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第6話 獣人族の村
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「そっか……2183年か……ありがとう……」
相手を見ずに、上の空で言った。
やっぱり俺は1000年間も眠っていたらしい……。果てしない時間だ……。自分が寝る前の知り合いがどうなったとか、寝ている間の世界の変わり方なんかは想像もつかない。
知ったところで実際見てみなければピンとこないだろう。だって俺の故郷も無くなったなんて聞いても見るまでは信じられないし、信じたくない。でも、これからどうするかについても含めて、色々なことを知って……考えなければ……。
「ねえ。俺が寝てた部屋にあった服とか剣とか知らない?」
歩き出す前に最後にもう1つ思いついた質問をウールにした。
「服……ですか?すみません。私には分かりません」
「だよね。ごめん……じゃあ俺もう行くね」
そりゃ1000年も前のことだから知らないか。あれも大切なものだったんだけど仕方ない。
とりあえず、聞きたいことを聞き終えた俺はまた森の中を開けたほうへ歩き出す。ウールに背を向けて1歩、2歩と……。
まずは代わりの装備を手に入れて……また冒険者暮らしってところだろうか…………。でもまだ、そう簡単には気持ちを切り替えられないな……。
「待ってください!」
しかし、そこで俺は呼び止められる。
「あの、安眠様。もしよろしければ私たちの村に来て頂けないでしょうか……」
「え?」
「ドラゴンを1つの魔法で消し去るあの力を見込んでお願いしたことがあります!色々と事情があられるようですが、それについても私共の力でお役に立てることがあるかもしれませんし、村長からなら安眠様についてもっと詳しく話が聞けると思います」
ウールはまだ立ち上がらず、その場でかしこまって三つ指をついていた。
「ほんと?」
そして実は、俺という男……その言葉を待っていた……。
1人だってなんとかさせる自信はあるけれど、できることなら誰かにサポートしてもらいたい。せっかくこうして出会えたのだし、ドラゴンを倒したお礼になんてことは思っていないが、たぶん今の俺のことを詳しく話せる人間なんて間違った解釈ではあるが俺を知っているこの子とその村の人たちだけだろうし。
だから何か理由をつけて村に誘ってもらえるのを待っていた。待ってはいたが、初対面の女の子にぐいぐいいくのも躊躇われたのでとぼけていたのだ。
「はい!ぜひ!」
「うん!行くよ!」
「ありがとうございます!」
――内心ガッツポーズした俺は、ウールの案内で山の中にある村に案内された。歩くことおそらく15分ほど、1つ小さな山を越えればそこに木造の家が並ぶ村があって、俺はそこの門をくぐって足を踏み入れた。
勝手な想像よりは田舎っぽくない村だった。家の造りもちゃんとしているし数が多い。歩く道こそ舗装されていない土の道だが、道の両脇には花が植えてあったり街灯なんかも丁寧に立っている。
その街灯はというと……今まで見たことが無いタイプの形をしていた。おそらくは1000年前には無かった魔法アイテムなのだろうが、ガラスの中央にあるあの水晶玉のような球体にはどういう風に灯りがつくのだろうか。もしかすると街頭でもないのかもしれない……。
「あれって……安眠様……」
「え、安眠様が起きてるの……それってまずいんじゃ……」
「さっきの爆発と何か関係があるのかしら……」
俺が珍しそうに1000年振りの人里を見ているのと同じように、いやそれ以上に……俺のことを珍しそうに見る視線があった。
それはもうあちらこちらから。塀の裏、窓の向こう。こちらを見ているものはほとんどが獣人。耳の形が動物と同じだったり、角が生えていたりするのですぐに分かる。きっと顔しか見せていない者も尻尾が生えていたりするのだろう。
ここは獣人族中心の村らしい。
「ここが村長の家です。どうぞお入りください」
「……ありがとう」
居心地の悪い通りを抜けると見えたこの辺で1番大きな家、ウールが開けてくれた扉をくぐる。
「村長さーん!村長さーん!………おじいちゃんー?」
後から入って来たウールはすぐに奥に走って行った。
それから玄関で待たされること十秒くらい、奥からゆっくりとした足音が近づいて来て、廊下の奥から出てきたのは小柄なおじいさんだった。ウールと同じように頭にはヒツジの角。
「ひえええ!?安眠様が起きてるぅ!?」
そして、そのおじいさんにも自分の姿を見て驚かれる。
俺はまたこの反応かと困ってしまって右手を頭の後ろに持っていった。でもそれ以上に困ったことがある。
「ぎゃああああああ」
おじいさんが驚いた拍子にあまり良くない関節音がして、おじいさんの腰が曲がった。
「だ、大丈夫すか……?」
いや、これ腰いっちゃっただろ……。
相手を見ずに、上の空で言った。
やっぱり俺は1000年間も眠っていたらしい……。果てしない時間だ……。自分が寝る前の知り合いがどうなったとか、寝ている間の世界の変わり方なんかは想像もつかない。
知ったところで実際見てみなければピンとこないだろう。だって俺の故郷も無くなったなんて聞いても見るまでは信じられないし、信じたくない。でも、これからどうするかについても含めて、色々なことを知って……考えなければ……。
「ねえ。俺が寝てた部屋にあった服とか剣とか知らない?」
歩き出す前に最後にもう1つ思いついた質問をウールにした。
「服……ですか?すみません。私には分かりません」
「だよね。ごめん……じゃあ俺もう行くね」
そりゃ1000年も前のことだから知らないか。あれも大切なものだったんだけど仕方ない。
とりあえず、聞きたいことを聞き終えた俺はまた森の中を開けたほうへ歩き出す。ウールに背を向けて1歩、2歩と……。
まずは代わりの装備を手に入れて……また冒険者暮らしってところだろうか…………。でもまだ、そう簡単には気持ちを切り替えられないな……。
「待ってください!」
しかし、そこで俺は呼び止められる。
「あの、安眠様。もしよろしければ私たちの村に来て頂けないでしょうか……」
「え?」
「ドラゴンを1つの魔法で消し去るあの力を見込んでお願いしたことがあります!色々と事情があられるようですが、それについても私共の力でお役に立てることがあるかもしれませんし、村長からなら安眠様についてもっと詳しく話が聞けると思います」
ウールはまだ立ち上がらず、その場でかしこまって三つ指をついていた。
「ほんと?」
そして実は、俺という男……その言葉を待っていた……。
1人だってなんとかさせる自信はあるけれど、できることなら誰かにサポートしてもらいたい。せっかくこうして出会えたのだし、ドラゴンを倒したお礼になんてことは思っていないが、たぶん今の俺のことを詳しく話せる人間なんて間違った解釈ではあるが俺を知っているこの子とその村の人たちだけだろうし。
だから何か理由をつけて村に誘ってもらえるのを待っていた。待ってはいたが、初対面の女の子にぐいぐいいくのも躊躇われたのでとぼけていたのだ。
「はい!ぜひ!」
「うん!行くよ!」
「ありがとうございます!」
――内心ガッツポーズした俺は、ウールの案内で山の中にある村に案内された。歩くことおそらく15分ほど、1つ小さな山を越えればそこに木造の家が並ぶ村があって、俺はそこの門をくぐって足を踏み入れた。
勝手な想像よりは田舎っぽくない村だった。家の造りもちゃんとしているし数が多い。歩く道こそ舗装されていない土の道だが、道の両脇には花が植えてあったり街灯なんかも丁寧に立っている。
その街灯はというと……今まで見たことが無いタイプの形をしていた。おそらくは1000年前には無かった魔法アイテムなのだろうが、ガラスの中央にあるあの水晶玉のような球体にはどういう風に灯りがつくのだろうか。もしかすると街頭でもないのかもしれない……。
「あれって……安眠様……」
「え、安眠様が起きてるの……それってまずいんじゃ……」
「さっきの爆発と何か関係があるのかしら……」
俺が珍しそうに1000年振りの人里を見ているのと同じように、いやそれ以上に……俺のことを珍しそうに見る視線があった。
それはもうあちらこちらから。塀の裏、窓の向こう。こちらを見ているものはほとんどが獣人。耳の形が動物と同じだったり、角が生えていたりするのですぐに分かる。きっと顔しか見せていない者も尻尾が生えていたりするのだろう。
ここは獣人族中心の村らしい。
「ここが村長の家です。どうぞお入りください」
「……ありがとう」
居心地の悪い通りを抜けると見えたこの辺で1番大きな家、ウールが開けてくれた扉をくぐる。
「村長さーん!村長さーん!………おじいちゃんー?」
後から入って来たウールはすぐに奥に走って行った。
それから玄関で待たされること十秒くらい、奥からゆっくりとした足音が近づいて来て、廊下の奥から出てきたのは小柄なおじいさんだった。ウールと同じように頭にはヒツジの角。
「ひえええ!?安眠様が起きてるぅ!?」
そして、そのおじいさんにも自分の姿を見て驚かれる。
俺はまたこの反応かと困ってしまって右手を頭の後ろに持っていった。でもそれ以上に困ったことがある。
「ぎゃああああああ」
おじいさんが驚いた拍子にあまり良くない関節音がして、おじいさんの腰が曲がった。
「だ、大丈夫すか……?」
いや、これ腰いっちゃっただろ……。
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