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最初の村

我が家に書置きを残して。

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「にいちゃん、ちょっと話したいことが……って、そっか商談に行く日か」
『兄ちゃんはグラニール市の青果問屋に行きます。4日で戻ります。戸締りはちゃんとするように、お腹がすいたら適当に食べてください。ジャガイモの芽には気を付けるように。具合が悪くなったら――』
「過保護なんだから……って、そんな場合じゃない。兄ちゃんに村長説得するの助けてもらおうと思ったのに!」
俺はまだ14歳。村人はみんないい人ばかりだけど、さすがに俺が騒いでも本気にしてくれないだろう。
「……いーや、あいつには頼らない。ユウキは助けてくれないんだから」
なら、俺一人で何とかするしかない。

『兄ちゃんへ。この村に危機が迫っています。思い過ごしかもしれないけれど、そうじゃなかったときのために俺はラジィの関所に行きます。たぶん帝国軍が来るから。みんなを連れて逃げて、騎士団に助けてもらってください。俺は』
俺は? 俺はどうする?
前世は普通の高校生。現世も普通の農家の子供。戦うなんてできるか?
――いや、できる。今の俺にはチートスキルがある。
『俺は時間を稼ぎます。荷馬車と馬、後、売り物の作物をできるだけ持っていきます。ごめんね』
それから、えーと、書くことは。

『育ててくれてありがとう。血は繋がっていなくても、俺にとっては一番の兄ちゃんでした』

はい。これでおしまい。
もう戻ってくることはないだろうから、部屋を掃除したかったけど、時間がないからベッド下のエッチな本を捨てるだけにした。
カバンに水筒と地図を詰め込んで、出発する。

「大丈夫だ。俺の村、俺の友達、俺の家族――俺が守る!』
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