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第41話 ド・オデッセリアからの救援要請①
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ルミナたちがフィフスと共に試しの塔の最上階にある転移門を使って一旦学園へと戻ると、とりあえず動ける勇者科と魔王科、その他の学科のある程度の以上の実力を有していると思われる生徒たちが、空き教室であるサモンルームに一堂に集められる。
といっても大多数の生徒たちは試しの塔の三階において、小さな砂漠の悪魔バジリスクとの戦闘によって石化させられていて、ルミナたちが去った後エルミナや学園から転移門を通って試しの塔へと転移してきた教師や生徒たちにより混成された救護班によって、重傷者は前にカナタが新入生歓迎会の折にお世話になった学園のヒーリングルームに運び込まれ治療を受けていて、軽症者は自室に運び込まれ体力を回復するための食事や休息をとっていた。
そして未だ試しの塔にいて救護班か、エルミナあたりにその場で治療を受けている者もいた。
そのためこの場に集められた学園の生徒たちは少数であり、また皆見知った顔だった。
まぁどのみち使えそうなものは、今この場で動ける生徒たちに限られる。
砂漠の悪魔と恐れられているとはいえ、所詮バジリスク程度にやられるぐらいでは実戦ではほとんど役に立たないからだ。
そして試しの塔は生徒の実力を試す試験の場であり、なおかつ学園が生徒たちがいわば実戦に耐えうるレベルか否かを判断する材料にもなっている。
あの程度の試練は無傷で越えてもらわないと実戦では到底使えないからだ。
よって、結局のところ最上階は未だ未踏破はとはいえ、他の階層をほぼ無傷でクリアしてきたルミナたち以外、新入生で実戦に堪えうるレベルの者はいないと判断された。
それゆえ結局のところその場に呼ばれたのは、ルミナ、カナタ、イル、ドゥルグを含んだルミナのパーティの四人だけだった。
フィフスがこの場に集まった一同を見回して口を開く。
「あなたたち、学園に着いて早速で悪いんだけど、実は緊急の救援要請がこの学園に入ったのよ」
フィフスがルミナたちに伝えた内容はこうだ。
東に位置する四大都市の一つド・オデッセリアが魔物に強襲されたのだという。ド・オデッセリアも四大都市の名を冠するほどの大きな町なので、それなりに騎士団や守備隊、警備の兵を有してはいたのだが、それでも念のために、この聖魔道学園へと救援要請をしてきたのだという。
まぁ救援要請といっても大抵の場合は、要請があっても現場に到着してみたらすでにことが済んでいた。
などということがこの学園では日常的によくあることだったので、ルミナたちは緊急の要請と聞いてはいても気分的にはかなり楽観視していた。
ティーチャーフィフスの次の言葉を聞くまでは。
「それだけならばたいして問題はなかったのですが、問題はその後です。問題はその後ド・オデッセリアとの連絡が一切付かなくなった。ということです」
いつものことと思い完全に楽観視していたルミナたちは、状況の深刻さを聞かされてゴクリと生唾を飲み込んでいた。
「それで緊急の救援要請となったのですか?」
「ええ、当初はいったのは普通の救援要請だったのですが、ド・オデッセリアと一切の連絡が付かなくなったこともあり、学園議会の判断で急遽緊急の救援要請となりました」
ルミナと言葉を交わした後フィフスは一同に視線を向けると、いつものように右手の甲で魔鏡と呼ばれる眼鏡を直すと、真剣な眼差しで四人へと視線を投じる。
「では、これから名前を呼ぶ勇者科及び魔王科、魔闘科の生徒たちは私の指揮の元、これから四大都市の一つであるド・オデッセリアへの救援へと向かいます」
「生徒は勇者科から、一年ルミナ・ギルバート・オデッセリア」
「はい!」
「いい返事ですね」
フィフスは満足げに頷くと、
「魔王科からは、同じく一年ドゥルグ・ムド・クアーズ」
「まぁ妥当だな」
「ドゥルグ・ムド・クアーズ。私語は慎むように」
「はっはいっであります! ティーチャーフィフス!」
怒られたドゥルグは直立不動で敬礼する。
「次、同じく一年魔闘科から、イル・クア・ラシェス!」
「ほ~いっ」
「イル・クア・ラシェス。きちんと返事をするように」
「は~い」
ギロッ
「は、はい! です! フィ~ちゃん!」
睨まれたイルはビシィッとドゥルグと同じく直立不動の敬礼で応じる。
「よろしい。そして、最後に同じく一年魔王科からカナタ・ユア・モーティス」
「え? 俺?」
「カナタ・ユア・モーディスッさっさと返事をする!」
「はっはい!」
最後にカナタの返事を聞きフィフスは再度一同を見回して、
「この少数精鋭でいきます」
とそう宣言したのだった。
前衛に勇者科であり剣もそれなりに扱えるルミナと近接戦闘が得意なイル。そして、いざという時のために攻撃にも防御にも使える不死系列の召喚魔法が扱えるドゥルグ。
それと同じく一応魔王科のカナタ。
後衛に付与魔法が得意なフィフス。といったなかなかにバランスの取れた布陣だった。
といっても大多数の生徒たちは試しの塔の三階において、小さな砂漠の悪魔バジリスクとの戦闘によって石化させられていて、ルミナたちが去った後エルミナや学園から転移門を通って試しの塔へと転移してきた教師や生徒たちにより混成された救護班によって、重傷者は前にカナタが新入生歓迎会の折にお世話になった学園のヒーリングルームに運び込まれ治療を受けていて、軽症者は自室に運び込まれ体力を回復するための食事や休息をとっていた。
そして未だ試しの塔にいて救護班か、エルミナあたりにその場で治療を受けている者もいた。
そのためこの場に集められた学園の生徒たちは少数であり、また皆見知った顔だった。
まぁどのみち使えそうなものは、今この場で動ける生徒たちに限られる。
砂漠の悪魔と恐れられているとはいえ、所詮バジリスク程度にやられるぐらいでは実戦ではほとんど役に立たないからだ。
そして試しの塔は生徒の実力を試す試験の場であり、なおかつ学園が生徒たちがいわば実戦に耐えうるレベルか否かを判断する材料にもなっている。
あの程度の試練は無傷で越えてもらわないと実戦では到底使えないからだ。
よって、結局のところ最上階は未だ未踏破はとはいえ、他の階層をほぼ無傷でクリアしてきたルミナたち以外、新入生で実戦に堪えうるレベルの者はいないと判断された。
それゆえ結局のところその場に呼ばれたのは、ルミナ、カナタ、イル、ドゥルグを含んだルミナのパーティの四人だけだった。
フィフスがこの場に集まった一同を見回して口を開く。
「あなたたち、学園に着いて早速で悪いんだけど、実は緊急の救援要請がこの学園に入ったのよ」
フィフスがルミナたちに伝えた内容はこうだ。
東に位置する四大都市の一つド・オデッセリアが魔物に強襲されたのだという。ド・オデッセリアも四大都市の名を冠するほどの大きな町なので、それなりに騎士団や守備隊、警備の兵を有してはいたのだが、それでも念のために、この聖魔道学園へと救援要請をしてきたのだという。
まぁ救援要請といっても大抵の場合は、要請があっても現場に到着してみたらすでにことが済んでいた。
などということがこの学園では日常的によくあることだったので、ルミナたちは緊急の要請と聞いてはいても気分的にはかなり楽観視していた。
ティーチャーフィフスの次の言葉を聞くまでは。
「それだけならばたいして問題はなかったのですが、問題はその後です。問題はその後ド・オデッセリアとの連絡が一切付かなくなった。ということです」
いつものことと思い完全に楽観視していたルミナたちは、状況の深刻さを聞かされてゴクリと生唾を飲み込んでいた。
「それで緊急の救援要請となったのですか?」
「ええ、当初はいったのは普通の救援要請だったのですが、ド・オデッセリアと一切の連絡が付かなくなったこともあり、学園議会の判断で急遽緊急の救援要請となりました」
ルミナと言葉を交わした後フィフスは一同に視線を向けると、いつものように右手の甲で魔鏡と呼ばれる眼鏡を直すと、真剣な眼差しで四人へと視線を投じる。
「では、これから名前を呼ぶ勇者科及び魔王科、魔闘科の生徒たちは私の指揮の元、これから四大都市の一つであるド・オデッセリアへの救援へと向かいます」
「生徒は勇者科から、一年ルミナ・ギルバート・オデッセリア」
「はい!」
「いい返事ですね」
フィフスは満足げに頷くと、
「魔王科からは、同じく一年ドゥルグ・ムド・クアーズ」
「まぁ妥当だな」
「ドゥルグ・ムド・クアーズ。私語は慎むように」
「はっはいっであります! ティーチャーフィフス!」
怒られたドゥルグは直立不動で敬礼する。
「次、同じく一年魔闘科から、イル・クア・ラシェス!」
「ほ~いっ」
「イル・クア・ラシェス。きちんと返事をするように」
「は~い」
ギロッ
「は、はい! です! フィ~ちゃん!」
睨まれたイルはビシィッとドゥルグと同じく直立不動の敬礼で応じる。
「よろしい。そして、最後に同じく一年魔王科からカナタ・ユア・モーティス」
「え? 俺?」
「カナタ・ユア・モーディスッさっさと返事をする!」
「はっはい!」
最後にカナタの返事を聞きフィフスは再度一同を見回して、
「この少数精鋭でいきます」
とそう宣言したのだった。
前衛に勇者科であり剣もそれなりに扱えるルミナと近接戦闘が得意なイル。そして、いざという時のために攻撃にも防御にも使える不死系列の召喚魔法が扱えるドゥルグ。
それと同じく一応魔王科のカナタ。
後衛に付与魔法が得意なフィフス。といったなかなかにバランスの取れた布陣だった。
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