネラルは叫んだ。
政略結婚は国の繁栄の為に、昔から使われてきた方法だ。国の為に、皆が彼女の力を求めるのは当たり前と思う。
ジェネラルの中でも、分かっている。
それでも、許せなかった。ミディを道具としか見ない人々に。
「ミディは……、そんな事の為に、四大精霊から祝福を受けたわけじゃない!!」
彼女には、世界の秩序を取り戻す大きな役目がある。
その為に与えられた、四大精霊の力なのだ。こんな世俗の欲に使う為のものではない。
溢れる怒りを抑えられず、音を立ててジェネラルは座った。
無言で唇を噛みしめる少年を、どこか気の毒そうにアクノリッジとシンクが見つめている。
「とりあえず……」
勢いを付けてアクノリッジは立ち上がると、シンクに向けて指示を出した。
「結婚までに時間がねえ、早急に動かねえと。部外者は城に入れないから、何とか城関係者を何人か取り込めねえかな? とにかく城内が今どうなっているのか情報が欲しい」
「もちろんだ。すぐに手配するよ。レージュ時代のメディアの事も徹底的に洗おう。レージュ王家の動向も探らないとな」
「後は、ここ数年で移動した城関係者を洗う必要もあるな。ジェネラルの話からすると、メディア直属の部下がいるようだからな。どれだけいるのかを把握しておきたいな」
「了解。病気や事故なんかで辞めた者もいないかも含め、調査するよ」
「あっ……、あのう……」
メディアの陰謀を探る為、準備を進める二人に、恐る恐る口を挟むジェネラル。
彼らの会話が止まり、ジェネラルの方に視線が向けられた。
「僕に出来る事、何かありませんか!? 何でもしますから!」
胸の前で手を強く握りながら、ジェネラルは尋ねた。
真剣な表情で、二人を見返す。
シンクがアクノリッジを見た。
弟の視線から言いたい事が分かったのか、アクノリッジは一つ頷く。
そして口を開いた。
「お前は、魔界へ戻れ」
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