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word5 「検索 デメリット」
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この黒いパソコン……何でも検索することができるパソコン。見たまんま機械でメタリック。他のありふれた家電と同じように人間が操作することで、人間がプログラムした通りに動く道具。形からはそんな風に見える。
けど、少し違っている。
僕が実行した検索に対して融通が利く――。本来のパソコンであれば答えを求める為に上手くワードを選んで検索する必要があって、アバウトな質問ではなかなか答えに辿り着けない。
それとは反対に黒いパソコンは求める答えをパソコン側が上手く意思を汲み取って出してくれる。
今までも僕が検索ワードに入っていたりとかなりアバウトだったのだが、求める答えを出した。
データ内から答えを引っ張り出してきてくれているというよりかは、神様にでも話しかけている感じだ。
そして、昨日パソコン側から操作もしていないのにお言葉があった。
本当にこのパソコンは何なんだろう。部屋にパソコンが現れてからずっと考えていることだけど、僕はまたパソコンと向き合って改めて思った。
不気味さも増した。このパソコンに生物的な知能を感じたことで、正直怖くなった。人工知能とかではないちゃんとした生命体の知能。どういう仕組みなのか。人智を超えた物質ですと言われたらそれまでだが……。
昨日当たったアイスの棒を手で回しながら、黒いパソコンの黒い画面に薄っすらと映った自分の顔とにらめっこする。一瞬その自分の顔が不自然に目を動かした気がして、僕は息を止める。
今日はやけに部屋の照明が暗く感じる。重力が強い……。空気がねっとりと肌を撫でてくる……。
目に見えない何かが部屋にいるんじゃないかと、第六感が危険信号を出している……気がする。
僕はいつもより慎重にキーボードを操作して、決めていたワードを入力した。
詳しくパソコンの事を知るよりもまず第一に確認しておきたいことがある。だからこのワードにした。
「検索 デメリット」
旨い話には必ず裏がある。何かを得るためには何かを失わなければならない。この世で生きていくうえでよく聞くような言い回しだ。
このパソコンもそういう類の物ではないかと不安になった。こいつは詐欺師みたいなもので、僕が気付かないうちに何かを奪っているんじゃないかと。検索に伴うデメリットがあるのではないかと。
寿命を奪うとか、死後に地獄へ落ちるだとか、バッドエンドのお話では大体そうだ。
少し使ってしまったけど、まだ手遅れじゃないならさっさと捨てなければならない。考え出したらそうとしか思えなくなっていた。
もう、こんなもの使うんじゃなかった。
検索結果を待っている間、背筋に寒気が走った。もう僕は気づかぬうちに悪魔へ心臓を差し出して……。
「このパソコンで検索することにデメリットはありません。何度使用しても問題ありません。」
あっ……。
じゃあ、これからもたくさん使うわ。
「ちなみにあなたが捨てるまで消えませんよ」
それから僕は心の中で汚い笑い声を発しながら、この先検索したいワードリストをノートにまとめた。
部屋の空気はこれでもかというほどに軽くなっていた。
けど、少し違っている。
僕が実行した検索に対して融通が利く――。本来のパソコンであれば答えを求める為に上手くワードを選んで検索する必要があって、アバウトな質問ではなかなか答えに辿り着けない。
それとは反対に黒いパソコンは求める答えをパソコン側が上手く意思を汲み取って出してくれる。
今までも僕が検索ワードに入っていたりとかなりアバウトだったのだが、求める答えを出した。
データ内から答えを引っ張り出してきてくれているというよりかは、神様にでも話しかけている感じだ。
そして、昨日パソコン側から操作もしていないのにお言葉があった。
本当にこのパソコンは何なんだろう。部屋にパソコンが現れてからずっと考えていることだけど、僕はまたパソコンと向き合って改めて思った。
不気味さも増した。このパソコンに生物的な知能を感じたことで、正直怖くなった。人工知能とかではないちゃんとした生命体の知能。どういう仕組みなのか。人智を超えた物質ですと言われたらそれまでだが……。
昨日当たったアイスの棒を手で回しながら、黒いパソコンの黒い画面に薄っすらと映った自分の顔とにらめっこする。一瞬その自分の顔が不自然に目を動かした気がして、僕は息を止める。
今日はやけに部屋の照明が暗く感じる。重力が強い……。空気がねっとりと肌を撫でてくる……。
目に見えない何かが部屋にいるんじゃないかと、第六感が危険信号を出している……気がする。
僕はいつもより慎重にキーボードを操作して、決めていたワードを入力した。
詳しくパソコンの事を知るよりもまず第一に確認しておきたいことがある。だからこのワードにした。
「検索 デメリット」
旨い話には必ず裏がある。何かを得るためには何かを失わなければならない。この世で生きていくうえでよく聞くような言い回しだ。
このパソコンもそういう類の物ではないかと不安になった。こいつは詐欺師みたいなもので、僕が気付かないうちに何かを奪っているんじゃないかと。検索に伴うデメリットがあるのではないかと。
寿命を奪うとか、死後に地獄へ落ちるだとか、バッドエンドのお話では大体そうだ。
少し使ってしまったけど、まだ手遅れじゃないならさっさと捨てなければならない。考え出したらそうとしか思えなくなっていた。
もう、こんなもの使うんじゃなかった。
検索結果を待っている間、背筋に寒気が走った。もう僕は気づかぬうちに悪魔へ心臓を差し出して……。
「このパソコンで検索することにデメリットはありません。何度使用しても問題ありません。」
あっ……。
じゃあ、これからもたくさん使うわ。
「ちなみにあなたが捨てるまで消えませんよ」
それから僕は心の中で汚い笑い声を発しながら、この先検索したいワードリストをノートにまとめた。
部屋の空気はこれでもかというほどに軽くなっていた。
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