【創作BL】溺愛攻め短編集

めめもっち

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【オメガバース】α嫌いのΩとオメガ嫌いのαが番になった話

9話 戻ってきた日常

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「お前、今日も泊っていくのか?」
「おうとも。別に減るもんじゃないだろ」

病院から川上宅へ着くと、昨日と同じように源は帰る素振りを見せず、せっせと夕食の準備をし始めていた。

「………まだ本調子じゃないし、助かるといえば助かるけど……ちょっと申し訳なさ通り越して自分が情けなくなるな」
「いいじゃん。俺も一緒に有給取ってるし、たまには他人に甘えてみるといい」

作り置きをしていたものなど、新たにアレンジをしつつ、テキパキと食卓に並べられていく。

「……源は──料理とか家で厳しく躾けられてきたのか?」
「まさか。厳しく言われてきたのは勉強とか将来の就職に有利になりそうな事ばっか。こういう自由に出来る事やりたいから家出たんだよ」
「じゃあ料理は───独学?」
「そ。だからそんな大そうなモン作ってないぞ」
「……オレも作らない訳じゃないけど、毎日は面倒になって、ついコンビニで済ませてしまうな……」
「カロリーと塩分たっか」
「うるさいな、食べないよりマシだろ。───最近は流石に偏りすぎたのか味が砂みたいに感じてたけど」
「もうそこ気付いた時点で見直そうぜ……」
「そこでまで気が回らないまま仕事するのに精いっぱいだったんだよ」

一通り食事が並べ終わり、お互い話を続けながら向き合うように席に着く。川上の不摂生に対しての源の容赦ない指摘に、川上は少し眉を寄せながら、箸を進める。

「………アルファはアルファで色々あるんだろうけど、やっぱりオレとしては何でもできるアルファが羨ましくなるな」
「まあ、そりゃ基本やろうと思えばできるからな」
「………そう開き直られたら直られたで余計にいけすかないな」
「いいじゃん、頼ったってさ」
「?」

話題の流れにそぐわない源の返しに川上は食事に向けいた目線を源に向ける。

「いままでお前が頼ってたのはコンビニとか便利なモンだったかもしれないけど、今度からはもっと人に頼るやり方で生活見直してみてもさ」
「………」
「ま、考えるだけでも考えておけって」


    ◆


次の日の朝──


「川上さああん!復活したッスか!」

「ああ、みんな迷惑掛けたな」

数日ぶりの出勤をすると、同僚たちがわいわいと集まり出迎えてくれた。

「もうすっかり体調はいいんですかー?」

「まだちょっと本調子にはならないかもしれないが、いつまでも寝てたら感覚を忘れそうだからな」

「いや~本当に大変だったんっスよ~、川上さんどころか源さんまでいないんですもん」

「本当に苦労掛けてしまったな。これからしっかり埋め合わせするから、またよろしく頼む」

「「「うぃ~す」」」

同僚たちに囲まれて応対している川上を横目に、源は先に川上のデスクを見にいった。

「………うーん、予感的中………」


   ◆


───気づけば終電の時間。
発信ベルが鳴り響く中、病み上がりの身体にムチを打ちつつ駆け込み、なんとか間に合ったのだった。

「………はあ………終わらない………あんなの新薬の企画動かしてる余裕がないんだが!?」

終電ギリギリまで粘ったものの、自分の休んでいた分の仕事がまさか丸投げに重なり続け、そう簡単に終わりそうにない事を川上は絶句していた。

「だから言ったろ、あいつら適当だから……」

一緒に終電に乗り込んだ源も、数日休んだ仕事の自分の分が丸投げにされ、自分の分をこなすのに精一杯だった。とてもお互いどちらかを手伝う、だなんて余裕がないまま終電を迎えていた。

「うう……それでもなんとか新薬を進める隙は見出さねば」
「………お前まだあの新薬こだわってんの?」

川上がこだわっている新薬とは"オメガの新しい抑制剤"のことだ。従来よりも薬剤耐性がつきにくく、気軽に使えるものを目指し、実現が掴みそうなのだと。
しかし、新薬が認可されても、オメガ専用薬はベータとして届け出てているままの川上には使えないかもしれない。なによりも、源と番になった事で川上自身にとって抑制剤の意味合いはより無くしたと言ってもいい。

「当たり前だ。オレ自身に回ってくることがなくても、少しでも………患者に自由を与えられればいいと思う」

終電で殆ど人目はなく、いても酔っ払いや、イヤホンをしてずっと音楽を聴いているもの等、こちらの話が聞かれるリスクは低いものの。念には念を入れ、"オメガ"という言葉を二人は控えた。

「大そうな志だこと」
「お前だって新薬開発しているだろ、その。アレ」

源が目指しているのはアルファの抑制剤だ。しかし需要はないに等しい。源自身も治験者として服用しているほど熱心だが、実現はオメガの新薬よりは見通しが悪い。

「アレなあ。なんか今回でちょっと自信なくしちゃったんだよな。一応、動物実験では効果ありそうな結果は出てたし、俺としても効果ありそうな気はしていたんだが、ちょっと振り出しかもしれん」
「そうなのか……?」

今回、抑制剤が効かなくなった川上の為に番になった源。しかし源はそれまでオメガに対して絶対的な距離感を置き、興味がありそうな素振りは川上が知る中では全くなかったと言っていい。事実、源は川上と一緒にいても、ヒートしたあの日以外、無体を強いたことはない。アルファ抑制剤は需要が低い薬ゆえ、もっと効果を突き詰めていくべきだと考えているのだろうか?と、川上は考察した。

「ま、退勤してまで仕事の話持ち込むもんじゃないな」
「………なあ源」

疲れからか、源は欠伸をしながら話題を終わらせにかかった。そして川上はある事に気付く。

「………お前の家、こっちじゃないよな………?」

そう、源の家だと途中で乗り越えなければいけない。このままだと川上の家しかないのだ。

「ん?まだ着替えとかお前んちにあるし」
「…………」

そして、また川上は源と二人で自宅へと帰る羽目になったのだった。
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