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番外編:あなたとチョコレートの香り

あなたとチョコレートの香り②*

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チョコレートを身体にぬりぬりするシーンがあります。
苦手な方はご注意をm(_ _"m)


 ♡♥♡

 シオンから渡されたのは、赤いリボンがかかった小箱だった。
 見るからに高級そう……いや……、この箱のしっかり感とリボンの触り心地、超高級品だ。

 なんか、箱が発してるオーラがもう違うね!
 私のために用意してくれたんだろうけど、逆に恐縮してしまう。

「こんな凄そうな物、私なんかが貰ってもいいの? 私があげたチョコレート、あんなのだったのに……」

「何仰ってるんですか! あなたが作ったものに比べたら、こんな物、足元にも及びませんから! どちらのチョコレートを選べと問われたら、このチョコレートが1,000個積まれても、あなたのお手製を選びますよ!」

「う、うん……あ、ありがと……」

 愛が……重い。
 今日も平常運転だなー、シオンは。

 心の中で苦笑すると、なんだかんだ言ってワクワクする気持ちを抑えながらリボンを取った。

 蓋を取ると、チョコレートの甘さとお酒の香りがふわっと広がった。

 中には、四角く切られたチョコレートが綺麗に並んでいる。まるで、街道を敷き詰めるレンガみたい。

 今まで見たことのないチョコ形態に、声をあげる。

「わあぁ、凄い! こんなの初めて見た! これ何て言うチョコレート?」

「生チョコレートって言うらしいですよ」

「え?」

 生って……火が通ってないってこと?

 私の疑問を察したのか、シオンがまた小さく噴き出した。

「違いますって。生クリームやお酒などを入れて、柔らかくしたチョコレートです。口の熱で溶けるくらい柔らかくて人気なのだと、ノリスが言ってました」

 ほほう。そうなのか。
 ってことは、このチョコレートは、ノリスのお店で購入したのかな?

「早速召し上がりますか?」

「食べるぅっ!」

 そんなの、即答に決まってる!

 箱の中には、小さな金色のフォークがついていた。さすが超高級品だ。

「手で食べると、チョコが溶けて、あなたの指が汚れますからね」

 そう言ってシオンがフォークに刺したチョコレートを私の口の前に運んできた。

 ん? 運んできた?
 え? ええ?

「はい、口開けて下さいー」

「ちっ、ちょっとまって! 食べれるから! 一人で食べられるからっ‼」

「ははは、照れない照れない。はい、あーん」

 うう……、私のこと、一体何歳だって思ってんだろ……。いい大人が、食べさせてもらうなんて……。

 でも、こんないい笑顔でチョコレートを差し出すシオンを、突き放すわけにもいかない。

 恥ずかしながらも、口を開いた。
 まるで、ひな鳥が親鳥から餌をもらってるみたい。

 でも、口の中にチョコレートが入った瞬間、あーんの恥ずかしさなんて吹き飛んだ。
 今まで経験したことのない極上の口溶けに、一瞬思考が停止するほどの衝撃が走る。

「んんんんんっ! おいふぃいぃっ‼」

 両目を見開き、口を閉じたまま絶叫した。

 口の中で蕩ける食感。
 甘いだけじゃない、深みのある味。
 鼻を突き抜けるお酒の匂いが、これは大人のお菓子なんだせ感を引き立たせている。

 こんなおいしい物が、世の中に存在してたの⁉
 いや、存在していいの⁉

 これを作り出した人、これを作り出した人を産み落としたご両親、その他諸々に、最高の賛辞を贈りたい‼︎

 美味しさに目を白黒させている私を見つめながら、シオンが微笑んでいる。 

「そんなに喜んでもらえるとは……。半年前からチョコレート市場を調査し、3カ月前からノリスの店に注文を出し、輸送途中モンスターに襲われないよう俺自らが護衛して、準備した甲斐がありました」

 ……この一箱にかかってる愛が、激重なんですけど。

 でもそんな行動を、

 シオンらしいね!

 の一言で笑える私も、相当毒されてると思う。

「本当にありがとう! こんなに美味しいお菓子、生まれて初めて! 凄く嬉しいわ」

 素直にお礼を言うと、シオンの手からフォークを奪い、また一つ口に入れる。

 あー、美味しい。
 ああああ、美味しい!

 その時、シオンがチョコレートの箱にかかっていたリボンを片付けようとするのが見えた。

「ちょっと待って! そのリボン、どうするの?」

「処分するつもりですが……何かに使われますか?」

 とっても綺麗なリボンだったから、捨てるなんてもったいない。

 私は頷くと、彼の手からリボンを受け取った。

 リボンの両端は金色の糸で縁取りされてて、赤い生地によく映えている。肌触りも滑らかだ。

 ふとした思い付きで、私はリボンを首に巻き付け、中央で蝶々結びした。

 リボンチョーカーみたいで可愛いかも。

 自分の思いつきを自画自賛していると、シオンから動きがなくなっているのに気づいた。私の首元をじっと見つめながら止まっている。

「シオン、どうかした?」

「え? あっ……いえ……。それにしても、凄く美味しそうに生チョコレートを召し上がられてますね?」

「だって、本当に美味しいんだもん! あ、シオンも食べる? 私一人で食べるなんてもったいないわ」

「よろしいのですか? それなら、早速……」

 うんうん、こんな良き物、独り占めしたらバチが当たるもんね!

 チョコレートの箱を差し出すと、シオンの視線が一瞬鋭くなった気がした。

 気のせいかなって思ったんだけど、今度は何故か、渡した箱をベッドの端っこに置いた。

 そして、

「え? あ、ちょっと……?」

 身体がベッドに押し付けられた。
 見上げた先には、シオンの顔。

 え? 私、押し倒されてる?

 まてまてまてまて――――っ‼
 チョコ勧めただけなのに、何でこうなった⁉

「チョコ、食べる……んだよね?」

「はい、頂きますよ?」

「え? じゃ、何で私押し倒されてるのか……なぁ?」

「え? チョコレートを食べる為ですけど?」

「……へ?」

「……ん?」

 …………
 …………
 …………
 …………

 ぜっっっっんぜん、意味分かんないんだけど――――っ!

 ♡♥♡

 この瞬間を待ってました。
 まさか、あなた自らがチョコレートを勧めてくださるとは。
 当初の計画では、味見として頂く予定だったんですけどね。

 ん?
 何でこうなった! って顔をされてますね?

 俺はいつものように、あなたの服の胸ボタンを外していった。あなたは相変わらず、戸惑いの表情を浮かべているが抵抗はされない。

 その理由は、服を開き、視界に飛び込んできた可愛らしい黄色のレースに覆われた下着を見て分かった。

 思わず口元に笑みが浮かぶ。

「今日は可愛い下着、つけていらっしゃるんですね?」

「えっと……まあ……。た、たぶん、こういう展開になるかなって……」

「なるほど。俺に抱かれるのを期待されてた……ということですね?」

「き、期待とかそんなんじゃ……! 多分、襲われるんじゃないかなって……」

「襲われると分かってて準備をしておくなんて、そういうのを期待してるっていうんですよ? リベラ」

「うくっ……」

 俺に言い負かされ、あなたは悔しそうに口を噤んだ。

 バレンタインデーのチョコレートを渡したら、きっと喜んだ俺に襲われる。
 その認識に、何一つ間違いは無いんですけどね!

 俺を、よくご理解くださっているようで結構なことだ。

 ですが……、

「可愛い下着を堪能したいのは山々ですが……、汚したらいけないので外しますね?」

「え? 汚れる? や、ちょ、ちょっとまって!」

 慌てて俺の動きを制しようと動かれたが、この手はすでに、下着の真ん中にあるリボンを解いていた。

 下着が左右に分かれ、中身が溢れ出す。

 誘うように揺れる双丘に、身体中の熱が一点に集中する。このまま揉みしだき、思いっきりむしゃぶりつきたい欲望が、俺を突き動かそうとする。

(だが、まだだ……。まだ我慢しろ、俺)

 呪文のように何度も言葉を繰り返し、必死で理性を保ちながら、あなたの夜着も脱がせる。

 わわ、と慌てた声が聞こえたが、それに構う余裕まではない。

 そして出来上がったのが、下半身の下着一枚にされ、恥ずかしそうに胸を隠しているあなたの姿だった。

 首についたままのリボンが、さらに劣情を湧き立たせる。

 これからすることを思い、自分の上半身の服も脱いだ。

 さあ、準備ができた。

「し、しおん?」

 いつもと違う俺の行動に、あなたは明らかに戸惑っていらっしゃった。しかしその赤い瞳に、未知なことに対する期待が混じっていることに、気づかない俺じゃない。

 俺は、ベッドの端に置いていたチョコレートの箱を引き寄せると、中身の一つを手に取った。

 さすが溶けやすいとあって、持った部分がすでに柔らかくなってきている。

 そんなことを考えながら、あなたの胸にチョコレートを押し当てると、まるでチョークで描くように、チョコレートの線をひいた。

 白い肌に、茶色が浮き出る。

 異物が肌を滑る感覚に、あなたの身体がピクッと反応を見せた。

「んっ、し、しおん! 何してるのっ!」

 鎖骨あたりにチョコレートをつけていく俺の手を拒もうと動かれたが、細い手首を両手まとめて組み伏せると、作業に戻った。
 魔法を使わないあなたは、相変わらず驚くほど非力だ。

 当の本人も、力では敵わないと分かっていらっしゃるので、今度は口で注意してくる。

「だ、だめっ! 食べ物で遊んじゃ! そんなことしたら、バチが当たるよ⁉︎」

「バチですか? 誰からの?」

 首すじにチョコレートを這わせながら、問う。敏感な部分に触れたからか、あなたの眉根が寄った。

「んぅ……か、神さま……?」

「その神は、あなたが倒したじゃないですか。他に何が俺を罰するとでも?」

「うっ……あ、あれは、神様じゃなくて、超巨大なもんすた……んぁあっ!」

 反論していたあなたの身体が跳ねた。
 小刻みに震えながら、耐えるような喘ぎ声が言葉を奪う。

 それもそのはず。
 胸の敏感な部分を、チョコレートでなぞっているからだ。可愛らしい薄桃色の蕾が、溶けた茶色に色付けられていく。

「あ、ぁあっ、しお……ん……や、やめ……てっ」 

「ふふ、相変わらずここ、弱いですね? チョコレートで触られて、感じてるんですか?」

「ち、ちが……あっんっ……」

 柔らかなチョコレートでなぞっただけなのに、だらしなく緩んだあなたの唇から、嬉しそうな声が飛び出した。

 突然の与えられた快楽に、身体がぐったりなってしまっている。その隙に上半身だけでなく、腿や足など、身体のあらゆる場所に、チョコレートをペイントしていった。

 あなたの香りとチョコレートの甘さが混じり、何とも言えない興奮が湧き上がる。

 すっかりチョコ塗れになったあなたを見下ろす。

 両手を組み伏せられ、頰や首筋、腕や手、胸から腹、そして足先までチョコレートで色付けされた状態で、息を荒げて横たわっている。

 こんな物で肌を汚されたあなたの姿に、堪らなく欲情してしまう。
 口元が、どれだけこらえても緩むのを止められない。

 あなたはまだ、何をされるか不安そうですが、すぐに分かりますよ?

 もう隠す必要はないと、我慢は不要だと、気持ちが解放される。それは湧き上がる笑みと、不自然に早まる呼吸に現れた。

 両手を組み伏せられながらこちらを見上げるあなたの耳元に唇を寄せ、囁く。

「それじゃ、いただきますね?」

「ふぇっ⁉」

 ご安心ください。
 一つも残さず、ちゃんと最後まで美味しく頂きますから。

 あなたの首に結ばれたリボンを、まるでプレゼントを開けるように引っ張った。
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