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番外編1 「デスゲーム 終わらせ方」①
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「今カら このクラスの全員デ殺し合いのゲームをしテもらいまーす」
唐突な話であるけれど、ある日の午後の授業でこんなセリフが僕たちのクラスに放たれた。化学室で化学の授業が始まるとすぐのことである。
突然部屋のカーテンが動き出して全ての窓を覆えば、次の瞬間に化学室の隅に置いてあったミニサイズの人体模型がこれまたひとりでに動き出した。
子供用のおもちゃくらいチープなデザインでずんぐりむっくりな人体模型は黒板の前にある先生用の机の上によじ登り、口を開いて話しだしたのだ。
デスゲームを開催すると――。
「タのしいタのしいバースゲームのはじまりはじまり~。今から1カ月かけテ開催するゲームで君たちの何人カに死んデもらうよ~。何人死ぬカは君タちの行動次第、なるべく多く生き残れるように頑張っテね~」
誰かのイタズラか、それとも先生がサプライズで何か企画しているのか。高い声で響く異様な宣言に教室がざわつく。
化学室でも前の方の席だった僕はいち早く異変に気づいていた。何しろミニ人体模型は機械仕掛けではなく、人のように動いている。
「えーっと……。誰のイタズラですかね。預かっておくのでこれをやった人は授業の後にここへ残ってください」
先生がミニ人体模型に手を伸ばす。しかし頭を掴まれてもミニ人体模型は動じず、話を続けた。
「さっそク詳しいルール説明に入るよ~。1回しか言わないのデ、しっかり聞いテね。二度同じことを言わせるなヨ。これから1カ月間、化学の時間はバースゲームの時間になるよ。毎回違うルールのゲームをして敗北者を決めて、敗北者になった人には死んでもらうよ……」
「ん……?動かないな」
腕に力を入れてミニ人体模型を持ち上げようとしている先生。しかし、ミニ人体模型はそれでもびくともせず……。
そして……。
「ちょっト緊張感がないナ~」
次の瞬間、先生が倒れた――。
重く深い振動音が教室中に届くくらいの音で数秒。それと連動して先生の体が不規則に震えた。机の上にぐったり先生が倒れ込んだ後には、行き場を失ったそれが今度ははじけるような音を数度。
音だけでもすぐに分かるけど、僕の席からはしっかりと目で捉えることができた。ミニ人体模型の指と指の間で暴れる青紫色の電流が。
「静かに聞いてネ。ふざけてやっちゃせっかくのゲームが面白クない」
言われなくても静かになった教室。横目で見た隣の女子は肩を抱いて震えていた。
「敗北者の数はゲームによっテ違うよ。そのゲームにおける参加者の行動デも変わる。1つのゲームで1人しか死なないこともあれば、半分くらい死んじゃうこともアルかもね。でも、安心して。中には誰も死なない攻略法があるゲームだっテ存在する。それに……最後まで生きることがデきた勝者にはなんと……1億円の賞金をプレゼント!」
ミニ人体模型だけが嬉しそうに拍手する。その長い拍手をクラス全員見ていることだけしかできなくて、誰も動くことは無かった。
「時間が無いからどんどんイくよ。最初のゲームの発表。記念すべき君たちの第一回バースゲーム、ゲーム名はブラックボート。こうならずに生き抜けるように頑張っテね」
ミニ人体模型が話しながら持ち上げた先生の顔には稲妻が這ったあとの傷がシダ状に赤く浮き出ていて、目は白目を剥いていた。
いよいよ同級生の女子の1人が悲鳴をあげて、それが試合開始を告げるホイッスルかのように僕たちのデスゲームは始まった。
唐突な話であるけれど、ある日の午後の授業でこんなセリフが僕たちのクラスに放たれた。化学室で化学の授業が始まるとすぐのことである。
突然部屋のカーテンが動き出して全ての窓を覆えば、次の瞬間に化学室の隅に置いてあったミニサイズの人体模型がこれまたひとりでに動き出した。
子供用のおもちゃくらいチープなデザインでずんぐりむっくりな人体模型は黒板の前にある先生用の机の上によじ登り、口を開いて話しだしたのだ。
デスゲームを開催すると――。
「タのしいタのしいバースゲームのはじまりはじまり~。今から1カ月かけテ開催するゲームで君たちの何人カに死んデもらうよ~。何人死ぬカは君タちの行動次第、なるべく多く生き残れるように頑張っテね~」
誰かのイタズラか、それとも先生がサプライズで何か企画しているのか。高い声で響く異様な宣言に教室がざわつく。
化学室でも前の方の席だった僕はいち早く異変に気づいていた。何しろミニ人体模型は機械仕掛けではなく、人のように動いている。
「えーっと……。誰のイタズラですかね。預かっておくのでこれをやった人は授業の後にここへ残ってください」
先生がミニ人体模型に手を伸ばす。しかし頭を掴まれてもミニ人体模型は動じず、話を続けた。
「さっそク詳しいルール説明に入るよ~。1回しか言わないのデ、しっかり聞いテね。二度同じことを言わせるなヨ。これから1カ月間、化学の時間はバースゲームの時間になるよ。毎回違うルールのゲームをして敗北者を決めて、敗北者になった人には死んでもらうよ……」
「ん……?動かないな」
腕に力を入れてミニ人体模型を持ち上げようとしている先生。しかし、ミニ人体模型はそれでもびくともせず……。
そして……。
「ちょっト緊張感がないナ~」
次の瞬間、先生が倒れた――。
重く深い振動音が教室中に届くくらいの音で数秒。それと連動して先生の体が不規則に震えた。机の上にぐったり先生が倒れ込んだ後には、行き場を失ったそれが今度ははじけるような音を数度。
音だけでもすぐに分かるけど、僕の席からはしっかりと目で捉えることができた。ミニ人体模型の指と指の間で暴れる青紫色の電流が。
「静かに聞いてネ。ふざけてやっちゃせっかくのゲームが面白クない」
言われなくても静かになった教室。横目で見た隣の女子は肩を抱いて震えていた。
「敗北者の数はゲームによっテ違うよ。そのゲームにおける参加者の行動デも変わる。1つのゲームで1人しか死なないこともあれば、半分くらい死んじゃうこともアルかもね。でも、安心して。中には誰も死なない攻略法があるゲームだっテ存在する。それに……最後まで生きることがデきた勝者にはなんと……1億円の賞金をプレゼント!」
ミニ人体模型だけが嬉しそうに拍手する。その長い拍手をクラス全員見ていることだけしかできなくて、誰も動くことは無かった。
「時間が無いからどんどんイくよ。最初のゲームの発表。記念すべき君たちの第一回バースゲーム、ゲーム名はブラックボート。こうならずに生き抜けるように頑張っテね」
ミニ人体模型が話しながら持ち上げた先生の顔には稲妻が這ったあとの傷がシダ状に赤く浮き出ていて、目は白目を剥いていた。
いよいよ同級生の女子の1人が悲鳴をあげて、それが試合開始を告げるホイッスルかのように僕たちのデスゲームは始まった。
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