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木岡(もくおか)

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word29 「ゲームのフレンド 顔」①

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 先日、僕は1つのゲームをクリアした。

 前に朝から店の前に並んで、初回限定版を購入したゲームだ。モンスター育成要素がある王道ファンタジーRPG……僕はその、ゲームを10日前くらいにクリアした。

 クリアと言っても完全クリアではない。今どきの良くできたRPGは基本的に、ラスボスと呼ばれるストーリー上の最後のボスを倒せば何もかも終わりということはない。裏ボスと呼ばれるより強いボスがいたり、集めることで特別なイベントが見れる収集要素があったりするのだ。

 でも、僕はそのラスボス撃破後の要素を攻略してやろうというモチベが沸かなかったから、エンドロールを見てからしばらくそのゲームをプレイしなくなった。

 買ってせっかくここまでプレイしたのだからと、数日に1回起動はしてみるのだけれどクリア後に出現するダンジョンの敵が強すぎて……レベル上げから始めたり、攻略情報を調べるのがめんどくさくなってやめてしまう。

 やる気になって起動してみては、アホ面で雑魚敵相手に無双して終わりの繰り返し。そんな状況だった――。

 ただ、今日は違っている。5日間の平日を乗り越え、休日を迎える金曜日の夜という時間。尚且つ、しばらく攻略から離れてモチベが回復した。長時間のやり込みがしたくて堪らないという気分になっていた。朝までぶっ続けでプレイできそうなほど。

 僕は夜のルーティーンを終えると、飲み物や長時間を想定した姿勢を整えてゲームを起動した。朝よりも調子が良くて、風呂上がりのシャンプーの匂いと清潔な体も気分を上げる。

 ゲームを起動している最中が一番心地が良い。

 タイトル画面を通り過ぎると、前回のセーブポイントからゲームが始まる。ラスボスのいるダンジョンの手前にある村で主人公のキャラクターが動き始めた。現在いる町の名前やキャラクターのステータスなんかも表示されて……ついでに、表示されるのが「オンラインのフレンドがいます」という文字。

 このゲームにもオンラインプレイの要素があった。プレイ中にボイチャやチャットを繋いだり、アイテムの交換、育てたモンスターで対人戦や協力バトルとか、そんなことができる。

 基本的にソロプレイでオンラインを主としたゲームではないのでどれもちょっとした要素ではあるけれど、名作RPGだけあってそういう部分も作りこまれていてやり込み要素はあった。

 ハマる人はハマるし、それがメインコンテンツになってしまうような人もいる。

 僕は別にオンラインプレイに興味は無くって、前作でリアルの友達と数回やったくらいだった。それなのに昨今のゲームはネットが普及しすぎてしまっているからかやたらオンラインプレイを推してくる。

 ボタン1つで繋げられる便利っぷりであるし、その気の無い僕でもいつの間にか形だけフレンドになっている人がいくらかいた。

 そんな顔も知らないフレンド達をよそ目に、僕は今日もソロプレイでゲームを遊んでいく。まずは予定していた通りレベル上げから、攻略サイトで見た効率の良いやり方で、その後は装備作り、それと強いモンスターを捕まえて育成もやりたい。

 やり出すと止まらなくって、次々とやりたいことが浮かんできた。その気になれば無限にできる系のゲームでもあって、聞く話によるとまだゲームが発売してから1カ月と経ってないのに何百時間もプレイしている猛者もいるらしい。

 ――時間を忘れること数時間、ちょっと作成難易度の高い装備を作り終えたときに僕はコントローラーから手を離した。

 少し目が疲れてきたし、同じ姿勢のままでいると体が痛くなってくる。手汗が出てきている手を乾かしながらあくびをした。

 まだまだやりたいけど、ここらで終わってまた明日やろうか。そんなことを考えながら時計を見て、また画面を見る。

「この人いつもやってんな」

 その時、僕は独り言で声を漏らした。

 オンラインのフレンドの通知と同じように右上のウインドウで表示される「フレンドがパーティメンバーを募集しています」という文字。ユーザーネームは今日何度も表示されている名前だった。

 それどころか、いつ起動してもオンラインな気がする。

 なんとなく気になって僕はフレンドリストからそのフレンドの情報を見ようとした。

 そこで僕は間違ってパーティに合流するを押してしまったのだった。
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