177 / 192
番外編:目覚めたら親友の娘が隣で寝てて責任とれとぐいぐい迫ってくるんだが
第19話 俺の……せいなのか?
しおりを挟む
「……え?」
いない?
あまりにも端的な回答過ぎて、意味が分からなかった。
口をぽかんと開けたままな俺を一瞥すると、シオンは足元に転がっている手ごろな大きさの石を拾いそいつを川に向かって投げた。
「ステラは家を出た。もうレグロット村には、いや、マーレ王国にもいない。今はメロディアにいる」
メロディアって言ったら、隣国のメロディア王国のことか。
マーレ王国よりは小さな島国だけど、国全体の生活水準も高く治安もいいから、学問を学ぶには最適な国とされている。
確か今兄貴が、あの国で小さな研究をしていたっけな。
(でも、ステラとメロディア国に何の繋がりが……)
たった14歳の少女が行くには、あまりにも遠い場所だ。
シオンの話によるとこうだった。
ステラは以前から、ヘイドリック家の店の手伝いもしていた。
彼女の母親が、自身が過去命を救われ、今でも崇拝しているリベラ様だと知っているヘイドリックは、このままレグロット村で一生を終えるのはもったいなさ過ぎると、メロディア王国への留学をシオンたちに勧めていたのだという。
ついでにメロディア国に出店している自分とこの店で働けば、さらに勉強になるだろうと。
「ステラは断っていたんだ。今思えば……お前がいたからだろうな。だがあの一件後、ステラはメロディア国で学ぶことを決め、ヘイドリック家と勝手に話をつけたんだ。そして、一週間後には村を出て行った」
「そ、そんな……急すぎないか?」
俺の……せいなのか?
俺がステラを突き放したからそのショックで、住み慣れた村を、国を出たのか?
そうとしか考えられなかった。
(もう少し俺が冷静さを保って話が出来ていれば……ノリスの言う通り、距離をとるにしてももう少し上手くやれば……)
賑やかなステラのいないスターシャ家は、それはそれは寂しくなっているだろう。
ロゼもセシリオもエミリアもマリーも、皆お姉ちゃんが大好きだから。
スターシャ家の平穏な生活を壊したのは――
「何を落ち込んでいる、ディディス。まさかステラが家を出たのが、お前に振られたショックから来てるとでも思っているのか?」
「え? ち、違うのか?」
「お前、いつも他人の気持ちが分かると豪語してるくせに、ステラの事は本当に分かってないんだな」
俺の慌てぶりを見て、シオンがふふんっと鼻で笑った。娘を自慢する時の、いつものやつだ。
顔を上げると、シオンの自信に満ちた顔があった。唇の端が、ニヤリと上がっている。
「ステラは、お前に認められるためにメロディア国に行ったんだ」
「俺の……為に?」
「あの子を見くびるなよ、ディディス。ステラは、俺と……お師匠様との娘だ」
その言葉に、何も言えなくなった。
代わりに、腹の底から笑いがこみ上げてきた。
「……ははっ……確かに……な」
「まあそうはいっても、もしステラが俺に似てたら、お前なんて当の昔に諦めてるだろうからな。それを思えばきっと、リベラに似たんだろうな。……リベラもあれくらい、素直に俺に愛情を見せて下さったらいいのに……」
「……そこは同意しないぞ。どう考えても、ステラちゃんの性格はお前の血だろ」
相変わらず、自分を客観視出来ないやつだな。
コンっと瓶が石に当たった音がした。シオンが飲み終えたワインの瓶を地面に立てたのだ。
ゆらゆら揺れるランタンの光が、あいつの不機嫌そうな表情を映し出す。
「俺だって、何でお前なんだと思う。ステラに悪い虫がつかないように気を配っていたはずなのに、こんなところにデッカイ虫がいたとは思わなかったぞ、ディディス」
「虫とはなんだ、虫とは!」
「本当のことだろ」
うむむ……。
悪い虫のつもりはないけど、娘の心を奪っていったという意味では同じようなものなんだろうか。
ただ、以前と同じような言い合いがコイツと出来るのが、少し嬉しかった。
いない?
あまりにも端的な回答過ぎて、意味が分からなかった。
口をぽかんと開けたままな俺を一瞥すると、シオンは足元に転がっている手ごろな大きさの石を拾いそいつを川に向かって投げた。
「ステラは家を出た。もうレグロット村には、いや、マーレ王国にもいない。今はメロディアにいる」
メロディアって言ったら、隣国のメロディア王国のことか。
マーレ王国よりは小さな島国だけど、国全体の生活水準も高く治安もいいから、学問を学ぶには最適な国とされている。
確か今兄貴が、あの国で小さな研究をしていたっけな。
(でも、ステラとメロディア国に何の繋がりが……)
たった14歳の少女が行くには、あまりにも遠い場所だ。
シオンの話によるとこうだった。
ステラは以前から、ヘイドリック家の店の手伝いもしていた。
彼女の母親が、自身が過去命を救われ、今でも崇拝しているリベラ様だと知っているヘイドリックは、このままレグロット村で一生を終えるのはもったいなさ過ぎると、メロディア王国への留学をシオンたちに勧めていたのだという。
ついでにメロディア国に出店している自分とこの店で働けば、さらに勉強になるだろうと。
「ステラは断っていたんだ。今思えば……お前がいたからだろうな。だがあの一件後、ステラはメロディア国で学ぶことを決め、ヘイドリック家と勝手に話をつけたんだ。そして、一週間後には村を出て行った」
「そ、そんな……急すぎないか?」
俺の……せいなのか?
俺がステラを突き放したからそのショックで、住み慣れた村を、国を出たのか?
そうとしか考えられなかった。
(もう少し俺が冷静さを保って話が出来ていれば……ノリスの言う通り、距離をとるにしてももう少し上手くやれば……)
賑やかなステラのいないスターシャ家は、それはそれは寂しくなっているだろう。
ロゼもセシリオもエミリアもマリーも、皆お姉ちゃんが大好きだから。
スターシャ家の平穏な生活を壊したのは――
「何を落ち込んでいる、ディディス。まさかステラが家を出たのが、お前に振られたショックから来てるとでも思っているのか?」
「え? ち、違うのか?」
「お前、いつも他人の気持ちが分かると豪語してるくせに、ステラの事は本当に分かってないんだな」
俺の慌てぶりを見て、シオンがふふんっと鼻で笑った。娘を自慢する時の、いつものやつだ。
顔を上げると、シオンの自信に満ちた顔があった。唇の端が、ニヤリと上がっている。
「ステラは、お前に認められるためにメロディア国に行ったんだ」
「俺の……為に?」
「あの子を見くびるなよ、ディディス。ステラは、俺と……お師匠様との娘だ」
その言葉に、何も言えなくなった。
代わりに、腹の底から笑いがこみ上げてきた。
「……ははっ……確かに……な」
「まあそうはいっても、もしステラが俺に似てたら、お前なんて当の昔に諦めてるだろうからな。それを思えばきっと、リベラに似たんだろうな。……リベラもあれくらい、素直に俺に愛情を見せて下さったらいいのに……」
「……そこは同意しないぞ。どう考えても、ステラちゃんの性格はお前の血だろ」
相変わらず、自分を客観視出来ないやつだな。
コンっと瓶が石に当たった音がした。シオンが飲み終えたワインの瓶を地面に立てたのだ。
ゆらゆら揺れるランタンの光が、あいつの不機嫌そうな表情を映し出す。
「俺だって、何でお前なんだと思う。ステラに悪い虫がつかないように気を配っていたはずなのに、こんなところにデッカイ虫がいたとは思わなかったぞ、ディディス」
「虫とはなんだ、虫とは!」
「本当のことだろ」
うむむ……。
悪い虫のつもりはないけど、娘の心を奪っていったという意味では同じようなものなんだろうか。
ただ、以前と同じような言い合いがコイツと出来るのが、少し嬉しかった。
0
お気に入りに追加
563
あなたにおすすめの小説
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
人形な美貌の王女様はイケメン騎士団長の花嫁になりたい
青空一夏
恋愛
美貌の王女は騎士団長のハミルトンにずっと恋をしていた。
ところが、父王から60歳を超える皇帝のもとに嫁がされた。
嫁がなければ戦争になると言われたミレはハミルトンに帰ってきたら妻にしてほしいと頼むのだった。
王女がハミルトンのところにもどるためにたてた作戦とは‥‥
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる