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目覚め編

第24話 弟子は抱きしめた*

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 あの時、俺は寝ぼけてました。
 なのでいつもの習慣で、お師匠様の部屋に行ってしまったのです。

 10年前、お師匠様と共に逃げ帰ってから、俺はずっとこの部屋でお師匠様と共に眠りました。
 ベッドに乗せられ、決して触れる事の出来ない日々に、俺はただ後悔と無力感だけを募らせていきました。

 始めの頃は、自分の力に対し不安な部分があった為、修行がない時間――夜寝る時しかないのですが、は、ずっとこの部屋でお師匠様と過ごしました。

 何故なら、いつお師匠様の時間が動き出すか分からなかったので、それを思うと、傍から離れる事が出来なかったのです。

 次第に自分の力について確信を得、お師匠様の時間が俺の意志がなければ動かない事が分かってからも、傍から離れることが出来ませんでした。もうこの頃には、夜はこの部屋で共に眠ることが習慣化されていたので、それから外れると不安で仕方がなかったのです。

 どれだけ遅くなっても、アカデミーで野外演習として泊まりになったとしても、転移珠を使って必ずこの家に戻って来たものです。

 寝ぼけた俺は、いつものくせでお師匠様の部屋にノックなしで入ると、そのままベッドを背にして座り、眠りにつきました。

 ふと、誰かが俺に話しかけてきます。

「……んと、自分の部……ベッドで寝なさいよ」

 何かお師匠様の声がする気が……。
 思わずお師匠様を呼びましたが、よく考えたらお師匠様が喋るはずありません。だって、時間を止められて結晶の中にいるのですから。

 また声が聞こえます。

「……こで寝ちゃダメだよ」

 ……誰だ? セリスか? いや、それにしては可愛すぎる声だろ……。
 駄目だ。ここにいないと。お師匠様に何かあったら、俺が何とかしないといけないのだから。

「……大丈夫だよ。だから……」

 大丈夫じゃない……。大丈夫じゃないっ!!
 俺のせいで、お師匠様がこんな姿にっ!! 話すことも動くことも、触れる事も出来ない、こんな姿になって、何が大丈夫だと言うんだっ!!

 俺に話しかける声が止みました。
 代わりに、誰かと誰かが話す声が遠くで聞こえてきました。でも今度は、何を話しているのか良く分かりません。もう睡魔が……、限界です。

 何か分からない人の声を子守歌に、俺の意識は奥底に沈んで行きました。

 どれくらい時間が経ったのでしょうか?
 いつもなら寒いこの時間、俺は温かさに包まれていました。そして、何かがもたれ掛かる、柔らかな重みも。

 そこにいたのは、

(おっ、お師匠様っ⁉︎)

 思わず出かかった声を、飲み込みました。何故なら、お師匠様が俺を抱きしめた状態で、とても良く眠っていたからです。

 俺は動かないように、視線だけ周りに向けました。ここは、間違いなくお師匠様のお部屋。もうあの方が目覚められたのに、つい寝ぼけてこちらに来てしまったみたいです。

 やってしまったと、俺はため息をつきました。長年の習慣は、中々抜けなさそうです。

 でも不思議でした。何故、お師匠様が俺に抱きついて眠っているのでしょうか? 今日俺が襲った事で、あの方の俺に対する警戒心はそれなりに高いはずなんですけど。

 ……夜這い?
 そんな事しなくても、一言言って頂ければ喜んで……、いや大喜びでお伺いしてお相手したのですが。

 あの時は理由が分からなくて、的外れなことばかり考えていたのですが、俺がお師匠様の事で苦しまなくていいように、そして安心させるために抱きしめて下さってたのですね。

 無意識にその事が伝わったのか、あれ以来、夜にお師匠様の傍にいなくても、不安にならなくなったんですよ。まあ、俺がお師匠様の傍で寝る為の口実として、不安がなくなった事は秘密にしてたんですが。

 俺の事はともかく、このままだとお師匠様がお風邪を召してしまわれます。

 ゆっくり体勢を整えると、俺はお師匠様を抱き上げました。柔らかく、ふわふわした身体、そして女性独特の優しい香りに、ダメだと思いつつも情欲が滾るのを感じました。

(お師匠様も俺に抱きついていたし、もうこのまま襲ってもいいのでは?)

(ダメだ! ちゃんと待つと約束しただろっ!)

(でもあの時、お師匠様も濡れてたし、俺を受け入れようとしてたんじゃないか? 今ならいけるんじゃないか?)

(そっ、そうかも……しれない)

 おい、善の心、もっと頑張れ。

 善と悪の戦いが、俺の中で巻き起こっています。このままだと、間違いなく悪が圧勝してしまいます。困りましたね。……ん? まったく困った様子じゃないって?

 メッチャ困ッテマスヨー。

 俺は葛藤を抱えながら、あの方が目覚めないように抱きしめると、そっとその細い首元に顔を埋めました。

 ……温かい。生きてる。

 冷たい結晶ではなく、人の温もりと肌の柔らかさ。それはお師匠様が、間違いなく生きているという証でした。

 嬉しいという気持ちよりも、死ぬかもしれないという不安がなくなった安堵の気持ちが、心を満たしました。こうして腕の中にいる事実に胸が詰まり、目が熱くなるのを感じました。

 全ては……、この日の為に。
 あなた様が目覚め、10年前と同じように話し、その笑顔を再び見る為に。

 でも、死から救うためとはいえ、あの方の10年を無駄にしてしまった。もっと俺に力があれば……。

 俺は頭を振り、考えを切り替えました。

 俺の力不足で、魔王を倒すのに10年かかったのは申し訳なかったですが、悪い事ばかりではありません。

 永遠に近づく事のない年齢差を、埋める事が出来たのですから。今まで年下の弟子としてしか認識しなかったお師匠様に、一人の男性として意識して貰えるチャンスなんです。
 
 お師匠様をベッドの中に戻しました。そしてその額にキスをすると、置き手紙を残して部屋を後にしました。

 
 朝が近づく静かな時間。
 俺は自分の部屋に戻ると、ベッドに腰を掛けました。

 まだあの方のぬくもりが、手に残っています。身体の温かさ、そして柔らかさ。そして同時に思い出すのが、ひと時ではありましたが、お師匠様と身体を重ね合わせたあの時の事。……まあ、残念ながら未遂に終わってしまいましたが。

 でも、今まで決して見る事が出来なかった、たくさんの可愛らしいお姿を見ることが出来ました。羞恥心に塗れ恥ずかしそうにしながらも我慢できずに声を上げる、淫らな姿もたくさん。元気で色気など見せない普段の姿と、ベッドの上で快楽に身を委ねる艶かしい姿のギャップが堪らない。

 その姿を、俺しか知らないと言う優越感も。

 手を見ると、あの方の胸の柔らかさを思い出します。
 胸を責める度に息が上がり、俺を直視できずに視線を逸らしていたお師匠様。その様子に、気持ちが掻き立てられ、何度も何度も胸を揉みしだき、その可愛らしい蕾を弄びました。

「シオン……。お願い……、やめ……て……」

 拒絶の言葉を発しながらも、快楽に抵抗する事が出来ないお姿を思い出すと、弟子である自分が優位に立っていう満足感に満たされました。

 もし……、もしあの時セリスの邪魔がなければ……。

 頭の中で、先ほどの続きが始まりました。

 普通では無い下着の湿り具合に、俺は唾を飲み込むと、布の上から隠れた割れ目をなぞりました。

「あっっやっ! そっ、そこはっ」

 お師匠様が慌てて手を伸ばし、俺の手を払おうとされましたが、俺よりも小さく、魔法を使わなければ非力な女性の手が、俺の手を払いのけることなど出来るわけがありません。

 そのまま、何度も上下に指を動かし、下着越しからでも分かるくらい勃っている肉芽を擦りました。その度に、お師匠様の口端から蜜を漏らしながら、絶え絶えに愛声を上げています。身体が震えるたびに、その豊満な二つの膨らみが、俺を誘うように揺れました。

 指に、じっとり染み出す愛液を感じます。お師匠様が、俺の指で感じてくださってる証拠です。

「お師匠様、こんなにも濡らして……。気持ちよくなって下さってるんですね」

「ちっ、違うのっ! そういうわけじゃ……、あんっ!」

「嘘は駄目ですよ。……初めてなのに、そんなにここ、気持ちよかったですか?」

「やあんっ‼︎  だっ、だめっ……、はっ、んんぁっ‼︎」

 下部の下着内に直接の手を入れると、蜜穴から肉芽にかけて、何度も愛撫を繰り返しました。

 お師匠様の両腿が締まると、まるで敏感な部分を俺の手にこりすつけるように、腰が揺れました。

 俺から与えられる刺激に我慢できず、自ら動かれたようです。しかし心はまだ罪悪感を感じている様子で、自らを恥じるように俺から視線を外しています。でも腰が揺れるのは止まらず、むしろ動きが大きくなっていくのを感じました。

 堪らず俺は、お師匠様にお願いをしました。

「俺も……我慢出来ません……。あなたと一緒に……、気持ちよくなりたいです」

 そう言って、お師匠様の下着を剥ぎ取りました。秘部が露わになり、あの方が隠そうと動かれましたが、その前に両腿を掴むと、散々焦らされ膨らんだ俺自身を秘部に当てがい、腿で挟みました。

「なっ、何を……。シオン、だめ……っ!ナカには……」

「……分かってます。今は入れません。だから……、一緒に気持ちよくなって……ください」

 あくまで、今は、ですが。

 心の中でそう付け加えると、腰を動かしました。お師匠様のたっぷり濡れた秘部が俺自身と擦れ合い、気持ちよすぎる刺激が脳内を駆け巡りました。

「すごい………、んっ……、気持ちいい……です」

 ヌルヌルした愛液と、あの方の秘部に擦れていると思うと、興奮が抑えられません。夢中で、秘部を擦り付け、その快楽を味わいました。

あの方も、俺の先が膨らみ勃つ肉芽に当たる度に、身体をよじらせています。

「あ……んっ……、きもち……いい……」

 金色の瞳が、快楽にはまりどこか虚ろになっています。
 嬉しさと気持ちよさに、腰が止まりません。それにつられ、お師匠様の反応にも変化が現れました。

「やっ……、し……おん……。なにか……、なに、か……くる……。あっ、ああっ‼︎」

 散々、愛液に塗れる肉芽を擦ったため、お師匠様が達しようとされてます。
 俺の手で初めて絶頂を迎えるなんて……、嬉しいです。

 その気持ちがきっかけで、俺の昂まりも最高潮に達しました。

「シオンっ、いっちゃうっ! ああっあぁぁっ‼︎」

「お……ししょう……さま、一緒に……!」


 気がつくと、俺の手は白濁した液で汚れてました。妄想してたら我慢出来なくなり、自室のベッドの上で自身を慰めていたようです。

「……何やってんだ、俺は……」

 お師匠様をネタにしてしまった事に、ひどく罪悪感を感じました。本当に押し倒すとかは平気なのですが、ネタにするとどうしてこう、罪悪感を感じるのでしょうか?

 俺はため息をつくと、そろそろ出掛けなければならないと焦りました。
 お師匠様と離れるのは辛いですが、仕方ありません。
 
 準備をしながら思いました。

(さっさとアカデミーの仕事を終えて、ここに戻ろう。まあお師匠様の転移珠も通信珠も処分したし、追って来られることはないだろう)

 はい。お師匠様がなくしたと思っていたアカデミー配給分の転移珠と通信珠を処分したのは俺です。ここからアカデミーまでは、かなり距離がありますから、さすがのお師匠様も徒歩や馬で行こうとは思わないでしょう。

 そう思い、俺は安心していました。

 その安心は、セリスからの通信珠による連絡で、砕け散ることになるのですが。

「おいっ、シオン‼︎ リベラが家にいないぞ‼︎」

「どっ、どういう事だ‼︎ お師匠様が行く場所など……、まっ、まさか‼︎」

「そのまさかだ。昔使っていたアカデミーの転移珠がなくなってる。恐らくリベラはアカデミーだ」

 窓からアカデミーの広場を見下ろすと、勇者候補以外の人々がたくさん集まっています。

 いつもなら、閑散としている広場ですが、よりによって外部から人が集まるこの日に、こんな事が起こるとは……。

 この中からお師匠様を探すのは……、一苦労どころではありません。

 セリスに伝えずに出かけている以上、変装しているのは間違いありません。

 いてもたってもいられず、部屋を飛び出しました。
 
 まだまだ……、お師匠様との平穏な暮らしは……、送れそうにないです。

 

 今、思い返すと、正直思うところがたくさんあります。こうしたらよかった、ああしたらよかったと。

 でもただ一つだけ、これだけは決して忘れないで欲しいのです。

 お師匠様。

 あなたにいかなる出来事が降り注ごうとも。
 あなたがどのような事になろうとも。


 ――俺はいつも、愛するあなたと共に。


***
ここまで読み進めて下さってありがとうございました!
目覚め編はこれで終わり、次回からアカデミー編が始まります。

引き続き、読んで頂けると嬉しいです!
感想など頂けたらとても嬉しいです!
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