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第44話 襲来
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それは、ミディが外に出る為に扉を開けさせようと口を開いた瞬間に起こった。
耳の奥まで響き渡る甲高い、奇怪な鳴き声。
誰もがその声に注意を向けた時、城を守る扉とその周辺の壁に亀裂が走った。
そして、
――――爆発音。
一瞬の、出来事だった。
誰もが突然の出来事に、理解するどころか、その場から動く事が出来なかった。
だが破壊された城と、モクモクとあがる煙に映る人間にはありえない巨大な影を認めた瞬間、人々は騒然となった。
叫び声と悲鳴が、広い玄関ホールに響き渡る。手にしていた物を放り出し、城の人々が逃げ惑った。
「今の爆発音は、何!? 一体、何があったのぉ!?」
彼らを押しのけるように、金髪の青年―アクノリッジが、騒ぎを聞きつけて姿を現した。側には、彼とセレステを囲むように、数人の護衛の姿がある。
無残に破壊されたを見、セレステが狂わんばかりに、近くにいた侍女に掴みかかった。
「これは……、一体どういう事なの――!? 一体、何があったというの!?」
叫びながら、侍女を激しく揺するセレステ。一方掴みかかられた侍女は、まだ状況が把握出来ていないようで、呆然とした表情でセレステのされるがままになっている。
そんな状況の中、アクノリッジたちとは違う場所から、慌ててこちらにやってくるいくつかの足音が聞こえてきた。
姿を現したのは、アクノリッジと同じく護衛に守られた銀髪の少年―シンクだ。予想だにしなかった光景に、口を開けたまま、立ち尽くしているのが見える。
素早く周囲に視線を走らせたアクノリッジは、破壊された扉近くに広がる青い髪を見つけ、目を見開いた。
白いドレスを纏う、細い体。
扇状に広がる、青い髪。
うつ伏せ状態で倒れているが、その姿は紛れもなく、
「みっ、ミディ――!!」
青年の叫びが、玄関ホールに響き渡った。
シンクも、ミディに気がついたのだろう。異母兄の視線の先にあるものを見、慌てて飛び出そうとして、護衛たちに取り押さえられている。
入り口の扉が破壊された時、ミディが丁度扉の側にいた為、爆発に巻き込まれたのだ。
アクノリッジやシンクのいる距離からだと、ミディの体がちゃんと人間としての原型を留めており、出血もしていない事が確認出来るが、それ以上は全く分からない。
だた1つ分かる事は、今この状態で彼女を放置しておく事が、危険だということだ。
グオオオオオオォォォォ――ン……
先ほどとは違う、低く長い咆哮。
地響きを立て、『それ』はやってきた。
「マジ……か……よ……」
姿を現した『それ』を見上げ、シンクは思わず呟く。
アクノリッジも、『それ』に見覚えがあった。
遠い遠い昔、彼がまだ幼かった頃、寝る前に読んでもらった絵本に出てきていた『それ』。
何でも切り裂くだろう、鋭い爪。
硬く、赤味を帯びた鱗に覆われた体表。
全てをなぎ倒す巨大な尾。
大人の背丈の2倍半以上ありそうな巨体。
―――――――ドラゴン。
いるかいないか討論され、今では絵本や物語でしか姿を現さない『それ』が、確かに存在していたのだ。
ドラゴンは、プロトコルでは想像上または伝説の生き物だと言い切られてない。なぜなら、それらしき骨が見つかっているからだ。
また実際、見た、襲われた、という報告も毎年あり、未確認生物として存在の有無を未だに議論されている生物が、プロトコルのドラゴンである。
しかしそれが、今、目の前にいる。
周りの人々も、ドラゴンを知っているのだろう。想像以上の迫力に、叫ぶ事も逃げる事も出来ず、その場で固まっている。先ほどの騒ぎが嘘のようだ。
アクノリッジは、ドラゴンの近くで倒れているミディを見た。ドラゴンはまだミディに気がついていないが、見つかればただでは済まないだろう。ならば。
青年の体が動いた。彫刻の影に隠れているスイッチを、力任せに叩き押す。
その反動で、一目で高価だと分かる彫刻が土台から滑り落ち、鈍い音をたてて二つに割れると同時に、けたたましいベル音が鳴り響き、玄関ホールの壁部分が、ドアのように開いたのだ。そこから出て来たのは、
ガシャン…、ガシャン…
金属の擦れる音と共に現れたのは、彼が制作した5体の自動人形たちだった。
頼もしい存在の出現に、皆の目に希望の光が灯った。強張った顔を少し緩め、自動人形とアクノリッジに羨望のまなざしを送っている。
自動人形たちはすぐさま侵入者を感知し、撲滅する為それぞれの武器を構えた。
ドラゴンも、鳴り響くベル音と目の前に現れた謎の物体たちに、唸り声を上げ、警戒の色をみせている。
先行を取ったのは、自動人形たちだった。
自動人形の一つが、ドラゴン目掛けて斧を振り下ろした。
野生のカンだろうか、ドラゴンは瞬時に身を引くと、自分に向かってきた自動人形に、鋭い爪を振るった。攻撃を食らい、よろけたところに、ドラゴンの尾が直撃する。
自動人形は、ミディの時以上にあっけなく吹き飛ばされ、シンク付近の壁にぶつかった。
ぶつかった衝撃に内部が破壊されたのだろう。カタカタと音を立てていたかと思うと、その場に崩れ落ちちた。壁にぶつかった衝撃で飛び散った螺子や細かい部品などが、シンクの足元へ転がり、止まる。
「……………………」
あっけなく破壊された、モジュール家最強と言われる自動人形のなれの果てを見、シンクは唾を飲み込んだ。
見かけに反し、脆い事が分かったのか、ドラゴンの容赦ない攻撃が、その他の自動人形たちに向けられる。次々に破壊されていく、自動人形たち。3体目を壊した時、何か衝撃があったのか、煩く鳴り響いていたベル音が、ピタリと止まった。
“もう少し、もってくれ……”
壊れ行く自動人形たちを尻目に、アクノリッジは周りの反対を押し切り、ミディの元へと向かっていた。
自動人形たちを作ったのは、アクノリッジだ。人形たちの性能は彼が一番よく知っている。ドラゴンに、敵わない事も。
無残に破壊された城の状況を見れば、一目で分かることだ。
だから自動人形たちに時間稼ぎをさせ、ドラゴンの気がそれている間に、ミディを連れてこようという作戦だったのだ。
ミディさえ目覚めれば、彼女の力でドラゴン撃退が可能だからだ。
作戦自体は、悪くなかった。だが、アクノリッジの思った以上に、自動人形たちは脆かった、いや、ドラゴンが強かったのだ。
予想以上に早く、全ての自動人形たちを破壊したドラゴンの視線が、ミディの元へ向かうために横切ったアクノリッジに向けられた。
餌と捕らえたのか、真っ赤に燃えた瞳が、細められる。
「アクノリッジ様!」
「アクノリッジ!!」
セレステや周りの者達が彼の名を呼んだが、目の前に現れた死の使いへの恐怖が、アクノリッジの五感を閉ざした為、聞こえない。
唾液の糸をひきながら、ドラゴンの口が開いた。
耳の奥まで響き渡る甲高い、奇怪な鳴き声。
誰もがその声に注意を向けた時、城を守る扉とその周辺の壁に亀裂が走った。
そして、
――――爆発音。
一瞬の、出来事だった。
誰もが突然の出来事に、理解するどころか、その場から動く事が出来なかった。
だが破壊された城と、モクモクとあがる煙に映る人間にはありえない巨大な影を認めた瞬間、人々は騒然となった。
叫び声と悲鳴が、広い玄関ホールに響き渡る。手にしていた物を放り出し、城の人々が逃げ惑った。
「今の爆発音は、何!? 一体、何があったのぉ!?」
彼らを押しのけるように、金髪の青年―アクノリッジが、騒ぎを聞きつけて姿を現した。側には、彼とセレステを囲むように、数人の護衛の姿がある。
無残に破壊されたを見、セレステが狂わんばかりに、近くにいた侍女に掴みかかった。
「これは……、一体どういう事なの――!? 一体、何があったというの!?」
叫びながら、侍女を激しく揺するセレステ。一方掴みかかられた侍女は、まだ状況が把握出来ていないようで、呆然とした表情でセレステのされるがままになっている。
そんな状況の中、アクノリッジたちとは違う場所から、慌ててこちらにやってくるいくつかの足音が聞こえてきた。
姿を現したのは、アクノリッジと同じく護衛に守られた銀髪の少年―シンクだ。予想だにしなかった光景に、口を開けたまま、立ち尽くしているのが見える。
素早く周囲に視線を走らせたアクノリッジは、破壊された扉近くに広がる青い髪を見つけ、目を見開いた。
白いドレスを纏う、細い体。
扇状に広がる、青い髪。
うつ伏せ状態で倒れているが、その姿は紛れもなく、
「みっ、ミディ――!!」
青年の叫びが、玄関ホールに響き渡った。
シンクも、ミディに気がついたのだろう。異母兄の視線の先にあるものを見、慌てて飛び出そうとして、護衛たちに取り押さえられている。
入り口の扉が破壊された時、ミディが丁度扉の側にいた為、爆発に巻き込まれたのだ。
アクノリッジやシンクのいる距離からだと、ミディの体がちゃんと人間としての原型を留めており、出血もしていない事が確認出来るが、それ以上は全く分からない。
だた1つ分かる事は、今この状態で彼女を放置しておく事が、危険だということだ。
グオオオオオオォォォォ――ン……
先ほどとは違う、低く長い咆哮。
地響きを立て、『それ』はやってきた。
「マジ……か……よ……」
姿を現した『それ』を見上げ、シンクは思わず呟く。
アクノリッジも、『それ』に見覚えがあった。
遠い遠い昔、彼がまだ幼かった頃、寝る前に読んでもらった絵本に出てきていた『それ』。
何でも切り裂くだろう、鋭い爪。
硬く、赤味を帯びた鱗に覆われた体表。
全てをなぎ倒す巨大な尾。
大人の背丈の2倍半以上ありそうな巨体。
―――――――ドラゴン。
いるかいないか討論され、今では絵本や物語でしか姿を現さない『それ』が、確かに存在していたのだ。
ドラゴンは、プロトコルでは想像上または伝説の生き物だと言い切られてない。なぜなら、それらしき骨が見つかっているからだ。
また実際、見た、襲われた、という報告も毎年あり、未確認生物として存在の有無を未だに議論されている生物が、プロトコルのドラゴンである。
しかしそれが、今、目の前にいる。
周りの人々も、ドラゴンを知っているのだろう。想像以上の迫力に、叫ぶ事も逃げる事も出来ず、その場で固まっている。先ほどの騒ぎが嘘のようだ。
アクノリッジは、ドラゴンの近くで倒れているミディを見た。ドラゴンはまだミディに気がついていないが、見つかればただでは済まないだろう。ならば。
青年の体が動いた。彫刻の影に隠れているスイッチを、力任せに叩き押す。
その反動で、一目で高価だと分かる彫刻が土台から滑り落ち、鈍い音をたてて二つに割れると同時に、けたたましいベル音が鳴り響き、玄関ホールの壁部分が、ドアのように開いたのだ。そこから出て来たのは、
ガシャン…、ガシャン…
金属の擦れる音と共に現れたのは、彼が制作した5体の自動人形たちだった。
頼もしい存在の出現に、皆の目に希望の光が灯った。強張った顔を少し緩め、自動人形とアクノリッジに羨望のまなざしを送っている。
自動人形たちはすぐさま侵入者を感知し、撲滅する為それぞれの武器を構えた。
ドラゴンも、鳴り響くベル音と目の前に現れた謎の物体たちに、唸り声を上げ、警戒の色をみせている。
先行を取ったのは、自動人形たちだった。
自動人形の一つが、ドラゴン目掛けて斧を振り下ろした。
野生のカンだろうか、ドラゴンは瞬時に身を引くと、自分に向かってきた自動人形に、鋭い爪を振るった。攻撃を食らい、よろけたところに、ドラゴンの尾が直撃する。
自動人形は、ミディの時以上にあっけなく吹き飛ばされ、シンク付近の壁にぶつかった。
ぶつかった衝撃に内部が破壊されたのだろう。カタカタと音を立てていたかと思うと、その場に崩れ落ちちた。壁にぶつかった衝撃で飛び散った螺子や細かい部品などが、シンクの足元へ転がり、止まる。
「……………………」
あっけなく破壊された、モジュール家最強と言われる自動人形のなれの果てを見、シンクは唾を飲み込んだ。
見かけに反し、脆い事が分かったのか、ドラゴンの容赦ない攻撃が、その他の自動人形たちに向けられる。次々に破壊されていく、自動人形たち。3体目を壊した時、何か衝撃があったのか、煩く鳴り響いていたベル音が、ピタリと止まった。
“もう少し、もってくれ……”
壊れ行く自動人形たちを尻目に、アクノリッジは周りの反対を押し切り、ミディの元へと向かっていた。
自動人形たちを作ったのは、アクノリッジだ。人形たちの性能は彼が一番よく知っている。ドラゴンに、敵わない事も。
無残に破壊された城の状況を見れば、一目で分かることだ。
だから自動人形たちに時間稼ぎをさせ、ドラゴンの気がそれている間に、ミディを連れてこようという作戦だったのだ。
ミディさえ目覚めれば、彼女の力でドラゴン撃退が可能だからだ。
作戦自体は、悪くなかった。だが、アクノリッジの思った以上に、自動人形たちは脆かった、いや、ドラゴンが強かったのだ。
予想以上に早く、全ての自動人形たちを破壊したドラゴンの視線が、ミディの元へ向かうために横切ったアクノリッジに向けられた。
餌と捕らえたのか、真っ赤に燃えた瞳が、細められる。
「アクノリッジ様!」
「アクノリッジ!!」
セレステや周りの者達が彼の名を呼んだが、目の前に現れた死の使いへの恐怖が、アクノリッジの五感を閉ざした為、聞こえない。
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