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word32 「迷子 親の場所」②
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「……え?」
「えへへ。っへへ」
僕の膝上あたりを叩く少女。3回ほど、高い声で笑いながら。
「あ……たっち……タッチね」
それを受けた僕はどもってしまった。同級生の女子と話すよりもよっぽど何を言っていいか分からない。
そんな必要はないのに手を胸の位置まで上げて敵意が無いのをアピールして、その状態でどこかに少女の保護者ががいないか探す。さっきの曲がり角の道まで。
しかし、大人の姿がないどころか誰もいない……。住宅街の真ん中で少女の笑い声と遠くからの車の音だけが周囲に響いていた。
知らない少女が1人きり……僕はこの時点で、ある推測が頭に生まれた。
この子は迷子の状態にあるのではないかと。
「お、お母さんはどこにいるの?」
「おかあさん?」
「うん。一緒に来た?」
「いっしょだよ」
少女が後ろを振り返る。すぐ後ろにいると思っていた様子で上を見上げた。もちろんそこには誰もいなくて、さらに僕と同じように周囲を確認するけど、僕と同じように誰も見つけられない。
そして、一通り首を振り終えると……。
「おかあさん……どこ……?」
急に元気を失い、不安そうな顔で僕を見て言った。
やっぱり迷子か――。ツッコミ半分、僕も不安半分で思う。
「お母さんどこ行っちゃったか分かんなくなっちゃった?」
少女がうなずく。
「さっきまで一緒だったの?」
「…………」
「こっちの道から今来たよね?」
「…………」
少女自身、自分が迷子になっていると今気づいたらしくてかなり絶望している模様。さっきまで笑顔だったのに、なんだか今にも泣きだしそうな顔に変わって返事もしてくれなくなった。
いきなり僕を追いかけてきてタッチしてきたという状況から察するに、おそらくは勝手に僕を対象に鬼ごっこでも始めてついて来てしまって、夢中になっている内に親と離れてしまったっというところか。
何で僕なんかについて来たのか分からないが、子供の行動は読めないと言うし……。
「もしかしてお兄ちゃんとも一緒だった?」
「……うんうん」
「追いかけっこが好きなの?」
「……うんうん」
どちらも少女は首を振る。お兄ちゃんと間違えてついて来てしまったのかとも考えたが……まあこの際何で迷子になったかとかはどうでもいいか。
問題なのはこの子をどうやって親の元まで送り届けるかということだ――。
「どこから来たか分かるかな…………じゃあ、今日はどこに行ってた?……」
それから僕は少女にいくつか質問をした。どこに連れて行けば少女の迷子が終わらせられるか特定するための質問だ。
少女はやはり動揺している様子で、分かっているのか分かっていないのか判断ができないような返事をした。その不安が痛いほど伝わってくるのだけど、僕は安心させてあげられる良い言葉を知らなくて……。
ありきたりな質問をなるべく優しい声で聞くことしかできなかった。だから結局、得られた確かな情報は少女の名前だけだった。
「ちひろちゃんって言うんだ?」
「うん……ちひろ」
「じゃあ俺も手伝うからお母さん探しにいこっか」
「……ありがとう」
ここでようやく僕から近づいて背中を軽く叩くと、シャンプーの匂いだか服の匂いだか、石鹸系の良い匂いがした。頭に付いた何のキャラクターだか分からない髪飾りからも誰かに大切に育てられている子だと分かる。
名前を知って「ありがとう」と一言もらっただけでも、かなり親心というか、自分が責任持って守ってあげないとという気持ちが湧いた。
でも、そんなに肩に力を入れなくても大丈夫なはずだ。だって僕には……。
「安心して。俺はもうお母さんの居場所分かったから。絶対連れてってあげる」
「えへへ。っへへ」
僕の膝上あたりを叩く少女。3回ほど、高い声で笑いながら。
「あ……たっち……タッチね」
それを受けた僕はどもってしまった。同級生の女子と話すよりもよっぽど何を言っていいか分からない。
そんな必要はないのに手を胸の位置まで上げて敵意が無いのをアピールして、その状態でどこかに少女の保護者ががいないか探す。さっきの曲がり角の道まで。
しかし、大人の姿がないどころか誰もいない……。住宅街の真ん中で少女の笑い声と遠くからの車の音だけが周囲に響いていた。
知らない少女が1人きり……僕はこの時点で、ある推測が頭に生まれた。
この子は迷子の状態にあるのではないかと。
「お、お母さんはどこにいるの?」
「おかあさん?」
「うん。一緒に来た?」
「いっしょだよ」
少女が後ろを振り返る。すぐ後ろにいると思っていた様子で上を見上げた。もちろんそこには誰もいなくて、さらに僕と同じように周囲を確認するけど、僕と同じように誰も見つけられない。
そして、一通り首を振り終えると……。
「おかあさん……どこ……?」
急に元気を失い、不安そうな顔で僕を見て言った。
やっぱり迷子か――。ツッコミ半分、僕も不安半分で思う。
「お母さんどこ行っちゃったか分かんなくなっちゃった?」
少女がうなずく。
「さっきまで一緒だったの?」
「…………」
「こっちの道から今来たよね?」
「…………」
少女自身、自分が迷子になっていると今気づいたらしくてかなり絶望している模様。さっきまで笑顔だったのに、なんだか今にも泣きだしそうな顔に変わって返事もしてくれなくなった。
いきなり僕を追いかけてきてタッチしてきたという状況から察するに、おそらくは勝手に僕を対象に鬼ごっこでも始めてついて来てしまって、夢中になっている内に親と離れてしまったっというところか。
何で僕なんかについて来たのか分からないが、子供の行動は読めないと言うし……。
「もしかしてお兄ちゃんとも一緒だった?」
「……うんうん」
「追いかけっこが好きなの?」
「……うんうん」
どちらも少女は首を振る。お兄ちゃんと間違えてついて来てしまったのかとも考えたが……まあこの際何で迷子になったかとかはどうでもいいか。
問題なのはこの子をどうやって親の元まで送り届けるかということだ――。
「どこから来たか分かるかな…………じゃあ、今日はどこに行ってた?……」
それから僕は少女にいくつか質問をした。どこに連れて行けば少女の迷子が終わらせられるか特定するための質問だ。
少女はやはり動揺している様子で、分かっているのか分かっていないのか判断ができないような返事をした。その不安が痛いほど伝わってくるのだけど、僕は安心させてあげられる良い言葉を知らなくて……。
ありきたりな質問をなるべく優しい声で聞くことしかできなかった。だから結局、得られた確かな情報は少女の名前だけだった。
「ちひろちゃんって言うんだ?」
「うん……ちひろ」
「じゃあ俺も手伝うからお母さん探しにいこっか」
「……ありがとう」
ここでようやく僕から近づいて背中を軽く叩くと、シャンプーの匂いだか服の匂いだか、石鹸系の良い匂いがした。頭に付いた何のキャラクターだか分からない髪飾りからも誰かに大切に育てられている子だと分かる。
名前を知って「ありがとう」と一言もらっただけでも、かなり親心というか、自分が責任持って守ってあげないとという気持ちが湧いた。
でも、そんなに肩に力を入れなくても大丈夫なはずだ。だって僕には……。
「安心して。俺はもうお母さんの居場所分かったから。絶対連れてってあげる」
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