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約束と共に歩む道
6 自覚と無自覚
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本当溺愛コース。なんでこうなったっけ。散々いたずらされた身体はフィル専用レオ。もーういいように翻弄されるわけで。ああ、疲れた。加減してくれても甘すぎて気持ち良すぎて満たされてるけど何だろう。
割と寝たのに眠たくて大きな欠伸をひとつ。
「ふあぁあ」
「おはようございます」
「お、はよう?」
「食事ができましたので、旦那様も起こして宜しいでしょうか」
「旦那様?」
長いスカートの濃紺のメイド服を来た、俺と視線の高さが一緒の女性がいた。赤味の強い茶髪の気の強そうな顔立ちで淡々と話す。
「今朝から勤めるミナです」
「え、と、レオです。アンフィル様はもう起きてるので、後で来ると思います」
「では食堂で。ふしだらですね。ふふっ」
……ふしだら。
前のはだけたシャツに乱れた髪。肌に散る赤い花。そうだな。これは失笑ものだ。
俺は筆頭執事。従僕の頂点だとすれば部下が出来たも同然。新しい従僕をバルが朝イチ仕切ってくれたという事だ。これは駄目だ。着替えて料理人にも会わなきゃ。急ごう。
足早に進み始めた矢先ふわふわした感覚に襲われて、数歩よろけて壁に肩をつく。
ふらついた?行為だって小一時間ほどだし、睡眠はしっかり取れてる。今はもう大丈夫とゆっくり歩を進める。
やっぱり俺疲れてる?
厨房では体躯のいい男が片付けをしている。食事運搬もミナがしてくれ俺は出番無しだ。藍の短髪に細い目の中肉中背の人に挨拶をする。
「おはよう」
「……あんたがレオか。チビだな。俺はサモンだ。料理関連は任せろ。宜しくな」
「……チビ」
「気にしてたらスマン。思った事が口から出るもんでよ。飯出来てっから食ってくれ」
「……あ、はい」
「ちゃんと食えよ。大っきくなれねーぞ」
目を細めて頷いて踵を返し食堂に向かう。
ええ、バルモンクさんどういう人選ですか?アンフィル様の執事は由緒ある職なのに、従僕は何基準なんですか。
食堂にはサモン以外は既に揃っていて全てセッティング済みだった。従僕だろうと気にしないフィルはミナも席につかせて待っていてくれていた。
「遅かったな、レオ」
「すみません。サモンに挨拶を」
「さあ食べよう」
フィルはいつものスープだけ。他はニョッキにグリッシーニに野菜スープとサラダ。他、ハムにチーズにフルーツ。
美味しそう。なのに食べたいような気がしても入るのはスープとニョッキ少し。
美味しいのに入らない。
どうしたんだろ、俺。
雑事をミナ、料理関係をサモン。フォローをバルモンク。エウリル大公代理として対応、屋敷のマネージメント兼執事が俺。すっごく楽になって正直気が抜けた。
だって午後にこうやって休憩時間がたっぷり取れる。呑気にお茶して、緑地祭の本を読んでたりする。
この数年執事としてフィルに、バルに迷惑掛けないよう蔭口沢山言われても突っ走って来たと思う。認められたくて、執事は出来て当たり前だと教えられた事を忠実に確実に。
アンフィル様の執事は農民で小姓だと、外見と噂に負けない様に、地位ある主に相応しく知性と態度で示そうと執事然として過ごして来た。
フィルはそれでも言葉遣いは普通にしろって延々と言っていた。でもそれは周囲に主の立場が悪くなる。執事だってただの使用人だ。貴族制が残る社会では無理な話だ。
スパイ容疑は立場的にそういわれても仕方が無い身分と理由に腹が立ったし悲しかった。
今までの努力はゼロに等しく意味が無かったと評価されたという事。フィルに相応しくないという事。側にいてはいけないという事。
サプライズだったけど内容の意地が悪いよ。
思い出したら辛くなってきた。
もしかして、俺、燃え尽き症候群ってやつ?
ゴールして次の駅がないから今までの情熱と気力が霧散して抜け殻になってる?
でも執事としても、まだまだこれからだ。
だから今まで通り前向いていればいい。
でも、バルが一人で出来てた事を分化されたという事は頑張りを認められても、執事筆頭は名ばかりで無理をしてると判断されたって事だよね。心配までされてる。
フィルもバルも突っ走り無茶をするって思ってるんだよね。完璧じゃ無くて良いって何?俺は完璧なんて目指してない。できる事で恩を返したいし、ただ相応しくありたい。
フィルの側にいたい。
俺はフィルの執事。
だからちゃんと前向いて俺だってバルみたいに飄々と仕事するんだ。今迄頑張ったんだ。これからも出来ることをすればいいんだ。
割と寝たのに眠たくて大きな欠伸をひとつ。
「ふあぁあ」
「おはようございます」
「お、はよう?」
「食事ができましたので、旦那様も起こして宜しいでしょうか」
「旦那様?」
長いスカートの濃紺のメイド服を来た、俺と視線の高さが一緒の女性がいた。赤味の強い茶髪の気の強そうな顔立ちで淡々と話す。
「今朝から勤めるミナです」
「え、と、レオです。アンフィル様はもう起きてるので、後で来ると思います」
「では食堂で。ふしだらですね。ふふっ」
……ふしだら。
前のはだけたシャツに乱れた髪。肌に散る赤い花。そうだな。これは失笑ものだ。
俺は筆頭執事。従僕の頂点だとすれば部下が出来たも同然。新しい従僕をバルが朝イチ仕切ってくれたという事だ。これは駄目だ。着替えて料理人にも会わなきゃ。急ごう。
足早に進み始めた矢先ふわふわした感覚に襲われて、数歩よろけて壁に肩をつく。
ふらついた?行為だって小一時間ほどだし、睡眠はしっかり取れてる。今はもう大丈夫とゆっくり歩を進める。
やっぱり俺疲れてる?
厨房では体躯のいい男が片付けをしている。食事運搬もミナがしてくれ俺は出番無しだ。藍の短髪に細い目の中肉中背の人に挨拶をする。
「おはよう」
「……あんたがレオか。チビだな。俺はサモンだ。料理関連は任せろ。宜しくな」
「……チビ」
「気にしてたらスマン。思った事が口から出るもんでよ。飯出来てっから食ってくれ」
「……あ、はい」
「ちゃんと食えよ。大っきくなれねーぞ」
目を細めて頷いて踵を返し食堂に向かう。
ええ、バルモンクさんどういう人選ですか?アンフィル様の執事は由緒ある職なのに、従僕は何基準なんですか。
食堂にはサモン以外は既に揃っていて全てセッティング済みだった。従僕だろうと気にしないフィルはミナも席につかせて待っていてくれていた。
「遅かったな、レオ」
「すみません。サモンに挨拶を」
「さあ食べよう」
フィルはいつものスープだけ。他はニョッキにグリッシーニに野菜スープとサラダ。他、ハムにチーズにフルーツ。
美味しそう。なのに食べたいような気がしても入るのはスープとニョッキ少し。
美味しいのに入らない。
どうしたんだろ、俺。
雑事をミナ、料理関係をサモン。フォローをバルモンク。エウリル大公代理として対応、屋敷のマネージメント兼執事が俺。すっごく楽になって正直気が抜けた。
だって午後にこうやって休憩時間がたっぷり取れる。呑気にお茶して、緑地祭の本を読んでたりする。
この数年執事としてフィルに、バルに迷惑掛けないよう蔭口沢山言われても突っ走って来たと思う。認められたくて、執事は出来て当たり前だと教えられた事を忠実に確実に。
アンフィル様の執事は農民で小姓だと、外見と噂に負けない様に、地位ある主に相応しく知性と態度で示そうと執事然として過ごして来た。
フィルはそれでも言葉遣いは普通にしろって延々と言っていた。でもそれは周囲に主の立場が悪くなる。執事だってただの使用人だ。貴族制が残る社会では無理な話だ。
スパイ容疑は立場的にそういわれても仕方が無い身分と理由に腹が立ったし悲しかった。
今までの努力はゼロに等しく意味が無かったと評価されたという事。フィルに相応しくないという事。側にいてはいけないという事。
サプライズだったけど内容の意地が悪いよ。
思い出したら辛くなってきた。
もしかして、俺、燃え尽き症候群ってやつ?
ゴールして次の駅がないから今までの情熱と気力が霧散して抜け殻になってる?
でも執事としても、まだまだこれからだ。
だから今まで通り前向いていればいい。
でも、バルが一人で出来てた事を分化されたという事は頑張りを認められても、執事筆頭は名ばかりで無理をしてると判断されたって事だよね。心配までされてる。
フィルもバルも突っ走り無茶をするって思ってるんだよね。完璧じゃ無くて良いって何?俺は完璧なんて目指してない。できる事で恩を返したいし、ただ相応しくありたい。
フィルの側にいたい。
俺はフィルの執事。
だからちゃんと前向いて俺だってバルみたいに飄々と仕事するんだ。今迄頑張ったんだ。これからも出来ることをすればいいんだ。
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