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最初の村

できるんだって、自分に言ってると割と本当になるよ。

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できる、できる、できる。

「ファイアボール、来ます!」
「レジスト部隊!! 全力で抵抗しろ!!」
「左舷被弾!!」
「負傷者撤退急げ!!」

何が腐る? 何なら発酵と認められる? あれは食べ物? これはダメか?
青い鎧を着た、指示を出している人が歯を食いしばるのが見えた。
当たり前だ。仲間が炎に巻かれているんだから。
「……大丈夫、隊長さん、行ってください」
「ここは君が頼りだ、戦線を崩壊させるリスクはとれない」

できる、できる、できる。

「俺……一発勝負、けっこー得意だったんですよ。テストのヤマも大体当たったし、リレーの時は隣の奴がこけてくれたし」
チートスキルフル活動中。心臓からどんどん何かが出て行って、そのうち空っぽになるかもしれない。

でも、この人たちは死なせちゃいけないし、村だって焼かせない。

「大技、準備できました――ファイアボールも……止めます、今!」
青い鎧の人が走る。
敵の魔術騎士たちが、一斉に詠唱を始めた。

「全部、全部、お酢になれ!!」
ぶわっと酢に変換された発酵食品から、強烈な刺激臭が漂った。
「げほっげほっ……知ってるんだぞ、詠唱できなきゃ魔術は使えない!!」
残念ながら毒に使えるほどの酢酸は作れないけれど、それでも量がある、詠唱を中断させるには十分。

「撤退! 撤退! 負傷者を馬に! 少年、君も!!」

「おや、やってくれましたね」
「閣下、マスクは」
「不要。この田舎に臭いにはもう慣れたよ」
ものすごい酢の臭いのなか悠々と二人の男が出てくる。
赤い髪をした若い男で上品な服を着て、鎧さえ纏っていない。
もう一人は白髪の老人。

酢、もっと酢を!
俺のスキルで酢が湯気になって立ち上ったけれど、見えない壁に包まれているみたいに二人には届かない。

「魔術兵たちも大したことないな、アディリウスとの同盟は切るか……おい、その子供を捕えなさい。王国の兵士は皆殺しに」
「えっらそーだなぁ……高校生の知識と、農家の力、なめんな!」

俺のチートスキル。要するに、ものをドロドロにする力。
「砦の木材! 全部全部ドロドロになれ!」

砦が、崩壊した。
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