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第二幕 現世邂逅
第七十七話 炎の壁
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完全な独断で、餓鬼の群れが押し寄せてきたら、真っ先に襲われそうになっている陰陽師たちの元へと走り出した六花を、放っとくわけにもいかないと思った俺は、はあ仕方ねえなぁ。と、思いつつ。六花の後を追って走り出した。
「逃げろ六花っ!」
俺が六花を追いかけるのを目にした玲子が珍しく焦ったような声を張り上げながらも、凍らされた片足の氷を、刀の鞘で叩き割ろうとするが、焦っているのか、一撃で割ることができず手間取っていた。
玲子の声を耳にした六花が走りながら後ろを振り向くと、すでに間近に俺が迫っていた。
俺の姿を目にした六花の脳裏に、明確な死……という単語がよぎった。
のだが、俺は構わず六花の事を追い越した。
「へ?」
「な!?」
俺の予想外の行動に六花と玲子が共に、この場に似つかわしくないすっとんきょうな悲鳴をあげた。
二人の悲鳴を聞き流した俺は、さらに走る速度を上げて六花を置き去りにすると、田んぼに横たわる陰陽師たちに肉薄する。
「みんな逃げてっ!」
「奴の狙いはこっちかっ!」
迫り来る餓鬼の群れを足止めしようとしていた陰陽師たちは、急接近する俺に対して何ら手段を高じることができず、すこしばかり諦めの混じった表情を浮かべていたが構わず俺は、陰陽師たちをも素通りした。
「はっ!?」
「一体何を!?」
さすがに俺のとった行動には、六花や玲子はおろか、陰陽師たちもあっけにとられていた。
そう俺の目指していたのは、六花でも弱っている陰陽師たちでもなくその先。
未だ際限なく増え続け、すでに小さな高台から俺や六花に玲子や陰陽師たちのいる村を目指して、進軍を始めた餓鬼の群れだった。
俺は地面に手をつくと、村に雪崩こんで来た餓鬼の群れに向かって『火線』を発動させる。
俺が発動させた『火線』は、真っ直ぐ小さな高台から村に流れ込んできた餓鬼の群れに向かって伸びると共に、餓鬼の群れにたどり着く数メートル前で左右二つに別れると、餓鬼の群れの行く手を遮るように広がって、餓鬼の群れの進行方向に迸(ほとばし)った。
村に雪崩こもうとしていた最前列にいた餓鬼たちは、いきなり目の前に火線が迸(ほとばし)ったために、足を前に進ませるべきかいなか迷ったように、立ち止まったのだが、後列の餓鬼に押し出されて次々と火線の上に前倒しになっていった。
そうやって餓鬼たちの足止めをしつつも、火線の上に数体の餓鬼たちが重なり合ったころ合いを見計らって、俺は火線から火柱を立ち昇らせた。
もちろん火線の上にいた餓鬼たちは全身を炎で包まれ、火柱の勢いを増大させると共に、餓鬼の群れの行く手を遮るように、二十メートルほどの横長の巨大な炎の壁を作り上げた。
「なっあの餓鬼どもは、『餓鬼の王』たる奴が呼び寄せたわけではなかったのか?」
俺が餓鬼たちの行く手を遮るように、炎の柱を立てたのを目にしていた玲子が疑問の声を上げた。
はぁだからなんであの女は、あんな低知能な餓鬼たちと俺とを結びつけるかな? 仮にだがもし俺が、陰陽師たちの操る式神みたく悪鬼羅刹や妖怪を使役できるとしたら、絶対にあんな醜悪で敵と味方の判別もつかないような知能の低い餓鬼は、使役しないっての。
俺は頭の中で文句を言ってから、これで逃げる時間は稼いでやった。早く逃げろ。という思いを込めて、六花に視線を向けて口を開く。
「逃げろ六花っ!」
俺が六花を追いかけるのを目にした玲子が珍しく焦ったような声を張り上げながらも、凍らされた片足の氷を、刀の鞘で叩き割ろうとするが、焦っているのか、一撃で割ることができず手間取っていた。
玲子の声を耳にした六花が走りながら後ろを振り向くと、すでに間近に俺が迫っていた。
俺の姿を目にした六花の脳裏に、明確な死……という単語がよぎった。
のだが、俺は構わず六花の事を追い越した。
「へ?」
「な!?」
俺の予想外の行動に六花と玲子が共に、この場に似つかわしくないすっとんきょうな悲鳴をあげた。
二人の悲鳴を聞き流した俺は、さらに走る速度を上げて六花を置き去りにすると、田んぼに横たわる陰陽師たちに肉薄する。
「みんな逃げてっ!」
「奴の狙いはこっちかっ!」
迫り来る餓鬼の群れを足止めしようとしていた陰陽師たちは、急接近する俺に対して何ら手段を高じることができず、すこしばかり諦めの混じった表情を浮かべていたが構わず俺は、陰陽師たちをも素通りした。
「はっ!?」
「一体何を!?」
さすがに俺のとった行動には、六花や玲子はおろか、陰陽師たちもあっけにとられていた。
そう俺の目指していたのは、六花でも弱っている陰陽師たちでもなくその先。
未だ際限なく増え続け、すでに小さな高台から俺や六花に玲子や陰陽師たちのいる村を目指して、進軍を始めた餓鬼の群れだった。
俺は地面に手をつくと、村に雪崩こんで来た餓鬼の群れに向かって『火線』を発動させる。
俺が発動させた『火線』は、真っ直ぐ小さな高台から村に流れ込んできた餓鬼の群れに向かって伸びると共に、餓鬼の群れにたどり着く数メートル前で左右二つに別れると、餓鬼の群れの行く手を遮るように広がって、餓鬼の群れの進行方向に迸(ほとばし)った。
村に雪崩こもうとしていた最前列にいた餓鬼たちは、いきなり目の前に火線が迸(ほとばし)ったために、足を前に進ませるべきかいなか迷ったように、立ち止まったのだが、後列の餓鬼に押し出されて次々と火線の上に前倒しになっていった。
そうやって餓鬼たちの足止めをしつつも、火線の上に数体の餓鬼たちが重なり合ったころ合いを見計らって、俺は火線から火柱を立ち昇らせた。
もちろん火線の上にいた餓鬼たちは全身を炎で包まれ、火柱の勢いを増大させると共に、餓鬼の群れの行く手を遮るように、二十メートルほどの横長の巨大な炎の壁を作り上げた。
「なっあの餓鬼どもは、『餓鬼の王』たる奴が呼び寄せたわけではなかったのか?」
俺が餓鬼たちの行く手を遮るように、炎の柱を立てたのを目にしていた玲子が疑問の声を上げた。
はぁだからなんであの女は、あんな低知能な餓鬼たちと俺とを結びつけるかな? 仮にだがもし俺が、陰陽師たちの操る式神みたく悪鬼羅刹や妖怪を使役できるとしたら、絶対にあんな醜悪で敵と味方の判別もつかないような知能の低い餓鬼は、使役しないっての。
俺は頭の中で文句を言ってから、これで逃げる時間は稼いでやった。早く逃げろ。という思いを込めて、六花に視線を向けて口を開く。
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