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word37 「SNS バズらせ方」②
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メッセージが来ていたのはちょうど30分前。興味を引くその文は1つの共有リンクと共に送信されていた。
タップすればSNSのアプリが件の投稿まで僕を導いて、不透明だった詳細を明らかにする――。
「いつもすぐ抱っこしてあげてるのにずっとスマホで動画撮ってたらブチ切れられた」
そんな文と一緒に投稿されている1つの動画。再生開始の時点で1匹の犬の顔がアップで表示されている。僕もその友人の家で会ったことがあるコーギーだった。
自動で再生が開始される動画。確か名前はブン太であるコーギーがずっとこちらを見ている……。
動物にあまり興味が無い僕でも友達の家に行ったときに見てかわいいなと思った犬だ。ただ黙って写っているだけでもくりっとした目がかわいい。しかし、犬の動画よりも気になるのが、その投稿の拡散回数。
なんと1万を超える数の拡散。ハートマークの横にはさらに多い2.3万という数字があった。
何事かと思った僕はまず動画をちゃんと見ることにした。再生画面をタップして、顔を画面に近づける。
ブン太を収めた画面が少しズームアウトすると、ブン太が足をもぞもぞした。そして、小さな声でクーンと鳴く。徐々にその声は大きくなっていって、足の動きも激しくなる。
どうやら何かを求めて撮影者の傍にいるらしいブン太は、次に手招きをするように足を動かし始めた。なのに撮影者は何もせず無言のままカメラを構え続ける。
動きが激しくなっていくブン太。そして、次の瞬間吠えながら撮影者に向かって突進した。
怒り狂ったブン太はおそらく友人である撮影者の足の上に無理やり飛び乗り、そこで先程までとは違う唸り声をあげる。
ブン太の行動に乱れたカメラは最終的に噛みついてくるようなブン太の顔に支配されて、さらにブン太の追撃により撮影者はカメラを落とす。真っ黒な画面の中で人が襲われるような音が聞こえて動画は終わった……。
なるほど確かにかわいい。バズるに値する動画だと、見終わった僕は思う。犬が甘えてくる動画なのになんとなくホラーっぽい展開と最後を迎えていてシュールなのが面白いし。
僕は1度も経験が無いSNSでバズるといった現象。それの真っ最中である友達の投稿に来ている返信もざっと見てみる。
そこにはバズった投稿でよくあるような大喜利や感想が書かれていた。
『こっわ』
『強制的に抱っこを要求してくる危険生物』
『犬「カメラ構えてないで抱っこしろや」』
『かわいすぎる。私の家にも欲しい』
へー、と感心しながら返信を見ていると、たったそれだけの時間で動画の再生回数は1000くらい増えていた。昨日の夜に投稿されているので、今は伸びている真っ最中である。
毎日見ているたくさんの人が反応している投稿だけど、知り合いがそれを経験しているとなると僕も心が躍った。シンプルにすごいという感想が出てくる。
昨日はテスト勉強、今日は帰ってきてからずっとギターの練習で丸一日くらいSNSを覗いてなかった間にこんなことになっていたとは。友人のアカウントをタップすると、バズったことの喜び投稿もたくさんあった。
『ヤバwwwwww』
『通知が止まらねえんだけどwwww』
僕はそんなバズった人間のテンプレみたいな喜び方をしている友達の投稿を見ると、あることを思いついた。
けれど、それを行う前に「気づいてなかったわ。すげーじゃん。俺も拡散しといたぞ」と友達に返信を送る。
おそらくずっとスマホを見ているからか返事はすぐに来た。
「何千個も通知来て怖いわ」
微笑ましさに笑って、それと同時に僕はより早く思いついたことを試したくなった。メッセージ画面を開いたまま立ち上がって黒いパソコンを取り出す。
面白そう。羨ましい。それ、自分もやってみたい――。
「SNS バズらせ方」
僕はそんなワードを入力した。
タップすればSNSのアプリが件の投稿まで僕を導いて、不透明だった詳細を明らかにする――。
「いつもすぐ抱っこしてあげてるのにずっとスマホで動画撮ってたらブチ切れられた」
そんな文と一緒に投稿されている1つの動画。再生開始の時点で1匹の犬の顔がアップで表示されている。僕もその友人の家で会ったことがあるコーギーだった。
自動で再生が開始される動画。確か名前はブン太であるコーギーがずっとこちらを見ている……。
動物にあまり興味が無い僕でも友達の家に行ったときに見てかわいいなと思った犬だ。ただ黙って写っているだけでもくりっとした目がかわいい。しかし、犬の動画よりも気になるのが、その投稿の拡散回数。
なんと1万を超える数の拡散。ハートマークの横にはさらに多い2.3万という数字があった。
何事かと思った僕はまず動画をちゃんと見ることにした。再生画面をタップして、顔を画面に近づける。
ブン太を収めた画面が少しズームアウトすると、ブン太が足をもぞもぞした。そして、小さな声でクーンと鳴く。徐々にその声は大きくなっていって、足の動きも激しくなる。
どうやら何かを求めて撮影者の傍にいるらしいブン太は、次に手招きをするように足を動かし始めた。なのに撮影者は何もせず無言のままカメラを構え続ける。
動きが激しくなっていくブン太。そして、次の瞬間吠えながら撮影者に向かって突進した。
怒り狂ったブン太はおそらく友人である撮影者の足の上に無理やり飛び乗り、そこで先程までとは違う唸り声をあげる。
ブン太の行動に乱れたカメラは最終的に噛みついてくるようなブン太の顔に支配されて、さらにブン太の追撃により撮影者はカメラを落とす。真っ黒な画面の中で人が襲われるような音が聞こえて動画は終わった……。
なるほど確かにかわいい。バズるに値する動画だと、見終わった僕は思う。犬が甘えてくる動画なのになんとなくホラーっぽい展開と最後を迎えていてシュールなのが面白いし。
僕は1度も経験が無いSNSでバズるといった現象。それの真っ最中である友達の投稿に来ている返信もざっと見てみる。
そこにはバズった投稿でよくあるような大喜利や感想が書かれていた。
『こっわ』
『強制的に抱っこを要求してくる危険生物』
『犬「カメラ構えてないで抱っこしろや」』
『かわいすぎる。私の家にも欲しい』
へー、と感心しながら返信を見ていると、たったそれだけの時間で動画の再生回数は1000くらい増えていた。昨日の夜に投稿されているので、今は伸びている真っ最中である。
毎日見ているたくさんの人が反応している投稿だけど、知り合いがそれを経験しているとなると僕も心が躍った。シンプルにすごいという感想が出てくる。
昨日はテスト勉強、今日は帰ってきてからずっとギターの練習で丸一日くらいSNSを覗いてなかった間にこんなことになっていたとは。友人のアカウントをタップすると、バズったことの喜び投稿もたくさんあった。
『ヤバwwwwww』
『通知が止まらねえんだけどwwww』
僕はそんなバズった人間のテンプレみたいな喜び方をしている友達の投稿を見ると、あることを思いついた。
けれど、それを行う前に「気づいてなかったわ。すげーじゃん。俺も拡散しといたぞ」と友達に返信を送る。
おそらくずっとスマホを見ているからか返事はすぐに来た。
「何千個も通知来て怖いわ」
微笑ましさに笑って、それと同時に僕はより早く思いついたことを試したくなった。メッセージ画面を開いたまま立ち上がって黒いパソコンを取り出す。
面白そう。羨ましい。それ、自分もやってみたい――。
「SNS バズらせ方」
僕はそんなワードを入力した。
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