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word10 「あの友達 ホモなのか」②
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「なんか最近雰囲気変わった?」
次の日の教室で僕は言われた。
「え」
「なんとなくしゅっとしてるというか。髪型のセットの仕方も変わったよね。腕時計とかもしてるし。そこそこ高そうな」
「ああ。まあな」
恥ずかしくって後ろ髪を撫でながら答える。話し声が各所で行き交う教室で僕の頬が緩んだ。
確かに変わった。このふわりとした髪も、懸賞で頂いたちょっと良さげな腕時計も。
僕はこの日初めて自分磨きトレーニングの成果を得られたのであった。まだまだだとは自覚しているけれど変化に気づいてもらえた。今日も体を苦しめる筋肉痛と戦い続けた甲斐があったのだ。
「何で何で。なんかあった?」
「いや別に特に何もねえけどさ」
「その時計どこで買ったん?」
「これは……。なんとなく懸賞応募したら当たった」
こんな話をしているクラスメイトが女子だったらより良いのだけれど、相手は男子だった。現在近くの席に座っている男子の草壁君。
男子も男子でバリバリの男子。野球部に所属していて、その中でも体格が良くて筋肉質なほうだ。髪型も丸坊主で、今日も日焼けした笑顔が話していて眩しい。
「マジ?すげえな。ちょっと見せてよ」
野球部の草壁が僕の腕を掴んで腕時計に顔を近づける。やけにしっかり掴まれてじっくり腕時計を観察された。
「D&Gってこれドルチェ&ガッバーナのやつじゃん。いいな。こんなの懸賞で当てたのかよ」
「ドルチェ?なんだっけそれ?」
「有名なブランドじゃん。知らねえの?」
「聞いたことはあるような無いような。ブランドか。へー」
「流行りの歌の歌詞にもなってたりするじゃん。ブランドとか興味ないの?」
「無いな。逆にお前はなんかそういうとこおしゃれだよな。その鞄もなんかのブランドなんだろ」
「そう。好きなんよな。ブランド物」
何気ない雑談をしている間も草壁はずっと僕の腕を掴んで巻かれた時計を見ていた。目を光らせて。それがだんだん窮屈に感じてくる。
「ってかいつまで腕掴んでんだよ。これツッコミ待ちか」
「あ、悪い悪い」
「めっちゃ長いこと見てたなあ。肩凝るわ」
「ははは。俺も離すタイミング見失ってた」
やっと離してくれた腕をわざとらしく肩ごと回す。
「それはそうと、おしゃれしてるってことはやっぱ好きな子できたとかっしょ。もしかしてもう付き合ってるとか。俺聞いてないけど」
「いや、全然そんなんじゃないよ」
まあ、次はそうくるだろうという男子高校生の話の流れ。草壁がにやりと笑う。僕は目を逸らして否定した。
「いやいや絶対そうやん。それ以外におしゃれする意味ある?」
「マジで違う。ただ気分だよ。俺は今そんな女子に興味ないし」
「へー」
「マジでマジで」
「いやいや」
「マジでマジで」
お互い腹の内を分かっていながらも深くは話さないといった対応を取った。そこからは何も言わずただ見つめ合った。そうこうしている内に休み時間の終了を告げる鐘が鳴ってその時の草壁との会話は終わった。
――次の日からだ。なんとなく違和感を感じるようになったの
次の日の教室で僕は言われた。
「え」
「なんとなくしゅっとしてるというか。髪型のセットの仕方も変わったよね。腕時計とかもしてるし。そこそこ高そうな」
「ああ。まあな」
恥ずかしくって後ろ髪を撫でながら答える。話し声が各所で行き交う教室で僕の頬が緩んだ。
確かに変わった。このふわりとした髪も、懸賞で頂いたちょっと良さげな腕時計も。
僕はこの日初めて自分磨きトレーニングの成果を得られたのであった。まだまだだとは自覚しているけれど変化に気づいてもらえた。今日も体を苦しめる筋肉痛と戦い続けた甲斐があったのだ。
「何で何で。なんかあった?」
「いや別に特に何もねえけどさ」
「その時計どこで買ったん?」
「これは……。なんとなく懸賞応募したら当たった」
こんな話をしているクラスメイトが女子だったらより良いのだけれど、相手は男子だった。現在近くの席に座っている男子の草壁君。
男子も男子でバリバリの男子。野球部に所属していて、その中でも体格が良くて筋肉質なほうだ。髪型も丸坊主で、今日も日焼けした笑顔が話していて眩しい。
「マジ?すげえな。ちょっと見せてよ」
野球部の草壁が僕の腕を掴んで腕時計に顔を近づける。やけにしっかり掴まれてじっくり腕時計を観察された。
「D&Gってこれドルチェ&ガッバーナのやつじゃん。いいな。こんなの懸賞で当てたのかよ」
「ドルチェ?なんだっけそれ?」
「有名なブランドじゃん。知らねえの?」
「聞いたことはあるような無いような。ブランドか。へー」
「流行りの歌の歌詞にもなってたりするじゃん。ブランドとか興味ないの?」
「無いな。逆にお前はなんかそういうとこおしゃれだよな。その鞄もなんかのブランドなんだろ」
「そう。好きなんよな。ブランド物」
何気ない雑談をしている間も草壁はずっと僕の腕を掴んで巻かれた時計を見ていた。目を光らせて。それがだんだん窮屈に感じてくる。
「ってかいつまで腕掴んでんだよ。これツッコミ待ちか」
「あ、悪い悪い」
「めっちゃ長いこと見てたなあ。肩凝るわ」
「ははは。俺も離すタイミング見失ってた」
やっと離してくれた腕をわざとらしく肩ごと回す。
「それはそうと、おしゃれしてるってことはやっぱ好きな子できたとかっしょ。もしかしてもう付き合ってるとか。俺聞いてないけど」
「いや、全然そんなんじゃないよ」
まあ、次はそうくるだろうという男子高校生の話の流れ。草壁がにやりと笑う。僕は目を逸らして否定した。
「いやいや絶対そうやん。それ以外におしゃれする意味ある?」
「マジで違う。ただ気分だよ。俺は今そんな女子に興味ないし」
「へー」
「マジでマジで」
「いやいや」
「マジでマジで」
お互い腹の内を分かっていながらも深くは話さないといった対応を取った。そこからは何も言わずただ見つめ合った。そうこうしている内に休み時間の終了を告げる鐘が鳴ってその時の草壁との会話は終わった。
――次の日からだ。なんとなく違和感を感じるようになったの
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