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第69話 ド・オデッセリアの攻防? 共同戦線⑥ 援護
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カナタの叫びを聞きながらルミナが目をつぶり、さすがにドゥルグももう駄目かと思い目をつぶって心情的に死を覚悟した瞬間だった。小さな影が、ドゥルグとミノタウロスとの間に割って入ったのは。
「ハアアアアアッ! 魔蹴撃!」
閃光一閃、イルの魔力の込められた強烈な蹴りの一撃が、ドゥルグと一体化しているスカルドラゴンに止めを刺そうとしていたミノタウロスの右腕に一撃を加えて、スカルンを一刀両断しようとしていた巨大な剣の一撃を何とかそらせることに成功する。
しかし勢いあまった巨大な剣の一撃は、そのままの勢いで学院の外壁部分へと突き刺さり、まるで紙切れのようにして外壁を両断して崩壊させていた。
「何とか、間に合ったみたいだね♪」
巨人に一撃を加えた後、近くの崩れかかった建物の上に華麗に着地を決めたイルが、得意げな笑顔を浮かべて楽しげに言った。
どうやら近接戦闘のスペシャリストとも言うべきイルは、フィフスと別れた後この場に駆けつけると同時に、瞬時に事態を理解すると、壊れかかったレンガ造りの建物の壁を駆けつけた勢いそのままに駆け上がり、ドゥルグとミノタウロスとの間に割って入ったようだった。
イルの登場により予想外の反撃を受けたミノタウロスは、グウゥゥゥ……といった低い怒りの混じった唸り声を上げながら、先ほど自分に攻撃を仕掛けてきたものを探し始める。
そのせいでミノタウロスの注意が必然的に学院やスカルン、ルミナたちから離れることになった。それを目にしていたカナタが、もうチャンスは今しかない! そう思って、ルミナに向かって喉が張り裂けんばかりに声を張り上げて叫ぶ。
「ルミナ――っ!」
「わかってる」
カナタの呼びかけにルミナが、ここが戦場であることを忘れてしまうほどの落ち着いた、凛とした声音で答える。
「使うわ。カナタ、ここをお願い」
「ああ、わかってる。任せとけ」
コクリと頷くと、ルミナはもうなにも言わずにただ二つのオレンジ色の瞳を閉じて、自身の魔力を高めるために意識を集中させる。
そんなルミナの高まる魔力に感づいたのか、それとも野生の勘とでも言うべき物が働いたのかはわからないが、ミノタウロスは自分に攻撃を仕掛けてきた者を探し出すことよりも、魔力を高め始めているルミナのほうを優先して攻撃すべきと判断したらしく、彼女のいるほうへと急速に接近を開始した。
その様子に気付いたカナタが、そうはさせまいと、
「やらせるかよ!」
と、一人声を上げ、残っていた矢の設置されているバリスタの弦に手をかけると、それを一人引き絞りながら叫んだ。
「みんなっ頼む!」
そんなカナタの言葉に答えるようにして、彼の近くにいた何人かの学院の生徒たちが手を貸してくれる。
カナタは一度そちらを振り向き礼の意味合いを込めて力強く頷くと、カナタを手伝ってバリスタの弦を引いてくれていた生徒たちも頷き返してくる。
そして、カナタたちは気合の雄叫びと共に引き絞っていたバリスタの矢を解き放った。
「食らいやがれ!」
しかしミノタウロスの右目を狙って解き放たれたその一撃は、奴の振るう左手の一振りによってあっさりと打ち落とされてしまう。
だが、カナタの意図を察したのか、いつの間にか手近な建物の外壁を駆け上っていたイルが、ミノタウロスの死角に向かって跳躍すると、間髪いれずに足技による何十発もの連続攻撃を放った。
「僕のル~ちゃんには、指一本たりとも、触れさせないんだから! 魔蹴技、蓮華!」
死角から放たれた何十発ものイルの足技を、顔の左壁面でまともに喰らったミノタウロスは、思わずたたらを踏んでその動きを停滞させた。
そこへドゥルグが最後の力を振り絞り、ボロボロになった骨格で崩れ落ちそうになりながらも体当たりを仕掛ける。
「なんだかよくわからんが、邪魔はさせんぞ!」
しかし敵もさるもの攻撃を仕掛けてきたイルを腕で払いのけ、瀕死のドゥルグを肩であっさりと弾き飛ばす。
もうこれ以上の足止めは無理かと思われた矢先、そこへ学院から最後の力を振り絞ったのか援護の魔法や複数の矢が飛んだ。
しかしそれらの攻撃を、ミノタウロスはまったく避けるそぶりすら見せずに真正面から受け止めると、まるで何事もなかったかのように目標に向かって前進してくる。
そして、ミノタウロスはとうとうルミナの眼前までたどりつき、彼女を真正面に見据えると、自身の右手に持っている巨大な剣を振りかぶる。
しかも、それに左手を添えて大上段に振りかぶった。
そして、周囲に物凄い轟音と風圧を巻き起こしながら雄叫びを上げると、物凄い勢いで打ち下ろしてきたのである。
「グルオオオオォォ――ッ!」
「ルミナ――ッ!」
「ル~ちゃん!」
「ルミナ女史!」
辺りに彼女を心配する仲間達の声が響き渡った。
「ハアアアアアッ! 魔蹴撃!」
閃光一閃、イルの魔力の込められた強烈な蹴りの一撃が、ドゥルグと一体化しているスカルドラゴンに止めを刺そうとしていたミノタウロスの右腕に一撃を加えて、スカルンを一刀両断しようとしていた巨大な剣の一撃を何とかそらせることに成功する。
しかし勢いあまった巨大な剣の一撃は、そのままの勢いで学院の外壁部分へと突き刺さり、まるで紙切れのようにして外壁を両断して崩壊させていた。
「何とか、間に合ったみたいだね♪」
巨人に一撃を加えた後、近くの崩れかかった建物の上に華麗に着地を決めたイルが、得意げな笑顔を浮かべて楽しげに言った。
どうやら近接戦闘のスペシャリストとも言うべきイルは、フィフスと別れた後この場に駆けつけると同時に、瞬時に事態を理解すると、壊れかかったレンガ造りの建物の壁を駆けつけた勢いそのままに駆け上がり、ドゥルグとミノタウロスとの間に割って入ったようだった。
イルの登場により予想外の反撃を受けたミノタウロスは、グウゥゥゥ……といった低い怒りの混じった唸り声を上げながら、先ほど自分に攻撃を仕掛けてきたものを探し始める。
そのせいでミノタウロスの注意が必然的に学院やスカルン、ルミナたちから離れることになった。それを目にしていたカナタが、もうチャンスは今しかない! そう思って、ルミナに向かって喉が張り裂けんばかりに声を張り上げて叫ぶ。
「ルミナ――っ!」
「わかってる」
カナタの呼びかけにルミナが、ここが戦場であることを忘れてしまうほどの落ち着いた、凛とした声音で答える。
「使うわ。カナタ、ここをお願い」
「ああ、わかってる。任せとけ」
コクリと頷くと、ルミナはもうなにも言わずにただ二つのオレンジ色の瞳を閉じて、自身の魔力を高めるために意識を集中させる。
そんなルミナの高まる魔力に感づいたのか、それとも野生の勘とでも言うべき物が働いたのかはわからないが、ミノタウロスは自分に攻撃を仕掛けてきた者を探し出すことよりも、魔力を高め始めているルミナのほうを優先して攻撃すべきと判断したらしく、彼女のいるほうへと急速に接近を開始した。
その様子に気付いたカナタが、そうはさせまいと、
「やらせるかよ!」
と、一人声を上げ、残っていた矢の設置されているバリスタの弦に手をかけると、それを一人引き絞りながら叫んだ。
「みんなっ頼む!」
そんなカナタの言葉に答えるようにして、彼の近くにいた何人かの学院の生徒たちが手を貸してくれる。
カナタは一度そちらを振り向き礼の意味合いを込めて力強く頷くと、カナタを手伝ってバリスタの弦を引いてくれていた生徒たちも頷き返してくる。
そして、カナタたちは気合の雄叫びと共に引き絞っていたバリスタの矢を解き放った。
「食らいやがれ!」
しかしミノタウロスの右目を狙って解き放たれたその一撃は、奴の振るう左手の一振りによってあっさりと打ち落とされてしまう。
だが、カナタの意図を察したのか、いつの間にか手近な建物の外壁を駆け上っていたイルが、ミノタウロスの死角に向かって跳躍すると、間髪いれずに足技による何十発もの連続攻撃を放った。
「僕のル~ちゃんには、指一本たりとも、触れさせないんだから! 魔蹴技、蓮華!」
死角から放たれた何十発ものイルの足技を、顔の左壁面でまともに喰らったミノタウロスは、思わずたたらを踏んでその動きを停滞させた。
そこへドゥルグが最後の力を振り絞り、ボロボロになった骨格で崩れ落ちそうになりながらも体当たりを仕掛ける。
「なんだかよくわからんが、邪魔はさせんぞ!」
しかし敵もさるもの攻撃を仕掛けてきたイルを腕で払いのけ、瀕死のドゥルグを肩であっさりと弾き飛ばす。
もうこれ以上の足止めは無理かと思われた矢先、そこへ学院から最後の力を振り絞ったのか援護の魔法や複数の矢が飛んだ。
しかしそれらの攻撃を、ミノタウロスはまったく避けるそぶりすら見せずに真正面から受け止めると、まるで何事もなかったかのように目標に向かって前進してくる。
そして、ミノタウロスはとうとうルミナの眼前までたどりつき、彼女を真正面に見据えると、自身の右手に持っている巨大な剣を振りかぶる。
しかも、それに左手を添えて大上段に振りかぶった。
そして、周囲に物凄い轟音と風圧を巻き起こしながら雄叫びを上げると、物凄い勢いで打ち下ろしてきたのである。
「グルオオオオォォ――ッ!」
「ルミナ――ッ!」
「ル~ちゃん!」
「ルミナ女史!」
辺りに彼女を心配する仲間達の声が響き渡った。
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