156 / 192
番外編:あなたとチョコレートの香り
あなたとチョコレートの香り④*
しおりを挟む
♡♥♡
シオンの腕が、私の両足を捉える。
身体に一枚残った下着という名の布も取り払われ、下腹部がすっごくスースーする。
でも彼にイかされて全身の力が抜けている今、何をされても抵抗する気力も余裕もない。
心が拒むのを望んでないことも……知ってる。
布ずれの音がしたかと思うと、服が床に落ちた。
シオンが残りの服を脱いだんだろう。
初めに彼が、私の下着を脱がせた意味が今なら分かる。
身体につけられたチョコレートで、お互いの服が汚れないようにしたんだ。
チョコレート菓子を作ったとき、お湯を使わないと中々汚れが落ちなかったもんね。あれが服についたら、確かに洗濯がめんどくさそう。
……って、いやいやいやいや!
洗濯以前に、そもそもシオンが、あんな非常識な形でチョコレートを食べなければ良かったんじゃないのかな!
しかし私の思考は、熱を帯びた彼自身が秘所に当たったことで、途切れてしまった。それは、ナカに入りやすくするために、私から湧き出るもので、ぬるぬると秘部の表面を擦り付けている。
それだけなのに、下腹部にゾクゾクとした興奮が溜まっていく。お腹の奥が苦しくなって、何かを待ち焦がれるように苦しいほど疼きだす。
さっきイったばかりなのに、もう次が欲しくて堪らなくなってる自分が、自分じゃないみたい。
理性を押しのけ、欲望に塗れた醜い自分が現れるのが、今でも怖い。
「リベラ……」
シオンが名前を呼ぶ。
もうすっかり名前呼びも慣れたと思ってたけど、優しく、でも求められるように呼ばれると、今でも堪らなく恥ずかしくなる。
顔が勝手に熱くなって、こちらを覗き込む彼から、思わず視線を外してしまう。
だけど、
「んくっ……」
唇を塞がれる形で、強制的に向き合わされてしまった。
でもこっちだって、やられっぱなしなわけじゃない。侵入してきたものを押し返すと、逆に彼の口内を探った。
(……甘い)
シオンの中に残るチョコレートと香りと甘さが、さらに気持ちを加速させる。もっと欲しくて、彼の首に腕を巻きつける形で抱きしめると、夢中になって舌を伸ばし、口の中に残る卑猥な甘さを求めてかき回す。
唾液の混じる音が脳内に響いて、何も考えられなくなる。
その時、
「ひ、んぁああっ!」
何の合図もなく、無理やりナカが開かれる鈍い圧迫感が襲った。
身体の芯を疼かせる欲望が解放され、全身が喜びに打ち震えている。ヒクつかせながら彼自身を迎えるナカの様子を代弁するかのように、喉の奥から自分のものじゃない甘ったるい声色が飛び出す。
この瞬間にいつも……堕とされる。
理性を打ち壊され、彼を求めることしか出来なくなる、醜い自分に。
自分が自分じゃなくなるのが、いつも怖い。
怖くて、嫌で、恥ずかしくて、それなの気持ちよくて、嬉しくて、幸せで、相反する気持ちでいつも心をぐちゃぐちゃにされてしまう。
常識も良心も全部が溶かされて、あなたしか見えなくなって……。
「今日は……いつにも増して凄い……。んっ、気持ち良すぎます……」
快楽を告げる低い声に、耳の奥が蕩けていく。
誘うように腰を揺らすと、奥に激しく欲望を突き立てられた。息が止まり、目の奥がチカチカと揺らぐ。
「可愛い……ほんと、可愛い、リベラ……。ほら、ちゃんと俺を見て……」
興奮で目を見開くシオンの紅潮した顔が、こちらを覗き込んだ。あまりにも真っ直ぐな視線に耐えきれず、恥ずかしさで顔を背けてしまう。
「んっ、そんな見ないで……ぁあっ!」
「俺を見てって言いましたよね?」
強い口調とともに、お仕置きのような激しい突き上げが襲った。強く打ち付けられ、お腹の中が揺さぶられる。
また身体の芯に溜まった熱が、膨らんでいく。
これが弾けたらまた……。
片胸の先から、鋭く差し込むような刺激が走った。
「いぁっ! しおん……一緒は、だ……めっ! ああっ!」
それがきっかけとなって、下腹部の欲望が弾け飛び、頭の中が真っ白になった。
「ふふ、またイきましたね? ナカ、苦しいくらい痙攣してますよ?」
恥ずかしすぎて何も言えない。
それを知ってて、シオンはわざと意地悪なことを言ってくる。
普段なら意地悪だと腹をたてる行為だけど、今の私は……。
ナカが彼自身を締め付ける。
まるで別の意思を持ったかのように、もっと欲しいと包み込む。
ああっ、と小さくシオンが呻いた。
気持ち良さに耐えているあなたの表情が……堪らなく好き。
「あ、あぁっ、ん、し、しおん、気持ちいい……気持ちいいの……」
「俺も……ナカがヌルヌルと擦れて、ん、凄くいい……。あなたがこんなに淫らになるなんて……思いませんでしたよ」
違う。
違うの……。
でも言葉にならなくて、代わりに首を横に振る。
「シオンだから……シオンのことが大好きだから……」
「だから、こんな風になったんですか? そんな嬉しいこと言われたら、もう我慢できなくなるじゃないですか」
「が、我慢しないで……んっ、もっとして?」
「……あなたのせいですからね? 俺、悪くないですから」
感情を無理矢理隠すような、冷然とした声。
でも、冷静さを装う陰に、隠しきれないほどの情欲が見えた。
次の瞬間、
「あああっ、あ、ああっ!」
喉の奥から声の塊がほとばしった。
彼の両腕を爪を立てるくらい強く掴み、快楽の本流に流されないように耐えようとするけど、無駄な抵抗だって分かってる。
彼の動きが、今まで以上に激しくなった。
胸を弄ぶ指にも腰を振る動きにも容赦がなくなり、自身の欲望をこの身体にぶつけてくる。
奥の壁を打ち付けられ、女としての本能的な悦びに狂わされる。荒々しく求められると、苦しいはずなのにそれ以上の気持ち良さで、頭がおかしくなる。
「もっと……ぁ、もっとおくに……」
朦朧とする意識の中、獣のような本能に操られるように、普段なら決して口にすることのない恥ずかしいおねだりをしてしまう。
快楽を貪り動き続けるあなたの口角が、微かに上がった。
両足が胸につくほど曲げられ、下半身が浮く程持ち上げられてしまう。思いっきり大切な部分を晒す格好にされたのに、羞恥を感じる前に、上から重く押し込まれた熱杭に奥を貫かれてどうでもよくなる。
そして始まる、深くて重い律動。
「ん、いぁあっ、し、しおんっ、しおんっ! またっ……あぁっ!」
身体が悶え、奥の熱が弾けた。全身に絶頂の波が回る。
でも肉欲から解放された余韻を味わう暇もなく、次の高みへと導かれるように激しい突き上げは止まらない。
小さく丸まったような体勢の私を、シオンが上から抱きしめた。舌と一緒に、互いの乱れた呼吸も絡み合う。
快楽に翻弄された余裕のないあなたの動きが、嬉しくて堪らない。
大好きな人が、一緒に気持ち良くなってくれているから……。
そして、
「もう……限界……」
唇を解き、私の首筋に顔を埋めたシオンの、切なそうな声が響いた。
その言葉に呼号するように、最後に向けて腰使いが大きくなっていく。
必死でシオンの身体に腕を回し、激しさから振り落とされないようにしがみつく。ぎゅっと力を込めるとナカも一緒に締まったのか、彼の呼吸が一瞬止まり、
「くっ……イクっ……」
吐息と共に、ナカを狂わせていたモノが膨らみ、熱い欲を吐き出した。それはドクンと脈打ちながら、奥を白く染めていく。彼の吐き出したものを全て搾り取ろうとするかのように、ナカが蠢き貪欲に絡みつく。
全てを吐き出し終えると、シオンの身体から力が抜けた。私の首筋に顔を埋めたまま、荒い呼吸を繰り返す。
「リベラ……あなたが好きだ……あなただけをずっと……ずっとずっと……」
熱に浮かされたように、私への想いを呟くシオンの頭をそっと撫でる。
彼の言葉を聴きながら、先ほどの絶頂とナカを満たされた悦びとともに、フワフワとした幸福の余韻を味わっていた。
♡♥♡
はー。
解放感に溢れた俺の呼吸が、浴室に響いた。
が、その近くで、ぶくぶくぶくぶく、と泡が発生する音がする。
「あのぉー……泡吐き出すの、そろそろ止めませんか?」
ぶくぶくぶくぶく……。
あ、また沈んだ。
俺たちは、風呂に入っていた。
さすがに、あなたの身体を俺の唾液塗れのまま眠らせるわけにはいかなかったからだ。
もちろんそれらも考慮した上で、全てが終わった頃にはいい温度になっているよう、熱めのお湯を事前に用意していたのだ。
視線の先には、身体を丸めて顔半分を湯に沈めながら、ぶくぶくと空気を吐き出しているあなたの姿があった。さっきからずっとこの調子で、気泡発生器と化している。
明らかにこれは……、
「拗ねているんですか? あれですか? あの後、さらに2回したのがダメでしたか?」
ぶくぶくぶくぶくっ‼
物凄い勢いで、気泡が大量発生した。
そして、
「ぷっはっ‼ ごほっ……ごほごほっ!」
激しくせき込みながら、あなたがこちらを振り向いた。
例のごとく頬を膨らませながら、まるで悪人を前にしたかのように俺を睨みつけている。
「そっ、それもあるけどっ‼」
それもあるのか。
……なるほど。
2回程度じゃ足りなかったんですね?
それは非常に、非常に! 申し訳ないです。
「で、他にも理由があるんですか?」
「あるけど……言わないっ!」
ぷいっと俺に背を向けた時、あなたがボソっと、一体どうしてくれるのよ、と呟くのが聞こえた。まあその一言だけでは、結局何が悪かったのか分からずじまいなのだが。
(でも……まあいいか)
背中を丸めて、またぶくぶくし始めたあなたの身体を後ろから抱きしめると、そのままこちらに引き寄せた。
あなたが本気で怒っていないのは、分かっている。
怒っていない証拠に、ほら。
今もこうやって、俺にされるがままになっているから。
きっと冷静になって先ほどの情事を思い出し、恥ずかしくて自己嫌悪に陥っているのだろう。
あれだ。
賢者タイムってやつだ。
(全く……さっきまで俺の下で、あんなに淫らに喘いでいたのに……)
拗ねる背中を見つめながら、小さく笑う。
普段の姿と、ベッドの上の姿のギャップが堪らない。
湯に濡れた肩に唇を寄せていると、あなたの手が俺の腕をぎゅっと抱きしめながら呟かれた。
「それにしても……シオンがあんなことする変態だったとは……」
「ははっ、ありがとうございますっ!」
「褒めてないからねっ‼ 何一つ、褒めてないからねっ‼」
そう言って、あなたの手が俺の頬をぺちっと叩いた。
もちろん、本気じゃないから全く痛くない。
まあ、あの程度で変態だって言われても困るんですけどね、こっちは。
でもそれは、また今度のお楽しみだ。
柔らかな肉感と、薬湯と混じり合う甘い香りを感じながら、あなたの身体を強く抱きしめた。
♡♥♡
はぁ……
私は大きなため息をついた。
後ろから大きな腕で抱きしめられていると、先ほどの光景が嫌という程思い出される。
(これから一体どういう顔してチョコレートを食べればいいのよっ‼)
シオンから貰った超高級チョコレートは、まだ残っている。
だけど、あれを見たらどうしてもさっきの行為が思い出されて、恥ずかしさで一杯になる。
シオンのせいで、『チョコレート=卑猥』って頭の中で紐づけられちゃったよ‼
もう、チョコレートを直視出来ないよっ‼
一体どうしてくれるのよっ‼
でもこれをシオンに話したら最後。
きっと、
「そうやって俺とのことを思い出してくれるなら、毎日チョコレートを用意しますね?」
とか言って、本当に実行する恐れもある。
変態って言ったら、大喜びする変態さんだもんなぁ……。
だから、絶対に秘密だ。
そんな私の苦悩なんて知らないシオンが、横から顔をのぞき込んできた。
「でも、こんなことをするのも、したいと思うのも、あなただけですからね?」
「あ、当たり前ですっ‼ ……あ」
咄嗟に出してしまった本音を隠すように、口を塞いだ。
わわっ!
こ、こんなこと言ったら、まるで私にはあんなことをしてもOKみたいにとられるじゃない!
けど、もちろん手遅れ。
一度口にした言葉を、取り消すことは出来ないわけで……。
恐る恐る振り向くと、シオンが瞳を細めてこちらを見ていた。
一点の曇りもない愛情に満ちた優しい視線を向けられると、心の奥が不覚にもキュンっと締め付けられる。
もう色んなことをひっくるめて、
(……大好き)
そんな言葉が浮かんで、胸いっぱいになってしまう。
諦めてシオンと向かい合う体勢になると、正面から彼の身体を抱きしめた。
湯気か汗か分からない水滴を感じながら、少しお湯がはねただけで消えてしまいそうなくらいの小さな声で囁く。
「……他の人にそんなこと思っちゃ……駄目だからね?」
「もちろんです。今までもこれからも、あなただけですよ」
小さく笑いながらシオンが答えた。
視線が絡まると、お互いの唇が重なった。
重なりあったあなたの唇から、微かにチョコレートの香りがした。
<完>
この話はここまでです♪
ifの話にはなりますが、きっと本編終了後の二人は、こんな感じで毎日を過ごしているんじゃないかと思ってます♪
番外編にも拘らず、ここまでお読みいただきありがとうございました(*´▽`*)
シオンの腕が、私の両足を捉える。
身体に一枚残った下着という名の布も取り払われ、下腹部がすっごくスースーする。
でも彼にイかされて全身の力が抜けている今、何をされても抵抗する気力も余裕もない。
心が拒むのを望んでないことも……知ってる。
布ずれの音がしたかと思うと、服が床に落ちた。
シオンが残りの服を脱いだんだろう。
初めに彼が、私の下着を脱がせた意味が今なら分かる。
身体につけられたチョコレートで、お互いの服が汚れないようにしたんだ。
チョコレート菓子を作ったとき、お湯を使わないと中々汚れが落ちなかったもんね。あれが服についたら、確かに洗濯がめんどくさそう。
……って、いやいやいやいや!
洗濯以前に、そもそもシオンが、あんな非常識な形でチョコレートを食べなければ良かったんじゃないのかな!
しかし私の思考は、熱を帯びた彼自身が秘所に当たったことで、途切れてしまった。それは、ナカに入りやすくするために、私から湧き出るもので、ぬるぬると秘部の表面を擦り付けている。
それだけなのに、下腹部にゾクゾクとした興奮が溜まっていく。お腹の奥が苦しくなって、何かを待ち焦がれるように苦しいほど疼きだす。
さっきイったばかりなのに、もう次が欲しくて堪らなくなってる自分が、自分じゃないみたい。
理性を押しのけ、欲望に塗れた醜い自分が現れるのが、今でも怖い。
「リベラ……」
シオンが名前を呼ぶ。
もうすっかり名前呼びも慣れたと思ってたけど、優しく、でも求められるように呼ばれると、今でも堪らなく恥ずかしくなる。
顔が勝手に熱くなって、こちらを覗き込む彼から、思わず視線を外してしまう。
だけど、
「んくっ……」
唇を塞がれる形で、強制的に向き合わされてしまった。
でもこっちだって、やられっぱなしなわけじゃない。侵入してきたものを押し返すと、逆に彼の口内を探った。
(……甘い)
シオンの中に残るチョコレートと香りと甘さが、さらに気持ちを加速させる。もっと欲しくて、彼の首に腕を巻きつける形で抱きしめると、夢中になって舌を伸ばし、口の中に残る卑猥な甘さを求めてかき回す。
唾液の混じる音が脳内に響いて、何も考えられなくなる。
その時、
「ひ、んぁああっ!」
何の合図もなく、無理やりナカが開かれる鈍い圧迫感が襲った。
身体の芯を疼かせる欲望が解放され、全身が喜びに打ち震えている。ヒクつかせながら彼自身を迎えるナカの様子を代弁するかのように、喉の奥から自分のものじゃない甘ったるい声色が飛び出す。
この瞬間にいつも……堕とされる。
理性を打ち壊され、彼を求めることしか出来なくなる、醜い自分に。
自分が自分じゃなくなるのが、いつも怖い。
怖くて、嫌で、恥ずかしくて、それなの気持ちよくて、嬉しくて、幸せで、相反する気持ちでいつも心をぐちゃぐちゃにされてしまう。
常識も良心も全部が溶かされて、あなたしか見えなくなって……。
「今日は……いつにも増して凄い……。んっ、気持ち良すぎます……」
快楽を告げる低い声に、耳の奥が蕩けていく。
誘うように腰を揺らすと、奥に激しく欲望を突き立てられた。息が止まり、目の奥がチカチカと揺らぐ。
「可愛い……ほんと、可愛い、リベラ……。ほら、ちゃんと俺を見て……」
興奮で目を見開くシオンの紅潮した顔が、こちらを覗き込んだ。あまりにも真っ直ぐな視線に耐えきれず、恥ずかしさで顔を背けてしまう。
「んっ、そんな見ないで……ぁあっ!」
「俺を見てって言いましたよね?」
強い口調とともに、お仕置きのような激しい突き上げが襲った。強く打ち付けられ、お腹の中が揺さぶられる。
また身体の芯に溜まった熱が、膨らんでいく。
これが弾けたらまた……。
片胸の先から、鋭く差し込むような刺激が走った。
「いぁっ! しおん……一緒は、だ……めっ! ああっ!」
それがきっかけとなって、下腹部の欲望が弾け飛び、頭の中が真っ白になった。
「ふふ、またイきましたね? ナカ、苦しいくらい痙攣してますよ?」
恥ずかしすぎて何も言えない。
それを知ってて、シオンはわざと意地悪なことを言ってくる。
普段なら意地悪だと腹をたてる行為だけど、今の私は……。
ナカが彼自身を締め付ける。
まるで別の意思を持ったかのように、もっと欲しいと包み込む。
ああっ、と小さくシオンが呻いた。
気持ち良さに耐えているあなたの表情が……堪らなく好き。
「あ、あぁっ、ん、し、しおん、気持ちいい……気持ちいいの……」
「俺も……ナカがヌルヌルと擦れて、ん、凄くいい……。あなたがこんなに淫らになるなんて……思いませんでしたよ」
違う。
違うの……。
でも言葉にならなくて、代わりに首を横に振る。
「シオンだから……シオンのことが大好きだから……」
「だから、こんな風になったんですか? そんな嬉しいこと言われたら、もう我慢できなくなるじゃないですか」
「が、我慢しないで……んっ、もっとして?」
「……あなたのせいですからね? 俺、悪くないですから」
感情を無理矢理隠すような、冷然とした声。
でも、冷静さを装う陰に、隠しきれないほどの情欲が見えた。
次の瞬間、
「あああっ、あ、ああっ!」
喉の奥から声の塊がほとばしった。
彼の両腕を爪を立てるくらい強く掴み、快楽の本流に流されないように耐えようとするけど、無駄な抵抗だって分かってる。
彼の動きが、今まで以上に激しくなった。
胸を弄ぶ指にも腰を振る動きにも容赦がなくなり、自身の欲望をこの身体にぶつけてくる。
奥の壁を打ち付けられ、女としての本能的な悦びに狂わされる。荒々しく求められると、苦しいはずなのにそれ以上の気持ち良さで、頭がおかしくなる。
「もっと……ぁ、もっとおくに……」
朦朧とする意識の中、獣のような本能に操られるように、普段なら決して口にすることのない恥ずかしいおねだりをしてしまう。
快楽を貪り動き続けるあなたの口角が、微かに上がった。
両足が胸につくほど曲げられ、下半身が浮く程持ち上げられてしまう。思いっきり大切な部分を晒す格好にされたのに、羞恥を感じる前に、上から重く押し込まれた熱杭に奥を貫かれてどうでもよくなる。
そして始まる、深くて重い律動。
「ん、いぁあっ、し、しおんっ、しおんっ! またっ……あぁっ!」
身体が悶え、奥の熱が弾けた。全身に絶頂の波が回る。
でも肉欲から解放された余韻を味わう暇もなく、次の高みへと導かれるように激しい突き上げは止まらない。
小さく丸まったような体勢の私を、シオンが上から抱きしめた。舌と一緒に、互いの乱れた呼吸も絡み合う。
快楽に翻弄された余裕のないあなたの動きが、嬉しくて堪らない。
大好きな人が、一緒に気持ち良くなってくれているから……。
そして、
「もう……限界……」
唇を解き、私の首筋に顔を埋めたシオンの、切なそうな声が響いた。
その言葉に呼号するように、最後に向けて腰使いが大きくなっていく。
必死でシオンの身体に腕を回し、激しさから振り落とされないようにしがみつく。ぎゅっと力を込めるとナカも一緒に締まったのか、彼の呼吸が一瞬止まり、
「くっ……イクっ……」
吐息と共に、ナカを狂わせていたモノが膨らみ、熱い欲を吐き出した。それはドクンと脈打ちながら、奥を白く染めていく。彼の吐き出したものを全て搾り取ろうとするかのように、ナカが蠢き貪欲に絡みつく。
全てを吐き出し終えると、シオンの身体から力が抜けた。私の首筋に顔を埋めたまま、荒い呼吸を繰り返す。
「リベラ……あなたが好きだ……あなただけをずっと……ずっとずっと……」
熱に浮かされたように、私への想いを呟くシオンの頭をそっと撫でる。
彼の言葉を聴きながら、先ほどの絶頂とナカを満たされた悦びとともに、フワフワとした幸福の余韻を味わっていた。
♡♥♡
はー。
解放感に溢れた俺の呼吸が、浴室に響いた。
が、その近くで、ぶくぶくぶくぶく、と泡が発生する音がする。
「あのぉー……泡吐き出すの、そろそろ止めませんか?」
ぶくぶくぶくぶく……。
あ、また沈んだ。
俺たちは、風呂に入っていた。
さすがに、あなたの身体を俺の唾液塗れのまま眠らせるわけにはいかなかったからだ。
もちろんそれらも考慮した上で、全てが終わった頃にはいい温度になっているよう、熱めのお湯を事前に用意していたのだ。
視線の先には、身体を丸めて顔半分を湯に沈めながら、ぶくぶくと空気を吐き出しているあなたの姿があった。さっきからずっとこの調子で、気泡発生器と化している。
明らかにこれは……、
「拗ねているんですか? あれですか? あの後、さらに2回したのがダメでしたか?」
ぶくぶくぶくぶくっ‼
物凄い勢いで、気泡が大量発生した。
そして、
「ぷっはっ‼ ごほっ……ごほごほっ!」
激しくせき込みながら、あなたがこちらを振り向いた。
例のごとく頬を膨らませながら、まるで悪人を前にしたかのように俺を睨みつけている。
「そっ、それもあるけどっ‼」
それもあるのか。
……なるほど。
2回程度じゃ足りなかったんですね?
それは非常に、非常に! 申し訳ないです。
「で、他にも理由があるんですか?」
「あるけど……言わないっ!」
ぷいっと俺に背を向けた時、あなたがボソっと、一体どうしてくれるのよ、と呟くのが聞こえた。まあその一言だけでは、結局何が悪かったのか分からずじまいなのだが。
(でも……まあいいか)
背中を丸めて、またぶくぶくし始めたあなたの身体を後ろから抱きしめると、そのままこちらに引き寄せた。
あなたが本気で怒っていないのは、分かっている。
怒っていない証拠に、ほら。
今もこうやって、俺にされるがままになっているから。
きっと冷静になって先ほどの情事を思い出し、恥ずかしくて自己嫌悪に陥っているのだろう。
あれだ。
賢者タイムってやつだ。
(全く……さっきまで俺の下で、あんなに淫らに喘いでいたのに……)
拗ねる背中を見つめながら、小さく笑う。
普段の姿と、ベッドの上の姿のギャップが堪らない。
湯に濡れた肩に唇を寄せていると、あなたの手が俺の腕をぎゅっと抱きしめながら呟かれた。
「それにしても……シオンがあんなことする変態だったとは……」
「ははっ、ありがとうございますっ!」
「褒めてないからねっ‼ 何一つ、褒めてないからねっ‼」
そう言って、あなたの手が俺の頬をぺちっと叩いた。
もちろん、本気じゃないから全く痛くない。
まあ、あの程度で変態だって言われても困るんですけどね、こっちは。
でもそれは、また今度のお楽しみだ。
柔らかな肉感と、薬湯と混じり合う甘い香りを感じながら、あなたの身体を強く抱きしめた。
♡♥♡
はぁ……
私は大きなため息をついた。
後ろから大きな腕で抱きしめられていると、先ほどの光景が嫌という程思い出される。
(これから一体どういう顔してチョコレートを食べればいいのよっ‼)
シオンから貰った超高級チョコレートは、まだ残っている。
だけど、あれを見たらどうしてもさっきの行為が思い出されて、恥ずかしさで一杯になる。
シオンのせいで、『チョコレート=卑猥』って頭の中で紐づけられちゃったよ‼
もう、チョコレートを直視出来ないよっ‼
一体どうしてくれるのよっ‼
でもこれをシオンに話したら最後。
きっと、
「そうやって俺とのことを思い出してくれるなら、毎日チョコレートを用意しますね?」
とか言って、本当に実行する恐れもある。
変態って言ったら、大喜びする変態さんだもんなぁ……。
だから、絶対に秘密だ。
そんな私の苦悩なんて知らないシオンが、横から顔をのぞき込んできた。
「でも、こんなことをするのも、したいと思うのも、あなただけですからね?」
「あ、当たり前ですっ‼ ……あ」
咄嗟に出してしまった本音を隠すように、口を塞いだ。
わわっ!
こ、こんなこと言ったら、まるで私にはあんなことをしてもOKみたいにとられるじゃない!
けど、もちろん手遅れ。
一度口にした言葉を、取り消すことは出来ないわけで……。
恐る恐る振り向くと、シオンが瞳を細めてこちらを見ていた。
一点の曇りもない愛情に満ちた優しい視線を向けられると、心の奥が不覚にもキュンっと締め付けられる。
もう色んなことをひっくるめて、
(……大好き)
そんな言葉が浮かんで、胸いっぱいになってしまう。
諦めてシオンと向かい合う体勢になると、正面から彼の身体を抱きしめた。
湯気か汗か分からない水滴を感じながら、少しお湯がはねただけで消えてしまいそうなくらいの小さな声で囁く。
「……他の人にそんなこと思っちゃ……駄目だからね?」
「もちろんです。今までもこれからも、あなただけですよ」
小さく笑いながらシオンが答えた。
視線が絡まると、お互いの唇が重なった。
重なりあったあなたの唇から、微かにチョコレートの香りがした。
<完>
この話はここまでです♪
ifの話にはなりますが、きっと本編終了後の二人は、こんな感じで毎日を過ごしているんじゃないかと思ってます♪
番外編にも拘らず、ここまでお読みいただきありがとうございました(*´▽`*)
0
お気に入りに追加
563
あなたにおすすめの小説
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
管理人さんといっしょ。
桜庭かなめ
恋愛
桐生由弦は高校進学のために、学校近くのアパート「あけぼの荘」に引っ越すことに。
しかし、あけぼの荘に向かう途中、由弦と同じく進学のために引っ越す姫宮風花と二重契約になっており、既に引っ越しの作業が始まっているという連絡が来る。
風花に部屋を譲ったが、あけぼの荘に空き部屋はなく、由弦の希望する物件が近くには一切ないので、新しい住まいがなかなか見つからない。そんなとき、
「責任を取らせてください! 私と一緒に暮らしましょう」
高校2年生の管理人・白鳥美優からのそんな提案を受け、由弦と彼女と一緒に同居すると決める。こうして由弦は1学年上の女子高生との共同生活が始まった。
ご飯を食べるときも、寝るときも、家では美少女な管理人さんといつもいっしょ。優しくて温かい同居&学園ラブコメディ!
※特別編10が完結しました!(2024.6.21)
※お気に入り登録や感想をお待ちしております。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
人形な美貌の王女様はイケメン騎士団長の花嫁になりたい
青空一夏
恋愛
美貌の王女は騎士団長のハミルトンにずっと恋をしていた。
ところが、父王から60歳を超える皇帝のもとに嫁がされた。
嫁がなければ戦争になると言われたミレはハミルトンに帰ってきたら妻にしてほしいと頼むのだった。
王女がハミルトンのところにもどるためにたてた作戦とは‥‥
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる