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第12話 優也の記憶 その1
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「閉じ込められちゃったね」
僕は、困ったねという調子で口にした。実際のところは、困ったとは思っていたけど、それほど深刻には考えてなかった。
一人きりで閉じ込められたのなら、どうなってしまうんだろうと途方に暮れたのだろうけど、明莉が一緒だったのが心強くて。
いや、ナイトメアという存在の明莉に何かされるんじゃないか、という不安みたいなものが全くないわけじゃない。でも、小さい頃から一緒に過ごしてきた幼馴染なんだという感覚が確実にあったから。
その明莉は、スマホの照明を頼りに扉を色々確認していたが、あきらめたという調子で奥のボロいソファまで行ってすとんと腰を下ろした。目の前のテーブルに、明かり代わりにスマホを置いてから嘆息する。
「閉じ込められたわね……。サーヤは何を考えているのか……。まあどうにかなるでしょ」
「そうだね。でもスマホは?」
「電波が通じないわ」
「そうなんだ……。困ったね」
僕も吐息して、明莉から少し離れてソファに座る。
「優也が一緒。これは……ちょっと問題ありね」
「ちょっと問題ありって……。なんか意味深に聞こえる」
「閉じ込められたことはもちろん何とかしなくちゃならないんだけど、この状況は私にとっても安全じゃないということよ」
「と言うと?」
あれほど生徒たちを威圧していた明莉が思ったより深刻そうにとらえていたので、聞いてみた。
「貴方は害にならないお人よしに見えるけど……」
「けど?」
「正直、いろんな人間を見てきたから、油断は命取りになると思ってる。弱いのにいきなり相手を襲う人間も今までは数多くいた。それは相手がナイトメアだからという理由だったり、あるいは女だという理由だったり」
僕は反論できなかった。明莉の言葉には経験からくる重さがあった。明莉は、僕が知らない経験を数多く重ねている。その明莉がポケットからナイフを取り出す。
僕は、そのナイフを見て、ごくりとつばを飲み込んだ。
「僕を……殺すの?」
「そうね。貴方を殺した方が私の安全が保たれそうではあるわね」
「まあ……そうだよね」
「でもね……」
「うん」
「殺すのは好きじゃないの。夜の闇の中で人知れず何人も殺してきたけど、好きで殺したんじゃない。必要にかられて、仕方なくで、努力して自分を責めないようにしている。それに対する後悔はまだ心の奥にこびりついている」
明莉は、座っているボロソファに横になる。
「優也も、休める時に休んでた方がいいわよ」
「そうだね」
「横になったら? 私と身体が触れるけど、重他に休めるところ、ないでしょ」
「いい……の?」
「仕方ないでしょ。でも私を襲うのはなしにして。容赦できないで殺してしまうから」
「わかった。ありがとう」
言ったのち、僕はブレザーのポケットから小さなペットボトルのお茶を取り出す。
「そんなもの持ってたの!?」
明莉が、驚いたという声を出し、僕はそれを開けて一口ごくりとのどを潤す。それから、ソファ近くの机の上に置く。
「ここに置いておくから、のどが乾いたら飲んで。結局出られるとは思うけど、助けがくるまでは貴重かもしれないから」
そして僕は、心中で明莉ごめんと謝ってからソファに横になった。明莉と身体が重なってしまってたけど、どうしようもない。横になると安堵が広がって、そのまま目をつむる。すぐに眠気が襲ってきて、意識があっという間に溶けていった。
僕は、困ったねという調子で口にした。実際のところは、困ったとは思っていたけど、それほど深刻には考えてなかった。
一人きりで閉じ込められたのなら、どうなってしまうんだろうと途方に暮れたのだろうけど、明莉が一緒だったのが心強くて。
いや、ナイトメアという存在の明莉に何かされるんじゃないか、という不安みたいなものが全くないわけじゃない。でも、小さい頃から一緒に過ごしてきた幼馴染なんだという感覚が確実にあったから。
その明莉は、スマホの照明を頼りに扉を色々確認していたが、あきらめたという調子で奥のボロいソファまで行ってすとんと腰を下ろした。目の前のテーブルに、明かり代わりにスマホを置いてから嘆息する。
「閉じ込められたわね……。サーヤは何を考えているのか……。まあどうにかなるでしょ」
「そうだね。でもスマホは?」
「電波が通じないわ」
「そうなんだ……。困ったね」
僕も吐息して、明莉から少し離れてソファに座る。
「優也が一緒。これは……ちょっと問題ありね」
「ちょっと問題ありって……。なんか意味深に聞こえる」
「閉じ込められたことはもちろん何とかしなくちゃならないんだけど、この状況は私にとっても安全じゃないということよ」
「と言うと?」
あれほど生徒たちを威圧していた明莉が思ったより深刻そうにとらえていたので、聞いてみた。
「貴方は害にならないお人よしに見えるけど……」
「けど?」
「正直、いろんな人間を見てきたから、油断は命取りになると思ってる。弱いのにいきなり相手を襲う人間も今までは数多くいた。それは相手がナイトメアだからという理由だったり、あるいは女だという理由だったり」
僕は反論できなかった。明莉の言葉には経験からくる重さがあった。明莉は、僕が知らない経験を数多く重ねている。その明莉がポケットからナイフを取り出す。
僕は、そのナイフを見て、ごくりとつばを飲み込んだ。
「僕を……殺すの?」
「そうね。貴方を殺した方が私の安全が保たれそうではあるわね」
「まあ……そうだよね」
「でもね……」
「うん」
「殺すのは好きじゃないの。夜の闇の中で人知れず何人も殺してきたけど、好きで殺したんじゃない。必要にかられて、仕方なくで、努力して自分を責めないようにしている。それに対する後悔はまだ心の奥にこびりついている」
明莉は、座っているボロソファに横になる。
「優也も、休める時に休んでた方がいいわよ」
「そうだね」
「横になったら? 私と身体が触れるけど、重他に休めるところ、ないでしょ」
「いい……の?」
「仕方ないでしょ。でも私を襲うのはなしにして。容赦できないで殺してしまうから」
「わかった。ありがとう」
言ったのち、僕はブレザーのポケットから小さなペットボトルのお茶を取り出す。
「そんなもの持ってたの!?」
明莉が、驚いたという声を出し、僕はそれを開けて一口ごくりとのどを潤す。それから、ソファ近くの机の上に置く。
「ここに置いておくから、のどが乾いたら飲んで。結局出られるとは思うけど、助けがくるまでは貴重かもしれないから」
そして僕は、心中で明莉ごめんと謝ってからソファに横になった。明莉と身体が重なってしまってたけど、どうしようもない。横になると安堵が広がって、そのまま目をつむる。すぐに眠気が襲ってきて、意識があっという間に溶けていった。
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