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第23話 少女
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道中、色々ありながらも、ジェネラルとミディはセンシングへ向かっていた。
そろそろ追手の心配も少なくなってきた頃、ようやく舗装された道に合流すると、旅もスムーズに進んだ。
……はずだった。
「あれ? おかしいわね……」
地図を手に、ミディは困ったように呟いた。周りを見回しながら、再び地図に視線を戻す。
特に目立って複雑な道をしているわけではないのだが、地図と周囲を繰り返し見る彼女の表情は困惑以外にも時折不安が見え隠れする。
ここは、マージとセンシングの途中にある森。
地図を見る限り森と言ってもそれ程広さはなく、猛獣などもいないので比較的安全とされている場所だ。
普段からもたくさんの人々が、マージとセンシングの移動に利用している。
地図で見てもほぼ一本道で、よっぽどのことがない限り迷う事はないはずなのだが……。
「うーん……、一体どこで間違ったのかしら?」
「何、ミディ? 道に迷ったの?」
先ほどから何度も視線が、周りと地図の上を行き来しているミディを見、ジェネラルも横から地図を覗き込んだ。
しかしプロトコルの地形についてほとんど知識のない彼が見ても、現在どこにいるかすら分からない為、全く役に立っていない。
しばらく横から地図を見ていたジェネラルだが地図を見る事を諦め、ほら見たことかと今度はミディを見た。
「ほら、だから言ったじゃないか。さっき人に聞こうって」
地図を見ても、どこにいるのかすら分からないくせに、一丁前に文句だけは言ってくるジェネラル。一緒に行動してイラつかせられるのは、こういうタイプだ。
正直、何も役に立っていない少年に文句を言われ、腹立たしいはずのミディではあるが、今は正しい道を探す事とほぼ一本道なのに迷ってしまった恥ずかしさから、怒りまで感じていないようだ。
「だっ、大丈夫よ! この道はほぼ一本道なのだから、すぐに着くわ!」
「ってその言葉、ちょっと前も聞いたんだけど……」
「…………」
「それにさ、ほぼ一本道で迷うなんて、ミディって実は方向おん……」
「さあ、行くわよ! さっさと行くわよ!! ジェネ、ついて来なさい!!」
彼の言葉を遮り、ミディはさっさと歩き出した。彼の声が聞こえないように、足音を大きくたてて進んでいく。
“まあ、女性は地図を読むのが苦手って、お婆様が言ってたっけ。お婆様も方向音痴だったから、よく迷ってたなあ”
ジェネラルは呆れたようにため息をつくと、仕方なくミディの背中を追った。
こうしてしばらく歩き続けた二人だったが、やがて影が長くなり太陽が傾き始めた。
しかし、一向に道の出口は見えてこない。
進めば進むほど木の密集率が高くなり、道の幅も狭まってきているようだ。
ミディは相変わらず、地図と周囲を見回しながら、ブツブツと何かを言いながら歩いている。
人に聞こうにも、時間帯のせいなのか全く周囲に人影が見られない。
“あ~あ……、この調子だと今日は野宿かなあ……”
だんだん闇に溶け込んでいく自分の影を見ながら、ジェネラルが心の中でぼやいた時、
「ねえ、どうしたの?」
幼く舌足らずな少女の声に、二人は足を止めた。
目の前には、5歳ぐらいと思われる幼い少女の姿があった。
無造作に切られた肩までの茶色い髪に、ちょこんと小さな白いリボンがついているのが愛らしい。
少し肌寒い為、毛糸で編み上げられた可愛らしいコートを身に付け、片手には道を照らすためのランタンを持っている。
二人の旅人を見る少女の青い瞳は、不思議そうではあったが、恐怖や不信感は感じられない。
柔らかい雰囲気をまとうジェネラルだけならともかく、甲冑を身に付けた厳つい奴がいるのに、少女は恐れることもなく二人に近づいてくる。
そして、出来るだけ上にランタンを掲げ二人を照らすと、もう一度口を開いた。
「ねえねえ、どうしたの? おにいちゃんたち、道に迷ったの?」
「うっ、うん……。そうなんだけど……」
「あなたこの辺に住んでいるの? センシングの町に行きたいのだけれど、どっちに行ったらいいか分かる? それか誰か大人の人、いないかしら?」
恥ずかしそうに返事するジェネラルとは違い、元凶であるミディは堂々と少女に道を問うた。
恥を恥と思わない、相変わらずな性格である。
ミディの言葉を理解しようと、少女は少し首を傾げた。
えーと、と一生懸命小さな額に皺を寄せ考えていたが、みるみるうちに表情が明るいものへと変わった。
「ならうちにきて! 今日ね、家にとまっていって! ね?ね?」
「でも、お家の方は? 勝手に行っていいの?」
「いいよいいよ! ね?ね? とまってって!」
あぶなっかしい様子で片手にランタンを持ちながら、少女はミディの手を引いた。
そしてミディの手を離しジェネラルの手を取ると、彼にも同じ言葉を口にする。
自分の家に泊まっていけばいいと誘う少女を見、ジェネラルとミディは顔を見合わせた。
「どうする?」
「……まあ、取りあえず一緒に行きましょうか。この子の家にご両親がいれば、道の事を聞けそうだし」
少女に聞こえないように、ミディとジェネラルは言葉を交わす。
泊まる泊まらないは別として、とにかく今は大人に会って道を尋ねることを優先し、少女の誘いにのることにした。
ミディの決定に、ジェネラルも迷いなく頷く。
「ありがとう。じゃああなたのおうちに案内してくれる?」
「来てくれるの!? ほんと? やったあ~!」
ミディの言葉に、少女は嬉しそうにその場で飛び上がった。
その手から落ちたランタンを、ジェネラルが必死になって受け止めたのに、少女は全く気がつかなかった。
こうして二人は少女に案内され、少女の家へと向かったのである。
そろそろ追手の心配も少なくなってきた頃、ようやく舗装された道に合流すると、旅もスムーズに進んだ。
……はずだった。
「あれ? おかしいわね……」
地図を手に、ミディは困ったように呟いた。周りを見回しながら、再び地図に視線を戻す。
特に目立って複雑な道をしているわけではないのだが、地図と周囲を繰り返し見る彼女の表情は困惑以外にも時折不安が見え隠れする。
ここは、マージとセンシングの途中にある森。
地図を見る限り森と言ってもそれ程広さはなく、猛獣などもいないので比較的安全とされている場所だ。
普段からもたくさんの人々が、マージとセンシングの移動に利用している。
地図で見てもほぼ一本道で、よっぽどのことがない限り迷う事はないはずなのだが……。
「うーん……、一体どこで間違ったのかしら?」
「何、ミディ? 道に迷ったの?」
先ほどから何度も視線が、周りと地図の上を行き来しているミディを見、ジェネラルも横から地図を覗き込んだ。
しかしプロトコルの地形についてほとんど知識のない彼が見ても、現在どこにいるかすら分からない為、全く役に立っていない。
しばらく横から地図を見ていたジェネラルだが地図を見る事を諦め、ほら見たことかと今度はミディを見た。
「ほら、だから言ったじゃないか。さっき人に聞こうって」
地図を見ても、どこにいるのかすら分からないくせに、一丁前に文句だけは言ってくるジェネラル。一緒に行動してイラつかせられるのは、こういうタイプだ。
正直、何も役に立っていない少年に文句を言われ、腹立たしいはずのミディではあるが、今は正しい道を探す事とほぼ一本道なのに迷ってしまった恥ずかしさから、怒りまで感じていないようだ。
「だっ、大丈夫よ! この道はほぼ一本道なのだから、すぐに着くわ!」
「ってその言葉、ちょっと前も聞いたんだけど……」
「…………」
「それにさ、ほぼ一本道で迷うなんて、ミディって実は方向おん……」
「さあ、行くわよ! さっさと行くわよ!! ジェネ、ついて来なさい!!」
彼の言葉を遮り、ミディはさっさと歩き出した。彼の声が聞こえないように、足音を大きくたてて進んでいく。
“まあ、女性は地図を読むのが苦手って、お婆様が言ってたっけ。お婆様も方向音痴だったから、よく迷ってたなあ”
ジェネラルは呆れたようにため息をつくと、仕方なくミディの背中を追った。
こうしてしばらく歩き続けた二人だったが、やがて影が長くなり太陽が傾き始めた。
しかし、一向に道の出口は見えてこない。
進めば進むほど木の密集率が高くなり、道の幅も狭まってきているようだ。
ミディは相変わらず、地図と周囲を見回しながら、ブツブツと何かを言いながら歩いている。
人に聞こうにも、時間帯のせいなのか全く周囲に人影が見られない。
“あ~あ……、この調子だと今日は野宿かなあ……”
だんだん闇に溶け込んでいく自分の影を見ながら、ジェネラルが心の中でぼやいた時、
「ねえ、どうしたの?」
幼く舌足らずな少女の声に、二人は足を止めた。
目の前には、5歳ぐらいと思われる幼い少女の姿があった。
無造作に切られた肩までの茶色い髪に、ちょこんと小さな白いリボンがついているのが愛らしい。
少し肌寒い為、毛糸で編み上げられた可愛らしいコートを身に付け、片手には道を照らすためのランタンを持っている。
二人の旅人を見る少女の青い瞳は、不思議そうではあったが、恐怖や不信感は感じられない。
柔らかい雰囲気をまとうジェネラルだけならともかく、甲冑を身に付けた厳つい奴がいるのに、少女は恐れることもなく二人に近づいてくる。
そして、出来るだけ上にランタンを掲げ二人を照らすと、もう一度口を開いた。
「ねえねえ、どうしたの? おにいちゃんたち、道に迷ったの?」
「うっ、うん……。そうなんだけど……」
「あなたこの辺に住んでいるの? センシングの町に行きたいのだけれど、どっちに行ったらいいか分かる? それか誰か大人の人、いないかしら?」
恥ずかしそうに返事するジェネラルとは違い、元凶であるミディは堂々と少女に道を問うた。
恥を恥と思わない、相変わらずな性格である。
ミディの言葉を理解しようと、少女は少し首を傾げた。
えーと、と一生懸命小さな額に皺を寄せ考えていたが、みるみるうちに表情が明るいものへと変わった。
「ならうちにきて! 今日ね、家にとまっていって! ね?ね?」
「でも、お家の方は? 勝手に行っていいの?」
「いいよいいよ! ね?ね? とまってって!」
あぶなっかしい様子で片手にランタンを持ちながら、少女はミディの手を引いた。
そしてミディの手を離しジェネラルの手を取ると、彼にも同じ言葉を口にする。
自分の家に泊まっていけばいいと誘う少女を見、ジェネラルとミディは顔を見合わせた。
「どうする?」
「……まあ、取りあえず一緒に行きましょうか。この子の家にご両親がいれば、道の事を聞けそうだし」
少女に聞こえないように、ミディとジェネラルは言葉を交わす。
泊まる泊まらないは別として、とにかく今は大人に会って道を尋ねることを優先し、少女の誘いにのることにした。
ミディの決定に、ジェネラルも迷いなく頷く。
「ありがとう。じゃああなたのおうちに案内してくれる?」
「来てくれるの!? ほんと? やったあ~!」
ミディの言葉に、少女は嬉しそうにその場で飛び上がった。
その手から落ちたランタンを、ジェネラルが必死になって受け止めたのに、少女は全く気がつかなかった。
こうして二人は少女に案内され、少女の家へと向かったのである。
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