11 / 266
11 異世界転移の真実
しおりを挟む
「伊月くんはさ、異世界ものの漫画とか小説が好きでしょ?」
唐突に少年が呟く。
「だって、家にたくさん本があるし。そのスマホにも、漫画や小説を読むためのアプリがいろいろ入ってる。」
「……それが、どうした。」
「それが、異世界転移が増えた理由だよ。」
少年は、あっけらかんとした調子で話す。
意味がわからず、俺が黙り込んでいると、少年はふーっと深いため息をついた。
「だからね、ここしばらく異世界ものが流行っているでしょ?それに伴い、異世界転移というものがどういうものなのか、知る日本人が増えた。だから異世界の神にとって、この日本は良質な狩場になってしまったんだよ。」
少年が言うには、もともと異世界転移という現象は世界中に存在していたらしい。
しかし、その頻度は現代日本と比べると極端に少なかった。
それは異世界転移という事象を受け入れられず、異世界に順応できない人間が多かったことが原因だという。
「だって神様の立場にもなってみてよ。せっかく自分の世界に異世界人を招いても、世界を救う前に死なれたらたまったものじゃないよ。」
しかし近年の異世界ものの流行によって、日本人には「異世界転移」を素直に受け入れる人が増えているのだという。
転移にあたっての詳しい説明が不要、自分の知識や与えられた特殊能力を駆使し、世界に貢献できる人材が増えたた。
それにより、神々のあいだでは「異世界転移させるなら日本人」というブームが巻き起こっているのだとか。
そんなくだらない流行が、娘の異世界転移の原因だなんて、納得できるわけがない。
「神様も暇じゃないからね。知識がまったくない初心者より、多少の知識やゲームなんかの実戦経験者のほうが採用したくなるってもんさ。世界によって異なるけど、魔法の使い方がほぼこの世界のゲームに近いケースなんかもあるし。」
「だからって、なんで娘が……!あの子はゲームはやらなかったはずだ。」
「でも異世界ものの漫画は、よく読んでたでしょ?普通の女の子が異世界転移して聖女として活躍する話とか、現代日本の知識を駆使して異世界を発展させる話とか。」
しかし、漫画を読んではいたが、俺のようにどっぷりとはまっている様子ではなかった。
時間があるときに、暇つぶしがてら読んでいただけだという印象が強い。
「正直ね、神様にとってはどれだけ知識があるかはどうでもいいんだよ。異世界転移という現象を認知していて、異世界に順応してくれそうなら誰だっていい。だから柚乃ちゃんが選ばれたのは、ただ運が悪かったとしか言いようがないだろうね。」
なんという言い草だ……!
特別な理由があったわけでもない。
まるでくじ引きのように選ばれただけだなんて、許されてなるものか。
「ただ、こちらの世界としては困っていることがある。彼らが手あたり次第さらっていくせいで、この世界の魂のバランスが崩れかけているんだ。すべての魂は、この世界を成立するために必要な材料。しかし彼らは奪っていくばかりで代償を支払っていない。このままでは、いずれこの世界の均衡は破られ、大きな厄災が降りかかるだろう。」
先程までとはうってかわり、少年は厳しい表情をしている。
今までのふざけた様子からは想像がつかなかったが、どうやら彼も異世界転移には思うところがあるようだ。
「この世界の神様にとって、異世界の神々は万引き犯のようなものなんだ。……正当な対価を支払うことなく、我々の資源を奪い去っていく。まあ、なかにはまっとうな手続きを踏む者もいるけどね。」
「まっとうな手続き?」
「事前にこの世界の神様と召喚する人間に了承を得るんだ。そして了承が得られたら、対価としてあちらの世界の魂をひとつこの世界にもたらす。いわば等価交換ってやつだね。」
「神だけでなく、召喚する人間にも?」
「そっちには異世界へ来てもらう代わりに、願いを叶えてあげるとか、そういうのが多いかな。」
「勇司くんのように?」
俺が問いかけると、少年は鼻で笑う。
「あれは詐欺でしょ。願いも叶えない、用が済んだら返品だなんて、たちが悪い。しかも、勇司くんの魂が戦いですり減っちゃったからって、代わりに妹を連れて行くなんて、本当何を考えているのやら。」
ほとほとあきれた様子で吐き捨て、少年は忌々しそうに顔をゆがめた。
まるで目の前で見てきたかのように話す、彼は神の使いか、それとも神そのものなのか。
俺の疑問を読み取ったのか、少年が口角をあげた。
「今は、君の想像にお任せするよ。……真実は、またいずれ。」
少年が言い終わると同時に、強い突風が吹いた。
思わず目をつむった俺が再び目を開くと、すでにそこに少年の姿はなかった。
唐突に少年が呟く。
「だって、家にたくさん本があるし。そのスマホにも、漫画や小説を読むためのアプリがいろいろ入ってる。」
「……それが、どうした。」
「それが、異世界転移が増えた理由だよ。」
少年は、あっけらかんとした調子で話す。
意味がわからず、俺が黙り込んでいると、少年はふーっと深いため息をついた。
「だからね、ここしばらく異世界ものが流行っているでしょ?それに伴い、異世界転移というものがどういうものなのか、知る日本人が増えた。だから異世界の神にとって、この日本は良質な狩場になってしまったんだよ。」
少年が言うには、もともと異世界転移という現象は世界中に存在していたらしい。
しかし、その頻度は現代日本と比べると極端に少なかった。
それは異世界転移という事象を受け入れられず、異世界に順応できない人間が多かったことが原因だという。
「だって神様の立場にもなってみてよ。せっかく自分の世界に異世界人を招いても、世界を救う前に死なれたらたまったものじゃないよ。」
しかし近年の異世界ものの流行によって、日本人には「異世界転移」を素直に受け入れる人が増えているのだという。
転移にあたっての詳しい説明が不要、自分の知識や与えられた特殊能力を駆使し、世界に貢献できる人材が増えたた。
それにより、神々のあいだでは「異世界転移させるなら日本人」というブームが巻き起こっているのだとか。
そんなくだらない流行が、娘の異世界転移の原因だなんて、納得できるわけがない。
「神様も暇じゃないからね。知識がまったくない初心者より、多少の知識やゲームなんかの実戦経験者のほうが採用したくなるってもんさ。世界によって異なるけど、魔法の使い方がほぼこの世界のゲームに近いケースなんかもあるし。」
「だからって、なんで娘が……!あの子はゲームはやらなかったはずだ。」
「でも異世界ものの漫画は、よく読んでたでしょ?普通の女の子が異世界転移して聖女として活躍する話とか、現代日本の知識を駆使して異世界を発展させる話とか。」
しかし、漫画を読んではいたが、俺のようにどっぷりとはまっている様子ではなかった。
時間があるときに、暇つぶしがてら読んでいただけだという印象が強い。
「正直ね、神様にとってはどれだけ知識があるかはどうでもいいんだよ。異世界転移という現象を認知していて、異世界に順応してくれそうなら誰だっていい。だから柚乃ちゃんが選ばれたのは、ただ運が悪かったとしか言いようがないだろうね。」
なんという言い草だ……!
特別な理由があったわけでもない。
まるでくじ引きのように選ばれただけだなんて、許されてなるものか。
「ただ、こちらの世界としては困っていることがある。彼らが手あたり次第さらっていくせいで、この世界の魂のバランスが崩れかけているんだ。すべての魂は、この世界を成立するために必要な材料。しかし彼らは奪っていくばかりで代償を支払っていない。このままでは、いずれこの世界の均衡は破られ、大きな厄災が降りかかるだろう。」
先程までとはうってかわり、少年は厳しい表情をしている。
今までのふざけた様子からは想像がつかなかったが、どうやら彼も異世界転移には思うところがあるようだ。
「この世界の神様にとって、異世界の神々は万引き犯のようなものなんだ。……正当な対価を支払うことなく、我々の資源を奪い去っていく。まあ、なかにはまっとうな手続きを踏む者もいるけどね。」
「まっとうな手続き?」
「事前にこの世界の神様と召喚する人間に了承を得るんだ。そして了承が得られたら、対価としてあちらの世界の魂をひとつこの世界にもたらす。いわば等価交換ってやつだね。」
「神だけでなく、召喚する人間にも?」
「そっちには異世界へ来てもらう代わりに、願いを叶えてあげるとか、そういうのが多いかな。」
「勇司くんのように?」
俺が問いかけると、少年は鼻で笑う。
「あれは詐欺でしょ。願いも叶えない、用が済んだら返品だなんて、たちが悪い。しかも、勇司くんの魂が戦いですり減っちゃったからって、代わりに妹を連れて行くなんて、本当何を考えているのやら。」
ほとほとあきれた様子で吐き捨て、少年は忌々しそうに顔をゆがめた。
まるで目の前で見てきたかのように話す、彼は神の使いか、それとも神そのものなのか。
俺の疑問を読み取ったのか、少年が口角をあげた。
「今は、君の想像にお任せするよ。……真実は、またいずれ。」
少年が言い終わると同時に、強い突風が吹いた。
思わず目をつむった俺が再び目を開くと、すでにそこに少年の姿はなかった。
11
お気に入りに追加
66
あなたにおすすめの小説

元外科医の俺が異世界で何が出来るだろうか?~現代医療の技術で異世界チート無双~
冒険者ギルド酒場 チューイ
ファンタジー
魔法は奇跡の力。そんな魔法と現在医療の知識と技術を持った俺が異世界でチートする。神奈川県の大和市にある冒険者ギルド酒場の冒険者タカミの話を小説にしてみました。
俺の名前は、加山タカミ。48歳独身。現在、救命救急の医師として現役バリバリ最前線で馬車馬のごとく働いている。俺の両親は、俺が幼いころバスの転落事故で俺をかばって亡くなった。その時の無念を糧に猛勉強して医師になった。俺を育ててくれた、ばーちゃんとじーちゃんも既に亡くなってしまっている。つまり、俺は天涯孤独なわけだ。職場でも患者第一主義で同僚との付き合いは仕事以外にほとんどなかった。しかし、医師としての技量は他の医師と比較しても評価は高い。別に自分以外の人が嫌いというわけでもない。つまり、ボッチ時間が長かったのである意味コミ障気味になっている。今日も相変わらず忙しい日常を過ごしている。
そんなある日、俺は一人の少女を庇って事故にあう。そして、気が付いてみれば・・・
「俺、死んでるじゃん・・・」
目の前に現れたのは結構”チャラ”そうな自称 創造神。彼とのやり取りで俺は異世界に転生する事になった。
新たな家族と仲間と出会い、翻弄しながら異世界での生活を始める。しかし、医療水準の低い異世界。俺の新たな運命が始まった。
元外科医の加山タカミが持つ医療知識と技術で本来持つ宿命を異世界で発揮する。自分の宿命とは何か翻弄しながら異世界でチート無双する様子の物語。冒険者ギルド酒場 大和支部の冒険者の英雄譚。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~
青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。
彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。
ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。
彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。
これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。
※カクヨムにも投稿しています

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?
歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。
それから数十年が経ち、気づけば38歳。
のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。
しかしーー
「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」
突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。
これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。
※書籍化のため更新をストップします。
普通の女子高生だと思っていたら、魔王の孫娘でした
桜井吏南
ファンタジー
え、冴えないお父さんが異世界の英雄だったの?
私、村瀬 星歌。娘思いで優しいお父さんと二人暮らし。
お父さんのことがが大好きだけどファザコンだと思われたくないから、ほどよい距離を保っている元気いっぱいのどこにでもいるごく普通の高校一年生。
仲良しの双子の幼馴染みに育ての親でもある担任教師。平凡でも楽しい毎日が当たり前のように続くとばかり思っていたのに、ある日蛙男に襲われてしまい危機一髪の所で頼りないお父さんに助けられる。
そして明かされたお父さんの秘密。
え、お父さんが異世界を救った英雄で、今は亡きお母さんが魔王の娘なの?
だから魔王の孫娘である私を魔王復活の器にするため、異世界から魔族が私の命を狙いにやって来た。
私のヒーローは傷だらけのお父さんともう一人の英雄でチートの担任。
心の支えになってくれたのは幼馴染みの双子だった。
そして私の秘められし力とは?
始まりの章は、現代ファンタジー
聖女となって冤罪をはらしますは、異世界ファンタジー
完結まで毎日更新中。
表紙はきりりん様にスキマで取引させてもらいました。

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います
町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる
僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。
スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。
だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。
それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。
色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。
しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。
ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。
一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。
土曜日以外は毎日投稿してます。

異世界遺跡巡り ~ロマンを求めて異世界冒険~
小狸日
ファンタジー
交通事故に巻き込まれて、異世界に転移した拓(タク)と浩司(コウジ)
そこは、剣と魔法の世界だった。
2千年以上昔の勇者の物語、そこに出てくる勇者の遺産。
新しい世界で遺跡探検と異世界料理を楽しもうと思っていたのだが・・・
気に入らない異世界の常識に小さな喧嘩を売ることにした。

アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記
ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。
そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。
【魔物】を倒すと魔石を落とす。
魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。
世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる