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第11話 とある日の魔法トレーニング
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両親2人の強さを知った俺はまた、すくすくと育った。1日1日と日々を重ねて、1歩ずつ成長していった。
ただの冥府の王族だと思っていた。いやその時点で、ただのというのはおかしいが、加えて勇者の息子だった。
何それどういう血統、とんでも最強血統ではないか。何があって勇者と冥府の王女が結婚した……まだ俺には分からないけど、間違いなくこの世界で俺1人だけ。
そんな最強の両親の血を色濃く受け継いでいるらしい俺は、いつかきっとその背中に追い付ける。近づいていくのは、楽しかった。
やればやるほど、できることが増えていく。昨日できなかったことができるようになる瞬間がある。たまらない快感だった。
そうして、また長い歳月が過ぎていく――。
成長の日々で、何より俺の興味を引いたのは魔法であった。これはもうもちろんと言っていいかもしれない。やっぱり前の世界には無かったこの概念は燃える。
その難しさも俺を惹きつける理由であろう。
勉強や剣術をおろそかにしている訳ではないけれど、魔法の時間は特別楽しかったし、特別気合を入れていた。
――とある日の午後も俺は、城の中庭にて魔法のトレーニングを行っていた。
午前中は勉強をして――昼食を終えると――すぐに動きやすい服に着替えて――城の中庭に出た――。
侍女の1人に後ろから見守られながら芝生に立った俺は、少し離れた位置にある的に向かって右手を伸ばす。程々に力を抜きながらも、5本の指はほんのり開いて、精神を集中させる。
そして、体にあるエネルギーを一気に右手へ集中させた。
感覚で言えば、前世で怪しげな人がテレビで言っていた「気のコントロール」だとか、小学生の頃にやった漫画やアニメの主人公の必殺技の練習と変わらない。
人間にはなんとなくエネルギーを集中させる感覚というものがある。いくら頑張ったって何も出る訳はないけど、ぐっと力を込めれば手の平から何かを放出できそうな感覚。
この世界では本当に魔力というエネルギーを放出することができた。
こうして体中を流れるエネルギーを全て、右手に集中させるイメージを強く持てば……。
前世でそれをやるよりも遥かに大きな手ごたえを感じて、右手の向こうまで突き抜けていく……。
(風よ、出ろっ)
そう念じながら放ったのは、できるようになったばかりの風の魔法だった。
まだ100発100中で成功するわけではないけど、今回はかなり上手くいった。
だから……口からふーっと息を吹くのと同じくらいの風が手から出た……。
「すごいですね!坊ちゃま!」
「…………」
「もう3つ目の性質変化ができるようになるなんて、私も驚くばかりです」
「……いやさ、本当にこれでいいの?」
手を叩いて褒める侍女に対して、俺は唇をむっとさせて言った。
右手から出る風は、自分の髪に向けてふわふわとさせる。まるでドライヤーみたいな風量、こんなので本当に正しく魔法が機能しているのかというアピールである。
これじゃスカートめくりとかも充分にできないが、本当の本当に合っているのか。
「何をおっしゃいます。基本の5属性への性質変化は私でも2つしかできませんよ」
そう言うと、侍女の1人は片手からは電気をバチバチとさせ、もう片方の手からは宙に浮かぶ水の玉を作り出す――。
ただの冥府の王族だと思っていた。いやその時点で、ただのというのはおかしいが、加えて勇者の息子だった。
何それどういう血統、とんでも最強血統ではないか。何があって勇者と冥府の王女が結婚した……まだ俺には分からないけど、間違いなくこの世界で俺1人だけ。
そんな最強の両親の血を色濃く受け継いでいるらしい俺は、いつかきっとその背中に追い付ける。近づいていくのは、楽しかった。
やればやるほど、できることが増えていく。昨日できなかったことができるようになる瞬間がある。たまらない快感だった。
そうして、また長い歳月が過ぎていく――。
成長の日々で、何より俺の興味を引いたのは魔法であった。これはもうもちろんと言っていいかもしれない。やっぱり前の世界には無かったこの概念は燃える。
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勉強や剣術をおろそかにしている訳ではないけれど、魔法の時間は特別楽しかったし、特別気合を入れていた。
――とある日の午後も俺は、城の中庭にて魔法のトレーニングを行っていた。
午前中は勉強をして――昼食を終えると――すぐに動きやすい服に着替えて――城の中庭に出た――。
侍女の1人に後ろから見守られながら芝生に立った俺は、少し離れた位置にある的に向かって右手を伸ばす。程々に力を抜きながらも、5本の指はほんのり開いて、精神を集中させる。
そして、体にあるエネルギーを一気に右手へ集中させた。
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人間にはなんとなくエネルギーを集中させる感覚というものがある。いくら頑張ったって何も出る訳はないけど、ぐっと力を込めれば手の平から何かを放出できそうな感覚。
この世界では本当に魔力というエネルギーを放出することができた。
こうして体中を流れるエネルギーを全て、右手に集中させるイメージを強く持てば……。
前世でそれをやるよりも遥かに大きな手ごたえを感じて、右手の向こうまで突き抜けていく……。
(風よ、出ろっ)
そう念じながら放ったのは、できるようになったばかりの風の魔法だった。
まだ100発100中で成功するわけではないけど、今回はかなり上手くいった。
だから……口からふーっと息を吹くのと同じくらいの風が手から出た……。
「すごいですね!坊ちゃま!」
「…………」
「もう3つ目の性質変化ができるようになるなんて、私も驚くばかりです」
「……いやさ、本当にこれでいいの?」
手を叩いて褒める侍女に対して、俺は唇をむっとさせて言った。
右手から出る風は、自分の髪に向けてふわふわとさせる。まるでドライヤーみたいな風量、こんなので本当に正しく魔法が機能しているのかというアピールである。
これじゃスカートめくりとかも充分にできないが、本当の本当に合っているのか。
「何をおっしゃいます。基本の5属性への性質変化は私でも2つしかできませんよ」
そう言うと、侍女の1人は片手からは電気をバチバチとさせ、もう片方の手からは宙に浮かぶ水の玉を作り出す――。
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