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かもめ7440

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 、、、、、、、、、、、、
 望遠レンズの引き寄せ効果―――。
 特徴的な紅い髪の長髪がふああさあっと、揺れた。
 『フード付きの白いローブ』を着て、手には『長い木製の杖』を持っている。
      ホーン  パニック シグナル
 だしぬけな突起―――恐慌・・電気信号。
 その天性の美貌は大脳皮質の認知パターンとして舞台に上がる。
 犬の垂れた耳のような基底構造へと・・。
 ――《始まりの終わり》・・・いいえ・・・
 それは――《終わりからの始まり》だ・・・・・

 ・恋愛は結婚と結びつく
 ・性交渉は婚姻外関係では認められない
 ・恋愛は持続を目的とされ、建前上は自由な相手選び
 ―――三位一体、性別役割分業、社会的な女性の立場・・

 ちなみに生物学的視点では、
 『収入=《餌集め能力》』『学歴=《生き延びる智慧》』
 『ルックス=《生殖能力の高さ》』『身長=《体力がある》』

 男性は『能動』
 女性は『需要』
 (現在の恋愛結婚と見合い結婚の構成比を見れば一目瞭然だろう、)
 ―――でも、ソリアは胸が高鳴るのを抑えられなかった・・。

 <外のレベル>と<内のレベル>
 ―――しばし間があって・・思い出、と・・。

 恋に落ちるなんて思わなかった・・。
 ―――それは、シナリオ。お伽噺の/白い皮膚/

 足の小指が跳ねかえる、親指のまるいところが痺れる―――。
 顔や眼線の方向の空間―――。
 遠い蜘蛛の巣が重なりながら、背後に光をあてられ、不思議な錯覚を起こす。
 その顔がずっとさきから心の中に生きていたことを朦朧とした意識のなかで感じた。蝸牛の這った迹のように歴然と光っている・・。
 メトロノーム-点滴の滴り・・・
 セッティング フェイス
 背景や顔という枠組み・・。
 地べたから裾の中へ蒸し込んでくる熱気と上から照りつける日光の炎熱とが・・。
 小づくりな身体、白い脆そうな肌、微細な粒子が蒼い血管の枝を透かし・・。
 蝋のように流れる迷路、それが『照射』と『誘導』をする。
 遠くから歩み寄ってくる、殆ど恋い焦がれるに近い、ささやかな倒錯・・。
 ―――この意識は男性は魅力的であるべきだという少女漫画的なアプローチ。
 周囲にいる男が何処かの気取った王子様みたいに見える。
 [リアクションとポーズを必要とするイタリアの街]
 (・・煙草を吸って煙にまく、などという高等肘打ちが重宝される、)
 腰巾着系の女性の言いなりタイプだったことが災いしたか・・。
 首筋を正して、眼を瞑る、そこには、断念も諦観も、無縁塚もない・・。
 かくのごとく一掃されて灰燼になる。
 すべてのへりくつは論理の鎧袖一触で解決される。それでも・・グラッタージュ。

 “存在”は告げていた。
 それが『対称』であると。
 それが『鏡像』だと―――。

 私は長い間この瞬間を待っていたのだ、と思った・・。
 ロマンティック・ラヴ・イデオロギー・・。
 (未来の暗示は、青写真のように心ゆくまで眺められた・・)
 てりわたった夏の日、風の夜、流れる光、星のきらめき、雨風、小鳥の歌、虫の羽音、樹々のそよぎ、好ましい声やいとわしい声・・、
 >>>車はBMWじゃなきゃ駄目って本当なの?
 (勤務先や、出身大学、持ち物、親の七光り、)
 [書物の挿絵]
 >>>素晴らしい剣技、躍動する肉体。
 歴史的に見ても、本能という怪物は制御を失ってはいな―――い・・。
 フィラデルフィア空港は告白に最も適した場所・・。
 
 棘波とデルタ波が交互に現れる・・自動的な色彩幻覚。
 その自分と本当の自分との径庭は消えずに残っている意味の暈。
 大量の情報にオーヴァーヒートする・・一目ぼれ―――魅了・・。

 もちろん、三大神経伝達物質の一つであるセロトニンの分泌量が、
 著しく低下するのが、恋・・。
 (此ノ權利ト此ノ義務トハ一切ノ條件ニ依リテ干犯サルルコトヲ許サズ。)

 その時に私は自然と“心の中に反対の気持ち”が起こってくるのを感じた。
 亡霊のような欠落状態、ブレーキング・ポイント・・。
 嬉しいときよく涙が出てくるように、
 その折もあまりの怖さに笑いを堪えることができなかった・・。

 でも、どうしてだろう、田園、野原、市街、劇場、船着場、
 そんな時に感じる『広い世界への憧れ』のようなものが胸の昂奮として、
 耳に伝わってくる。
 ソリアは舗道に新しく水が撒かれたようなときめきを覚えた。
 ―――前衛的とか、前向きな気持ちとかいう補助線の純度の確認・・
 情緒的な音楽伴奏による誇大妄想的な絶対の傾倒。
 体内時計を調節する脳のホルモンが過剰な分泌をする。
 だから知らず知らず爪先立ちになり、手が汗ばむ・・。
 
 私は、一歩下がったタイミングで一歩二歩三歩と詰め寄ってくる男を見つめた。
 コロンブスの話に出てくる卵のように、陸地に接するほうの端が平らにひしゃげていた。勿体ぶって歩く、知ったような顔・・。
 こんぐらがった暗い幻想的なもの、
 あるいはもっと暗い人生の本質のようなもの――。
 『塔』のなかに閉じこめられた人間の孤獨な・・、
 いわば実存哲学的なすがたを、描いて見たような・・。
 理解の速度や―――遅度が・・拮抗しながら滑めらかに辷っていく。
 空想で理論で夢想で狂愚で詩だとしていた、
 それまでぼんやり垣間見てるにすぎなかったことに、『決定的な瞬間』がきてるということを、
 知った。そして自分の判決を聞くために自分は出て来ているのだということを、
 はっきり悟った―――ときめきし胸の名残の波のかげ・・。
 [恋愛の後悔は仕事の後悔の二倍][甘い恋は罠]
 (恋愛は幻覚という症状と著しく似ている・・)
 本などを読んでいると字が小さく見えてくるように、視点がぼやける。
 黒 髪 の 騎 士 ・・。
 、、、、、、、、、、、、、、、、、、
 呼び出しからタイムラグなしに応答する・・。
 お、お礼を言わなきゃ、と思っていると・・。
 そいつは、いきなりこう言った。

 「―――お前はここで何をしている。」
 
 そう、すごい生意気に! 上から眼線に!
 ほんのちょっと、向きを変えた言葉だったら、

 たとえば、お怪我はありませんか、とか、
 たとえば、とんだ災難でしたね、とか、

 力のある歯切れのよい声――。
 あの突然な、重々しい、落ちついた、洞声の発音――。
 鈍い、よく釣りあいのとれた、完全に調節された喉音・・。
 その視線は明らかに勝利者の苛酷な、むしろ毒毒しい光を帯びていた。

 [ギディオン=ソリア=チャリントン]
 (人はみな自分の内によくないものを持っている・・)

 (やめて、いま、無防備な背中に冷たい光があたっているのだから!)
 もしそうでなければ、は、恋愛のお約束の一つだが・・。
 (もし、彼と出会っていなければ、もし、そこに行っていなければ、etc.)
 私はいま、彼にどんな態度を取っていただろ―――う・・。
 秋風にさわさわ揺れている草自身の感覚で、

 ―――男性に従順な女性を演じていたかも。
 (でもおかげで、冷静になることが出来た・・感謝!)
 、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、
 図書室で恋愛本を読み耽ったプロをなめるなよ、と思った。 
 
 ―――愛のないセックスや複数の恋人をしなさそうな騎士の幻想・・。
 思い起こす力が偶然の辻褄を結びつける・・。

 >>>でも何故か、すごくムカつくのだ。
 鼻や口は見えないが、綺麗な眼だ、また女性心をそそるような甘く柔らかい声・・。
 、、、、、、、、、、 、、、、、
 そうだムカつくぐらい、二枚目の声。

 でも、身体を無遠慮に、舐め回すように見てこられた時、
 影を左側から右側へ移しただけのことなのに、
 じゅっ、って燐寸の音がする一瞬――。
 ストーリーの主人公となってゲームをプレイすることで、
 プレイヤーはどんどんその世界観にのめり込んでいく・・。
 ことりと音を立てずに細くドアが開い―――た。

 二つの被写体の配置―――人物との対比の対角斜線上の樹木・・。
 そこから麝香や白檀、沈黙はおだやかな昔の物語を過電流とする。
 ―――寒い汐風が青い皮膚を刺すように・・沁み透れば・・
 また、“ふりだし”に戻る―――。
 しかし象徴的な意味合いからすれば魅力的だが、
 時間と場所にさほどの意味があるわけでもない。
 ―――大きい力に引き寄せられながら、海ほど悲しい孤独な時間を味わう。
 (「環境が快適な部屋」と暑すぎたり寒すぎたりする「不快な部屋」で、
 抱く印象が違うことが心理学の実験で明らかになっている・・)
 [男性は飲んだビールを自分から遠くに置いたほうがモテる。]
 手繰り寄せる水の気配、
 世界はさながら牧歌的なニュースによる昼下がりの交通―――。

 「・・お前みたいに薔薇のように美しい女は、
 守ってくれる男がいくらでもいるだろう。
 ここはモンスターの出没地域。
 お前のような細腕の出番のあるところではない。」

 こいつフェミニストか!
 でも妙に好意を殺ぐような言い方をする反面、
 やめてください、こんなにストレートに美しいと言われたことがない、
 ・・・林檎の実が落ちなければ林檎の実は浮かぶ!
 (でもまだ依頼したり/弁解したりする前触れである)
 >>>オズボーンのチェックリストで枠を調整してください
 照れて顔が赤くなりそうになる―――というか、なってると思う・・。

 サンリオショップ、下着売り場、恋愛映画に連れて行って、
 顔を赤くさせてやろうか、ホトトギシ!
 でもどうして私は・・・。
 ―――私は・・・。

 嫌になるような・・・ジレンマ・・。

 「・・・助けてくれてありがとう! でもね、女性差別はしないで!」
 、、、、、、、、、、、、、、、
 口からは憎まれ口しか出てこない。
 ココロノナカ、ハ、ヒジョウニフアンテイ・・
 (一歩また一歩と近付いてくる。威圧感に、感染する。差しこまれている、)
 [自由がきかず、手荒に、手首をネジ曲げられている気分だ。]
 冷水摩擦をはじめよ。
 プラスチックとゴム質、―――陶酔させる、特権化させる、微笑させる、
 あるいは逆様の王冠、三角の月―――。

 ここは、仰る通りです、とか、本当にありがとうございます、
 と言うべきなのに、氷の結晶、みたいに蒸発、すぐに砥石で鋭利な刃物。
 >>>茶の間のコメディ! 気まぐれ! 滑稽!
 
 そしてそういうことが―――出来るはずの生活をしてきたはずなのに・・。

 「―――差別と言うなら、自分で何とかしろ。何が助けてだ、
 何だったらいまこの場で俺が殺してやろうか。」

 言われて当たり前だ、
 事実は明確だ、左袒すべき余地がどこにある?
 言われなかったら私が心の中で自分に言う、
 ―――でも上目づかいになるのは、甘え・・。

 、、、、
 嘘だった。

 だって、低血圧みたいな調子だったけれど、
 私に虐くあたってくる気持ちが手にとるように分って来て、
 彼を見ていると自然に自分を見ているようでますますまた、
 そんなことにまで興味が湧いて来る。
 (動きのない眼差しや剥き出された歯が、
 恐怖に満ちた幻となって網膜に焼き付けられた・・)
 [アントニオ・カルロス・ジョビンの波。]
 言葉の奥底には、『魔法の媚薬』のようなものが存在している。
 (花は女性を惚れっぽくすると言うし、
 人間の顔は感情を司る右脳の管轄である左側の方が魅力的に見えると言う、)
 ―――とびぬけた美人に対するシドロモドロ・・
 という成分を感じつつも、表面が濁っているようで底が明るく透き通っている、
 無事でよかった、とかいうタロットカードの象徴的類似物が。
 ―――この人も・・いま、口に出せない欲求をかかえている・・。
 (社会的属性の投票行動における欺瞞、イメージだけでしか人を見ない・・)
 、、、、、、、、、、、、、、
 コンスタンティノープルの陥落―――。
 ウェアラブル・・烈しい音が特徴的に跳ねるコード進行・・。
 ・・・手を伸ばせば指先に触れそうな気がする。
 でも自分が、華奢な骨に石鹸のような、繊く碧い薄い羽根を持った、
 、、、、、
 フェアリーにでもなったような気がする。 
 時間を――忘れ・・・て・・・しま――う・・・。
 時が止まる。

 主題に重なる側距点からのフォーカス・ロック・・。
 でも一瞬、『眼を白黒させた』のは気のせいだろうか。
 それを“「許可」する”・・
 見知らぬ人によって供給される、ドアノブ・・・。
 
 //“動揺しているシードと相手の出方を探るソリア”
 【scene《混じりけがなく冴え冴えと白い骨》】

 であいは―――ひとにきみょうなちいさなおもいでを―――、
 のこしてゆく・・。

 でもシードはその時、硬い彫刻的な紅むらさきの花を見ながら・・。
 いままで見たことのない湖のほとりの青草原に寝転ぶ夢・・。
 薔薇の挿された花瓶を写し取っているような気持ちを味わってい―――る・・。
 けざやかな虚飾にも似たスタンリー・キューブリック的秩序。
 鳥肌立つ、恋は神経レベルで人間のパフォーマンスを向上させる・・。
 コンラン・・シテイマス・・・。   
 持って生まれた“趣味性の嗜好”に『無趣味な居住』はできない。

  [シード・リャシァット]
 (本当に、美しい・・)

 ―――理知的な瞳が射抜くようにこちらを見据える。
 アレクサンドリア
 亜歴山特―――。
 柔らかな面差しには美しさと幼さが同居し、
 どことなく感じさせる高貴さが危うげな魅力すら生み出していた。
 すこし薄く、ひどく蒼いが、非常に美しい線の唇。
 小柄な女性の部類だ。この身長でこそ成り立つバランスの、緻密な完成度の高さ。
 プロポーションとしては絶妙に縦長の、
 内部の中心点に向けていっさいの無駄なしに整然たる求心力。
 >>>女性はヒップとウェストのバランス。
 、、、、、、、
 顔立ちの美しさだけではなく、
 空想のサテライト・ステーション
 不意にかすかな呼び声がする、
 何かその声に約束を促されて―――いる・・。
 彼女を見る人の視線をとらえてやまない魔法のような雰囲気・・。

 『熱情的な魂の色』をためつすがめつ眺める・・。
 まだすべてが“未確定”なのに、何故か『心惹かれ』る・・。
 とにかく遠くへ行きたくなるような心理―――だ・・
 目標/可視化/オンボーディング/チューニング・・。
 “「Inclination(傾斜)」”を求める。
 ほど――くらい――まで・・。
 (まるで百年ぐらい音信不通だった恋人とばったり出くわしたような・・。)
 [そのせいで、わざとふっかけるようなことを言ってしまう・・。]

 「・・・立てるか? お前はあたりの村の女か? 
 それとも、城下町の娘か?」
 「おあいにく様! この無礼者! 
 あたしはこのラッシード王国の第一王女よ。」
 
 すると、その白装束の男は、ややぁとしたが、すぐに、言葉を投げかけす。
 それは一点の曇りなく保たれた、強硬な姿勢。......拒絶的な...気配...

 ・・・樹の葉のクローズアップ、鳥の翼、栗鼠のクローズアップ、
 ぐるっと三百六十度をみまわしながら、
 “「入って」と言われても「入れないドア」”があることを確認する、
 回転観覧車と、水力機械装置のなめらかな始動が起こる・・。
 E...escape......B...back space......
 ばかな、、、ことを、、、かんがえる、、、
 斜めから狙って奥行きを出す写真みたいな視点。
 、、、、、、 、、、、、、、、
 ノックナイフ、音声の突然の逮捕――。
 ―――心臓 の 位 置がもう違って い る 心 の 声

 「やれやれ、とんだじゃじゃ馬のお姫様のようだ。」

 すうっと手を差し伸べてきた時、やっぱり―――。
 やっぱり、何故だろう、不意に懐かしい感じがして、
 静謐なゾーンの空気をやわらかく揺らしている、風。
 眼を丸くしてしまう。ドキンとする。非決定性プログラムの産物・・。
 マゾヒストか、―――でも植民地を防ぐ富国強化、厳しい意見のレッスン・・。
 旧約聖書のアダムとイブが、知恵の実を食べて・・・
 という『林檎』が、実は『杏』だった。
 (なにかが ちがう なにか だった・・)
 形の違う小石をぶきようにつみかさねたいびつなバランスをととのえる・・。
 ・・・でも何故だろう、こんなシチュエーション昔何処かであったような、そんな気がした。心を苦々しい索漠とした霧が覆う―――。
 
 「ねえ、あなた、私と何処かで・・」
 「―――さてね、知らないね。」

 彼が手をスッと引き戻した瞬間、何だかすごく淋しい気がした。
 不完全なデータも、精密なタイムラインもそれを証明している。
 セカンド・ヴァイオリンが遅れたのだ・・。
 (速い速度で転がっていくボールを二塁手と一塁手が同時に追いかけていく姿みたいに、)
 ―――ありえないほどムカつく・・。
 早まった、方法の放棄、妄想の妄想的抑壓。
 パブリックなスペースではなくプライヴェートなスペース・・。
 聞くに堪えない罵詈雑言よりも確実に心を折られた気がする。
 それでも様々な出来事の印象を汚れのない新しい海綿のような感覚で吸い取る。 
 私のほうでは言いたいことばかりだったが、何一つ口に出てこなかった。
 舌が顎にくっついてしまっていた。
 
 ここは―――ラッシード王国の城下町からはなれた草原。
 風がクラリネットの音楽のように流れていく。
 四方八方へ、声を散らす・・。
 樹木には毒々しい葉をひろげた植物が繁茂し、
 蔓草がいたるところに伝っている。
 、、、、、、 、、、、 、、、、、、、、、、、、、、、、
 樹という樹が、野放図に、アクションペインティングのように、
 さまざまな光と闇の表情を見せている。


    *


 大きな茶色い馬がやって来る。
 狐の毛皮にも似た赤いつやを帯びた豊かな栗色の髪は陽差しにきらめき、
 、、、、、、、、
 光る眼は青い石炭のように燃えていた。

 ―――残酷な競馬の現実。
 きのうのことが・・・なつかしい―――。
 >>>子馬の内から殺処分もある、競走馬は引退後九割が殺処分。
 馬と人間の繋がりは深い・・。
 [車馬は社会の上層階級に大いに重視されたため、車・馬と車馬具とその明器は、
 古代における高位の墓葬と祭祀遺跡から多く発見される。]
 (たとえば殷代後期から東周時代の頃は若齢から壮齢馬に集中するのに対し、
 戦国時代には一歳以下の幼馬が犠牲にされる・・。)
 馬車の馬とは系統が違う。瞬発系の力強い筋肉が隆起している。大腿筋膜張筋。
 走法や気性が変化し、それに伴って距離適性が変化する競走馬もいると聞くが、
 無酸素性作業閾値での練習というレシーヴァー。
 地を蹴っている後脚の惰力。
 走能力には筋の発達が不可欠だが、
 スムーズな動きはウェイトトレーニングからは得られない。
 (筋肉が活動するとき、その内部には微弱な電流が流れる。
 それを測定したのが筋電図。地震の揺れを示すデータのような細かな振動波。)
 
 人間と馬は九〇パーセントは同じ遺伝子で出来ている。

 「競馬が人生の比喩なのではない、
 人生が競馬の比喩なのだ」とは寺山修司。
 「八頭のサラブレッドが出走するならば、
 そこには少なくとも八編の叙事詩が内包されている」
 
 馬といっても育ちだよ、でも時節到来は釈迦の了見も及ばぬ・・
 ―――実績はあっても人気にならないカツラギエース・・。

 ―――ところで『狂牛病』や『口蹄疫』などは偶蹄類の病気で、
 奇蹄類の馬はそれらの病気にかからない。 また、抗原度が非常に低く、
 アレルギーは起きにくいなど、馬肉は最も安心・安全な食肉と言える。
 ・・・ふっと、『うさぎダービー』のことを想像する。

 リモート・コントロールの手際。
 並木の影の中を悠然と整理された各種の既知の感情の中に蹄を運ぶ。
 福音の使者のようにも見えた馬はどうやら彼の馬・・。

 と、この瞬間に、低い、明らかに遠くからの、しかし鋭い、長びいた、
 まったく異様な、叫ぶようなまたは軋るような音――。

  [シード・リャシァット]
 (いつまでも、こうはしていられない・・)

 //“瞬間移動の魔法を使うべきだが事情がわからぬまま帰せない”
 【scene《兇暴化したゴブリンを訝しむシード》】

 ほんのちょっとした―――ぐうぜんで・・
 ひとのかんけいは―――ふかくなってゆく・・。

 「乗れ。あれだけ盛大にやったら仲間を呼ばれる。
 下手なことをして、面倒なことになるのは沢山だ。」
  
 仕方なく乗った。一人で帰れる、というのは子供である。
 むくち
 寡黙になる・・。
 ゴシック建築の中を彷徨い歩いてゆくような、
 、、、、
 すりぬけ―――
 私は自分を不甲斐ないほど軽く感じた。 
 風が、手綱を握った私を馬の背から剥離しようとする ・・。
 空想力のない昆虫の網膜からうかがえる、空虚な貪欲さが羨ましい。
 私はこれ以上、彼と喧嘩したいわけではない。
 だから『風化作用に骨だった岩石』のようにおとなしくしている。
 ス リ ー コー ド や 、リ フ の悲劇的喪失。
 掩蓋や塹壕からの静止テスト。
 硝子の破片のような断片的な影が枯れ葉のように散り留まる。
 巨大な励起レーザー装置による原理実証実験。
 幽体離脱したような欲望に引き裂かれたまま無表情になる。
 あるいは―――中生代の海老の化石の写真・・。

 彼は馬を引いてくれる。口ぶりはともかく、紳士だ。
 先程までの、見るからに自然と頭の下るような、
 いかめしさと重々しさとは蔭をひそめ、
 いかにも悪意なく、昔ふうのやさし気をおび、しかも何となく気品があった。
 またすこしずつ・・・なおすこしずつ―――。
 ・・・・・・引力というよりはないから、
 踏み切った不可思議な経路ありありと・・。
 逃げ足は遅いのに盛んになってくる血行、頭脳・・。
 そのまま、城下街の方へ―――。
 流れる速度も行き着く先も分からず、自由にたゆたう・・雲。
 高低差が激しかった、魚のはららごに似た憂鬱な悶々・・。
 草のいきれの中にぐらりぐらりとゆらいでいる。
 メンデルの発見した生物の遺伝法則のように模糊としたものを明確にする、
 草木の繁茂地図。それは蔵われ、諳んじられる。基礎をなす外展と内展。
 即興曲の作曲をする・・壁龕的掛軸―――そうともやにわに・・。
 ブーツ型をしたイタリアの「つま先」のすぐ先にある・・。
 月暈のような水滴容積・・。シシリー・・。
       みずとり
 陸に上がった水禽みたように、用手遮光・・。
 かくて草木が育つ潜在能力、―――世-界、
 保護/回復/改善
 『エネルギーの形態』として、『抽象物』として、あるいは、『亡霊』として、
 古代的な呪術的要素の名残のように、あるいは民俗学者の思念のように・・。
 (―――ナポレオンはイェーナに入城し、それをヘーゲルは見た。
  ヘーゲルはこの時の事を「世界精神が馬に乗って通る」と表現したが、)

 ・・・私もいま、心臓を【凪の海】にしながら、
 そんな気分を味わって―――いる。

 メンタルヘルス
 精神衛生。
 凍結するarm。
 樹木は様式性を持たない。誇張も歪曲も、色彩や凸凹も、表現の楼化だ。
 ―――さっと林檎を砕いたような匂い、掣肘を知らず、
 分裂組織・形成層で内側に道管を主体とする木部の形成。
 うらうらと照りわたっている陽の中で殊更感情を高めている山。
 スコットランド、ストックホルム、セントルイス
 蘇格蘭、士篤恒、聖路易―――。
 更衣室を覗かれた少年のような顔をする、蹣跚とした足取りの鳥。・・假死・・。
 冴えて美しくなる世界はいま奇妙な結晶体・・。
 その限られた世界の中を滑り歩けば透きとおってしまう。
 切り株に座っている、狐。
 ・・・何処までも指を滑り込ませられる温かい腹の柔毛、
 慌ただしい演奏が印象という身勝手な冷えた心を残して終わる。
 すべての緊張は一時に弛み、眼をつむっていると、うつらうつらしてくる。

 (家庭教師の授業はいいのだけれど、会話は退屈で・・)
 風景は絶えずノスタルジックに塔から林檎を落とす場面を推移する。
 『人生で学ぶべき本はたったの《十冊》しかない』
 樹と隙間の分割と増殖、バ ー ス・・。
 ―――青空の透いて見える淡い雲。
 (初期条件の僅かな違いが、桁はずれに大きな結果の違いを生み出す現象・・)
 谷間に下りて向こうに登ると路に出る。
 プリミティヴな筆致で・・。
          、、、、
 踏み潰した草の葉のささくれが見えるほど明るくかがやいている座標系。
 フィールドの中の硝子板の点の生き物に注がれる・・。

 ズーム・アウトからの見開きゴマで展開される、
 ―――小川だ。
 いざや今、その浮葉のようなデリケートで艶冶な決行を促さばやと、
 さやさやと音がする。
   みずたまり れんえん
 大きな瀦。瀲灩として。
 ・・する――心臓・・・の――音。眠たげなささやきと重油を流したような、
 アンダー乗りさえすればリズム・・。
 そこに呑気な顔の太公望。
 釣りをしている人影は造った像のように動かずじっとし、いまその水面の中に、
 弱肉強食のレースがあるとは思われない・・。
 角砂糖はいつのまにかすべてコーヒーの中で溶けていく―――のだ・・。
 「釣れるかい?」と彼が聞くと、
 半刻近く、待っていても、魚は、かかって来なかった、と言いながら・・。
    むき
 でも、本気になることはなくて、自分のことまでまるで他人事・・。
 自ら冷汗を憶える小細工、脅迫、虚偽が無い―――平常心・・。
 「今日はサッパリだな。」

 //“怪魚を釣ったこともある太公望との会話”
 【scene《三角フラスコの透明なガラスの顔》】

 [太公望]
 (オヤ、こやつ騎士団だったのか・・?)

 無定形の渦巻が突然変化し、『ストライプ』や『水玉』、『格子縞』になる。
 (ロールシャッハテスト・・シミュラクラ現象・・)
 [ミネソタ多面人格目録・・]
 自然林の柱廊が、日のほとぼりがまだ斑に残っていることを伝えている。
 不明瞭な甘美な魅惑がアルトとバスをまぜた音声でごぼごぼと聞こえている。
 いつか竿が動き、糸が動く、それまで・・。
 >>>何も考えず、のんびりとした猫でいよう―――よ・・
 愚鈍な優等生が巣離れするための無言劇の登場人物・・・。
 (―――俯瞰視点、細い枝を目を丸くしながら見上げる、ソリア。)
 ―――迅速な手術、切開。
 訝しい魅惑、それは無限の生命に眩惑されるからではないだろうか。
 ダーウィンは自然選択と呼んだプロセスを通して進化したことを明らかにする。
            さなか
 古い壮大な木々をめぐる央に、まぶしく眼をうってかがやき、
 牧歌的な、長い閉鎖を経た、
 植物や鳥の気ままな静かな営みの光景が拡がる。
 (45mmのレールを走るGゲージのおおらかなトイトレイン精神・・。)
 [スローフード][敬虔な伝道師]
 白い蝶の飛ぶような讃美歌を口ずさむ、森の緑の木蔭・・。
 ―――排他的な、隠微で卑しい黴みたいな、君を待ってくれてるもの・・
 、、、、、、、、、、、、、
 こんな時に人は自らを恥じる、
 何らの身を飾るべき宝玉のたしにも為っては呉れない、思想や言葉に・・。
 ・・・・・・転んで歩けば歩くほど“雪だるま式の苦しみ”を背負う、
 神経の町がその先へ、思索の町がその先へ、その先へ、出来てゆく・・。
 (シド・ヴィシャスや、ジミ・ヘンドリックスも・・?)
 [ジャック・ケルアックやアレン・ギンズバーグも、さ・・]
 だから、ありとあらゆるものは動物の檻、
 だから、世界は七人の敵、だからいつか、考える力を喪う・・。
 その茂りのかげに跼くまって、柔しい足音を待っているみたいに、
 ドビュッシーの『月の光』が何故か聴きたくなる・・。
 水の冷たさがあたまの熱をだんだんに醒ましてゆくに従って、

 [ギディオン=ソリア=チャリントン]
 (眠たい―――な・・鳥の旋律・・)

 ピッピッピッピッ・・。
 ガァーガァー。
 ピーヒョロロロ―――。

 ひと薙ぎその衝撃が薙ぎ通してから、次第にざわざわと揺れ出す、風。
 なんだか『水苔』のような、“じめじめした匂い”が湿って鼻孔を圧してきた。
 何かまた別の新しい興奮が、波のようにつたわっていく・・。
 >>>夜、ヘッドライトをつけた闇が前へ前へ押し寄せてくる・・。
 血なまぐさいことがあった後のせいか、鮮明な姿かたちが心に迫る。風情がある。
 人に知られずに咲いている花は美しい。
 川は何よりも“ひっそりと流れている”のが、銀色だ、風の織物だ、
 陽射しの反映で、琺瑯質のようにも見える―――西洋の手相見のように、
 葉末は折れて垂れ顫え・・、
 雑草と茨がはびこり、野生の何かが下ばえをがさごそと鳴らす。
 歴史の延長に包まれ、第一及び第二の計画は進行する。
         かなめ
 遠近法や明暗法の要が狂っているかのように。
 自然なおしとやかな気質のようでいい。
 少しずつ、モンスターとは縁の遠い動物や小鳥たちの絡繹たる景色になってゆく。
 ぱたぱたとね――ぱたぱた・・。
 彼が、ピュウ―――ッツ・・と口笛を鳴らした・・。
 、、、、、
 あらいぐまが、しゃこしゃこ洗濯しているのが見えた。
 網盥に積まれた衣服と、その日の弁当と、他に焚火の材料を切る鉈と・・。
 精が出るねと彼が声をかけると、キャラメルくれる、と笑っていた。

 //“一家に一匹便利道具あらいぐま”
 【scene《キャラメルもいいけど、大福がいいよね》】

 [あらいぐま]
 (うさぎが言うんだ―――よ・・洗濯機って便利なもの・・)


 動物たちが喋るのは『モンスターの出現の影響』だと―――言われている・・。
 (二足歩行、器用な指先、言語理解、働く―――獣族の誕生・・)
 (中には、もちろんよく思わない人もいるみたいだけど、)
 フーゴー・ファン・デル・グース 『人間の堕落』の爬虫類じみた真実の姿・・
 無感覚な、無表情な、無神経なひとつひとつを――・・
 私たちは、愛という人間の最上級の皮を、かぶせられないのだろうか・・・。

 ・・・でも彼等を見ていると色んなことを教わる、
 La la la la la la la la...
 音楽が......あふれる...
 
 岐れゆく人の、名前、人の、名前、――・・
 
 『職業』や『生き方』があるのだと―――。

 枝葉の下を流れる川の水は、斑を織り込まれて流れている。
   そで   くも い
 彼は袖にかかる蜘の網を払いながら、茂みのなかを掻き分けていく。
 絶えざる強迫観念におそわれながら、まるで一人のさびしい犯罪者の落ちてゆくように、
 ていねいに今来た方を透し見る・・。

 [シード・リャシァット]
(どうやら追手は―――ないようだな・・)

 空や草木が映し出され自然に一体化している水面。
 規則正しい音とランダムで規則性がない音との中間の音で、
 鷹揚なうねり、濃い色の藍、情報記憶媒体、その、クイックコネクタで、
 ながい睫毛のしたにある二重まぶたのすずしい眼、
 なにごともながれゆく水のながれのひとふれ。
 人に快適感やヒーリング効果を与える『1/fゆらぎ』
 、、、、、、、、、、、、、、、、
 くすぐつたい感觸が足の甲をつつむ。
 とよとよ・・すううう―――ざわざわ・・。
 ごぼぼ・・ぞ、ぞ・・とよとよ・・スウ・・・
 蒼い水面に鱗がたのさざなみが立って、
 きゅうに涼しさと寒さとが一いちどきに体温にかんじられた。
 ふしぎに水面というものは、流れが、底へゆくほど重なりかかって見える
 足元は湿った苔に覆われた永年の腐植土で、ひどく頼りなかった。
 風で運ばれた植物の胤が付着する。
 ―――小さな頃、頭に花かんむりをつけていたことを思い出す。
 鼻に眼鏡でもつけているみたいに、焦点が合わない、美しさ。
 一瞬一瞬がまがいものにせよ、清澄な空気は幸福のカンバスを用意している。
 私は海岸線のようになだらかな肩をしてリラックスしている。
 そしてその不分明に揺曳しているのに委せている時間は、
 彼の滑稽な役割の中でおじゃんになった。

 「それで、そのじゃじゃ馬姫はさっき何をしておられたのですか?」
 「ま、まっ、魔法の練習よ!」
 
 魔法は、体内の魔力を詠唱により仮想設計の器としての魔法陣に注ぎ込む。
 (魔法の要領は、潜在意識からやってくるものをしっかりとつかむ練習の賜物。)
 (優先順位としては無意識下のほうが圧倒的に優先されるので、)
 >>>魔力を意識的に移動させる訓練、体内の魔素を、体外へ押し出す。
 ***ちなみに魔素のもとは、【血液】である。
 魔法陣に組み込まれた数字にも似た無駄な贅肉のない叡智、
 光り輝く円環と幾何学模様・・、
 [占星術、錬金術、黒魔術・サバト・グノーシス、新プラトン主義、
 隠秘哲学、悪魔学、薔薇十字、フリーメーソン]
 ***本来的な意味での魔法陣は、時間や空間をあらわす、と言う。
 人類の忘れられた堆積へアクセスし、
           ロスト・スペル
 ―――だから詠唱は『失われた文字』という概念を用いる。
 >>>ワルプルギスの夜―――魔女の集会・・
 その『式通りの魔法』が発動、顕現するというプロセスを経る。

 不意に、口ぶりが優しくなった・・。
 「俺の知っている賢者は、
 属性・威力・射程・範囲・魔力・持続時間の六項目をあげていたな。」

 「賢者の本ね。」
 (いや、本当に彼は賢者を知っていたのだが―――。)

 ・・・舌がもつれる。
 特別優美な時代を賛美する、肉体も感情もない、要求―――。

 「魔法は天性のものだ、火花が散る動物の美しさ、
 それは世界を書き換えるイメージの第一歩である。
 ゆえに男性より想像力逞しい女性の方が原則望ましい。」

 「わかった、トリークル教授ね。」

 
 [シード・リャシァット]
 (静脈の浮き出た幹のような―――懐かしい名だ・・)
 その言葉の響きに、全身鳥肌立つ。
 >>>でもお姫様は存外、読書家なのかも知れない。

 大賢者トリークル。
 、、、、、、、、、、、、、、、
 シードのパーティーの仲間だった。

 「でもあそこに魔法陣はなかったな、いい傾向だ。
 ということは―――もう短縮形ができるのか。
 賢者は言う、魔法は一秒でこなせ。ありとあらゆるものはイメージだ。」

 でも俗に言う『一秒の壁』の問題というのは座学と実戦の分かれ目だ。
 きんにくのしゅうしゅくそくど・・・・・・。
 学問や、魔法研究の立場ならともかく、
 いざ戦いの場で五秒も十秒もかかっていたら命取りになる。 

 これは『有効性』の問題である。
 (一言一句正確な詠唱を求める文化もあれば、
 呪法や呪具の効力を認めて、術者による多少の呪文改変を許す文化もある、
 ということだ。)
 すなわち魔法は宗教的なものであるが、宗教と魔法が同居しなくなった瞬間から、
 ・・・絶えず湧き起り絶えず揺れ動くものの幻―――。
 その床は“高床式のまねごと”みたいに高くなる、
 ―――運命を捻じ曲げる超自然的な力が分離したのだ・・。
 銃を持っていてもライオンやアナコンダを撃たなきゃ殺される・・。
 [柵の中に追い詰められてゆく動物だって雨後の路上の水溜まりだと知れば、
 毅然として、折り曲げたナイフのような姿勢になる]
 そういうリアリスティックな見方が、裸一貫同然の魔法使いには必要になる。
 (トリークルが、“火花が散る動物の美しさ”といったのはこの意味合いだ。)

 「いいところ、三秒ね。」
 視線の動き―――。
 きみ、うれしいこと、を、いうなあ・・。
 解剖学から写生したような正確な浮き彫り―――拍手・・。
 「いや、十分じゃないか。白魔法なんだろ?」
 グリモア
 魔導書にはこう説明されている。
 ―――魔法の説明は陰と陽。光と影。即ち黒と白・・。
 (オーブントースターの中のヘビー・クリーム、ブラウンシュガーみたいなもの)
 攻撃系呪文と回復系呪文。そこに・・。
 青魔法という時間を遅くしたり早くしたりする、眠らせたりする現象操作系、
 赤魔法という精神強化系が存在する。
 >>>魔法体系のややこしさは四大要素でよく説明される
 指定した範囲の、カーソル位置は実際の指のタッチ位置・・。
 (なお、属性に入らないものは、無属性、禁呪魔法、オリジナル魔法と言う。
 無属性は魔法辞典に載っていないもの、禁呪魔法は使うのを忌避されているもの、
 オリジナル魔法は既存の魔法を組み合わせたもの・・)

 『黒』と『白』と『赤』と『青』・・。

 属性や、系統にとどまらず、魔法の派閥でもある。
 だからどんな魔法使いも、
 まず、自分がどの『色』に適性があるかを知ることから始める。
 >>>適正は《魔法上達の最大の鍵》だからである。
 
 ただ、前述した大賢者トリークルなら、
 ―――魔法は七色の虹、と言うかも知れない。
 四元素とか、四大要素とかいう基準よりも、大魚の口――巨人の腋の下・・・。
 (ナビゲーションニューロンみたいに、インプットされた情報を探す。)
 >>>君はエドガー・アラン・ポーから何を教わったのか?
 (完全に展開された自然現象の模倣、奇跡の瞬間、それが魔法・・)
 ――時間とは芸術、哲学、自然科学、心理学だ――
 七つとか、八つの方が『プロフェッショナル』という単純明快な理由で。
 (現実の材料置場、進路を薙ぎ払う類の野放図・・)

 ―――そんな馬鹿馬鹿しい価値基準をぶち壊してしまうだろうが、
 それでも、彼女が、『白魔法使い』であることは、確実である・・。

 、、、、、、、、、、、、
 でも彼のご機嫌もここまで。
 、、、、 、、、、、
 ナインスやイレブンズなどのテンション・コードの響き・・。
 圧倒的スケールに思えた―――森の蜃気楼・・ゆらゆらする・・。
 優しい人だと―――思えたのに・・。
 
 「けれど、感心はしないな。
 適性のある魔法使いが魔力暴走してモンスターになったという事件や、
 魔力不足でぶっ倒れるというのはよくある話だ。」

 わけのわからない神様の御心か、という感じ。
 じゃじゃ馬姫には困ったものだね、と口からついて出そうだ。
 心の飛躍を妨げられる・・。 
 (船底に引きあげられたイイダコが怒って黒い汁を吐くようなものだ。)
 きおく、に、おいて、ひとつ、の、さび。
 、、、、、、、、、、、、、、 、、、、、、、
 内側に向かっても放射するのか、全身が黒くなり、
 ――― い ま に も 、ぐらりと傾きそうになりながら、
 、、、、、、、、、、、、、、、、、、、
 八本足で立って歩きながら逃げようとする。
 [マメ科アカシア属の常緑高木、アラビアゴムの樹の空想]
 あるいは、昆虫たちにとって地獄である南方の或る食虫花を思わせる行為。

 //“姿勢保持のために両足に力を入れるソリア”
 【scene《プロクルステスの寝台》】

 撃 鉄 を安 全 位 置 に戻せ・・。 


 [ギディオン=ソリア=チャリントン]
 (分からず屋め・・)

 「―――もう私の国には、魔法使いがいないからよ。
 薬草を取りに行こうにも、モンスターがうじゃうじゃしてる。
 私は民の力になりたいのよ。」

 、、、、、、、、、
 彼は首を横に向けた。
 ソリアの上から見下すような勝気な視線が突き刺す。
 無駄な情熱の意力の詰まった穢れた壺のようなゴム風船・・。
 、、、、、、、
 よくいるタイプ・・我が儘で、自分の力に酔っていて、命の危険に遭遇する・・。
 ルカートの岬角・・。
 この符牒の裏にポアント――鋭い尖、の意味を了解する。
 シードは身体を前後にゆすり、眼鏡が鼻の上からずり落ちるような気分。
 落ち着かない気分―――そして美しいがどこかひどく淋しい感じ・・。
 少しばかり身長が足らない所為で凄みに欠けるが・・。

 「何よ、笑いたいなら笑えばいいじゃない、
 お転婆でじゃじゃ馬なんでしょ、
 そんなにおかしいなら、
 どうぞ、お笑いになればいいわよ。」

 これは―――水の底で海藻に絡まれたような失態・・。
 (長い間不自然な生活ばかりしていると、人の心が蚕に喰われている桑の葉のようだと思う・・)
 [腐ったみかん理論は腐っている蜜柑を見つめている人の心の中にある]
 彼は跪き、忠誠のポーズを取った。
 夾雑物のまじりようのない、透明な感情。
 ――無抵抗――服従。
 それまで男の胸を苦しいほど充たしていた女恋しさは、
 突然、いい知れず昔なつかしいような、殆ど快いもの思いに変りだした。
 ―――猫ののびをしながら、眼を瞠るソリア・・。
 、、、、、、、、、 、、、、、、、、、、、
 コペルニクス的転回・・快感帯を活発に刺激する―――。


 //“ああこの人は騎士なんだと思うソリア”
 【scene《虫のごとき倦まざる反応の蠢動を起こす肉体》】

 [ギディオン=ソリア=チャリントン]
 (顔が赤くなるな・・)

 「どうか、数々の無礼をお許しください。」

 「・・・な、なによ、調子狂う奴―――」

 でもその言葉は、皮膚の硬い胼胝になった部分に針のように滑り込む・・。
 寒暑と波濤と大火山溶岩とに透明人間になるような心地・・。
 ―――人間の精神というものは筋肉の層で積み上がったものとは違う、
 ・・・その細胞の一つを嗅ぎつけた瞬間に人間は得難い宝を手に入れる。
 ―――急湍に吸い込まれてゆく。
 空中で停止。数秒持続させる―――沈黙・・。
 、、、、、、
 心地よい打撃・・彼は誠実な人柄のようだ―――。
 一種のパフォーマンスかもしれないけど、神様が肉体に舞い降りる瞬間・・。
 ツンデレという可能性も、あったが・・。

 「私はただ、あなたが城から抜け出して、
 遊びに来たのかと思ったのです。
 民のために魔法を修得して力になりたいという説得力のある言葉の何処に、
 私のような賤しい人間に笑う資格がありましょうか。」

 どうも、『誤解』があったようである。
 夜明けの寒気がいつのまにか全身を感覚のない石にするように、
 まるくて・・・のっぺらぼうで―――そう・・ばかばかしくて・・、
 それでも、いつのまにか、デリケートな友情の表現が芽生えている・・。
 >>>回り道した分だけ『掌』や『足の裏』のことがわかる。

 たっぷり一分は沈黙したあと、
 わかればいいのよ、と言った。
            きつ む
 妙に汗ばんだ馬の体臭が強く蒸れていた。
 、、、、、 、、 、、 、、、、、、
 息苦しさと、汗と、恍惚・・覗き穴の世界―――。

 やっと事情が分って来ても、押し黙っている―――。
 タブーの問題、世間体の問題を取り外しても速度の弛んだ独楽とはいかない、
 何か或る強い力に引きずられてゆきでもしているような、
 空虚な自分をしか見出せな―――い・・。
 ガサッ、頭上を見上げる。
 ・・・大きな鴉がこっちを見ている。

 それ以降は何もしゃべらず、歩いた。 
 放置されていた遠い柔弱な部分から、ひそかに押し寄せてくる女性性・・。
 (戸惑い、狡さ、けれど、不思議な歪み、永遠の朧・・。)
 海の底にいるような心地よさを覚えるその世界は、波の引く一瞬に現れる貝殻。 
 途中、村があった。集落という感じでもある。
 暗い谷間にある樹木のような、くっきりと迫り出した集落。
 、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、
 十数軒ほどの家の集まりを粗末な柵でぐるっと囲んである。
 柵の内側には、小さな畑があった。
 ゆっくりと無感動に白と黒の地図を持った牛が草を食むのが見えた。
 歩き進めて行くと木陰の下で、
      、、、
 レタスを、うさぎが抱えて、しゃりしゃり食べているのが見えた。
 美味しいと私が聞くと、べらぼう美味え、と言った。
 モフッとした顔にスマイル作って、この世の天国をつくりあげていた。
 可愛い兎だった。

 //“うさぎは世界で一番かわいい生き物です”
 【scene《耳がぴこぴこするのはどうしてですか?》】

 アンダーグラウンドさ。
 バックグラウンドさ。
 とんでもないビハインドさ。
 ・・・なんてね。

 [うさぎ]
 (生きてるっていいなあ・・)

 ふっと、彼が、実は昨日ここで泊めてもらったんです、と言った。
 一瞬何のことを言っているのかと思ったが、
 そういえば、彼は私のことを村の女か、と言ったのを思い出した。
 デリカシーがない、とでも思ったのかも知れない。
 
 でもそれだけではなかった。
 それは、伏線で、彼がソリアに対して話せる人物だと信頼した証。
 “こだま”の一群来たりぬ、か・・。
 
 「たまにモンスターが来て困ると言っていました。」
 「・・定期的に巡回してもらえるように、話しておくわ。」
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