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ねもとからは変われない

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獣人幼女と書いてオバさんと読む。いいか、これはテストに出るから覚えとけよ。

異世界も現実世界も見た目だけで判断しては駄目だ。
第一印象は大きいが誰だって何だってそうだろ。見た目判断はラフレシアに首突っ込む様なもんだからな。俺も気をつける。皆も気をつけるんだぞ。

これまでの教訓はこんなもんだ。
まあ、確かに言われた事は道理だとわかってる。価値観や思想や妥協ない交ぜになるし、それぞれ自由だしな。程々が一番だ。



港町エウルスの宿に一泊。出歩くとクルフェルの二の舞になりそうで大人しくしてる。ここはペット同泊可だった。残念だがクロウと同室だ。

「魔狼様、たまには毛を整えませんか?」

ブラシを持って鼻息荒くハァハァしてる犬好きがいる。風呂上がりらしいが、なんだその頭のピンクタオル巻き巻きは。長髪にはいいのか?

クロウはわかりやすい。端的に言えば芯はあるのに阿呆で素直だ。裏はまだ見てないが。

「…遠慮する」
「背中だけでいいんです!これ角獣の髭で中々の品ですよ?」
「…角獣ってなんだ」
「えっ?海獣で額に角三本灰色で大きな、」
「ああ、あれの事か。色々知るとは、こういう事も含まれるのか。あの女め」
「魔狼様?」

ブラシを両手でもちキョトンとするクロウ。頭に巻きタオルだしお前オネエになってるぞ・・・。

「ははは。お前は阿呆だな。俺も阿呆だ。いい機会だから少し気楽に考える事にする。歩み寄り妥協しよう。先ずはお前のブラッシングを受けてみる」
「え、ええ、いいんですか!」
「嫌ならやめるが」

クロウは本当に嬉しそうに俺の背の中心から下に向かって丁寧にブラシを掛けた。

まあ悪くはなかったが、サラサラすぎてアフガンハウンドだな。悪いがブルルルッと震わせてもらった。元通りふさふさだがクロウは満足したようだ。

「あと呼び方だ。わかるヤツにはわかってバレただろ」
「何か希望はあります?」
「古語で狼はループスか?ルーでいい」
「ええー、いきなりそんな言えませんよ」
「じゃあループス」
「…る、ループス」
「よし」

もじもじするな気持ち悪い。付き合い始めのバカップルか。半目でクロウを見る。よくこれで思惑だらけの城内でお抱え魔術師出来てたな。

「あっ、そうだ。転移後の事決めませんか」
「そうだな、町二つ越すんだ。どんな所か位は聞いておこう」

いつもの地図を広げた。現在地はココ、二つの町はコレとコレ。転移していける町はと説明を淡々とするクロウ。俺は両耳をピッと振るい距離に食いついた。

「間は村か集落か?一気に飛んで目的の半島まで直ぐじゃないか」
「そう思うでしょう?ここ見て下さい。山岳地帯なんです」

地図の絵は確かに海沿いの侵入を拒むような山脈の絵だった。距離ばかり気にして町にも興味も何もなく急いていた。如何に効率よく行くか見逃してた気もする。

「手前にして抜けて海沿い進むのか」
「その方がいいかと」
「じゃあ決まりだ」
「ですね。ここユーリウスに行ければ」

じっと俺を見るクロウ。

「なんだ。見るな」
「少し柔軟になりましたね」
「イライラさせてくれるおかげでな」

フンっと鼻息も一緒に返事をした。

俺は今、獣だ。
親と兄弟離れしてからずっと霧の森で一人、食べて寝て縄張りと森を護り生きていた。

だからなのか、歳は重ねても中身は転生前の頑固な子供の価値観のままだ。

他人に振り回されるのが嫌で冷めた子供。

それも俺か。

何だかんだで少し視野が広がった気もする。

これはこれでいい気がした。
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