15 / 50
最初の村
我が家に書置きを残して。
しおりを挟む
「にいちゃん、ちょっと話したいことが……って、そっか商談に行く日か」
『兄ちゃんはグラニール市の青果問屋に行きます。4日で戻ります。戸締りはちゃんとするように、お腹がすいたら適当に食べてください。ジャガイモの芽には気を付けるように。具合が悪くなったら――』
「過保護なんだから……って、そんな場合じゃない。兄ちゃんに村長説得するの助けてもらおうと思ったのに!」
俺はまだ14歳。村人はみんないい人ばかりだけど、さすがに俺が騒いでも本気にしてくれないだろう。
「……いーや、あいつには頼らない。ユウキは助けてくれないんだから」
なら、俺一人で何とかするしかない。
『兄ちゃんへ。この村に危機が迫っています。思い過ごしかもしれないけれど、そうじゃなかったときのために俺はラジィの関所に行きます。たぶん帝国軍が来るから。みんなを連れて逃げて、騎士団に助けてもらってください。俺は』
俺は? 俺はどうする?
前世は普通の高校生。現世も普通の農家の子供。戦うなんてできるか?
――いや、できる。今の俺にはチートスキルがある。
『俺は時間を稼ぎます。荷馬車と馬、後、売り物の作物をできるだけ持っていきます。ごめんね』
それから、えーと、書くことは。
『育ててくれてありがとう。血は繋がっていなくても、俺にとっては一番の兄ちゃんでした』
はい。これでおしまい。
もう戻ってくることはないだろうから、部屋を掃除したかったけど、時間がないからベッド下のエッチな本を捨てるだけにした。
カバンに水筒と地図を詰め込んで、出発する。
「大丈夫だ。俺の村、俺の友達、俺の家族――俺が守る!』
『兄ちゃんはグラニール市の青果問屋に行きます。4日で戻ります。戸締りはちゃんとするように、お腹がすいたら適当に食べてください。ジャガイモの芽には気を付けるように。具合が悪くなったら――』
「過保護なんだから……って、そんな場合じゃない。兄ちゃんに村長説得するの助けてもらおうと思ったのに!」
俺はまだ14歳。村人はみんないい人ばかりだけど、さすがに俺が騒いでも本気にしてくれないだろう。
「……いーや、あいつには頼らない。ユウキは助けてくれないんだから」
なら、俺一人で何とかするしかない。
『兄ちゃんへ。この村に危機が迫っています。思い過ごしかもしれないけれど、そうじゃなかったときのために俺はラジィの関所に行きます。たぶん帝国軍が来るから。みんなを連れて逃げて、騎士団に助けてもらってください。俺は』
俺は? 俺はどうする?
前世は普通の高校生。現世も普通の農家の子供。戦うなんてできるか?
――いや、できる。今の俺にはチートスキルがある。
『俺は時間を稼ぎます。荷馬車と馬、後、売り物の作物をできるだけ持っていきます。ごめんね』
それから、えーと、書くことは。
『育ててくれてありがとう。血は繋がっていなくても、俺にとっては一番の兄ちゃんでした』
はい。これでおしまい。
もう戻ってくることはないだろうから、部屋を掃除したかったけど、時間がないからベッド下のエッチな本を捨てるだけにした。
カバンに水筒と地図を詰め込んで、出発する。
「大丈夫だ。俺の村、俺の友達、俺の家族――俺が守る!』
40
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説
断罪は決定済みのようなので、好きにやろうと思います。
小鷹けい
BL
王子×悪役令息が書きたくなって、見切り発車で書き始めました。
オリジナルBL初心者です。生温かい目で見ていただけますとありがたく存じます。
自分が『悪役令息』と呼ばれる存在だと気付いている主人公と、面倒くさい性格の王子と、過保護な兄がいます。
ヒロイン(♂)役はいますが、あくまで王子×悪役令息ものです。
最終的に執着溺愛に持って行けるようにしたいと思っております。
※第一王子の名前をレオンにするかラインにするかで迷ってた当時の痕跡があったため、気付いた箇所は修正しました。正しくはレオンハルトのところ、まだラインハルト表記になっている箇所があるかもしれません。
そばにいてほしい。
15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。
そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。
──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。
幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け
安心してください、ハピエンです。
転生悪役モブは溺愛されんで良いので死にたくない!
煮卵
BL
ゲーム会社に勤めていた俺はゲームの世界の『婚約破棄』イベントの混乱で殺されてしまうモブに転生した。処刑の原因となる婚約破棄を避けるべく王子に友人として接近。なんか数ヶ月おきに繰り返される「恋人や出会いのためのお祭り」をできる限り第二皇子と過ごし、婚約破棄の原因となる主人公と出会うきっかけを徹底的に排除する。
最近では監視をつけるまでもなくいつも一緒にいたいと言い出すようになった・・・やんごとなき血筋のハンサムな王子様を淑女たちから遠ざけ男の俺とばかり過ごすように仕向けるのはちょっと申し訳ない気もしたが、俺の運命のためだ。仕方あるまい。
俺の死亡フラグは完全に回避された!
・・・と思ったら、婚約の儀の当日、「私には思い人がいるのです」
と言いやがる!一体誰だ!?
その日の夜、俺はゲームの告白イベントがある薔薇園に呼び出されて・・・
ラブコメが描きたかったので書きました。
巻き込まれ異世界転移者(俺)は、村人Aなので探さないで下さい。
はちのす
BL
異世界転移に巻き込まれた憐れな俺。
騎士団や勇者に見つからないよう、村人Aとしてスローライフを謳歌してやるんだからな!!
***********
異世界からの転移者を血眼になって探す人達と、ヒラリヒラリと躱す村人A(俺)の日常。
イケメン(複数)×平凡?
全年齢対象、すごく健全
とある金持ち学園に通う脇役の日常~フラグより飯をくれ~
無月陸兎
BL
山奥にある全寮制男子校、桜白峰学園。食べ物目当てで入学した主人公は、学園の権力者『REGAL4』の一人、一条貴春の不興を買い、学園中からハブられることに。美味しい食事さえ楽しめれば問題ないと気にせず過ごしてたが、転入生の扇谷時雨がやってきたことで、彼の日常は波乱に満ちたものとなる──。
自分の親友となった時雨が学園の人気者たちに迫られるのを横目で見つつ、主人公は巻き込まれて恋人のフリをしたり、ゆるく立ちそうな恋愛フラグを避けようと奮闘する物語です。
俺は、嫌われるために悪役になります
拍羅
BL
前世では好かれようと頑張のに嫌われたので、今世では始めから嫌われようと思います。
「俺はあなた達が大嫌いです。」
新たに生を受けたのはアルフ・クラークソンという伯爵の息子だった。前世とは違い裕福な家庭へと生まれたが、周りの人々の距離は相変わらずだった。
「そんなに俺のことが嫌いなら、話しかけなけばいいのに…。」
「今日も、アルフ様は天使のように美しくて眩しいわ。」
そうアルフが思っていることも、それと反対のことを周りが考えていることも当の本人は知らなかった。
兄たちが溺愛するのは当たり前だと思ってました
不知火
BL
温かい家族に包まれた1人の男の子のお話
爵位などを使った設定がありますが、わたしの知識不足で実際とは異なった表現を使用している場合がございます。ご了承ください。追々、しっかり事実に沿った設定に変更していきたいと思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる