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第1章・恋人
1話 悲しい現実
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「はぁ……」
私は溜め息をつきながら、今にも落ちてきそうな鉛色の空の下を歩いていく。
目的地はない。
ただただ気の向くままにふらふらと歩き続けた。
私がこんなに抜け殻のようになっているのは、彼女の寿命があと僅かだと知ったからだ。
彼女はもともと体があまり丈夫ではなかったため、入院と退院を繰り返すような生活をしていた。
あの日も、入院したら良くなって、またいつものように戻ってきてくれるものだと思っていた。
貧しいながらも二人で過ごす幸せな日常が戻ってくると、信じて疑いもしなかった。
しかし、彼女は戻っては来なかった。
今は昏睡状態となり、生死の境をさ迷っている。
医者からは、「もって1週間、覚悟を決めておいてくれ」と言われた。
回らない頭で必死に現実をのみ込もうとしながら、彼女が眠っている病室へ向かう。
彼女の顔を覗き込んで、頬に手をおいてみても、たった1週間後にこの温もりが消えて無くなってしまうなんて想像もできない。
どうしようもない悲しみと同時に、残りの一週間を彼女の人生で最高の時間にしたいと強く思った。
私は今後の計画を練るため、気分転換を兼ねて街へ出ることにした。
街に出たのはいいものの、お金も行くあてもないのでひたすら歩く。
すると、裏通りに通じるであろう見慣れない道を見つけた。
この街には、彼女と来ることが多かったのでよく知っているつもりだったのだが…。
私は不思議に思いつつも、引き寄せられるようにその道に足を踏み入れた。
私は溜め息をつきながら、今にも落ちてきそうな鉛色の空の下を歩いていく。
目的地はない。
ただただ気の向くままにふらふらと歩き続けた。
私がこんなに抜け殻のようになっているのは、彼女の寿命があと僅かだと知ったからだ。
彼女はもともと体があまり丈夫ではなかったため、入院と退院を繰り返すような生活をしていた。
あの日も、入院したら良くなって、またいつものように戻ってきてくれるものだと思っていた。
貧しいながらも二人で過ごす幸せな日常が戻ってくると、信じて疑いもしなかった。
しかし、彼女は戻っては来なかった。
今は昏睡状態となり、生死の境をさ迷っている。
医者からは、「もって1週間、覚悟を決めておいてくれ」と言われた。
回らない頭で必死に現実をのみ込もうとしながら、彼女が眠っている病室へ向かう。
彼女の顔を覗き込んで、頬に手をおいてみても、たった1週間後にこの温もりが消えて無くなってしまうなんて想像もできない。
どうしようもない悲しみと同時に、残りの一週間を彼女の人生で最高の時間にしたいと強く思った。
私は今後の計画を練るため、気分転換を兼ねて街へ出ることにした。
街に出たのはいいものの、お金も行くあてもないのでひたすら歩く。
すると、裏通りに通じるであろう見慣れない道を見つけた。
この街には、彼女と来ることが多かったのでよく知っているつもりだったのだが…。
私は不思議に思いつつも、引き寄せられるようにその道に足を踏み入れた。
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