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春
空気が浮き足立つ季節。
出会いと別れが同時にたくさん起きる。そして僕も幼なじみである親友としての彼と別れ───恋人としての彼を受け入れ、新しい生活が始まっていた。
「おじゃましまーす……と」
挨拶しながら靴を脱ぎ、そのままリビングへ向かう。
「おかえり~ユーマ」
ソファに寝転がりスマホをいじっていた彼が顔を上げずにそう応える。
「タツマ~~ここ僕の家じゃないってば~」
「へへ、いいじゃん。お互いの家行き慣れすぎて、どっちも実家みたいなもんだって」
屈託のない笑みを浮かべながら身体を起こし伸びをする彼───僕の恋人は去年のクリスマスに僕から告白し、晴れて恋人同士になった相手だ。今は同じ大学の2年生として学校に通っている。彼は高身長で鍛えられた体格をしており、顔も整っているため非常にモテる。
幼馴染とはいえ僕なんかが本当に恋人になってよかったのだろうか。
「んん、どしたの?」
「ふぇッ…!?べべべつになんでも……っ!!」
考え込んでいると彼が顔を覗き込んできた。
近い!そんな端正な顔を急に近づけないで欲しい。
思わず咄嗟に顔を背けて声が震えてしまう。明らかに怪しい態度を取ってしまったせいで「あ~や~しい~」とこちらを睨みつけられている。
慎重が高い彼に比べて、僕は平均男性としても小さいめの身長ので、こうして覗き込むように顔を向けられてしまう。
眩しいほど顔の良い彼に見つめられてしまうと顔が沸騰しそうになって、心臓が爆発しそうになるほどドキドキしてしまう。詰め寄られている内に誤魔化せれなくなった僕は観念して考えていた事を白状した。
「うう、わかった、言うよ……僕は本当に君の恋人としてふさわしくなれてるのかなーって」
照れ隠しに笑いながらそう告げると彼にむぎゅっと頰をつかまれた。
「もう、なにいってんだよー!俺が好きなのはお前だけだよ?」
ムニムニとほっぺをつままれながらそう告げられる。
「だってぇ……」
「はぁ……俺はこんなにお前が好きなのに伝わらないの悲し……何?調子悪いの?」
おでこをコツンと合わせられ、心配そうな顔で見つめられる。近い近い。近すぎるってば……!
「ん゛んっ!ね、熱はないよ!!」
恥ずかしくなって勢いよく飛び退いたらバランスを崩してソファに倒れ込んでしまい僕が彼を押し倒している様な体勢になってしった。憧れの彼が近いせいで顔が火が吹きそうなほど熱くなってきた。思わずギュッと目を瞑ったその時──。
「あ!しまった頼まれ事あったんだった!」
「ふえ?」
「ゴメン!その、すぐ戻るから!サボると親うるさいんだよね!」
ポカーンと眺めている内にあっという間に買い物の支度をし、玄関へ急いでいた彼だったが、急に踵を返しこちらを向いた。
「俺の部屋行ってて!その、そっちで、ネッ!」
「う、うん。行ってらっしゃい……」
彼の照れくさい態度と「部屋に行ってて」という意味を考え、ついこちらも感化されて照れくさくなって送り出す声がか細くなってしまった。ニコ!っと返したあと彼は一目散と玄関を飛び出していった。
彼がいなくなっても振った手をしばらく戻せないまま余韻に浸っていた。彼とはまだ一線は超えていない。もしかしたら今日こそ───と思うと先ほど彼が頭でいっぱいになる。
(わわ……どうしよう、もしかしたらキスくらいは進んじゃったりして……!歯磨きしてこようかな)
空気が浮き足立つ季節。
出会いと別れが同時にたくさん起きる。そして僕も幼なじみである親友としての彼と別れ───恋人としての彼を受け入れ、新しい生活が始まっていた。
「おじゃましまーす……と」
挨拶しながら靴を脱ぎ、そのままリビングへ向かう。
「おかえり~ユーマ」
ソファに寝転がりスマホをいじっていた彼が顔を上げずにそう応える。
「タツマ~~ここ僕の家じゃないってば~」
「へへ、いいじゃん。お互いの家行き慣れすぎて、どっちも実家みたいなもんだって」
屈託のない笑みを浮かべながら身体を起こし伸びをする彼───僕の恋人は去年のクリスマスに僕から告白し、晴れて恋人同士になった相手だ。今は同じ大学の2年生として学校に通っている。彼は高身長で鍛えられた体格をしており、顔も整っているため非常にモテる。
幼馴染とはいえ僕なんかが本当に恋人になってよかったのだろうか。
「んん、どしたの?」
「ふぇッ…!?べべべつになんでも……っ!!」
考え込んでいると彼が顔を覗き込んできた。
近い!そんな端正な顔を急に近づけないで欲しい。
思わず咄嗟に顔を背けて声が震えてしまう。明らかに怪しい態度を取ってしまったせいで「あ~や~しい~」とこちらを睨みつけられている。
慎重が高い彼に比べて、僕は平均男性としても小さいめの身長ので、こうして覗き込むように顔を向けられてしまう。
眩しいほど顔の良い彼に見つめられてしまうと顔が沸騰しそうになって、心臓が爆発しそうになるほどドキドキしてしまう。詰め寄られている内に誤魔化せれなくなった僕は観念して考えていた事を白状した。
「うう、わかった、言うよ……僕は本当に君の恋人としてふさわしくなれてるのかなーって」
照れ隠しに笑いながらそう告げると彼にむぎゅっと頰をつかまれた。
「もう、なにいってんだよー!俺が好きなのはお前だけだよ?」
ムニムニとほっぺをつままれながらそう告げられる。
「だってぇ……」
「はぁ……俺はこんなにお前が好きなのに伝わらないの悲し……何?調子悪いの?」
おでこをコツンと合わせられ、心配そうな顔で見つめられる。近い近い。近すぎるってば……!
「ん゛んっ!ね、熱はないよ!!」
恥ずかしくなって勢いよく飛び退いたらバランスを崩してソファに倒れ込んでしまい僕が彼を押し倒している様な体勢になってしった。憧れの彼が近いせいで顔が火が吹きそうなほど熱くなってきた。思わずギュッと目を瞑ったその時──。
「あ!しまった頼まれ事あったんだった!」
「ふえ?」
「ゴメン!その、すぐ戻るから!サボると親うるさいんだよね!」
ポカーンと眺めている内にあっという間に買い物の支度をし、玄関へ急いでいた彼だったが、急に踵を返しこちらを向いた。
「俺の部屋行ってて!その、そっちで、ネッ!」
「う、うん。行ってらっしゃい……」
彼の照れくさい態度と「部屋に行ってて」という意味を考え、ついこちらも感化されて照れくさくなって送り出す声がか細くなってしまった。ニコ!っと返したあと彼は一目散と玄関を飛び出していった。
彼がいなくなっても振った手をしばらく戻せないまま余韻に浸っていた。彼とはまだ一線は超えていない。もしかしたら今日こそ───と思うと先ほど彼が頭でいっぱいになる。
(わわ……どうしよう、もしかしたらキスくらいは進んじゃったりして……!歯磨きしてこようかな)
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