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word34 「軽音楽部 部員一覧」①
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各部活に対するイメージっていうものがこの世にはあると思う。
この部活に所属している人はこうだとか、ああいう人が多いとか。あの部活入る人間は陽キャだよね、陰キャだよねとか。そんな話はきっとどこにでもあるものである。
例えば、サッカー部に所属している奴はチャラい奴が多いだとか。野球部は丸坊主でいつもうるさいなんて言われてるのを聞いたことがある。各々が脳内にある各部活のイメージを言って、他人の考えを聞いたり共感して楽しむのだ。
でもまあそれって、ほとんど偏見というか……。そりゃ共通しているイメージもあるだろうけど、そんなもん人の育ってきた環境によってまちまちなはずだ。
たくさんの人が持つイメージとはかけ離れたケースもまた多くある訳で。真面目で紳士なサッカー部もいるし、寡黙で仕事人タイプの野球部もいる。各中学校や高校で陽キャの部活と陰キャの部活も違っているはず。
僕の住んでいる地域の僕の世代ではサッカーがあまり人気が無くて、中学でも高校でもサッカー部はスクールカースト上位では無かった。そもそも人数がかなり少ない。ちょっと珍しい学校だと思う。
そんな中でも「軽音楽部」って言うと世間の人はそれぞれどんなイメージを持っているのだろう。メジャーな部活ではないので話題になることはあまりない。けれど、名前を聞いたことが無いほどではないのできっとイメージはあるはず。
僕にとってそれは今、好きな人がいる部活で………それともう1つ、親友がいる部活というイメージであった…………。
「なあ。お前ってさ。軽音楽部……入ってるじゃん?」
「うん」
休み時間の教室、親友の席に出向いた僕は彼の目を見ずに話す。
「1年のときからさ」
「うん」
「中学生の頃からさ、ギターだかベースだかもやってたじゃん?」
「初めはギターやってたんだけど、すぐベースに乗り換えたんだよね」
「ああ……それで……なんか作詞もやってたよな。あのノートに書いてたやつ」
「それは言うなよ。あれは、まあいわゆる黒歴史の……」
「恋がなんちゃらとか書いてたよな。そういえば」
「もうええって。急になんなん」
親友が僕の手を強く握りながら笑う。
好きな人とはもちろん折原のことで、その人が所属する部活の内情を知っている親友に僕は聞きたいことがあった。だから、ある日それを聞くと決めて話しかけた。
でも、いざ言おうとするとそれを言うのが何だか恥ずかしくって。僕は違う方向へ話を逸らしてしまった。
「初めて見た時は言いづらかったけど見てるこっちも恥ずかしかったよなあ……いやいや、悪い悪い。ベースって難しいの?」
「初めは難しかったかな。まあ練習したら簡単って訳でもなくて、上手く弾くにはとにかく練習……かな」
「へー……。んでさ、軽音楽部ってどんな感じなん?」
ようやく聞きたいことを口にする。今の僕の目標のための第一歩である。
「どんな感じ……まあ、ぶっちゃけ特に何もやってないかな。いっつも雑談してるよ」
「え」
「いやもちろん楽器を弾いたり合わせたりすることもあるけど、基本的に皆やりたい曲も違うし部員でバンド組んでるとかもないし。基本雑談かな。そもそも週3くらいの気分活動」
「文化祭のときとかも軽音楽部で演奏とかも無かったもんな。それぞれクラスで別の誰かとやってたりしたけど」
「そうやね」
「実質帰宅部みたいな?」
「否定はしないかな」
聞けることならもっと深く。できれば自分よりは近いであろう親友に折原さんのこととか折原さんのことを聞きたかったけど僕はそこで一旦止まる。
「何?なんか楽器始めたいとか?」
代わりに親友が質問を始める。
「いや。まあ……そのような違うような」
「軽音楽部入るの?」
「うーん……軽音楽部に入りたいとかではなくと言うか」
「何?」
「好きなバンドのライブ映像見て、俺もちょっと楽器に憧れはしたんだよね――」
もちろんのこと、目標とは軽音楽部に入部して折原とお近づきになることであった。しかし、その日はそれとなく楽器に興味があるアピールをするだけで、しっかりと入部したいということを言うことは無かった。
優しい親友は会話の終わりに「入りたいんだったら歓迎するよ」と言ってくれた。それだけで今日のところは充分な収穫だった。
――授業が終わって帰宅した僕は自室まで帰ってくると、黒いパソコンを取り出した。
目標の為に知っておきたいことや、やらなければいけないことはいくつかある。その1つを検索する為である。
「軽音楽部 部員一覧」
今日の検索はこれだ。軽音楽部の規模とメンバーを知る。
これに関しては大体把握していてそこまで知りたいことではなく、そんな奴も思い浮かばないけど嫌いな奴とか苦手な奴がいないか確認するため。
ぶっちゃけ検索しなくてもいいくらい。黒いパソコンで検索するというのにその内容よりも別のことを考えているくらいだった。
別のこととは、軽音楽部に入るために何の楽器を始めるかということである。
この部活に所属している人はこうだとか、ああいう人が多いとか。あの部活入る人間は陽キャだよね、陰キャだよねとか。そんな話はきっとどこにでもあるものである。
例えば、サッカー部に所属している奴はチャラい奴が多いだとか。野球部は丸坊主でいつもうるさいなんて言われてるのを聞いたことがある。各々が脳内にある各部活のイメージを言って、他人の考えを聞いたり共感して楽しむのだ。
でもまあそれって、ほとんど偏見というか……。そりゃ共通しているイメージもあるだろうけど、そんなもん人の育ってきた環境によってまちまちなはずだ。
たくさんの人が持つイメージとはかけ離れたケースもまた多くある訳で。真面目で紳士なサッカー部もいるし、寡黙で仕事人タイプの野球部もいる。各中学校や高校で陽キャの部活と陰キャの部活も違っているはず。
僕の住んでいる地域の僕の世代ではサッカーがあまり人気が無くて、中学でも高校でもサッカー部はスクールカースト上位では無かった。そもそも人数がかなり少ない。ちょっと珍しい学校だと思う。
そんな中でも「軽音楽部」って言うと世間の人はそれぞれどんなイメージを持っているのだろう。メジャーな部活ではないので話題になることはあまりない。けれど、名前を聞いたことが無いほどではないのできっとイメージはあるはず。
僕にとってそれは今、好きな人がいる部活で………それともう1つ、親友がいる部活というイメージであった…………。
「なあ。お前ってさ。軽音楽部……入ってるじゃん?」
「うん」
休み時間の教室、親友の席に出向いた僕は彼の目を見ずに話す。
「1年のときからさ」
「うん」
「中学生の頃からさ、ギターだかベースだかもやってたじゃん?」
「初めはギターやってたんだけど、すぐベースに乗り換えたんだよね」
「ああ……それで……なんか作詞もやってたよな。あのノートに書いてたやつ」
「それは言うなよ。あれは、まあいわゆる黒歴史の……」
「恋がなんちゃらとか書いてたよな。そういえば」
「もうええって。急になんなん」
親友が僕の手を強く握りながら笑う。
好きな人とはもちろん折原のことで、その人が所属する部活の内情を知っている親友に僕は聞きたいことがあった。だから、ある日それを聞くと決めて話しかけた。
でも、いざ言おうとするとそれを言うのが何だか恥ずかしくって。僕は違う方向へ話を逸らしてしまった。
「初めて見た時は言いづらかったけど見てるこっちも恥ずかしかったよなあ……いやいや、悪い悪い。ベースって難しいの?」
「初めは難しかったかな。まあ練習したら簡単って訳でもなくて、上手く弾くにはとにかく練習……かな」
「へー……。んでさ、軽音楽部ってどんな感じなん?」
ようやく聞きたいことを口にする。今の僕の目標のための第一歩である。
「どんな感じ……まあ、ぶっちゃけ特に何もやってないかな。いっつも雑談してるよ」
「え」
「いやもちろん楽器を弾いたり合わせたりすることもあるけど、基本的に皆やりたい曲も違うし部員でバンド組んでるとかもないし。基本雑談かな。そもそも週3くらいの気分活動」
「文化祭のときとかも軽音楽部で演奏とかも無かったもんな。それぞれクラスで別の誰かとやってたりしたけど」
「そうやね」
「実質帰宅部みたいな?」
「否定はしないかな」
聞けることならもっと深く。できれば自分よりは近いであろう親友に折原さんのこととか折原さんのことを聞きたかったけど僕はそこで一旦止まる。
「何?なんか楽器始めたいとか?」
代わりに親友が質問を始める。
「いや。まあ……そのような違うような」
「軽音楽部入るの?」
「うーん……軽音楽部に入りたいとかではなくと言うか」
「何?」
「好きなバンドのライブ映像見て、俺もちょっと楽器に憧れはしたんだよね――」
もちろんのこと、目標とは軽音楽部に入部して折原とお近づきになることであった。しかし、その日はそれとなく楽器に興味があるアピールをするだけで、しっかりと入部したいということを言うことは無かった。
優しい親友は会話の終わりに「入りたいんだったら歓迎するよ」と言ってくれた。それだけで今日のところは充分な収穫だった。
――授業が終わって帰宅した僕は自室まで帰ってくると、黒いパソコンを取り出した。
目標の為に知っておきたいことや、やらなければいけないことはいくつかある。その1つを検索する為である。
「軽音楽部 部員一覧」
今日の検索はこれだ。軽音楽部の規模とメンバーを知る。
これに関しては大体把握していてそこまで知りたいことではなく、そんな奴も思い浮かばないけど嫌いな奴とか苦手な奴がいないか確認するため。
ぶっちゃけ検索しなくてもいいくらい。黒いパソコンで検索するというのにその内容よりも別のことを考えているくらいだった。
別のこととは、軽音楽部に入るために何の楽器を始めるかということである。
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