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第一話
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サヨ・レイナードは、マイリン村の外れでひっそりと一人で暮らしていた。
艶やかな長い髪が揺らしながら出てきた彼女の細い腕には、大きな籠を抱えられている。
彼女は、薬草師だ。
近くの森や山などに出向いては、様々な効果のある薬草を集め、煎じ、マイリン村の人々が必要とした時に提供することを生業としていた。
冬がすぐ傍まで来ているため、今日も空はグレー色の雲で彩られている。肌を刺すような冷たさに、サヨは身をぶるっと震わせた。
遠くに視線を向けると、隣国の通り道となっているガリア山が白くなっているのが見えた。あちらではもう雪が大量に降り積もり、春まで通行止めになっているだろう。
(今年の寒波は、いつもよりも早かったですからね。早めに冬支度しておいて良かったです。この調子だと、この村が雪に閉ざされるのも、もうすぐでしょうね)
村が雪に閉ざされてしまれば、易々と外に出ることは出来ない。近所に行くぐらいなら問題ないが、今みたいに、薬草を採りに森に行くことは春までお休みになる。
吐き出す白い息を見つめながら、自分の判断の適切さに、心の中で胸を張った。
必要な道具が入った鞄を肩から斜めにかけ、籠を背中に背負うと、サヨは薬草を求めて森に足を踏み入れようとした。が、
「きゃぁっ‼」
ドテンッ!
何かに足を取られ、サヨは転んでしまった。
「ううっ……いたい……一体何なんでしょう?」
ジンジンと熱をもつ傷をさすりながら足下に視線を向けると、そこにいたのは、
「うっ……」
サヨの足に引っかけられ、呻き声をあげる金髪の男がうつ伏せで倒れていた。
それを見た瞬間、サヨはくっきり二重の瞳を見開くと、慌てて駆け寄り、彼の肩を強めに揺さぶった。自分が足をとられて転んだということは、この男性は元々倒れていたということになるからだ。
「大丈夫ですか⁉」
呼びかけに、男は少しだけ顔を上げて反応を見せた。
汚れていながらも整った容姿が、チラリと姿を見せる。切れ長の青い瞳がうっすら開かれた、かと思ったが、すぐさま力なく突っ伏してしまった。
もうサヨが何度揺さぶっても、何の反応を示さない。息はしているので、とりあえず生きてはいるようだ。
サヨの顔を見て、ホッとして気絶してしまったのだろう。
(このままこの人をそのままにしておくわけには、いかないのです! と、とりあえず、家に連れて帰りましょう!)
今まで女一人で生きてきたサヨなので、それなりに腕力にも自信があった。が、気絶した男の身体は大きく、村の男たちみたいに日々の生活で培った筋肉とは、明らかに違う鍛えられ方をしていた。
想像以上に重く、サヨは半分涙目になりながらも、引きずる形で何とか家に連れ帰った。
艶やかな長い髪が揺らしながら出てきた彼女の細い腕には、大きな籠を抱えられている。
彼女は、薬草師だ。
近くの森や山などに出向いては、様々な効果のある薬草を集め、煎じ、マイリン村の人々が必要とした時に提供することを生業としていた。
冬がすぐ傍まで来ているため、今日も空はグレー色の雲で彩られている。肌を刺すような冷たさに、サヨは身をぶるっと震わせた。
遠くに視線を向けると、隣国の通り道となっているガリア山が白くなっているのが見えた。あちらではもう雪が大量に降り積もり、春まで通行止めになっているだろう。
(今年の寒波は、いつもよりも早かったですからね。早めに冬支度しておいて良かったです。この調子だと、この村が雪に閉ざされるのも、もうすぐでしょうね)
村が雪に閉ざされてしまれば、易々と外に出ることは出来ない。近所に行くぐらいなら問題ないが、今みたいに、薬草を採りに森に行くことは春までお休みになる。
吐き出す白い息を見つめながら、自分の判断の適切さに、心の中で胸を張った。
必要な道具が入った鞄を肩から斜めにかけ、籠を背中に背負うと、サヨは薬草を求めて森に足を踏み入れようとした。が、
「きゃぁっ‼」
ドテンッ!
何かに足を取られ、サヨは転んでしまった。
「ううっ……いたい……一体何なんでしょう?」
ジンジンと熱をもつ傷をさすりながら足下に視線を向けると、そこにいたのは、
「うっ……」
サヨの足に引っかけられ、呻き声をあげる金髪の男がうつ伏せで倒れていた。
それを見た瞬間、サヨはくっきり二重の瞳を見開くと、慌てて駆け寄り、彼の肩を強めに揺さぶった。自分が足をとられて転んだということは、この男性は元々倒れていたということになるからだ。
「大丈夫ですか⁉」
呼びかけに、男は少しだけ顔を上げて反応を見せた。
汚れていながらも整った容姿が、チラリと姿を見せる。切れ長の青い瞳がうっすら開かれた、かと思ったが、すぐさま力なく突っ伏してしまった。
もうサヨが何度揺さぶっても、何の反応を示さない。息はしているので、とりあえず生きてはいるようだ。
サヨの顔を見て、ホッとして気絶してしまったのだろう。
(このままこの人をそのままにしておくわけには、いかないのです! と、とりあえず、家に連れて帰りましょう!)
今まで女一人で生きてきたサヨなので、それなりに腕力にも自信があった。が、気絶した男の身体は大きく、村の男たちみたいに日々の生活で培った筋肉とは、明らかに違う鍛えられ方をしていた。
想像以上に重く、サヨは半分涙目になりながらも、引きずる形で何とか家に連れ帰った。
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