18 / 50
最初の村
できるんだって、自分に言ってると割と本当になるよ。
しおりを挟む
できる、できる、できる。
「ファイアボール、来ます!」
「レジスト部隊!! 全力で抵抗しろ!!」
「左舷被弾!!」
「負傷者撤退急げ!!」
何が腐る? 何なら発酵と認められる? あれは食べ物? これはダメか?
青い鎧を着た、指示を出している人が歯を食いしばるのが見えた。
当たり前だ。仲間が炎に巻かれているんだから。
「……大丈夫、隊長さん、行ってください」
「ここは君が頼りだ、戦線を崩壊させるリスクはとれない」
できる、できる、できる。
「俺……一発勝負、けっこー得意だったんですよ。テストのヤマも大体当たったし、リレーの時は隣の奴がこけてくれたし」
チートスキルフル活動中。心臓からどんどん何かが出て行って、そのうち空っぽになるかもしれない。
でも、この人たちは死なせちゃいけないし、村だって焼かせない。
「大技、準備できました――ファイアボールも……止めます、今!」
青い鎧の人が走る。
敵の魔術騎士たちが、一斉に詠唱を始めた。
「全部、全部、お酢になれ!!」
ぶわっと酢に変換された発酵食品から、強烈な刺激臭が漂った。
「げほっげほっ……知ってるんだぞ、詠唱できなきゃ魔術は使えない!!」
残念ながら毒に使えるほどの酢酸は作れないけれど、それでも量がある、詠唱を中断させるには十分。
「撤退! 撤退! 負傷者を馬に! 少年、君も!!」
「おや、やってくれましたね」
「閣下、マスクは」
「不要。この田舎に臭いにはもう慣れたよ」
ものすごい酢の臭いのなか悠々と二人の男が出てくる。
赤い髪をした若い男で上品な服を着て、鎧さえ纏っていない。
もう一人は白髪の老人。
酢、もっと酢を!
俺のスキルで酢が湯気になって立ち上ったけれど、見えない壁に包まれているみたいに二人には届かない。
「魔術兵たちも大したことないな、アディリウスとの同盟は切るか……おい、その子供を捕えなさい。王国の兵士は皆殺しに」
「えっらそーだなぁ……高校生の知識と、農家の力、なめんな!」
俺のチートスキル。要するに、ものをドロドロにする力。
「砦の木材! 全部全部ドロドロになれ!」
砦が、崩壊した。
「ファイアボール、来ます!」
「レジスト部隊!! 全力で抵抗しろ!!」
「左舷被弾!!」
「負傷者撤退急げ!!」
何が腐る? 何なら発酵と認められる? あれは食べ物? これはダメか?
青い鎧を着た、指示を出している人が歯を食いしばるのが見えた。
当たり前だ。仲間が炎に巻かれているんだから。
「……大丈夫、隊長さん、行ってください」
「ここは君が頼りだ、戦線を崩壊させるリスクはとれない」
できる、できる、できる。
「俺……一発勝負、けっこー得意だったんですよ。テストのヤマも大体当たったし、リレーの時は隣の奴がこけてくれたし」
チートスキルフル活動中。心臓からどんどん何かが出て行って、そのうち空っぽになるかもしれない。
でも、この人たちは死なせちゃいけないし、村だって焼かせない。
「大技、準備できました――ファイアボールも……止めます、今!」
青い鎧の人が走る。
敵の魔術騎士たちが、一斉に詠唱を始めた。
「全部、全部、お酢になれ!!」
ぶわっと酢に変換された発酵食品から、強烈な刺激臭が漂った。
「げほっげほっ……知ってるんだぞ、詠唱できなきゃ魔術は使えない!!」
残念ながら毒に使えるほどの酢酸は作れないけれど、それでも量がある、詠唱を中断させるには十分。
「撤退! 撤退! 負傷者を馬に! 少年、君も!!」
「おや、やってくれましたね」
「閣下、マスクは」
「不要。この田舎に臭いにはもう慣れたよ」
ものすごい酢の臭いのなか悠々と二人の男が出てくる。
赤い髪をした若い男で上品な服を着て、鎧さえ纏っていない。
もう一人は白髪の老人。
酢、もっと酢を!
俺のスキルで酢が湯気になって立ち上ったけれど、見えない壁に包まれているみたいに二人には届かない。
「魔術兵たちも大したことないな、アディリウスとの同盟は切るか……おい、その子供を捕えなさい。王国の兵士は皆殺しに」
「えっらそーだなぁ……高校生の知識と、農家の力、なめんな!」
俺のチートスキル。要するに、ものをドロドロにする力。
「砦の木材! 全部全部ドロドロになれ!」
砦が、崩壊した。
40
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説
断罪は決定済みのようなので、好きにやろうと思います。
小鷹けい
BL
王子×悪役令息が書きたくなって、見切り発車で書き始めました。
オリジナルBL初心者です。生温かい目で見ていただけますとありがたく存じます。
自分が『悪役令息』と呼ばれる存在だと気付いている主人公と、面倒くさい性格の王子と、過保護な兄がいます。
ヒロイン(♂)役はいますが、あくまで王子×悪役令息ものです。
最終的に執着溺愛に持って行けるようにしたいと思っております。
※第一王子の名前をレオンにするかラインにするかで迷ってた当時の痕跡があったため、気付いた箇所は修正しました。正しくはレオンハルトのところ、まだラインハルト表記になっている箇所があるかもしれません。
最終目標はのんびり暮らすことです。
海里
BL
学校帰りに暴走する車から義理の妹を庇った。
たぶん、オレは死んだのだろう。――死んだ、と思ったんだけど……ここどこ?
見慣れない場所で目覚めたオレは、ここがいわゆる『異世界』であることに気付いた。
だって、猫耳と尻尾がある女性がオレのことを覗き込んでいたから。
そしてここが義妹が遊んでいた乙女ゲームの世界だと理解するのに時間はかからなかった。
『どうか、シェリルを救って欲しい』
なんて言われたけれど、救うってどうすれば良いんだ?
悪役令嬢になる予定の姉を救い、いろいろな人たちと関わり愛し合されていく話……のつもり。
CPは従者×主人公です。
※『悪役令嬢の弟は辺境地でのんびり暮らしたい』を再構成しました。
転生悪役モブは溺愛されんで良いので死にたくない!
煮卵
BL
ゲーム会社に勤めていた俺はゲームの世界の『婚約破棄』イベントの混乱で殺されてしまうモブに転生した。処刑の原因となる婚約破棄を避けるべく王子に友人として接近。なんか数ヶ月おきに繰り返される「恋人や出会いのためのお祭り」をできる限り第二皇子と過ごし、婚約破棄の原因となる主人公と出会うきっかけを徹底的に排除する。
最近では監視をつけるまでもなくいつも一緒にいたいと言い出すようになった・・・やんごとなき血筋のハンサムな王子様を淑女たちから遠ざけ男の俺とばかり過ごすように仕向けるのはちょっと申し訳ない気もしたが、俺の運命のためだ。仕方あるまい。
俺の死亡フラグは完全に回避された!
・・・と思ったら、婚約の儀の当日、「私には思い人がいるのです」
と言いやがる!一体誰だ!?
その日の夜、俺はゲームの告白イベントがある薔薇園に呼び出されて・・・
ラブコメが描きたかったので書きました。
とある金持ち学園に通う脇役の日常~フラグより飯をくれ~
無月陸兎
BL
山奥にある全寮制男子校、桜白峰学園。食べ物目当てで入学した主人公は、学園の権力者『REGAL4』の一人、一条貴春の不興を買い、学園中からハブられることに。美味しい食事さえ楽しめれば問題ないと気にせず過ごしてたが、転入生の扇谷時雨がやってきたことで、彼の日常は波乱に満ちたものとなる──。
自分の親友となった時雨が学園の人気者たちに迫られるのを横目で見つつ、主人公は巻き込まれて恋人のフリをしたり、ゆるく立ちそうな恋愛フラグを避けようと奮闘する物語です。
巻き込まれ異世界転移者(俺)は、村人Aなので探さないで下さい。
はちのす
BL
異世界転移に巻き込まれた憐れな俺。
騎士団や勇者に見つからないよう、村人Aとしてスローライフを謳歌してやるんだからな!!
***********
異世界からの転移者を血眼になって探す人達と、ヒラリヒラリと躱す村人A(俺)の日常。
イケメン(複数)×平凡?
全年齢対象、すごく健全
兄たちが溺愛するのは当たり前だと思ってました
不知火
BL
温かい家族に包まれた1人の男の子のお話
爵位などを使った設定がありますが、わたしの知識不足で実際とは異なった表現を使用している場合がございます。ご了承ください。追々、しっかり事実に沿った設定に変更していきたいと思います。
俺は、嫌われるために悪役になります
拍羅
BL
前世では好かれようと頑張のに嫌われたので、今世では始めから嫌われようと思います。
「俺はあなた達が大嫌いです。」
新たに生を受けたのはアルフ・クラークソンという伯爵の息子だった。前世とは違い裕福な家庭へと生まれたが、周りの人々の距離は相変わらずだった。
「そんなに俺のことが嫌いなら、話しかけなけばいいのに…。」
「今日も、アルフ様は天使のように美しくて眩しいわ。」
そうアルフが思っていることも、それと反対のことを周りが考えていることも当の本人は知らなかった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる