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鯉釣り編

プロローグ2

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 学園長に会い、両親の事故の真相を問いただすべく、渓太と魚影はクルーズ船により『夢国島』に訪れているのだ。
 外気は肌を刺すかのように冷えて草木や土に霜が堆積しており、朝焼けがより眩しく感じる。
 このシーズン1月からは特に魚の活性が低いため、学園は2か月間の冬休みを取るらしい。学園長にも時間に余裕が生まれ、今日ここへ来たのだ。
「うぷっ……魚影さん揺らさないでくれよ……」渓太は車酔いで口元を常に押さえていた。
「ははは……!悪い悪い、道路の敷設がまだ全然なんだ!しかしこの程度で酔ってしまっては、船には乗れないぞ!」
 タイヤがパリパリと土の霜を砕きながら、校舎を目指す。
「ここの森を抜ければ見えてくる……ほら!」
「……なまらすげえ……」渓太は呆然と木々の中から突出している高層ビルめいた校舎を見上げる。
「フィッシングアカデミアへようこそ、渓太君」
「入学するとは決まってねえって……」

 そこから15分程し、学園内に到着する。
 フィッシングアカデミアは30階建ての校舎を中心に、真新しい寮や店などが建ち並び、一つの計画都市が形成されている。釣り人の必需品とされる車も多く、都市内に関しては信号などの交通設備がしっかりと機能している。
 田舎暮らしの渓太には、目に映るものが珍しいだろう。
「へえ~、日本式の左側通行なんだ」
「ここは日本支部だからね。ちょっと離れた所にアメリカ支部があって、そこでは右側通行だよ」
「魚影さん?校舎は左折じゃあ……」
「お腹減らないか?学園長とは飲食店で待ち合わせしているんだが……」
「んだな。長旅で疲れたし、飯食いてえわ」
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