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word23 「姉 弱み」③
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僕が何かを隠しているという弱みを握られてマウスを取られたのなら、同じように姉の弱みを握ることで立場をフラットにして返してもらえばいい。
最初からこうすれば良かったのだ――。
もう、どうなっても知らないぞ――――。
『あなたの姉は家族や友人に秘密にしているSNSのアカウントがあります。これは彼女にとって現実で交流のある人物には絶対にバラしたくないものです。アカウント名は「コッペパンちゃん♡@chancoppe0404」、彼女はそこで自撮りや歌声を発信し、動画サイトにも同様のアカウント名で動画を投稿しています。』
黒いパソコンも容赦なくそれを表示した。
僕はすぐさまスマホを取り出して、教わったアカウントがどんな感じか見に行く。
検索すれば真っ先に顔の一部を隠した自撮りのアイコンが目を引いた。検索結果に表示されたのは1件だけで、アカウント名も黒いパソコンに表示された通り。つまり、この顔の半分以上を見せながらカメラに向かって手を振るようなポーズを取り、上半身裸のように見えるのは僕の姉とういうことになる。
いやアカウント名を見なくても弟の僕なら目元と顔の輪郭を見ただけで何となく分かる……。
プロフィール欄を見ると、JKであることや裏垢であることがまず書かれていて手短に好きな漫画の事も書かれていた。さらには気軽にメッゼージしてという文字や常に彼氏募集中という文字まで。
そのプロフィールを見て僕が驚いたのはハートの絵文字がたくさん使われていたことだった。如何にもそういうアカウントと言うか……何と言うか頭が悪そうって感じがする。姉のイメージと違うのだ。こんなことをするタイプとは思っていなかった。姉も僕と同じそこそこの優等生だったはず。
そこからすぐに下着姿を撮った自撮りやら本気の歌を披露している動画がスマホに表示されて、それを見た僕は言葉を失った。
友達の悪口に大人の男との気持ちが悪い感じの絡み。スクロールしながら見ていけば……見ていくほど……弟として検索したこっちが恥ずかしくなってくる内容。
さすがに下着の下まで写している写真やSNSで知り合った男と会っている様子は無かったが、姉のそこそこでかい胸も強烈だった。
迷い無く検索したとはいえ悪いことをしてしまった気分になってくる。いや、悪いことをしているのだけど。これを知ったことを姉に知らせることを戸惑ってしまう。
けど、迷っていては大事なものを取り返せない――。
その時、誰かが家の玄関を開ける音がして、指を遊ばせながら待っていると姉の部屋のドアが開閉する音を聞こえた。
行くか。いきなり――。
僕は最後に自分は間違ってないと言い聞かせると、姉の裏垢を表示したままのスマホを持って部屋を出る。怒りが無くなって迷ってしまう前に。
今回姉の部屋のドアをノックするときは、今までしたどんなノックよりも緊張した。
「はーい?」
「入るよ」
「何よ。帰ってきて早々」
「いやさ。昨日取られたマウス返して貰おうと思ってさ……」
「ふーん。やっぱりそうなんだ。大事なものだったんだ」
姉は優位の笑みを浮かべて、してやったりという顔をした。
「そう。友達の忘れ物でさ……」
「ウソウソ。絶対ウソでしょ。隠してること正直に話したら返してあげてもいいよ。それで、そのパソコンを私にも使わせなさい――」
そのタイミングで僕はポケットからスマホを出して、姉に画面を見せつけた……。
僕は何も言わなかった。ただ、スマホを持って無表情のまま姉の表情が変わっていく様子を見ていた。
姉も何も言うことは無かった。すぐに顔が青ざめて、一瞬僕のほうを睨んだけれど、無言のまま状況を理解して眉間に皺を寄せた。
さながら紋所を見せる水戸黄門のようなシチュエーションで、その行動だけで形勢が変わり、気付けば手の平に黒いマウスが返却された。
「お互い知らなかったことにしよう……」
部屋を出る前に僕は言った。
「…………」
姉はそこでも何も言わずに、僕のほうをもう見てなかった……。
自室に戻ってきた僕は罪悪感を抱えていた。
けれど、それと共に黒いパソコンの超強化パーツもしっかりとそこにあった。
最初からこうすれば良かったのだ――。
もう、どうなっても知らないぞ――――。
『あなたの姉は家族や友人に秘密にしているSNSのアカウントがあります。これは彼女にとって現実で交流のある人物には絶対にバラしたくないものです。アカウント名は「コッペパンちゃん♡@chancoppe0404」、彼女はそこで自撮りや歌声を発信し、動画サイトにも同様のアカウント名で動画を投稿しています。』
黒いパソコンも容赦なくそれを表示した。
僕はすぐさまスマホを取り出して、教わったアカウントがどんな感じか見に行く。
検索すれば真っ先に顔の一部を隠した自撮りのアイコンが目を引いた。検索結果に表示されたのは1件だけで、アカウント名も黒いパソコンに表示された通り。つまり、この顔の半分以上を見せながらカメラに向かって手を振るようなポーズを取り、上半身裸のように見えるのは僕の姉とういうことになる。
いやアカウント名を見なくても弟の僕なら目元と顔の輪郭を見ただけで何となく分かる……。
プロフィール欄を見ると、JKであることや裏垢であることがまず書かれていて手短に好きな漫画の事も書かれていた。さらには気軽にメッゼージしてという文字や常に彼氏募集中という文字まで。
そのプロフィールを見て僕が驚いたのはハートの絵文字がたくさん使われていたことだった。如何にもそういうアカウントと言うか……何と言うか頭が悪そうって感じがする。姉のイメージと違うのだ。こんなことをするタイプとは思っていなかった。姉も僕と同じそこそこの優等生だったはず。
そこからすぐに下着姿を撮った自撮りやら本気の歌を披露している動画がスマホに表示されて、それを見た僕は言葉を失った。
友達の悪口に大人の男との気持ちが悪い感じの絡み。スクロールしながら見ていけば……見ていくほど……弟として検索したこっちが恥ずかしくなってくる内容。
さすがに下着の下まで写している写真やSNSで知り合った男と会っている様子は無かったが、姉のそこそこでかい胸も強烈だった。
迷い無く検索したとはいえ悪いことをしてしまった気分になってくる。いや、悪いことをしているのだけど。これを知ったことを姉に知らせることを戸惑ってしまう。
けど、迷っていては大事なものを取り返せない――。
その時、誰かが家の玄関を開ける音がして、指を遊ばせながら待っていると姉の部屋のドアが開閉する音を聞こえた。
行くか。いきなり――。
僕は最後に自分は間違ってないと言い聞かせると、姉の裏垢を表示したままのスマホを持って部屋を出る。怒りが無くなって迷ってしまう前に。
今回姉の部屋のドアをノックするときは、今までしたどんなノックよりも緊張した。
「はーい?」
「入るよ」
「何よ。帰ってきて早々」
「いやさ。昨日取られたマウス返して貰おうと思ってさ……」
「ふーん。やっぱりそうなんだ。大事なものだったんだ」
姉は優位の笑みを浮かべて、してやったりという顔をした。
「そう。友達の忘れ物でさ……」
「ウソウソ。絶対ウソでしょ。隠してること正直に話したら返してあげてもいいよ。それで、そのパソコンを私にも使わせなさい――」
そのタイミングで僕はポケットからスマホを出して、姉に画面を見せつけた……。
僕は何も言わなかった。ただ、スマホを持って無表情のまま姉の表情が変わっていく様子を見ていた。
姉も何も言うことは無かった。すぐに顔が青ざめて、一瞬僕のほうを睨んだけれど、無言のまま状況を理解して眉間に皺を寄せた。
さながら紋所を見せる水戸黄門のようなシチュエーションで、その行動だけで形勢が変わり、気付けば手の平に黒いマウスが返却された。
「お互い知らなかったことにしよう……」
部屋を出る前に僕は言った。
「…………」
姉はそこでも何も言わずに、僕のほうをもう見てなかった……。
自室に戻ってきた僕は罪悪感を抱えていた。
けれど、それと共に黒いパソコンの超強化パーツもしっかりとそこにあった。
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