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アカデミー騒動編
第82話 お師匠様は招いた
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シオンが眠った後、私はすぐアーシャと連絡をとった。
すぐに会えるか尋ねると、アーシャも同じことを考えていたようで、突然の申し出を快諾してくれた。
「へえー、ここがリーベルの家なのね。静かでいいところね?」
私と一緒に転移珠でやってきたアーシャの感想は、これだった。
山の小さな一軒家。
周りに何もないのは、アカデミーといい勝負かもしれない。
魔法の修行のため、広くて人のいない場所が必要だったから、ここに家を建てたってのもあるんだけどね。
家の感想に、ありがとうと言うと、私はアーシャを家の中に招き入れた。
「ただいまー」
「リーベル、おかえりー」
私の声に反応し、廊下から人影が現れた。
ディディスだ。
彼はいつもシオンが着けているピンクエプロンを身に着け、手を拭きながらこちらに向かってきた。
どうやら、昼食の後片付けをやってくれてたらしい。
ちらっと視線を私の後ろに向けると、いつものキラキラ笑顔をアーシャに向けた。
「アーシャちゃんも、突然悪かったね。こんな辺鄙な山の中まで来てくれて、ありがとう」
「ディディスさんもいらしたのですね? 先日は、ありがとうございました。それにしても、そのエプロン……」
「ふふっ、可愛いでしょ?」
「あっ……ええっと……、そっ、そうですね。とてもお似合いです」
アーシャはディディスのエプロン姿に動揺しながらも、少しだけ引きつった笑みを浮かべながら頷いた。
アーシャ……、ディディスのエプロン姿に驚いてるけど……、それ本当はシオンのエプロンなんだけどな。
それを知ったら、どんな顔するんだろ。
彼女の反応を想像すると、少しだけ心に余裕が生まれた。
それにしてもアーシャが王女だって分かっても、ディディスの口調は変わってない。
恐らく、アーシャから態度を変えないで欲しいって言われたんだろうけど、ほんと全く変わってないよね!
その時、ディディスの後ろで何かが走ったかと思うと、
「っっっ痛――っ‼」
絶叫と共に、彼の身体が床に沈んだ。
倒れた彼の後頭部を、足が容赦なくぐりぐりと踏みつける。
セリス母さんだ。
細い目をさらに細くして、足元でふごふご言っている物体に、容赦ない足蹴を食らわしている。
「……悪かったな、こんな辺鄙な山の中に住んでて」
「いたたっ……、せっ、セリス様‼ こっ、これはただの謙遜であって、本気でそう思って……、ぐぁっ‼」
「謙遜していいのは、この家の主だけだっ‼ 覚えとけっ‼」
「分かりましたっ! 分かりましたからっ‼ 俺、シオンのようにあなたの攻撃に耐えられるような頑丈な身体も、反論する図太いメンタルも持ってませんから、この辺で許してくださいって!」
ディディスは涙目になりながら、セリス母さんに拝み倒している。
シオンとは違い、全く無抵抗な彼の姿を見て、母さんは詰まらなさそうにため息をつくと、ディディスの後頭部から足を放した。
ぶすっとして、身体ぐらいもっと鍛えとけ、とブツブツ呟いている。
見知らぬお婆さんの過激すぎる登場に、アーシャは目をまんまるくして呆然と見ているだけだった。
まあいきなりこんな暴力的な光景をみたら、唖然とするしかないよね。
相変わらずな母の態度に苦笑いを浮かべると、私はアーシャを紹介した。
「セリス母さん、この子がいつも話してるアーシャよ」
「あっ……、あの……、初めまして。アーシャ・ハーデンヤールです」
恐る恐るアーシャが自己紹介した。
セリス母さんが自分の正体を知らないと思っているから、偽名を名乗っている。
母さんはアーシャの前に立つと、ぺこりと頭を下げた。
「セリス・スターシャだ。あなたの事は、娘から良く聞いている。娘といつも仲良くしてくれてありがとう。礼を言う」
「いっ、いえ……。私こそ、リーベルのお蔭でアカデミーの生活がとても楽しいので感謝してます」
アーシャもつられて、セリス母さんに頭を下げた。
その様子を、私とディディスが驚愕の表情で見つめていた。
だって……、だってあのセリス母さんが、お礼を言っているんだよ⁉
そして、頭をさげてるんだよ⁉
ついさっきまで、ディディスの頭をふんづけていた、あのセリス母さんがだよ⁉
すっごく……、母っぽいっ‼
シオンやディディス相手に見る事のない、母の違った一面を垣間見、何だか興奮してしまった。
多分ディディスも同じことを思ってるだろう。
ぼそっと、
「セリス様、頭を下げることが出来たんだ……」
と超失礼な事を呟いているのが聞こえたからね。
まあ、セリス母さんにその呟きを聞かれなくて本当に良かったけど。
これから何をするつもりなのかは、セリス母さんに伝えている。
だからこそ、アーシャを私が住むこの家に呼ぶことが出来た。
母さんはちらっと私を見ると、入れ替わるように家を出て行った。
アーシャにとってセリス母さんは馴染みのない人だから、配慮してくれたんだろう。
ぶっきらぼうだけど、そういう心遣いがとてもありがたい。
アーシャは閉じられたドアを見つめると、そっと私に耳打ちした。
「身寄りがないって前言ってたけど……、お母様がいらっしゃったの?」
ああ、アーシャにはそう言ってたからね。
彼女の言葉を、頷いて肯定する。
「うん。セリス母さんは、捨てられてた赤ん坊の私を拾って、育ててくれたの」
「そう……なのね。じゃあ育ての親ってことかしら?」
「そうね。育ての親だけど……、セリス母さんは本当の娘のように、私を大切にしてくれたから。育ての親とか生みの親とか、関係ないわ」
「とても良い方に育てられたのね。ディディスさんを踏みつけて現れたのは、ちょっと驚いたけど」
そう言いながら先ほどの状況を思い出し、アーシャがふふっと笑った。
被害者の彼は、複雑そうに眉根を寄せているけどね。
私は、アーシャとディディスを、テーブルに案内した。
お湯を沸かしてお茶を入れると、彼らに振る舞い、自分も席についた。
二人共これから何をするか分かっているみたい。
コップをテーブルに置いた瞬間、部屋の空気が張りつめた物に変わったから。
「アーシャ、突然呼び出してごめんね。ディディスから、あなたの調査がほとんど終わってるって聞いたから……」
「そうなの。私も報告しようと思ってた矢先、あなたから連絡があったから、丁度良かったわ」
「でも、早かったね? 早くても2週間はかかるって言ってたのに……。まだ1週間でしょ?」
まだ、とはいいつつも、私にとってはすごく辛く長い1週間だったけど……。
私の気持ちが通じてしまったのか、アーシャは口元をぎゅっと結ぶと、申し訳なさそうに頭を下げた。
「リーベルの辛い気持ちを考えるなら、1週間でも遅い方だわ。でも……、以前あなたを襲った人、マーテッドさんが恐ろしく記憶の良い人だったの。その人の情報が、調査の進行を速めてくれたのよ」
アーシャが言うのには、マーテッドさんは、自分がいつどこで誰に何をやらされたのか、元主である女生徒の交友関係などなど、自分が知った情報のほとんどを覚えていたらしい。
そこから芋づる式で、イリアの色んなことが出るわ出るわ状態だったんだとか。
時間をかければアーシャだけでそこまでの情報は得れたんだけど、スピードを重視してた彼女にとっては、とても有り難かったみたい。
マーテッドさんを助けて、そしてアーシャに紹介して、本当に良かった。
その後、ディディスとノリスにも話を聞き、イリアが今まで行ってきた情報が全て集まり、反撃する準備も丁度整ったところで、私から連絡が来たらしい。
何と言うタイミングの良さだ。
もう今日中に片を付けろと、神様が言っているようにしか思えないよ。
「それで……、シオンが握られてた弱味って……」
シオン自身に、握られた弱みの内容は聞かせて貰っているけど、確認しておかないといけない。
もし、こちらとアーシャが持っている情報で、齟齬があっては大変だから。
アーシャは少しだけ考える素振りを見せると、少しためらいがちに口を開いた。
「リーベルって、両翼の聖女と呼ばれた、リベラ・ラシェーエンド様の事は知ってる? 10年前、魔王との戦いで行方不明になった方なのだけど。その方が……、生きていらっしゃるようなの。どうやら、それがシオン様がイリアに掴まれた弱みらしいわ」
ああ、やっぱり。
しかし表情には出さず、アーシャの言葉の続きを聞く。だって彼女はシオンの弱味に内容に、納得いっていない様子だったから。
「行方不明だったリベラ様が生きていらっしゃるのには驚きだけど……、でも何故それがシオン様の弱味になったのか、そこだけが分からないの。調べてみると、シオン様はリベラ様のお弟子さんだったらしくて、そこに何か原因があるのかもしれないんだけど……」
一応、今持っている情報だけで、イリアを追い詰めることは出来るらしい。
でもアーシャとしては、全てを明らかに出来なくて、もやっとしているのが伺えた。
まあそうだよね。
全てを掴んでたら、私とこうやってお喋りなんて出来ないだろうから……。
緊張の為、無意識に唾を飲み込んだ。
隣に座るディディスが、心配そうにこちらを見ているのが分かる。
彼は私がこれから何をしようとしているのか、気づいているのだろう。でも止めないのは、私を、アーシャを信じているからこそ。
私もアーシャを信じたい。
そして願う事なら……、同じように友人として彼女の傍にいたい。
どうか……。
どうかアーシャ、私を嫌わないで……。
そう祈りながら、カラカラになった口の中をお茶で湿らせた。
「アーシャ。あのね……、イリアが掴んだシオンの弱味『リベラ・ラシェーエンドが生きている』っていう情報には、続きがあるの」
「……え? 続き? リーベル、知ってるの⁉」
「うん。それを聞けば……、多分納得できると思うわ」
知らず知らずのうちに握られた拳の中に、汗が溜まっていく。
粘り気のある唾液を飲み込むと、驚きと期待の表情を向ける彼女を真っすぐに見つめながら、告白した。
「リベラ・ラシェーエンドは生きていて、リーベル・ファルスと偽ってアカデミーに通っている。これがイリアが掴んだシオンの弱味よ」
すぐに会えるか尋ねると、アーシャも同じことを考えていたようで、突然の申し出を快諾してくれた。
「へえー、ここがリーベルの家なのね。静かでいいところね?」
私と一緒に転移珠でやってきたアーシャの感想は、これだった。
山の小さな一軒家。
周りに何もないのは、アカデミーといい勝負かもしれない。
魔法の修行のため、広くて人のいない場所が必要だったから、ここに家を建てたってのもあるんだけどね。
家の感想に、ありがとうと言うと、私はアーシャを家の中に招き入れた。
「ただいまー」
「リーベル、おかえりー」
私の声に反応し、廊下から人影が現れた。
ディディスだ。
彼はいつもシオンが着けているピンクエプロンを身に着け、手を拭きながらこちらに向かってきた。
どうやら、昼食の後片付けをやってくれてたらしい。
ちらっと視線を私の後ろに向けると、いつものキラキラ笑顔をアーシャに向けた。
「アーシャちゃんも、突然悪かったね。こんな辺鄙な山の中まで来てくれて、ありがとう」
「ディディスさんもいらしたのですね? 先日は、ありがとうございました。それにしても、そのエプロン……」
「ふふっ、可愛いでしょ?」
「あっ……ええっと……、そっ、そうですね。とてもお似合いです」
アーシャはディディスのエプロン姿に動揺しながらも、少しだけ引きつった笑みを浮かべながら頷いた。
アーシャ……、ディディスのエプロン姿に驚いてるけど……、それ本当はシオンのエプロンなんだけどな。
それを知ったら、どんな顔するんだろ。
彼女の反応を想像すると、少しだけ心に余裕が生まれた。
それにしてもアーシャが王女だって分かっても、ディディスの口調は変わってない。
恐らく、アーシャから態度を変えないで欲しいって言われたんだろうけど、ほんと全く変わってないよね!
その時、ディディスの後ろで何かが走ったかと思うと、
「っっっ痛――っ‼」
絶叫と共に、彼の身体が床に沈んだ。
倒れた彼の後頭部を、足が容赦なくぐりぐりと踏みつける。
セリス母さんだ。
細い目をさらに細くして、足元でふごふご言っている物体に、容赦ない足蹴を食らわしている。
「……悪かったな、こんな辺鄙な山の中に住んでて」
「いたたっ……、せっ、セリス様‼ こっ、これはただの謙遜であって、本気でそう思って……、ぐぁっ‼」
「謙遜していいのは、この家の主だけだっ‼ 覚えとけっ‼」
「分かりましたっ! 分かりましたからっ‼ 俺、シオンのようにあなたの攻撃に耐えられるような頑丈な身体も、反論する図太いメンタルも持ってませんから、この辺で許してくださいって!」
ディディスは涙目になりながら、セリス母さんに拝み倒している。
シオンとは違い、全く無抵抗な彼の姿を見て、母さんは詰まらなさそうにため息をつくと、ディディスの後頭部から足を放した。
ぶすっとして、身体ぐらいもっと鍛えとけ、とブツブツ呟いている。
見知らぬお婆さんの過激すぎる登場に、アーシャは目をまんまるくして呆然と見ているだけだった。
まあいきなりこんな暴力的な光景をみたら、唖然とするしかないよね。
相変わらずな母の態度に苦笑いを浮かべると、私はアーシャを紹介した。
「セリス母さん、この子がいつも話してるアーシャよ」
「あっ……、あの……、初めまして。アーシャ・ハーデンヤールです」
恐る恐るアーシャが自己紹介した。
セリス母さんが自分の正体を知らないと思っているから、偽名を名乗っている。
母さんはアーシャの前に立つと、ぺこりと頭を下げた。
「セリス・スターシャだ。あなたの事は、娘から良く聞いている。娘といつも仲良くしてくれてありがとう。礼を言う」
「いっ、いえ……。私こそ、リーベルのお蔭でアカデミーの生活がとても楽しいので感謝してます」
アーシャもつられて、セリス母さんに頭を下げた。
その様子を、私とディディスが驚愕の表情で見つめていた。
だって……、だってあのセリス母さんが、お礼を言っているんだよ⁉
そして、頭をさげてるんだよ⁉
ついさっきまで、ディディスの頭をふんづけていた、あのセリス母さんがだよ⁉
すっごく……、母っぽいっ‼
シオンやディディス相手に見る事のない、母の違った一面を垣間見、何だか興奮してしまった。
多分ディディスも同じことを思ってるだろう。
ぼそっと、
「セリス様、頭を下げることが出来たんだ……」
と超失礼な事を呟いているのが聞こえたからね。
まあ、セリス母さんにその呟きを聞かれなくて本当に良かったけど。
これから何をするつもりなのかは、セリス母さんに伝えている。
だからこそ、アーシャを私が住むこの家に呼ぶことが出来た。
母さんはちらっと私を見ると、入れ替わるように家を出て行った。
アーシャにとってセリス母さんは馴染みのない人だから、配慮してくれたんだろう。
ぶっきらぼうだけど、そういう心遣いがとてもありがたい。
アーシャは閉じられたドアを見つめると、そっと私に耳打ちした。
「身寄りがないって前言ってたけど……、お母様がいらっしゃったの?」
ああ、アーシャにはそう言ってたからね。
彼女の言葉を、頷いて肯定する。
「うん。セリス母さんは、捨てられてた赤ん坊の私を拾って、育ててくれたの」
「そう……なのね。じゃあ育ての親ってことかしら?」
「そうね。育ての親だけど……、セリス母さんは本当の娘のように、私を大切にしてくれたから。育ての親とか生みの親とか、関係ないわ」
「とても良い方に育てられたのね。ディディスさんを踏みつけて現れたのは、ちょっと驚いたけど」
そう言いながら先ほどの状況を思い出し、アーシャがふふっと笑った。
被害者の彼は、複雑そうに眉根を寄せているけどね。
私は、アーシャとディディスを、テーブルに案内した。
お湯を沸かしてお茶を入れると、彼らに振る舞い、自分も席についた。
二人共これから何をするか分かっているみたい。
コップをテーブルに置いた瞬間、部屋の空気が張りつめた物に変わったから。
「アーシャ、突然呼び出してごめんね。ディディスから、あなたの調査がほとんど終わってるって聞いたから……」
「そうなの。私も報告しようと思ってた矢先、あなたから連絡があったから、丁度良かったわ」
「でも、早かったね? 早くても2週間はかかるって言ってたのに……。まだ1週間でしょ?」
まだ、とはいいつつも、私にとってはすごく辛く長い1週間だったけど……。
私の気持ちが通じてしまったのか、アーシャは口元をぎゅっと結ぶと、申し訳なさそうに頭を下げた。
「リーベルの辛い気持ちを考えるなら、1週間でも遅い方だわ。でも……、以前あなたを襲った人、マーテッドさんが恐ろしく記憶の良い人だったの。その人の情報が、調査の進行を速めてくれたのよ」
アーシャが言うのには、マーテッドさんは、自分がいつどこで誰に何をやらされたのか、元主である女生徒の交友関係などなど、自分が知った情報のほとんどを覚えていたらしい。
そこから芋づる式で、イリアの色んなことが出るわ出るわ状態だったんだとか。
時間をかければアーシャだけでそこまでの情報は得れたんだけど、スピードを重視してた彼女にとっては、とても有り難かったみたい。
マーテッドさんを助けて、そしてアーシャに紹介して、本当に良かった。
その後、ディディスとノリスにも話を聞き、イリアが今まで行ってきた情報が全て集まり、反撃する準備も丁度整ったところで、私から連絡が来たらしい。
何と言うタイミングの良さだ。
もう今日中に片を付けろと、神様が言っているようにしか思えないよ。
「それで……、シオンが握られてた弱味って……」
シオン自身に、握られた弱みの内容は聞かせて貰っているけど、確認しておかないといけない。
もし、こちらとアーシャが持っている情報で、齟齬があっては大変だから。
アーシャは少しだけ考える素振りを見せると、少しためらいがちに口を開いた。
「リーベルって、両翼の聖女と呼ばれた、リベラ・ラシェーエンド様の事は知ってる? 10年前、魔王との戦いで行方不明になった方なのだけど。その方が……、生きていらっしゃるようなの。どうやら、それがシオン様がイリアに掴まれた弱みらしいわ」
ああ、やっぱり。
しかし表情には出さず、アーシャの言葉の続きを聞く。だって彼女はシオンの弱味に内容に、納得いっていない様子だったから。
「行方不明だったリベラ様が生きていらっしゃるのには驚きだけど……、でも何故それがシオン様の弱味になったのか、そこだけが分からないの。調べてみると、シオン様はリベラ様のお弟子さんだったらしくて、そこに何か原因があるのかもしれないんだけど……」
一応、今持っている情報だけで、イリアを追い詰めることは出来るらしい。
でもアーシャとしては、全てを明らかに出来なくて、もやっとしているのが伺えた。
まあそうだよね。
全てを掴んでたら、私とこうやってお喋りなんて出来ないだろうから……。
緊張の為、無意識に唾を飲み込んだ。
隣に座るディディスが、心配そうにこちらを見ているのが分かる。
彼は私がこれから何をしようとしているのか、気づいているのだろう。でも止めないのは、私を、アーシャを信じているからこそ。
私もアーシャを信じたい。
そして願う事なら……、同じように友人として彼女の傍にいたい。
どうか……。
どうかアーシャ、私を嫌わないで……。
そう祈りながら、カラカラになった口の中をお茶で湿らせた。
「アーシャ。あのね……、イリアが掴んだシオンの弱味『リベラ・ラシェーエンドが生きている』っていう情報には、続きがあるの」
「……え? 続き? リーベル、知ってるの⁉」
「うん。それを聞けば……、多分納得できると思うわ」
知らず知らずのうちに握られた拳の中に、汗が溜まっていく。
粘り気のある唾液を飲み込むと、驚きと期待の表情を向ける彼女を真っすぐに見つめながら、告白した。
「リベラ・ラシェーエンドは生きていて、リーベル・ファルスと偽ってアカデミーに通っている。これがイリアが掴んだシオンの弱味よ」
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