79 / 129
第二幕 現世邂逅
第七十九話 タイムリミット
しおりを挟む
まずいな。この調子だと時間経過とともに次々と押し寄せてくる餓鬼が炎の壁を突破する方が早い。
そう思った俺は、炎の壁から抜け出してくる餓鬼を石礫で始末しながらも、炎の壁の前面に高さ二メートルほどの石壁を作り上げる。
石壁と言っても、さすがに二十メートルほどある炎の壁のすべての前面に張り巡らせるのは困難だと思ったので、まちまち(一定間隔)に作り上げた。
そうして炎の壁を突破してくる餓鬼の数を抑えつつ、炎の壁と石壁の両方を突破してくる餓鬼を石礫で始末した俺は、石壁で補強した炎の壁を突破してくる餓鬼たちを警戒しながら、撤退の進み具合を見るために、もう一度六花たちにも視線を向けた。
だが、やはりというべきか。六花たちの撤退は遅々として進んでいなかった。
あ~もうっこのままじゃまにあわねぇじゃねぇかっどう考えても時間経過とともに数を増す餓鬼たちが、炎の壁を突破する方が六花たちが撤退するよりも早い。
それに、陰陽師たちを田んぼから助け出したとしても、俺の見渡した限りだと、この場から撤退できる移動手段となるべき乗り物の存在も見られない。
というか六花たちは、陰陽師たちを田んぼから助け出した後どうやってこの村を脱出する予定なんだ?
そのことを疑問に思った俺は六花に声をかけることにした。
「ど……って、に……る?」(どうやって逃げる?)
陰陽師に肩を貸しながら俺に声をかけられた六花は、こういったことに対しての頭の回転が速いのか。すぐさま俺の意図している答えにたどり着くと、俺の疑問に答えてくる。
「村の外にあたしたちが乗って来た車があるのっそれで逃げるつもりっ」
なるほど車か。確か車ってのは、多人数を乗せて走ることのできる人間の使う移動手段だったはずだ。
それなら何とか逃げ切れるか? あとはそこにたどり着くまでに、どのぐらいの時間がかかるかだけだが、一応聞いておくか。
「じ……ん。ど……らい?」(そこまで行くのに、どのくらい時間かかる)
「たぶんみんなをそこまで運ぶには、一時間以上はかかると思う」
何気なく聞いた俺に帰ってきた答えは、一時間以上かかるという六花の返答だった。
一時間以上か……ちと厳しいな。
俺は石壁で補強した炎の壁を、すでに物量で突破し始めている餓鬼たちに一瞬視線を向け、その動向を不安に思いながらも、六花にさらに問いかける。
「こ…く……ま、もて……い、か?」(ここに車もってこれないのか)
「そうだよっその手があったよっ玲ねぇっ車の運転できるっ!?」
期待に目を輝かせて聞いてくる六花に、玲子は非情な現実を告げる。
「手押し車なら……」
「えっと……ごめん。玲ねぇって、確か機械とか苦手だったんだよね?}
「すまん……」
「ううん。聞いたあたしが悪かったよ。ごめん」
「いやいや本当にすまん」
なんかこのままにしておくと、延々とこのやり取りが行われそうだったので、俺は口をはさむことにした。
「ほ……に、う……ん。で…きる、は?」(ほかに運転できるのは?)
「わしがっわしができまするっ」
六花付き護衛陰陽師の陰陽頭と思わしき、六花に肩を借りている一番年齢のいった白髪交じりの陰陽師が、恐る恐るといった感じに俺の質問に答えてくる。
「その体で運転ができるのか?」
「はい。基本車の運転は座っているだけなので何とかなると思いまする」
「なら六花」
「うん。安国(やすくに)さんを車のあるところまで連れて行って、それからみんなを運び出せばいいんだよね」
「ああ、これで何とかなりそうだな」
というか、話がまとまったところ悪いんだが、そろそろやばいかもしんない。
六花たちとつたないながらも会話を交わして、炎の壁の現状維持にも意識を裂いていた俺は、念のために発動しっぱなしだった気配探知に引っかかって来た大きな気配の存在を感知すると共に、後方に大きく飛び退った。
もちろん俺が大きく飛び退ったのを、気配で感じ取っていた玲子たちも、炎の壁の方を振り返った。
そう思った俺は、炎の壁から抜け出してくる餓鬼を石礫で始末しながらも、炎の壁の前面に高さ二メートルほどの石壁を作り上げる。
石壁と言っても、さすがに二十メートルほどある炎の壁のすべての前面に張り巡らせるのは困難だと思ったので、まちまち(一定間隔)に作り上げた。
そうして炎の壁を突破してくる餓鬼の数を抑えつつ、炎の壁と石壁の両方を突破してくる餓鬼を石礫で始末した俺は、石壁で補強した炎の壁を突破してくる餓鬼たちを警戒しながら、撤退の進み具合を見るために、もう一度六花たちにも視線を向けた。
だが、やはりというべきか。六花たちの撤退は遅々として進んでいなかった。
あ~もうっこのままじゃまにあわねぇじゃねぇかっどう考えても時間経過とともに数を増す餓鬼たちが、炎の壁を突破する方が六花たちが撤退するよりも早い。
それに、陰陽師たちを田んぼから助け出したとしても、俺の見渡した限りだと、この場から撤退できる移動手段となるべき乗り物の存在も見られない。
というか六花たちは、陰陽師たちを田んぼから助け出した後どうやってこの村を脱出する予定なんだ?
そのことを疑問に思った俺は六花に声をかけることにした。
「ど……って、に……る?」(どうやって逃げる?)
陰陽師に肩を貸しながら俺に声をかけられた六花は、こういったことに対しての頭の回転が速いのか。すぐさま俺の意図している答えにたどり着くと、俺の疑問に答えてくる。
「村の外にあたしたちが乗って来た車があるのっそれで逃げるつもりっ」
なるほど車か。確か車ってのは、多人数を乗せて走ることのできる人間の使う移動手段だったはずだ。
それなら何とか逃げ切れるか? あとはそこにたどり着くまでに、どのぐらいの時間がかかるかだけだが、一応聞いておくか。
「じ……ん。ど……らい?」(そこまで行くのに、どのくらい時間かかる)
「たぶんみんなをそこまで運ぶには、一時間以上はかかると思う」
何気なく聞いた俺に帰ってきた答えは、一時間以上かかるという六花の返答だった。
一時間以上か……ちと厳しいな。
俺は石壁で補強した炎の壁を、すでに物量で突破し始めている餓鬼たちに一瞬視線を向け、その動向を不安に思いながらも、六花にさらに問いかける。
「こ…く……ま、もて……い、か?」(ここに車もってこれないのか)
「そうだよっその手があったよっ玲ねぇっ車の運転できるっ!?」
期待に目を輝かせて聞いてくる六花に、玲子は非情な現実を告げる。
「手押し車なら……」
「えっと……ごめん。玲ねぇって、確か機械とか苦手だったんだよね?}
「すまん……」
「ううん。聞いたあたしが悪かったよ。ごめん」
「いやいや本当にすまん」
なんかこのままにしておくと、延々とこのやり取りが行われそうだったので、俺は口をはさむことにした。
「ほ……に、う……ん。で…きる、は?」(ほかに運転できるのは?)
「わしがっわしができまするっ」
六花付き護衛陰陽師の陰陽頭と思わしき、六花に肩を借りている一番年齢のいった白髪交じりの陰陽師が、恐る恐るといった感じに俺の質問に答えてくる。
「その体で運転ができるのか?」
「はい。基本車の運転は座っているだけなので何とかなると思いまする」
「なら六花」
「うん。安国(やすくに)さんを車のあるところまで連れて行って、それからみんなを運び出せばいいんだよね」
「ああ、これで何とかなりそうだな」
というか、話がまとまったところ悪いんだが、そろそろやばいかもしんない。
六花たちとつたないながらも会話を交わして、炎の壁の現状維持にも意識を裂いていた俺は、念のために発動しっぱなしだった気配探知に引っかかって来た大きな気配の存在を感知すると共に、後方に大きく飛び退った。
もちろん俺が大きく飛び退ったのを、気配で感じ取っていた玲子たちも、炎の壁の方を振り返った。
0
お気に入りに追加
48
あなたにおすすめの小説
もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
悪役令嬢は処刑されました
菜花
ファンタジー
王家の命で王太子と婚約したペネロペ。しかしそれは不幸な婚約と言う他なく、最終的にペネロペは冤罪で処刑される。彼女の処刑後の話と、転生後の話。カクヨム様でも投稿しています。
愛していました。待っていました。でもさようなら。
彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。
やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。
目が覚めたら夫と子供がいました
青井陸
恋愛
とある公爵家の若い公爵夫人、シャルロットが毒の入ったのお茶を飲んで倒れた。
1週間寝たきりのシャルロットが目を覚ましたとき、幼い可愛い男の子がいた。
「…お母様?よかった…誰か!お母様が!!!!」
「…あなた誰?」
16歳で政略結婚によって公爵家に嫁いだ、元伯爵令嬢のシャルロット。
シャルロットは一目惚れであったが、夫のハロルドは結婚前からシャルロットには冷たい。
そんな関係の二人が、シャルロットが毒によって記憶をなくしたことにより少しずつ変わっていく。
なろう様でも同時掲載しています。
婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。
束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。
だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。
そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。
全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。
気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。
そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。
すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。
【完結】番を監禁して早5年、愚かな獣王はようやく運命を知る
紺
恋愛
獣人国の王バレインは明日の婚儀に胸踊らせていた。相手は長年愛し合った美しい獣人の恋人、信頼する家臣たちに祝われながらある女の存在を思い出す。
父が他国より勝手に連れてきた自称"番(つがい)"である少女。
5年間、古びた離れに監禁していた彼女に最後の別れでも伝えようと出向くと、そこには誰よりも美しく成長した番が待ち構えていた。
基本ざまぁ対象目線。ほんのり恋愛。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる