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№17 vsネクロマンサー② 不意打ちとちんちくりん
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ほんのひと時眠りに落ちていたユウは、小さな物音と鼻をつく異臭に気付き、パチリと目を開いた。
「だれ?」
「モンスターじゃ。お前さんの血の匂いに釣られて、姿を現しおったようじゃな」
「血は落とした」
「ほんの少しのこっとったんじゃ、こやつら、ウルフガイは鼻がいいからの」
剣がユウや自分を遠巻きに取り囲んでいる獣人たちの群れを見てそう呟く。
ウルフガイとは狼人間、つまり狼男のことである。まぁ狼男といっても人狼、つまりワーウルフなどと違って人でなく狼より、つまり力は強いが知能が極端に低い獣人族のことである。
そしてその鋭い鼻で、手負いの獲物を見つけたウルフガイのあとをつけて、その獲物の横取りを狙ってきたのか、ウルフガイのほかにも、グリズリーからホブゴブリンまで、幾つかの怪物たちの姿が見受けられた。
「モンスター」
ウルフガイに吊られて姿を現した怪物たちの姿を確認したユウが、その場に立ち上がると、背中から剣を引き抜きながら声を上げる。
「まずいの。こやつらお前さんの血の匂いをかぎつけて集まってきたようだわい。しかもお前さんが弱っとるのを、こやつらも本能で感じ取ってるようじゃぞい」
「弱ってない」
剣の言いように、いつもなら蹴りの一つも入れてくるというのに、ユウは悪態をつくだけだった。
このことから鑑みても、今までの戦いのせいでユウが相当疲弊しているのは明らかだった。
それに先の村での戦いでは、鎧の隙間から腹部を刺されてかなりの血を流し、さらに左腕を斬り飛ばされたのだ。ユウが疲弊していないと思う方がおかしいのだった。
これはそうとうまいっとるの。でもまぁ悪態をつけるだけまだましじゃな。と、剣は思っていた。
それから程なくして、ユウの血の匂いをかぎつけてきたウルフガイと、それに吊られるようにして集まってきた怪物たちとユウとの間で、戦いの火蓋が切って落とされた。
といっても、いくら体力が落ちているとはいえ、この世界有数の身体能力と膂力を有し、不死であるネクロマンサーの前では、数を頼りに押し寄せたようなただの怪物たちなどユウの敵ではなかった。
そのため手負いのユウを喰らおうと集まってきた怪物たちの群れは、ユウによって瞬く間に屠られていったのだった。
とはいえ、さすがのユウも不死の軍団を相手に大立ち回りをして、その折受けた傷がすでに癒えているといっても、さすがに失った血液や体力までは完全に回復していない状態で、かなりの数の怪物たちの相手をしたのだ。顔には出していないが、ユウがかなりの体力を消耗していることを長年の付き合いで剣は熟知していた。
そう、不死といっても限界はあるのだ。ユウが村を襲った不死の軍団を屠ったように、不死の力はより強い不死の力によって殺されれば死ぬし、体力だって無尽蔵じゃない。それに弱っているところなら弱い不死の力でも殺すことができる。
そのためこの後追撃。つまり昨夜相手にした不死の軍団の第二陣など現れようものなら、ユウの体力もさすがに持たないことは明白だった。
そのことを一番よくわかっているユウの相棒である剣は、ユウにこの場から離れようと進言しようと言葉を発しようとした矢先、剣が一番危惧していた自体が発生したのだった。
それは今しがたユウが倒したはずの怪物たちが、のそりと起き上がり始めたからだ。
目の前で起こっている普通なら驚愕して慌てふためく光景を、静かにユウと剣は見つめていた。
そう、ユウと剣はわかっていたのだ。このようなことが出来る力を持っているものがいることを。そして、この力を持っているものに、今一番出会いたくない状況で出会ってしまったということを。
「ネクロの力」
ユウの呟きを聞いて剣が答える。
「まずいの。さっきの不死の軍団を作ったネクロマンサーかもしれん」
剣が心配げな声を上げる。
そう、力を消耗している今、不死の軍団を作るほどのネクロマンサーに対抗するほどの力は、今のユウには残されていなかったからだ。
「問題ない」
言うなりユウは、すぐさまその場で剣を身構える。
だが先ほど少し寝て身体を休めたとはいっても、今までの戦いでかなり体力を消耗していたのか、少しよろけてしまう。
ユウのその様子を感じ取った剣が心配げに呟いた。
「お前さん。ここは一つ。とっとと尻尾巻いて逃げた方が無難じゃと思うんじゃがわし?」
という剣の言い分に、ユウは意味不明な言葉を発した。
「降りかかるキノコはよく焼いて食べる」
「それを言うなら降りかかるキノコじゃなくて、火の粉じゃ」
ユウは剣に冷静なつっこみを入れられる。
「そうともいう」
これだけ軽口が叩けるならいけるかの? そう考えた剣はユウの意見を採用することにした。
「わかったわい。お前さんがそこまで言うなら、もう何も言わんわい。こんな連中さっさと蹴散らしてずらかるぞい」
そして剣の言葉に、コクリとユウが了解の意思を示して頷いたのを見計らったかのようにして、先ほどユウが息の根を止めた後。何者かの力によって再び不死者として甦った数十の怪物たちが、次々とユウに襲いかかってきたのだった。
半時ほどの後。何とかユウは不死者として甦り襲いかかってきた怪物たちの最後の一体を斬り伏せていた。
「ん、余裕」
「いや危なかったぞい」
ユウと剣が甦った不死者たちを倒して、一息入れようとしたところを狙うようにして、ユウの死角から、銀色の刀身が振るわれる。
ギィンッと剣と剣とがぶつかり合う剣撃の音が森に木霊する。
ユウがとっさに気配だけを察知して、かろうじて死角から繰り出された銀色の刀身を受け止めたのだ。
だがさすがにずっと戦いずくめだったせいで、ダメージや疲労が蓄積していたのか、勢いに押されて後ろへと軽く後退する。
「くっ」
「ひゅ~今の不意打ちを受けるとはな」
口笛を吹きつつ姿を現したのは、短く刈り込んだ金髪を逆立たせ、銀色の鎧に身を包んだジーンだった。
「ちんちくりんのくせに中々やるじゃねぇか」
ジーンに、ちんちくりん呼ばわりされたユウが不満げに呟いた。
「ちんちくりん……」
「だな。思ったよりはやるようだ。しかし、まだまだ甘い」
背後からした声に反応して、ユウが振り向いた瞬間、「遅い」という声が聞こえると、すでにユウの心臓のあたりから銀色の刀身が姿を現していた。
知らぬ間に、ユウの小さな心臓は、背後から敵の剣によって貫かれていたのだった。
「もう一人、いた……。ネクロ、マンサー……」
それだけ呟くと、ユウの手から剣が滑り落ちて、ユウは身体を傾けながら意識を失っていった。
「姉貴、今この剣じゃべってなかったか?」
ユウの手から滑り落ちて、地面に横たわる剣を見下ろしながら、ジーンがいぶかしげに呟いた。
「そんなわけあるまい? しゃべる剣などおとぎ話の中だけの話だ」
ジーンの言葉を聞いていたエリスが一笑に足す。
「だよな。で、まだ生きてるみてえだし、こいつどうするよ姉貴?」
「そうだな。とりあえずは私たちのいる城へ連れて帰るぞ」
「やっぱそうかよ。ってか、めんどくせえな」
ジーンが後ろ頭を乱暴にかきながら言う。
「まぁそう言うな。一応は我々と同類のネクロマンサーなのだ。このままここに放置しておくわけにもいくまい」
「まぁそうだけどよ」
じっとジーンはユウを見つめながら言う。
「で、どうするんだ?」
「なにがだ?」
「こいつの処遇についてだ。奴に報告するのか?」
ふぅと妹のジーンにそう問われたエリスは、疲れたようなため息を吐き出しながら答えた。
「そうだな。奴に報告しようがしまいが、とりあえずは城の地下の地下牢に幽閉すべきだろうな」
「ま、妥当なとこだよな」
ジーンは後ろ手に頭をかきながら答えた。
それからジーンが、再び気を失っているユウへと視線を向けて、意味深な表情を浮かべて呟いた。
「にしてもまさか、姉貴のネクロマンサーソードに心臓を貫かれて、息がありやがるとは思わなかったぜ」
「ああ、さすがに私も、私のネクロマンサーソードに心臓を貫かれて、生き残れる者がいるとは思っていなかった」
ジーンと同じように心臓を貫かれて横たわるユウに視線を向けて、エリスも驚きを隠し切れない声で呟いた。
「あたしの力はともかくとして、姉貴の力はネクロの中でもかなり上位の力だ。その力でも殺せないネクロマンサーが、こんな辺境にいやがるとは思ってなかったぜ」
「ああ、私も同感だな」
自分の力で殺しきれなかったユウを見下ろしながら、思わぬ拾い物をしたのかもしれないとエリスは考えていた。
この力をうまく利用することが出来れば、もしかしたら私やジーンの力では殺すことの出来ないガマの不死の力を殺す足がかりになるかも知れない。そう思ったエリスは、ふと気を失って地面に横たわっている幼さの残るユウの顔に、わずかな希望の光を見た気がした。
なぜならこの地を納める領主であり、また自分たちの主であるガマの命令で人間狩りに手を汚していたエリスもジーン同様に、自分の力と権威を知らしめるためだけに、不死の軍団をもちいて人間狩りをし、恐怖で人間たちを支配する領主であるガマのやり方には納得がいっていなかったからだ。
エリスがそんなことを思っている間にも、血のにおいに釣られたのか、いつの間にかグリズリーと言う巨大な熊の怪物がエリスの手近にまで来ていた。
エリスは自分の倍以上はあろうかというグリズリーを見ると、ネクロマンサーソードを一閃させてその息の根を止める。
そして、再度息の根を止めたグリズリーに己の刃。ネクロマンサーソードを突き刺した。
するとどうだろうか? 今しがたエリスの剣の一太刀によって命を失ったはずのグリズリーが、何事もなかったかのように起き上がったのである。
「行くぞ」
そしてエリスの発した一言に、グウウゥゥ……と、グリズリーがうなり声を上げたかと思えば、先ほどエリスのネクロマンサーソードの一撃を受けて、未だ気を失っているユウを片手で掴みあげると、乱暴に肩に担いで、そのままエリスとジーンの背後に付き従いユウを運び始めたのだった。
「だれ?」
「モンスターじゃ。お前さんの血の匂いに釣られて、姿を現しおったようじゃな」
「血は落とした」
「ほんの少しのこっとったんじゃ、こやつら、ウルフガイは鼻がいいからの」
剣がユウや自分を遠巻きに取り囲んでいる獣人たちの群れを見てそう呟く。
ウルフガイとは狼人間、つまり狼男のことである。まぁ狼男といっても人狼、つまりワーウルフなどと違って人でなく狼より、つまり力は強いが知能が極端に低い獣人族のことである。
そしてその鋭い鼻で、手負いの獲物を見つけたウルフガイのあとをつけて、その獲物の横取りを狙ってきたのか、ウルフガイのほかにも、グリズリーからホブゴブリンまで、幾つかの怪物たちの姿が見受けられた。
「モンスター」
ウルフガイに吊られて姿を現した怪物たちの姿を確認したユウが、その場に立ち上がると、背中から剣を引き抜きながら声を上げる。
「まずいの。こやつらお前さんの血の匂いをかぎつけて集まってきたようだわい。しかもお前さんが弱っとるのを、こやつらも本能で感じ取ってるようじゃぞい」
「弱ってない」
剣の言いように、いつもなら蹴りの一つも入れてくるというのに、ユウは悪態をつくだけだった。
このことから鑑みても、今までの戦いのせいでユウが相当疲弊しているのは明らかだった。
それに先の村での戦いでは、鎧の隙間から腹部を刺されてかなりの血を流し、さらに左腕を斬り飛ばされたのだ。ユウが疲弊していないと思う方がおかしいのだった。
これはそうとうまいっとるの。でもまぁ悪態をつけるだけまだましじゃな。と、剣は思っていた。
それから程なくして、ユウの血の匂いをかぎつけてきたウルフガイと、それに吊られるようにして集まってきた怪物たちとユウとの間で、戦いの火蓋が切って落とされた。
といっても、いくら体力が落ちているとはいえ、この世界有数の身体能力と膂力を有し、不死であるネクロマンサーの前では、数を頼りに押し寄せたようなただの怪物たちなどユウの敵ではなかった。
そのため手負いのユウを喰らおうと集まってきた怪物たちの群れは、ユウによって瞬く間に屠られていったのだった。
とはいえ、さすがのユウも不死の軍団を相手に大立ち回りをして、その折受けた傷がすでに癒えているといっても、さすがに失った血液や体力までは完全に回復していない状態で、かなりの数の怪物たちの相手をしたのだ。顔には出していないが、ユウがかなりの体力を消耗していることを長年の付き合いで剣は熟知していた。
そう、不死といっても限界はあるのだ。ユウが村を襲った不死の軍団を屠ったように、不死の力はより強い不死の力によって殺されれば死ぬし、体力だって無尽蔵じゃない。それに弱っているところなら弱い不死の力でも殺すことができる。
そのためこの後追撃。つまり昨夜相手にした不死の軍団の第二陣など現れようものなら、ユウの体力もさすがに持たないことは明白だった。
そのことを一番よくわかっているユウの相棒である剣は、ユウにこの場から離れようと進言しようと言葉を発しようとした矢先、剣が一番危惧していた自体が発生したのだった。
それは今しがたユウが倒したはずの怪物たちが、のそりと起き上がり始めたからだ。
目の前で起こっている普通なら驚愕して慌てふためく光景を、静かにユウと剣は見つめていた。
そう、ユウと剣はわかっていたのだ。このようなことが出来る力を持っているものがいることを。そして、この力を持っているものに、今一番出会いたくない状況で出会ってしまったということを。
「ネクロの力」
ユウの呟きを聞いて剣が答える。
「まずいの。さっきの不死の軍団を作ったネクロマンサーかもしれん」
剣が心配げな声を上げる。
そう、力を消耗している今、不死の軍団を作るほどのネクロマンサーに対抗するほどの力は、今のユウには残されていなかったからだ。
「問題ない」
言うなりユウは、すぐさまその場で剣を身構える。
だが先ほど少し寝て身体を休めたとはいっても、今までの戦いでかなり体力を消耗していたのか、少しよろけてしまう。
ユウのその様子を感じ取った剣が心配げに呟いた。
「お前さん。ここは一つ。とっとと尻尾巻いて逃げた方が無難じゃと思うんじゃがわし?」
という剣の言い分に、ユウは意味不明な言葉を発した。
「降りかかるキノコはよく焼いて食べる」
「それを言うなら降りかかるキノコじゃなくて、火の粉じゃ」
ユウは剣に冷静なつっこみを入れられる。
「そうともいう」
これだけ軽口が叩けるならいけるかの? そう考えた剣はユウの意見を採用することにした。
「わかったわい。お前さんがそこまで言うなら、もう何も言わんわい。こんな連中さっさと蹴散らしてずらかるぞい」
そして剣の言葉に、コクリとユウが了解の意思を示して頷いたのを見計らったかのようにして、先ほどユウが息の根を止めた後。何者かの力によって再び不死者として甦った数十の怪物たちが、次々とユウに襲いかかってきたのだった。
半時ほどの後。何とかユウは不死者として甦り襲いかかってきた怪物たちの最後の一体を斬り伏せていた。
「ん、余裕」
「いや危なかったぞい」
ユウと剣が甦った不死者たちを倒して、一息入れようとしたところを狙うようにして、ユウの死角から、銀色の刀身が振るわれる。
ギィンッと剣と剣とがぶつかり合う剣撃の音が森に木霊する。
ユウがとっさに気配だけを察知して、かろうじて死角から繰り出された銀色の刀身を受け止めたのだ。
だがさすがにずっと戦いずくめだったせいで、ダメージや疲労が蓄積していたのか、勢いに押されて後ろへと軽く後退する。
「くっ」
「ひゅ~今の不意打ちを受けるとはな」
口笛を吹きつつ姿を現したのは、短く刈り込んだ金髪を逆立たせ、銀色の鎧に身を包んだジーンだった。
「ちんちくりんのくせに中々やるじゃねぇか」
ジーンに、ちんちくりん呼ばわりされたユウが不満げに呟いた。
「ちんちくりん……」
「だな。思ったよりはやるようだ。しかし、まだまだ甘い」
背後からした声に反応して、ユウが振り向いた瞬間、「遅い」という声が聞こえると、すでにユウの心臓のあたりから銀色の刀身が姿を現していた。
知らぬ間に、ユウの小さな心臓は、背後から敵の剣によって貫かれていたのだった。
「もう一人、いた……。ネクロ、マンサー……」
それだけ呟くと、ユウの手から剣が滑り落ちて、ユウは身体を傾けながら意識を失っていった。
「姉貴、今この剣じゃべってなかったか?」
ユウの手から滑り落ちて、地面に横たわる剣を見下ろしながら、ジーンがいぶかしげに呟いた。
「そんなわけあるまい? しゃべる剣などおとぎ話の中だけの話だ」
ジーンの言葉を聞いていたエリスが一笑に足す。
「だよな。で、まだ生きてるみてえだし、こいつどうするよ姉貴?」
「そうだな。とりあえずは私たちのいる城へ連れて帰るぞ」
「やっぱそうかよ。ってか、めんどくせえな」
ジーンが後ろ頭を乱暴にかきながら言う。
「まぁそう言うな。一応は我々と同類のネクロマンサーなのだ。このままここに放置しておくわけにもいくまい」
「まぁそうだけどよ」
じっとジーンはユウを見つめながら言う。
「で、どうするんだ?」
「なにがだ?」
「こいつの処遇についてだ。奴に報告するのか?」
ふぅと妹のジーンにそう問われたエリスは、疲れたようなため息を吐き出しながら答えた。
「そうだな。奴に報告しようがしまいが、とりあえずは城の地下の地下牢に幽閉すべきだろうな」
「ま、妥当なとこだよな」
ジーンは後ろ手に頭をかきながら答えた。
それからジーンが、再び気を失っているユウへと視線を向けて、意味深な表情を浮かべて呟いた。
「にしてもまさか、姉貴のネクロマンサーソードに心臓を貫かれて、息がありやがるとは思わなかったぜ」
「ああ、さすがに私も、私のネクロマンサーソードに心臓を貫かれて、生き残れる者がいるとは思っていなかった」
ジーンと同じように心臓を貫かれて横たわるユウに視線を向けて、エリスも驚きを隠し切れない声で呟いた。
「あたしの力はともかくとして、姉貴の力はネクロの中でもかなり上位の力だ。その力でも殺せないネクロマンサーが、こんな辺境にいやがるとは思ってなかったぜ」
「ああ、私も同感だな」
自分の力で殺しきれなかったユウを見下ろしながら、思わぬ拾い物をしたのかもしれないとエリスは考えていた。
この力をうまく利用することが出来れば、もしかしたら私やジーンの力では殺すことの出来ないガマの不死の力を殺す足がかりになるかも知れない。そう思ったエリスは、ふと気を失って地面に横たわっている幼さの残るユウの顔に、わずかな希望の光を見た気がした。
なぜならこの地を納める領主であり、また自分たちの主であるガマの命令で人間狩りに手を汚していたエリスもジーン同様に、自分の力と権威を知らしめるためだけに、不死の軍団をもちいて人間狩りをし、恐怖で人間たちを支配する領主であるガマのやり方には納得がいっていなかったからだ。
エリスがそんなことを思っている間にも、血のにおいに釣られたのか、いつの間にかグリズリーと言う巨大な熊の怪物がエリスの手近にまで来ていた。
エリスは自分の倍以上はあろうかというグリズリーを見ると、ネクロマンサーソードを一閃させてその息の根を止める。
そして、再度息の根を止めたグリズリーに己の刃。ネクロマンサーソードを突き刺した。
するとどうだろうか? 今しがたエリスの剣の一太刀によって命を失ったはずのグリズリーが、何事もなかったかのように起き上がったのである。
「行くぞ」
そしてエリスの発した一言に、グウウゥゥ……と、グリズリーがうなり声を上げたかと思えば、先ほどエリスのネクロマンサーソードの一撃を受けて、未だ気を失っているユウを片手で掴みあげると、乱暴に肩に担いで、そのままエリスとジーンの背後に付き従いユウを運び始めたのだった。
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