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異世界転移したら即魔王に手籠めにされた話
8話「白昼夢」
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「魔王直属近衛師団、第三部隊中隊長、ウォレルです。宜しくお願いいたします」
「よろしく……お願いします」
「うむ。最近勇者とか物騒だったからな!フィアンセ殿には警護兼話し相手としてこやつを付けようと思う」
「そ、そう?大げさなんじゃないかなあ……突然現れてやたら距離近いのは確かに怖いけど」
「いやいやいやあれは結構危ないと思うんだよね、我」
「はい。フィアンセ様に置かれましては、魔王様にとって大事なお方。万が一が合ってはいけません、このウォレル、微力ながら警護の任を務めさせていただきます」
「ウォレルは若いが最近のやつにしては期待の星というやつだ。誠実さと忠誠心は折り紙つきじゃ。余計なおしゃべりもない。どっかのアレと違って」
魔王は勇者の事が余程トラウマになっているようだ。恐らく意識して勇者と真逆のタイプを警護につけたのだろう。そう少年は心の中だけでつぶやいた。
確かに歴代最強の魔王であり、世界統一を果たした立場としては、ここまで容易に城内侵入を許したのは余程ショッキングだったに違いない。
ウォレルは姿勢が良く、物腰すべてが実にきっちりしていて、寡黙さからも気品を感じる。
確かに守ってくれそうな期待は持てるが、話し相手としてはちょっと硬すぎるかもしれない。
「フィアンセ殿には我の最上級の魔法障壁はちゃんと張っておる。魔法障壁はすべての衝撃をほぼ全て中和するし、我へ異常感知を知らせるものでもある。何かあったらすっとんでくるけど、できるだけ部下たちの見える範囲内にいるんじゃぞ」
「う、うん」
いつの間にかとんでもない魔法を掛けられていたんだなと改めて少年は少し負い目を感じる。
「じゃあ我行ってくる」
「わぷっ……いってらっしゃい」
少年をぎゅーっと抱きしめたあと、名残惜しそうに渋々と魔王は公務へ向かっていった。
少年は少し照れながらも見送った。
ウォレルは相変わらず無表情で、機械のようにキレのいいお辞儀をして魔王を見送った。
朝食をとっていると何だが監視されている気持ちになって緊張感が出てしまう。気を紛らわしたくてウォレルに話しかけてみる。
「ウォレルさんは食べないの?」
「お気遣いありがとうございます、お構いなく」
「そ、そう?」
もう済ませておいたという事なのだろうか?少年は気になりつつも会話が続かず、もくもくと朝食を平らげる事にした。
昼食まで時間があるので城内を案内してもらう事にした。今日は図書館だ。
「ここが魔王城図書館です。禁書なども保管されておりますのでご用心ください」
「き、きんしょ……?」
「はい。魔法がかけられていて時に生き物のように噛みついたり、呪いをかけてくる本です」
「それは勘弁してほしいかな……」
「一応隔離はされていますが、たまに魔王様がいたずらに通常の本に紛れ込ませてます」
「なんでそんな事するの!?」
「大丈夫です、魔王様のいたずらで重傷を負う事はありません。一日姿を変えられたり変な声になったりする程度です」
「それも十分いやだよ!?」
扉を開けるとそこにはおびただしい量の本が所狭しと並んでいた。
「わぁ、すごい数の本だね」
「はい。この世界の魔族が集めたありとあらゆる書物がここに集まっております。フィアンセ様のお気に召すような本があればよいのですが」
「うーん、ありすぎてどれ読んだらいいかわからないな。ウォレスさんのおすすめってある?」
「私のおすすめですか?それでしたら……」
ウォレスは迷わずに歩き、二冊の本を手に取って少年に見せる。
「魔王様の伝記です」
「二冊って事は一巻二巻?」
「いえ、どちらも一巻です。違いは一方は魔王様ご自身の著書、一方は家臣の著書です」
「同じ内容のが二通りあるの!?」
「同じではありません。結果としては同じかもしれませんが、魔王様ご自身の著書ですと魔王様らしい自慢げな描写が多く楽しみながら読めます。たまに虚偽も含まれますがご愛敬です。家臣の著書ですと、事実をそのまま箇所書きしている形式なので教科書に近いものとなっています」
「そ、そうなんだ……全部で何巻出てるの?」
「双方999巻ずつあります」
「毎年出してるの!?」
「はい、年の振り返りの時期に出版されます」
「そ、そうなんだ……」
「どうでしょうか、読んでみますか?」
「う、うん。じゃあせっかくだし魔王本人の方のを読んでみるよ」
「ではこちらに」
魔王本人の著書の方を読み始める。
ざっと読んで確かに伝記というよりは武勇伝っぽく、いくら最強の魔王でもこれってアリなのか?と思うような展開もあり、時々クスっと笑ってしまう所もある。確かにこれは創作物に近いかもしれない。
「お疲れでしょう、少しお休みになられては如何ですか」
「ありがとう」
ウォレスは飲み物と茶菓子を差し出し、少年を気遣う。
「わあ美味しそう。形も可愛いクッキーだね」
「はい、魔王様が工夫を凝らすようにとシェフに発注していたものです」
魔王が栄養補給だけでなく楽しむ要素を食事に入れてくれる細かい気遣いに、少年は胸がくすぐったくなる。
「魔王様は一見おおざっぱですが……お茶目な方なのですよ」
「そうだね……やる事はハチャメチャだけど、なんか憎めないっていうか」
「魔王様は私にとって恩人です。お力になれる事があれば我が生涯すべて捧げさせていただくつもりです」
「ウォレスさんって本当に魔王を尊敬しているんだね」
他の部下たちも決して魔王を軽んじているわけではないだろうが、態度が上司というより学校の教師や親のような接し方に近い。ノリが軽いのだ。
しかしウォレスは忠臣ぶりを絵に描いたようで、目を見張るものがあった。
忠誠ぶりもそうだが、オススメの本で魔王伝記を選び、置いている棚の場所を迷わず即座に手をとる所から、心酔しているといっても過言ではないかもしれない。
少年は用意された茶菓子のクッキーに手を伸ばす。それはとても美味しくて、ふにゃりと少年の口元が緩む。
「ねえウォレスさんも一緒に食べよう、おやつ」
「!、いけません。私のような立場のものがフィアンセ様とご一緒などとても。これはフィアンセ様に用意された物ですから、どうぞ気兼ねなくお召し上がりください」
「いいじゃん、俺一人分にしては多いし、なにより一緒に食べるともっと美味しいよ」
そう言って無理矢理ウォレスの手に皿を持たせる。
「はぁ……しかし」
「いいからいいから」
観念したウォレスがおずおずと口に運ぶと、その味に驚き目を丸くした。
「お、おいしい……」
「でしょ!ここって魔族の世界だし、俺は──異国?のものだから食事は食べれる物であればいい気持ちだったけど。お菓子までこんなに美味しいなんて」
ウォレスは夢中で手を伸ばしあっと言う間に完食してしまう。
「ウォレスさんのそういう素直なところ、すごく好感が持てるな」
「!!、そ、そのような事は。私はただ、与えられた仕事を全うしようと……」
顔を真っ赤にして狼惑しているウォレスを見て、なんだかとっつきにくいと思っていた彼に親近感がわいてくる。
「……すみません、このような物を食べたのは初めてでつい夢中に」
「え!」
「鍛錬は食事を含めておりますし、私のような立場のものが口にするには贅沢ですから」
「そ、そうなの……?まあ、でも、たまにはいいんじゃないかな」
「むむむ……いけません。今後は慎みます」
「あはは、そうだね。また一緒に食べようよ。今度は均等に分けてからにしようか」
そう少年はウォレスに微笑んで言うと、ウォレスは恥ずかしそうに目をそらした。なんだかいじらしい。
そうこうしている内に出された飲み物も飲み干したので図書館をもう少し見て回る事にした。
山のように聳える棚の本たちは正にファンタジーといった感じだ。多分多くが魔王関連の本なのだろうと思いつつも、何気なく気になった本を手に取っては、パラパラと読んでいく。するとひと際ぽつんと目を引く本があり、手に取ってみると───
「フィアンセ様お逃げください!」
咄嗟にウォレルが少年から本をひったくった途端にボフンと煙が拡がり、特にウォレスに多く掛かり、少年にもその煙がいくらか掛かってしまった。
「げほっげほ……!なに、これ……!」
「申し訳ありません、これは恐らく魔王様の……げほっ、いたずら本かと」
「魔王ここに来て結局ろくな事しない……!」
「害はないとは思いますが──、念のため、一旦お部屋へ戻って休みましょう」
そういえばどことなく、ふらつきを少年は感じた。
「ウォレルは…大丈夫?」
「はい、私めは鍛錬しておりますし、状態異常の耐性も高いので心配ありません」
それよりも少年の様子が気がかりだと、促され、部屋へと戻っていった。
「!、フィアンセ様…!」
部屋に戻るや否や、そのままフラフラとベッドに倒れ込むと少年は意識を失った。
ウォレルは少年の安否を確認する。呼吸、脈拍、問題はなく、どうやら眠り込んでしまったようだ。
おそらくあれは眠りのトラップ本だったのだろう。
ウォレルは少年の体勢を整え、肌掛けを掛ける。すると少年が苦しそうに身じろぎした。
一瞬躊躇したもののウォレスは少年の首元の衣服を緩める。
「………フィアンセ様」
その晒された首元に吸い込まれるようにウォレスは見入っていった。
*******
あんな風に笑いかけてもらったのは初めてだった。
気が付いたらその唇から目が離せなくなり、その唇に触れてみたくなった。
いけないと分かっていても、もう止められない。
その柔らかさを知りたい。
もっと触れていたくて、舌を這わせる。
「……ンッ」
そこ声に煽られて舌を割り入れて咥内を貪っていく。ああ、なんて甘美なのだろう。
貴方からもらったクッキーのように、甘い。もっと食べつくしたい。
はだけた胸元を更に素肌をむき出しにし、手を這わしていく。それはしっとりしていて、手に吸い付くようで心地いい。
その触感にビクっと反応する。
可愛いらしいあなたはこんなにも敏感で、いやらしい。
「はぁっ……」
漏れる吐息。
もっと聞きたいと、耳を舐めていく。
「……っ!……うぉれ……ルさん……!」
「!」
「なに、して………」
「………申し訳ありません」
そう返したウォレルは止まらない。止まれない。
「あ……だめ……こんな」
「フィアンセ様……」
ウォレルの指が直接少年の敏感な部分を捉える
「ああっ」
「いけません、そんな声で鳴かれては……私も歯止めが効かなくなってしまいます……」
「んっ、あぅ……っ」
「ここがよろしいのですか?ここが気持ちいいのですね」
「ちが、あ、あ、あっ」
「違う?では何故こんなにも蜜で溢れているのでしょう?私の手はこんなに濡れていますよ」
「そ、それ、は……」
「いけませんね、フィアンセ様。なんといやらしいんでしょうか」
「んっ、あっ、ごめん、なさ……」
「いいえ、謝る事ではありません。とても嬉しいのです。私はずっとこうしたかったのだから」
「……っ、うぉれ、る……?」
「申し訳ありません……もう、私も我慢できません」
「ひゃっ!?」
ウォレルが下着ごとズボンを降ろすと下肢に露にし、ぐい、と少年の足を押し上げて秘部を眼前に晒させる。
恥ずかしそうに身をよじる少年を見てウォレルはごくりと喉を鳴らした。
「やだ、こんな、恥ずかしい格好……!」
「これからもっともっと恥ずかしい事を致しますよ?今更恥ずかしがっても遅いです」
そう言ってウォレルは少年の秘部に自分の剛直をあてがい、ゆっくり挿入していく。
「あ、あ、あ、やだ、入って、くる……」
「フィアンセ様、フィアンセ様……!」
少年の腰に打ち付けるよう何度も穿つと次第にお互いの肌がぶつかり合う音が部屋に響き渡る。
「ああん、ん、ん、んんっ!」
「はあ…っ!フィアンセ、様、なんといやらしい、私のものをこんなにも吸い付いて離さない…!」
「んんんん!あ!ああ!だめ、激し……!」
「フィアンセ様……!フィアンセ様……!!」
「あう!、あ!、あ!、イっちゃう!出ちゃ……!」
「存分に……!お出しください……!私も出ます……!」
「あ!あ!あ!あ!イク!イッく……!!!」
「私も……!!一緒に……!……っく!」
「ああ……!あ、熱……!出て……!ああ……!」
「……ふ、……はぁ……、は……、ああ……愛しています……私だけのものに……」
**********
ウォレルが目を覚ますと、ベッドの脇で頭が突っ伏する形で、そこには何事もない景色があった。
念のため周囲を見る、自分の身なりを確認する、時間を確認する、恐る恐る少年の身の回りも確認する。
───少年の首元を緩ました時から何も変わってはいなかった。
時間もたった数分だったようだ。
ウォレルは自分がたった数分で、しかも魔王のフィアンセたる少年に劣情を抱いた夢を見た事に顔から火が噴出しそうになるほど赤くなり、両手で顔を覆う。
幸い、少年に異常はなく、静かに寝息を立てている。
不覚。あまりにも不覚。たとえ魔王様のいらずら魔法のトラップであったとしても、これが敵の攻撃であったなら大失態だ。
ウォレルはすぐに他の者を呼び警護を交代してもらい、魔王に少年の警護の辞退を申し込んだ。
「え?おぬしが任の辞退をするなんて珍しい。どうした」
「その、私はまだ未熟者なので、手に余るかと」
「え~?そういう所じゃぞ。何を思ったか知らんがフィアンセ殿は多少の粗相で気を悪くすることはないぞ」
「………はい、とても素敵なお方です」
だから困るのだが、とウォレルは内心思うのだった。
「よろしく……お願いします」
「うむ。最近勇者とか物騒だったからな!フィアンセ殿には警護兼話し相手としてこやつを付けようと思う」
「そ、そう?大げさなんじゃないかなあ……突然現れてやたら距離近いのは確かに怖いけど」
「いやいやいやあれは結構危ないと思うんだよね、我」
「はい。フィアンセ様に置かれましては、魔王様にとって大事なお方。万が一が合ってはいけません、このウォレル、微力ながら警護の任を務めさせていただきます」
「ウォレルは若いが最近のやつにしては期待の星というやつだ。誠実さと忠誠心は折り紙つきじゃ。余計なおしゃべりもない。どっかのアレと違って」
魔王は勇者の事が余程トラウマになっているようだ。恐らく意識して勇者と真逆のタイプを警護につけたのだろう。そう少年は心の中だけでつぶやいた。
確かに歴代最強の魔王であり、世界統一を果たした立場としては、ここまで容易に城内侵入を許したのは余程ショッキングだったに違いない。
ウォレルは姿勢が良く、物腰すべてが実にきっちりしていて、寡黙さからも気品を感じる。
確かに守ってくれそうな期待は持てるが、話し相手としてはちょっと硬すぎるかもしれない。
「フィアンセ殿には我の最上級の魔法障壁はちゃんと張っておる。魔法障壁はすべての衝撃をほぼ全て中和するし、我へ異常感知を知らせるものでもある。何かあったらすっとんでくるけど、できるだけ部下たちの見える範囲内にいるんじゃぞ」
「う、うん」
いつの間にかとんでもない魔法を掛けられていたんだなと改めて少年は少し負い目を感じる。
「じゃあ我行ってくる」
「わぷっ……いってらっしゃい」
少年をぎゅーっと抱きしめたあと、名残惜しそうに渋々と魔王は公務へ向かっていった。
少年は少し照れながらも見送った。
ウォレルは相変わらず無表情で、機械のようにキレのいいお辞儀をして魔王を見送った。
朝食をとっていると何だが監視されている気持ちになって緊張感が出てしまう。気を紛らわしたくてウォレルに話しかけてみる。
「ウォレルさんは食べないの?」
「お気遣いありがとうございます、お構いなく」
「そ、そう?」
もう済ませておいたという事なのだろうか?少年は気になりつつも会話が続かず、もくもくと朝食を平らげる事にした。
昼食まで時間があるので城内を案内してもらう事にした。今日は図書館だ。
「ここが魔王城図書館です。禁書なども保管されておりますのでご用心ください」
「き、きんしょ……?」
「はい。魔法がかけられていて時に生き物のように噛みついたり、呪いをかけてくる本です」
「それは勘弁してほしいかな……」
「一応隔離はされていますが、たまに魔王様がいたずらに通常の本に紛れ込ませてます」
「なんでそんな事するの!?」
「大丈夫です、魔王様のいたずらで重傷を負う事はありません。一日姿を変えられたり変な声になったりする程度です」
「それも十分いやだよ!?」
扉を開けるとそこにはおびただしい量の本が所狭しと並んでいた。
「わぁ、すごい数の本だね」
「はい。この世界の魔族が集めたありとあらゆる書物がここに集まっております。フィアンセ様のお気に召すような本があればよいのですが」
「うーん、ありすぎてどれ読んだらいいかわからないな。ウォレスさんのおすすめってある?」
「私のおすすめですか?それでしたら……」
ウォレスは迷わずに歩き、二冊の本を手に取って少年に見せる。
「魔王様の伝記です」
「二冊って事は一巻二巻?」
「いえ、どちらも一巻です。違いは一方は魔王様ご自身の著書、一方は家臣の著書です」
「同じ内容のが二通りあるの!?」
「同じではありません。結果としては同じかもしれませんが、魔王様ご自身の著書ですと魔王様らしい自慢げな描写が多く楽しみながら読めます。たまに虚偽も含まれますがご愛敬です。家臣の著書ですと、事実をそのまま箇所書きしている形式なので教科書に近いものとなっています」
「そ、そうなんだ……全部で何巻出てるの?」
「双方999巻ずつあります」
「毎年出してるの!?」
「はい、年の振り返りの時期に出版されます」
「そ、そうなんだ……」
「どうでしょうか、読んでみますか?」
「う、うん。じゃあせっかくだし魔王本人の方のを読んでみるよ」
「ではこちらに」
魔王本人の著書の方を読み始める。
ざっと読んで確かに伝記というよりは武勇伝っぽく、いくら最強の魔王でもこれってアリなのか?と思うような展開もあり、時々クスっと笑ってしまう所もある。確かにこれは創作物に近いかもしれない。
「お疲れでしょう、少しお休みになられては如何ですか」
「ありがとう」
ウォレスは飲み物と茶菓子を差し出し、少年を気遣う。
「わあ美味しそう。形も可愛いクッキーだね」
「はい、魔王様が工夫を凝らすようにとシェフに発注していたものです」
魔王が栄養補給だけでなく楽しむ要素を食事に入れてくれる細かい気遣いに、少年は胸がくすぐったくなる。
「魔王様は一見おおざっぱですが……お茶目な方なのですよ」
「そうだね……やる事はハチャメチャだけど、なんか憎めないっていうか」
「魔王様は私にとって恩人です。お力になれる事があれば我が生涯すべて捧げさせていただくつもりです」
「ウォレスさんって本当に魔王を尊敬しているんだね」
他の部下たちも決して魔王を軽んじているわけではないだろうが、態度が上司というより学校の教師や親のような接し方に近い。ノリが軽いのだ。
しかしウォレスは忠臣ぶりを絵に描いたようで、目を見張るものがあった。
忠誠ぶりもそうだが、オススメの本で魔王伝記を選び、置いている棚の場所を迷わず即座に手をとる所から、心酔しているといっても過言ではないかもしれない。
少年は用意された茶菓子のクッキーに手を伸ばす。それはとても美味しくて、ふにゃりと少年の口元が緩む。
「ねえウォレスさんも一緒に食べよう、おやつ」
「!、いけません。私のような立場のものがフィアンセ様とご一緒などとても。これはフィアンセ様に用意された物ですから、どうぞ気兼ねなくお召し上がりください」
「いいじゃん、俺一人分にしては多いし、なにより一緒に食べるともっと美味しいよ」
そう言って無理矢理ウォレスの手に皿を持たせる。
「はぁ……しかし」
「いいからいいから」
観念したウォレスがおずおずと口に運ぶと、その味に驚き目を丸くした。
「お、おいしい……」
「でしょ!ここって魔族の世界だし、俺は──異国?のものだから食事は食べれる物であればいい気持ちだったけど。お菓子までこんなに美味しいなんて」
ウォレスは夢中で手を伸ばしあっと言う間に完食してしまう。
「ウォレスさんのそういう素直なところ、すごく好感が持てるな」
「!!、そ、そのような事は。私はただ、与えられた仕事を全うしようと……」
顔を真っ赤にして狼惑しているウォレスを見て、なんだかとっつきにくいと思っていた彼に親近感がわいてくる。
「……すみません、このような物を食べたのは初めてでつい夢中に」
「え!」
「鍛錬は食事を含めておりますし、私のような立場のものが口にするには贅沢ですから」
「そ、そうなの……?まあ、でも、たまにはいいんじゃないかな」
「むむむ……いけません。今後は慎みます」
「あはは、そうだね。また一緒に食べようよ。今度は均等に分けてからにしようか」
そう少年はウォレスに微笑んで言うと、ウォレスは恥ずかしそうに目をそらした。なんだかいじらしい。
そうこうしている内に出された飲み物も飲み干したので図書館をもう少し見て回る事にした。
山のように聳える棚の本たちは正にファンタジーといった感じだ。多分多くが魔王関連の本なのだろうと思いつつも、何気なく気になった本を手に取っては、パラパラと読んでいく。するとひと際ぽつんと目を引く本があり、手に取ってみると───
「フィアンセ様お逃げください!」
咄嗟にウォレルが少年から本をひったくった途端にボフンと煙が拡がり、特にウォレスに多く掛かり、少年にもその煙がいくらか掛かってしまった。
「げほっげほ……!なに、これ……!」
「申し訳ありません、これは恐らく魔王様の……げほっ、いたずら本かと」
「魔王ここに来て結局ろくな事しない……!」
「害はないとは思いますが──、念のため、一旦お部屋へ戻って休みましょう」
そういえばどことなく、ふらつきを少年は感じた。
「ウォレルは…大丈夫?」
「はい、私めは鍛錬しておりますし、状態異常の耐性も高いので心配ありません」
それよりも少年の様子が気がかりだと、促され、部屋へと戻っていった。
「!、フィアンセ様…!」
部屋に戻るや否や、そのままフラフラとベッドに倒れ込むと少年は意識を失った。
ウォレルは少年の安否を確認する。呼吸、脈拍、問題はなく、どうやら眠り込んでしまったようだ。
おそらくあれは眠りのトラップ本だったのだろう。
ウォレルは少年の体勢を整え、肌掛けを掛ける。すると少年が苦しそうに身じろぎした。
一瞬躊躇したもののウォレスは少年の首元の衣服を緩める。
「………フィアンセ様」
その晒された首元に吸い込まれるようにウォレスは見入っていった。
*******
あんな風に笑いかけてもらったのは初めてだった。
気が付いたらその唇から目が離せなくなり、その唇に触れてみたくなった。
いけないと分かっていても、もう止められない。
その柔らかさを知りたい。
もっと触れていたくて、舌を這わせる。
「……ンッ」
そこ声に煽られて舌を割り入れて咥内を貪っていく。ああ、なんて甘美なのだろう。
貴方からもらったクッキーのように、甘い。もっと食べつくしたい。
はだけた胸元を更に素肌をむき出しにし、手を這わしていく。それはしっとりしていて、手に吸い付くようで心地いい。
その触感にビクっと反応する。
可愛いらしいあなたはこんなにも敏感で、いやらしい。
「はぁっ……」
漏れる吐息。
もっと聞きたいと、耳を舐めていく。
「……っ!……うぉれ……ルさん……!」
「!」
「なに、して………」
「………申し訳ありません」
そう返したウォレルは止まらない。止まれない。
「あ……だめ……こんな」
「フィアンセ様……」
ウォレルの指が直接少年の敏感な部分を捉える
「ああっ」
「いけません、そんな声で鳴かれては……私も歯止めが効かなくなってしまいます……」
「んっ、あぅ……っ」
「ここがよろしいのですか?ここが気持ちいいのですね」
「ちが、あ、あ、あっ」
「違う?では何故こんなにも蜜で溢れているのでしょう?私の手はこんなに濡れていますよ」
「そ、それ、は……」
「いけませんね、フィアンセ様。なんといやらしいんでしょうか」
「んっ、あっ、ごめん、なさ……」
「いいえ、謝る事ではありません。とても嬉しいのです。私はずっとこうしたかったのだから」
「……っ、うぉれ、る……?」
「申し訳ありません……もう、私も我慢できません」
「ひゃっ!?」
ウォレルが下着ごとズボンを降ろすと下肢に露にし、ぐい、と少年の足を押し上げて秘部を眼前に晒させる。
恥ずかしそうに身をよじる少年を見てウォレルはごくりと喉を鳴らした。
「やだ、こんな、恥ずかしい格好……!」
「これからもっともっと恥ずかしい事を致しますよ?今更恥ずかしがっても遅いです」
そう言ってウォレルは少年の秘部に自分の剛直をあてがい、ゆっくり挿入していく。
「あ、あ、あ、やだ、入って、くる……」
「フィアンセ様、フィアンセ様……!」
少年の腰に打ち付けるよう何度も穿つと次第にお互いの肌がぶつかり合う音が部屋に響き渡る。
「ああん、ん、ん、んんっ!」
「はあ…っ!フィアンセ、様、なんといやらしい、私のものをこんなにも吸い付いて離さない…!」
「んんんん!あ!ああ!だめ、激し……!」
「フィアンセ様……!フィアンセ様……!!」
「あう!、あ!、あ!、イっちゃう!出ちゃ……!」
「存分に……!お出しください……!私も出ます……!」
「あ!あ!あ!あ!イク!イッく……!!!」
「私も……!!一緒に……!……っく!」
「ああ……!あ、熱……!出て……!ああ……!」
「……ふ、……はぁ……、は……、ああ……愛しています……私だけのものに……」
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ウォレルが目を覚ますと、ベッドの脇で頭が突っ伏する形で、そこには何事もない景色があった。
念のため周囲を見る、自分の身なりを確認する、時間を確認する、恐る恐る少年の身の回りも確認する。
───少年の首元を緩ました時から何も変わってはいなかった。
時間もたった数分だったようだ。
ウォレルは自分がたった数分で、しかも魔王のフィアンセたる少年に劣情を抱いた夢を見た事に顔から火が噴出しそうになるほど赤くなり、両手で顔を覆う。
幸い、少年に異常はなく、静かに寝息を立てている。
不覚。あまりにも不覚。たとえ魔王様のいらずら魔法のトラップであったとしても、これが敵の攻撃であったなら大失態だ。
ウォレルはすぐに他の者を呼び警護を交代してもらい、魔王に少年の警護の辞退を申し込んだ。
「え?おぬしが任の辞退をするなんて珍しい。どうした」
「その、私はまだ未熟者なので、手に余るかと」
「え~?そういう所じゃぞ。何を思ったか知らんがフィアンセ殿は多少の粗相で気を悪くすることはないぞ」
「………はい、とても素敵なお方です」
だから困るのだが、とウォレルは内心思うのだった。
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