30 / 34
星の聖域 最終決戦① 星の意志① 青の巨人VS黒の巨人と『星痕』と『星の声』
しおりを挟む「星? 天の川?」
そう何の前触れもなくいきなり裕矢が飛ばされたのは、星々々々々々々々……上下左右全てが星に埋め尽くされた世界だった。
「なんなんだよ……ここ」
裕矢が薄気味悪そうに上下左右全ての空間を見渡していると、いつのまにか隣に居た秋菜がまるで始めて雪を見た子犬のように、つぶらな瞳を大きく見開き両手を思いっきり広げて、上下左右ありとあらゆる角度に存在する星々を見上げて、辺りを駆け回りながら声を上げて喜びまわる。
「お星様だ♪ ゆうちゃんお星様だよっ♪ お星様っ♪ すっごいよっ♪ ここっほんとにすっごいよ♪」
秋菜が天の川だっ♪ とかあっあれは夢にまで見た猫座流星群だっ♪ とか言って子供のようにはしゃぎまわる。いや回り続ける。
「おいあきっいい加減落ち着けってのっ」
わけわからない空間にいきなり飛ばされてきたというのに、能天気にはしゃぎまわる秋菜をいさめようと裕矢が声をかけるが、はしゃぎまわる秋菜がその程度で止まるはずも無く、ただいたずらに時が過ぎていった。
そのあとも裕矢が何度か秋菜を止めに入ろうとするが、秋菜のはしゃぎっぷりはまったくとどまることを知らなかった。
そのためいい加減疲れた裕矢が秋菜をこのまま放置しようとしていると、今までのはしゃぎっぷりはどこへやらぴたりと、不意に秋菜が動きを停止させた。
「どうした。あき?」
いきなり制止した秋菜に近付くと裕矢が声をかける。
だが秋菜はその問いかけには答えようとしなかった。
その代わりに、秋菜の口から出た言葉は、裕矢の予想していない言葉だった。
「ここは『星の聖域』」
「『星の聖域』?」
「そう、ここは『星の聖域』。星が生まれ星が滅ぶところ」
「星が生まれ、星が滅ぶ? なに言ってんだよあき? 頭でも打ったのか?」
心配げに声をかける。
だがやはり、というべきか、その問いかけに秋菜は答えない。
「何十何百億年もの長きにわたり星の輪廻を繰り返す場所」
「輪廻を繰り返す場所? ってなに言ってやがる」
「もうすぐ闇が訪れる」
「だからさっきからなに言ってるんだよ、あきっしっかりしろよっ」
裕矢が秋菜の肩に手をかけて自分のほうを強引に向かせる。
「あき、なのか?」
自分のほうを強引に向かせた秋菜の瞳が、いつものダークブラウンの瞳でなくブルーアイ。透き通るような青だったために、一瞬目の前に居るのが秋菜とは思えずに裕矢が彼女に問いただした。
「この子の身体を借りて、あなたに話しかけている。あなたたちが地球と、あおいと呼ぶもの」
「あおい……つまり体を失った地球の意識体か?」
コクリ、
「時間が無い」
「時間……? って一体?」
「この場に闇が訪れる」
「闇?」
「あなたたちが魔王と呼ぶもの」
「へ? 魔王? でも確か奴は俺が星の力を使って、地球を犠牲にしたビッグバンを起こして倒したはずだ」
フルフル。首を振る。
「あなたはあちら側で魔王を倒していない」
「いったいどういうことなんだよ!?」
裕矢が秋菜の体を借りているあおいの両肩を力強く掴み真剣な眼差しでその青色の瞳を見つめながら問いただす。
「あなたたちのいるあちら側の世界で、力の大半を失った魔王が失った力を取り戻すために、本来星々の力でこの世界に来れなかったはずの魔王が、私の肉体(地球)がビッグバンを引き起こしたときに生じた星々が星の聖域を護るために作りだした結界のほころびを見つけ、この世界に飛んだ」
「飛んだ?」
「それってつまり……」
「時空の壁を越えて、星の聖地であるこの世界に現れようとしている」
「いったいなんのために?」
「魔王は、星の命を喰らう」
「まさか」
「そう そのまさか」
「失った力を取り戻すために、この世界の、星の聖域の星々の命を喰らうために魔王がこの世界に訪れる」
「ここに魔王が現れるってのかよ」
だがあおいは裕矢の問いかけに答えない。
ただある一点を見つめ言葉を紡ぐのみ。
「星の光が、星の煌めきが失われれば世界は闇に落ち混沌が訪れる」
「混沌?」
「混沌を止める手立ては今の私たちにはない」
「ないってことは」
「世界が……終りの時を迎える」
あおいが遥か遠くを見つめながら呟く。
あおいは裕矢には見ることすら敵わないはるか先の未来を見据えて話しているようだった。
「くそっならいったいどうすりゃいいってんだよ」
「このままだと魔王が力を取り戻し復活を遂げてしまう。それを阻止するには、『星の記憶』の扉を開き『星の記憶』の力を使わなくてはならない」
「なら早く」
「一人では無理」
「星の唯一の生き残りである民の力が必要」
髪を揺らして、裕矢のほうを向きながら答える。
「力が必要っつったってんなちから俺には……」
「『星の記憶』の扉を開き『星の記憶』の力を使うには、星と縁の近い『星の民』の存在が不可欠」
「『星の民』?」
「星と共に生きてきた者たちのこと。地球で言うところの人間」
「俺のことか?」
コクリと秋菜の体を借りた地球の意識体であるあおいが頷いた。
「けど力をかすって言ったってどうやって?」
「あなたはただそこに存在してくれてればいい」
端的に言われる。
「存在してくれてればって?」
それだけ言うとあおいは裕矢の顔に自らの顔を近づける。
「『生体リンク』」
それだけを小さく呟くと裕矢の唇に自らの薄桜色の唇を重ねる。
「なっなっなっ!?」
秋菜の姿をしたものに、いきなりキスをされた裕矢は顔を赤面させてしどろもどろになる。
「これで、つながる」
顔を赤面させている裕矢のことなど別段気にした風も無くあおいは、裕矢の瞳を見つめながらそう答えた。
そうあおいが裕矢に施したのは、エリスたちが船の機能を底上げするために行った『生体リンク』とまったく同じ行為だった。
ただし船で無く星。一つの惑星、一つの星との『生体リンク』だ。
ただエリスたちと違うのは、ナノエフェクトが船を循環して船の能力を底上げするのではなく、逆にあおいと『生体リンク』した裕矢の中に、あおいの持つ地球の力と『星の記憶』が流れこんできたことだった。
「これは……」
星と『生体リンク』した裕矢の中に、様々な星の歴史や情報が鮮明な映像となって流れこんでくる。
「そう、これが『星の記憶』」
「これが……『星の記憶』……」
裕矢が自分の中で起こっている出来事に驚いていると、唐突にあおいが先ほども見つめていたある一点に視線を向けながら、事実のみを伝えるべく淡々とした口調で口を開いた。
「来る」
あおいが言葉を発した瞬間、星の聖域に半径一、二メートルほどの魔王が姿を変えた小型のブラックホールのような渦巻く球形の闇が現れた。
現れた闇の球体は、星たちの光を受けたとたん。まるで太陽の光を受けた影のように四方へと広がっていった。
やがて星空に浮かぶ星たちに闇がふれると、闇に触れられた星はまるで最初からなんの輝きも放っていなかったかのように光を失っていった。
魔王が放ち、星の聖域に押し寄せた闇が星の命を喰らったのだ。
もしこのまま闇の侵食を放置すれば数時間と立たないうちに、星の聖域にある星々の命は魔王に奪われてしまうだろう。
もしそうなれば、魔王は力を取り戻し、あおいの言うとおりに、世界に混沌が訪れ、数十、数百億年、いやもっと長き時を歩んできた世界は終わりを迎えるだろう。
「なんなんだよこれ……こんなんどうしようもねぇじゃねぇか……」
星の聖域を襲うあまりに巨大で、一方的な侵食を続ける闇を見上げながら裕矢が絶望的な声を上げた。
そして裕矢が声を上げている間にも星の聖域で行われている闇の侵食は、とどまることを知らず絶え間ない侵攻を続けながら、星の聖域を闇で埋め尽くそうとしていた。
星の光が奪われて、星の命が喰われ星の聖域を照らし出す星の光が段々と弱まっていく様を見上げて淡々と言う。
「このまま魔王を放置すれば、星たちの命のともし火が消え、このまま星の輝きを奪われ続ければ、魔王は力を取り戻し、世界に混沌が訪れる。そして、全ての星の輝きが失われた時、星が死に絶え世界が終わる」
この世界に現れて、世界に闇を撒き散らし、星の光を吸収し続ける闇の卵のような小型のブラックホールを見つめながら呟く。
「んなこと言われてもいったいこんな奴相手にどうすりゃいいってんだよ!」
世界に闇を広げ星の輝きを奪い続ける黒き卵を見つめながら半ばやけくそ気味に叫ぶ。
「『星の記憶』史上最も強い最強の力で立ち向かう」
「最強の力?」
「あなたたちが地球と呼ぶ惑星は、数十億年の時を生きてきた。その中で最強の生物とは何か?」
唐突に質問される。
「恐竜?」
最強と言われて地球の生物史上最も身体が大きく、また力の強かった恐竜の姿を思い出して口にする。
裕矢の答えを聞いたあおいが違うとでも言うのかフルフルと首を振る。
「じゃあオーバーテクノロジーでアトランティスを作った先人類とかか?」
ふうわかっていないな。とでも言うように、フルフルと再度首を振りながら口を開く。
「亜竜は、落下石。大量に降り注いだ隕石により滅びた」
ああ、確かそんなことが歴史書に書いてあった。授業でも習ったことがある気がする。
「隕石より前に、亜竜はあるものによって食量とされていた」
「もしかして類人猿か?」
「そう、星の民の食料として狩られていた。そしてまた高度な科学力を持った先人類も大した力を持たないあるものによって追いやられた」
「あるもの?」
「わからない?」
少し考えたが、これといったものを何も思いつけなかった裕矢は、こくりと頷いた。
「星の民」
「つまり俺達人間のことか?」
コクリとあおいが頷いた。
「私の知る限り地球史上最強の生物は星の民。星の民は大した力や身体能力は持っていない。しかし、素手から武器。武器から機械と、自らを強くするための知恵を延々と生み出してきた。そう、人は、一人では、他の生物に劣る。けれど、絶え間ない時の中、種全体で知恵を積み重ね、絶え間ない進化の過程を得て繁栄を築いてきた。『人』、の力はいずれ星をも凌駕する可能性を秘めている」
「星を?」
コクリ。
「いずれ星の民は、星すら生み出す存在になる可能性がある。地球史上最強の生物。星の民よ、星の力を使い全ての未来を阻むものを打ち払え」
あおいが言葉を発すると、それが合図であったように、裕矢の中に『生体リンク』したあおいの力の使い方と、どのように力を使えばいいのかが流れ込んでくる。
そして、先ほどのあおいの話同様に、地球の『星の記憶』からもっとも強く魔王を倒せる可能性のあるものが選ばれる。
それはあおいの言うとおり、絶え間ない進化をし続ける人間だった。
裕矢の身体がいや体を流れるナノエフェクトが星の力に呼応して、分子いや粒子レベルで混ざり合い結合していく。
そして一瞬まばゆい光が裕矢を包み込むと、光が収まった先に存在していたのは、身の丈数十メートルを超える巨大なビルほどもある半透明の青い巨人の姿だった。
そして光が収まった後、裕矢の視界に飛び込んできたのは、数十階建てのビルに相当する景色だった。
裕矢は自分の視界がいきなり数十倍の高さに跳ね上がったために、思わずバランスを崩してたたらを踏む。
だがそれも一瞬のことで、あおいと『生体リンク』して、『星の感覚』を有している裕矢はすぐにバランスを取り戻していた。
そして裕矢は巨大な自分の両手と肉体を見下ろしながら呟いた。
「これが……俺?」
裕矢は自分の姿は見えないが、自分がどうなっているのかは『星の感覚』で熟知していた。
そして『星の感覚』によって、自分が巨人になっていて、さらにその視界や五感といった感覚も自分と繋がっているのがわかっていた。
そのため裕矢はまず巨人が思い通りに動くかどうか試みることにした。
まず、左手を動かし人と同じ五指ある手の指を握ったり閉じたりする。
次に右手も同じように動かしてから、両足を軽く動かして歩いてみると、少しバランスを崩しそうになる。
いくら『星の感覚』を持っているといっても、いきなり数十メートルも巨大な肉体を動かすのは難しいようだった。
だが、『星の感覚』は、いやナノエフェクトの力か裕矢の持つ持ち前の運動神経かどちらかはわからないが、一分も立たないうちに自由自在とまではいかないが、それなりに動かせるようになっていた。
『星の感覚』を使って巨人の肉体をそこそこ動かせるようになった裕矢が、あまり長いもしてられないか。と心の中で呟いた。
なぜなら星と『生体リンク』し、星の感覚を共有している裕矢には、この世界にあまり時間が残されて無いことがわかっていたからだ。
そのため裕矢は巨大な肉体を動かして、動作確認をしながら黒い卵に向かって走り出す。
そして走り出しながら右拳を握り締めて大きく振りかぶると、黒い卵目掛けて力一杯振り下ろした。
強大な地球のエネルギーと、ナノエフェクトによって生み出された半透明の青い巨人の拳が振り下ろされる。
決まれば黒い卵など一撃で砕ける。はずだったが予想外の出来事が巻き起こる。
ただの球形のエネルギーの固まりであったはずの魔王に青の巨人の一撃が激突すると思われた瞬間、球体を中心に黒い光が瞬いたかと思うと、その拳が青の巨人と同等、いや青の巨人よりひと回りは大きい黒い巨人の手の平によって受け止められていたからだった。
どうやら球形をとっていた魔王が自らを護るために、、向かってくる青の巨人を参考にして高密度エネルギーで瞬時に作り上げたようだった。
作り上げられた巨人の外観は、見た目は青の巨人同様筋肉質の体躯をしていたが、なぜか上半身のみで床から人の上半身のみが生えているような異様な形状だった。
青の巨人の右拳の一撃を難なく左手の平で受け止めた黒い巨人は、受け止めているその姿勢のまま闇を広げ続け星の光を命を喰らい続ける。
「これ以上やらせっかようおおおおっ」
闇を広げ続け、星の光を奪い続ける黒い巨人と化した魔王に、裕矢が怒りに任せて残った左拳も叩きつける。
だが、青の巨人の繰り出した左拳の一撃は難なく黒の巨人に受け止められて、図らずも両手で組み合う形となり巨人同士の力比べとなる。
「くううううっ」
しばらくは両者の力は拮抗していたのだが、下半身がないといっても自力で上回っていたのか、青の巨人が対格差もあって押し込まれ始める。
そして、ここが勝負どころと見て取ったのか、魔王が星の光を食らうのを一時中断して、頭に当たる部分に巨大な口を開きエネルギーの発射台である銃口のような口径を作り出すと、ヒュィィイイイインッと、体中のエネルギーを集約し始める。
何かする気だっこのままだと……まずいっ裕矢が本能的に感じとるも、青の巨人の両手はがっちりと黒の巨人と組み合っていたために、いくら力を入れてもびくともせず回避行動を取れずにいた。
そこへエネルギーの集約を終えた黒の巨人の口径から、まるでドラゴンの吐き出すブレスのように、旗艦レヴァティーンの惑星破壊砲を模した超高密度で強力なエネルギー兵器。デス・クリムゾンが吐き出される。
黒の巨人と化した魔王より吐き出されたデス・クリムゾンは、発射の衝撃で空間に波紋を広げ、周囲の空間に漂っていたちりあくたを吹き飛ばすと共に、青の巨人の顔面目掛けてほぼゼロ距離で突き進んだ。
さすがに両手ががっちりと組み合った状態で、これをかわすのは不可能だった。
だがデス・クリムゾンが青の巨人の頭部を貫くと思われたインパクトの瞬間。裕矢がふっと身体の力をぬきうまい具合に組み合った両手から身体をするりと抜け出して、イナバウアーのように後方に体を反らして、至近距離から放たれたデス・クリムゾンを何とかかわすことに成功する。
そしてそのまま一旦後方に下がって距離をとった。
裕矢がかわしたデス・クリムゾンは、青の巨人の後方にあった星に衝突して、その後方に在った星の輝きごと複数の星を消し去っていった。
その後裕矢が飛び退って一旦距離をとっている間にも、魔王は世界に闇を広げ続け星の命を吸収し喰らい続ける。
そうしていると、黒の巨人と化している魔王の身体に幾つもの星の輝きが浮かび上がり始めた。
「あれは?」
裕矢が疑問符を浮かべると、裕矢と『生体リンク』しているあおいが問いかけに答えてくれる。
「『星痕』」
「星痕?」
「魔王に食され奪われた星たちの命」
その単語一つで地球と『生体リンク』して様々な星の地球の知識を得た裕矢には、魔王がどのようにして星の命を喰らおうとしているのかが理解できた。
そうか魔王といっても強大な力を秘める星の命を一気には喰らえないってことか。多分人間や動植物と同じように、喰らった星の命を身体のどこかに蓄えて、少しずつ少しすつ消化して自分の身体の中にとりこんでいってるんだ。
とはいっても、少しずつだが確実に星の力を喰らって魔王の力が増しているのはわかる。
だったら、喰らった星の力を消化する前に吐き出させればいい。そうすれば魔王も力の回復が出来ないし喰われた星たちも助かるはずだ。
だけど喰らった星たちの命を吐き出させるにはどうすればいい? 普通なら力いっぱい腹を殴りつけて吐き出させてやればいいだけなんだけど。相手は魔王だ。そんな攻撃で星の命を吐き出すとは到底思えない。裕矢が考えを巡らしている間にも、魔王の広げる闇が星たちの命を奪っていっていた。
そして、奪っていった星の分黒い巨人と化している魔王の身体が得た力分膨張し、星痕が増えていった。
その様子を目にしていた裕矢が、こんなこと悠長に考えてる場合でもないか。とにかく魔王にダメージを与えて星の命を吐き出させるしかねぇ。とにかく狙うは腹。だめもとで一発入れる。それだけ考えて青の巨人と化している裕矢は走り出した。
「ウオオオオオオッ」
青の巨人が黒の巨人の背後に回りこみ雄叫びを上げながら突進する。
突進しながら青の巨人が右拳を振りかぶり振り下ろすと、黒の巨人化した魔王が、青の巨人の突進してきている方角に向かって、星の力を喰らい一回りは大きくなった腕を払うように振り回した。
青の巨人は頭をかがめてそれをかいくぐり、魔王のどてっ腹に振り下ろした右拳の一撃を突き刺した。
だが、魔王にまったくひるむ様子はなく再度青の巨人を振り払おうと野太い腕を振り回してくる。だが野太くなった魔王の腕はその分スピードにかけて鈍重になっていたために、難なく青の巨人化している裕矢にかいくぐられてしまう。
魔王の攻撃をかいくぐった裕矢は、両の拳に力込めると、容赦なく腕をぶん回してがら空きのボディ目掛けて両の拳を叩き込んだ。
裕矢が拳を叩き込んだ直後。魔王が裕矢の頭上から両手を組み合わせて振り下ろしてくるが、魔王の動きが鈍重だったために、裕矢は難なく身を反らしてかわしていた。
その後青の巨人と黒の巨人は、一定の距離で拳を交え続ける。
だが、青の巨人と化している裕矢が魔王に向かって何度も何度も拳を叩き込んでいると、魔王の体のある変化に気付き声を上げる。
「どういうことだ? さっきより魔王の動きが明らかに鈍くなってやがる?」
「疲弊している」
裕矢の独り言に答えたのはあおいだ。
「疲弊?」
コクリ、あおいが頷いてくる気配が、あおいと『生体リンク』している裕矢の『星の感覚』を通じて伝わってくる。
「どういうことなんだ?」
「魔王はなぜこの世界に訪れた?」
相変わらず突拍子もないことを口にする。
「それは、俺達のいる世界で力の大半を失ったから、その失った力を取り戻すために、この世界に飛んだとか言ってなかったっけ?」
自分が口にした言葉で裕矢が何かに気付いたのかはっとする。
この世界に来る前に、戦艦による攻撃や惑星を破壊するほどのエネルギー爆発をまともに喰らいすでに魔王は力の大半を失っていた。
そうか、だからさっき口からエネルギー波を撃ってきた時、どうして追ってこなかったのかと思ってたらそう言うことだったのか、魔王はエネルギー波を吐き出してきた時、追撃してこなかったんじゃなくて追撃できなかったんだ。
つまり度重なる戦いのせいでいくら星の命を喰らったといっても魔王はまだ、疲弊している。
攻めるなら、魔王が完全に力を取り戻す前、今ならまだ何とかなるかもしれない。そう思った裕矢は攻勢に打って出ることにした。
そして青の巨人と化している裕矢は黒の巨人と化した魔王の懐に飛び込むと、まるでプロの格闘家のように何度も何度も拳を振るい攻撃を仕掛ける。
そして、攻撃を繰り出しながらふと思う。なぜ今まで一度も格闘技などやったことの無い俺がこんなふうに拳を繰り出せるのかと、それはきっと、地球の言う『星の記憶』が関係しているのかもしれない。『星の記憶』は星で起こった出来事の記憶。つまり今まで地球上の生物が人類が歩んできた歴史そのもの。だから、人が生み出した格闘術が使えるようになったとしてもおかしくは無いからだ。
今、俺の中には地球のみんなの力が流れているんだ。
だから、負けるわけにはいかない。決意を新たに一心不乱に立ち向かう。
だがそれでも、何度拳を繰り出し魔王に叩きつけようとも、裕矢の攻撃は魔王に致命的なダメージを与えることはおろか、一つのダメージすら与えていないようだった。
「くそっ拉致があかねぇってか、本当に効いてるのかよ!?」
繰り出した攻撃がことごとくヒットしているにもかかわらず、大したダメージを与えているとも思えないために裕矢が焦りの声を上げる。
そして戦いの最中、何度目かの拳を振り下ろした瞬間、『助けて』という声が裕矢に聞こえた気がした。
いや、それは声と言うよりも、心の中、頭の中に直接呼びかけられているような感じだった。
「誰だ?」
聞こえてきた声のようなものに答えるように裕矢が声を上げる。
だが返事は無い。
「気のせい……か?」
裕矢が首をかしげていると、再度、声。いや、これは『言葉』といよりも、意志そのもので伝えてきているような感じだった。
「なんだ。これ?」
裕矢が呟きを発すると、裕矢の機微を感じ取ったのか、いつものようにあおいが端的に述べてくる。
「星の声」
「星の……声?」
どうやら裕矢の解釈は間違っていなかったらしく、コクリ。とまたあおいが頷くような気配を感じた。
そうか、これは、言葉で伝えてきてるわけじゃない。地球と言う星と『生体リンク』して鋭敏になった『星の感覚』が伝えてるんだ。星の星たちの声を。
もしかして、魔王の身体に星痕として浮かび上がっている星たちが俺に助けを求めてるのか? 裕矢がそう考えていると、その考えを読み取ったのか、魔王に浮かび上がっている星痕が一瞬その輝きを増した。
「どうやら正解みたいだな」
一瞬光を増した星痕の輝きを見逃さなかった裕矢が声を上げた。
裕矢が理解したのを感じ取ったのか、あおいが再度言葉を紡ぐ。
「『星痕』」
あおいの発したその単語でわかった。理解した。
あおいは魔王に浮かび上がった星痕を撃てと言ってるんだと。
「うおおおおおっ」
いくら攻撃しようとも魔王に大したダメージが与えられず、八方塞がりだった裕矢はあおいの言うとおり声を上げて、星痕のある場所を一か八か全力で殴りつけにいった。
数秒後青の巨人の放った拳の一撃が魔王の星痕のある箇所に叩きつけられて巨人の拳がめり込むが、黒の巨人の体躯が分厚すぎて青の巨人の拳が星痕まで届かなかった。
そのため先ほど星たちの思いを知った裕矢は、星たちを助けるために拳にありったけの想いと力を込めて、黒の巨人の肉体に埋没した拳をさらに深く押し込もうと力を込めて叫んだ。
「とどけえぇぇ――っっ!!」
裕矢がありったけの力と想いをこめて、星痕目掛けて拳を押し込んだ瞬間、魔王が今までにない機敏な反応を見せる。
魔王がいきなり青の巨人の胴体を両手で力任せに締め上げて逃げられないように拘束すると、青の巨人の頭部目掛けて、口を開きあっさりと星を貫くことの出来る凶悪な口径を開いたのだ。
来る。あのエネルギー波だ。ここまで必死になるってことは、星痕を狙って正解ってことかよ。魔王の行動を見ていた裕矢はそのことを瞬時に理解して、回避行動に移ろうとするが、すぐに思いとどまる。
なぜならすでに魔王によって青の巨人の胴体は拘束されていたというのもあったが、それよりなにより、星痕を狙っただけでこれほどの反応を示したのだ。もしここで引いて次にまた星痕を狙いにいけば確実に警戒されて、今以上の反撃に合うことは誰の目から見ても明らかだったからだ。
そうなってしまっては多分、もうここまでたどり着くことは出来ないだろう。
だから、裕矢は覚悟を決めた。魔王の放つ星をも破壊する強力無比なエネルギー兵器。デス・クリムゾンが自分に到達するのが先か? それとも、青の巨人の拳が魔王の肉体にある星痕に届くのが先かだ。
コンマ数秒で勝敗が決する。どっちが先にたどり着くかの命がけの競争が始まった。
とどけぇ! とありったけの想いと力を込めて裕矢が星痕目掛けて拳を突き入れると、魔王が口径にエネルギーを充填するより一瞬早く青の巨人の拳が星痕に触れた。
瞬間、魔王の両手によって拘束された青の巨人の頭部目掛けて、強力無比なエネルギー兵器。デス・クリムゾンが超至近距離から放たれた。
さすがに超至近距離で発射されたこの攻撃はかわせないと裕矢が覚悟を決めて腹をくくった瞬間。
「任せいっ」
『星の感覚』を通じて裕矢の中に、聞いたことのないしわがれた老人のような声が聞こえてきた。
そして煙が治まった跡に姿を現したのは、魔王の放った強力無比なエネルギー兵器。デス・クリムゾンに貫かれた青の巨人の姿ではなく、たやすく星を貫通するデス・クリムゾンを弾き返して青の巨人を護った。いつの間にか青の巨人の左腕に装備されていた赤道色の盾の姿だった。
そう何の前触れもなくいきなり裕矢が飛ばされたのは、星々々々々々々々……上下左右全てが星に埋め尽くされた世界だった。
「なんなんだよ……ここ」
裕矢が薄気味悪そうに上下左右全ての空間を見渡していると、いつのまにか隣に居た秋菜がまるで始めて雪を見た子犬のように、つぶらな瞳を大きく見開き両手を思いっきり広げて、上下左右ありとあらゆる角度に存在する星々を見上げて、辺りを駆け回りながら声を上げて喜びまわる。
「お星様だ♪ ゆうちゃんお星様だよっ♪ お星様っ♪ すっごいよっ♪ ここっほんとにすっごいよ♪」
秋菜が天の川だっ♪ とかあっあれは夢にまで見た猫座流星群だっ♪ とか言って子供のようにはしゃぎまわる。いや回り続ける。
「おいあきっいい加減落ち着けってのっ」
わけわからない空間にいきなり飛ばされてきたというのに、能天気にはしゃぎまわる秋菜をいさめようと裕矢が声をかけるが、はしゃぎまわる秋菜がその程度で止まるはずも無く、ただいたずらに時が過ぎていった。
そのあとも裕矢が何度か秋菜を止めに入ろうとするが、秋菜のはしゃぎっぷりはまったくとどまることを知らなかった。
そのためいい加減疲れた裕矢が秋菜をこのまま放置しようとしていると、今までのはしゃぎっぷりはどこへやらぴたりと、不意に秋菜が動きを停止させた。
「どうした。あき?」
いきなり制止した秋菜に近付くと裕矢が声をかける。
だが秋菜はその問いかけには答えようとしなかった。
その代わりに、秋菜の口から出た言葉は、裕矢の予想していない言葉だった。
「ここは『星の聖域』」
「『星の聖域』?」
「そう、ここは『星の聖域』。星が生まれ星が滅ぶところ」
「星が生まれ、星が滅ぶ? なに言ってんだよあき? 頭でも打ったのか?」
心配げに声をかける。
だがやはり、というべきか、その問いかけに秋菜は答えない。
「何十何百億年もの長きにわたり星の輪廻を繰り返す場所」
「輪廻を繰り返す場所? ってなに言ってやがる」
「もうすぐ闇が訪れる」
「だからさっきからなに言ってるんだよ、あきっしっかりしろよっ」
裕矢が秋菜の肩に手をかけて自分のほうを強引に向かせる。
「あき、なのか?」
自分のほうを強引に向かせた秋菜の瞳が、いつものダークブラウンの瞳でなくブルーアイ。透き通るような青だったために、一瞬目の前に居るのが秋菜とは思えずに裕矢が彼女に問いただした。
「この子の身体を借りて、あなたに話しかけている。あなたたちが地球と、あおいと呼ぶもの」
「あおい……つまり体を失った地球の意識体か?」
コクリ、
「時間が無い」
「時間……? って一体?」
「この場に闇が訪れる」
「闇?」
「あなたたちが魔王と呼ぶもの」
「へ? 魔王? でも確か奴は俺が星の力を使って、地球を犠牲にしたビッグバンを起こして倒したはずだ」
フルフル。首を振る。
「あなたはあちら側で魔王を倒していない」
「いったいどういうことなんだよ!?」
裕矢が秋菜の体を借りているあおいの両肩を力強く掴み真剣な眼差しでその青色の瞳を見つめながら問いただす。
「あなたたちのいるあちら側の世界で、力の大半を失った魔王が失った力を取り戻すために、本来星々の力でこの世界に来れなかったはずの魔王が、私の肉体(地球)がビッグバンを引き起こしたときに生じた星々が星の聖域を護るために作りだした結界のほころびを見つけ、この世界に飛んだ」
「飛んだ?」
「それってつまり……」
「時空の壁を越えて、星の聖地であるこの世界に現れようとしている」
「いったいなんのために?」
「魔王は、星の命を喰らう」
「まさか」
「そう そのまさか」
「失った力を取り戻すために、この世界の、星の聖域の星々の命を喰らうために魔王がこの世界に訪れる」
「ここに魔王が現れるってのかよ」
だがあおいは裕矢の問いかけに答えない。
ただある一点を見つめ言葉を紡ぐのみ。
「星の光が、星の煌めきが失われれば世界は闇に落ち混沌が訪れる」
「混沌?」
「混沌を止める手立ては今の私たちにはない」
「ないってことは」
「世界が……終りの時を迎える」
あおいが遥か遠くを見つめながら呟く。
あおいは裕矢には見ることすら敵わないはるか先の未来を見据えて話しているようだった。
「くそっならいったいどうすりゃいいってんだよ」
「このままだと魔王が力を取り戻し復活を遂げてしまう。それを阻止するには、『星の記憶』の扉を開き『星の記憶』の力を使わなくてはならない」
「なら早く」
「一人では無理」
「星の唯一の生き残りである民の力が必要」
髪を揺らして、裕矢のほうを向きながら答える。
「力が必要っつったってんなちから俺には……」
「『星の記憶』の扉を開き『星の記憶』の力を使うには、星と縁の近い『星の民』の存在が不可欠」
「『星の民』?」
「星と共に生きてきた者たちのこと。地球で言うところの人間」
「俺のことか?」
コクリと秋菜の体を借りた地球の意識体であるあおいが頷いた。
「けど力をかすって言ったってどうやって?」
「あなたはただそこに存在してくれてればいい」
端的に言われる。
「存在してくれてればって?」
それだけ言うとあおいは裕矢の顔に自らの顔を近づける。
「『生体リンク』」
それだけを小さく呟くと裕矢の唇に自らの薄桜色の唇を重ねる。
「なっなっなっ!?」
秋菜の姿をしたものに、いきなりキスをされた裕矢は顔を赤面させてしどろもどろになる。
「これで、つながる」
顔を赤面させている裕矢のことなど別段気にした風も無くあおいは、裕矢の瞳を見つめながらそう答えた。
そうあおいが裕矢に施したのは、エリスたちが船の機能を底上げするために行った『生体リンク』とまったく同じ行為だった。
ただし船で無く星。一つの惑星、一つの星との『生体リンク』だ。
ただエリスたちと違うのは、ナノエフェクトが船を循環して船の能力を底上げするのではなく、逆にあおいと『生体リンク』した裕矢の中に、あおいの持つ地球の力と『星の記憶』が流れこんできたことだった。
「これは……」
星と『生体リンク』した裕矢の中に、様々な星の歴史や情報が鮮明な映像となって流れこんでくる。
「そう、これが『星の記憶』」
「これが……『星の記憶』……」
裕矢が自分の中で起こっている出来事に驚いていると、唐突にあおいが先ほども見つめていたある一点に視線を向けながら、事実のみを伝えるべく淡々とした口調で口を開いた。
「来る」
あおいが言葉を発した瞬間、星の聖域に半径一、二メートルほどの魔王が姿を変えた小型のブラックホールのような渦巻く球形の闇が現れた。
現れた闇の球体は、星たちの光を受けたとたん。まるで太陽の光を受けた影のように四方へと広がっていった。
やがて星空に浮かぶ星たちに闇がふれると、闇に触れられた星はまるで最初からなんの輝きも放っていなかったかのように光を失っていった。
魔王が放ち、星の聖域に押し寄せた闇が星の命を喰らったのだ。
もしこのまま闇の侵食を放置すれば数時間と立たないうちに、星の聖域にある星々の命は魔王に奪われてしまうだろう。
もしそうなれば、魔王は力を取り戻し、あおいの言うとおりに、世界に混沌が訪れ、数十、数百億年、いやもっと長き時を歩んできた世界は終わりを迎えるだろう。
「なんなんだよこれ……こんなんどうしようもねぇじゃねぇか……」
星の聖域を襲うあまりに巨大で、一方的な侵食を続ける闇を見上げながら裕矢が絶望的な声を上げた。
そして裕矢が声を上げている間にも星の聖域で行われている闇の侵食は、とどまることを知らず絶え間ない侵攻を続けながら、星の聖域を闇で埋め尽くそうとしていた。
星の光が奪われて、星の命が喰われ星の聖域を照らし出す星の光が段々と弱まっていく様を見上げて淡々と言う。
「このまま魔王を放置すれば、星たちの命のともし火が消え、このまま星の輝きを奪われ続ければ、魔王は力を取り戻し、世界に混沌が訪れる。そして、全ての星の輝きが失われた時、星が死に絶え世界が終わる」
この世界に現れて、世界に闇を撒き散らし、星の光を吸収し続ける闇の卵のような小型のブラックホールを見つめながら呟く。
「んなこと言われてもいったいこんな奴相手にどうすりゃいいってんだよ!」
世界に闇を広げ星の輝きを奪い続ける黒き卵を見つめながら半ばやけくそ気味に叫ぶ。
「『星の記憶』史上最も強い最強の力で立ち向かう」
「最強の力?」
「あなたたちが地球と呼ぶ惑星は、数十億年の時を生きてきた。その中で最強の生物とは何か?」
唐突に質問される。
「恐竜?」
最強と言われて地球の生物史上最も身体が大きく、また力の強かった恐竜の姿を思い出して口にする。
裕矢の答えを聞いたあおいが違うとでも言うのかフルフルと首を振る。
「じゃあオーバーテクノロジーでアトランティスを作った先人類とかか?」
ふうわかっていないな。とでも言うように、フルフルと再度首を振りながら口を開く。
「亜竜は、落下石。大量に降り注いだ隕石により滅びた」
ああ、確かそんなことが歴史書に書いてあった。授業でも習ったことがある気がする。
「隕石より前に、亜竜はあるものによって食量とされていた」
「もしかして類人猿か?」
「そう、星の民の食料として狩られていた。そしてまた高度な科学力を持った先人類も大した力を持たないあるものによって追いやられた」
「あるもの?」
「わからない?」
少し考えたが、これといったものを何も思いつけなかった裕矢は、こくりと頷いた。
「星の民」
「つまり俺達人間のことか?」
コクリとあおいが頷いた。
「私の知る限り地球史上最強の生物は星の民。星の民は大した力や身体能力は持っていない。しかし、素手から武器。武器から機械と、自らを強くするための知恵を延々と生み出してきた。そう、人は、一人では、他の生物に劣る。けれど、絶え間ない時の中、種全体で知恵を積み重ね、絶え間ない進化の過程を得て繁栄を築いてきた。『人』、の力はいずれ星をも凌駕する可能性を秘めている」
「星を?」
コクリ。
「いずれ星の民は、星すら生み出す存在になる可能性がある。地球史上最強の生物。星の民よ、星の力を使い全ての未来を阻むものを打ち払え」
あおいが言葉を発すると、それが合図であったように、裕矢の中に『生体リンク』したあおいの力の使い方と、どのように力を使えばいいのかが流れ込んでくる。
そして、先ほどのあおいの話同様に、地球の『星の記憶』からもっとも強く魔王を倒せる可能性のあるものが選ばれる。
それはあおいの言うとおり、絶え間ない進化をし続ける人間だった。
裕矢の身体がいや体を流れるナノエフェクトが星の力に呼応して、分子いや粒子レベルで混ざり合い結合していく。
そして一瞬まばゆい光が裕矢を包み込むと、光が収まった先に存在していたのは、身の丈数十メートルを超える巨大なビルほどもある半透明の青い巨人の姿だった。
そして光が収まった後、裕矢の視界に飛び込んできたのは、数十階建てのビルに相当する景色だった。
裕矢は自分の視界がいきなり数十倍の高さに跳ね上がったために、思わずバランスを崩してたたらを踏む。
だがそれも一瞬のことで、あおいと『生体リンク』して、『星の感覚』を有している裕矢はすぐにバランスを取り戻していた。
そして裕矢は巨大な自分の両手と肉体を見下ろしながら呟いた。
「これが……俺?」
裕矢は自分の姿は見えないが、自分がどうなっているのかは『星の感覚』で熟知していた。
そして『星の感覚』によって、自分が巨人になっていて、さらにその視界や五感といった感覚も自分と繋がっているのがわかっていた。
そのため裕矢はまず巨人が思い通りに動くかどうか試みることにした。
まず、左手を動かし人と同じ五指ある手の指を握ったり閉じたりする。
次に右手も同じように動かしてから、両足を軽く動かして歩いてみると、少しバランスを崩しそうになる。
いくら『星の感覚』を持っているといっても、いきなり数十メートルも巨大な肉体を動かすのは難しいようだった。
だが、『星の感覚』は、いやナノエフェクトの力か裕矢の持つ持ち前の運動神経かどちらかはわからないが、一分も立たないうちに自由自在とまではいかないが、それなりに動かせるようになっていた。
『星の感覚』を使って巨人の肉体をそこそこ動かせるようになった裕矢が、あまり長いもしてられないか。と心の中で呟いた。
なぜなら星と『生体リンク』し、星の感覚を共有している裕矢には、この世界にあまり時間が残されて無いことがわかっていたからだ。
そのため裕矢は巨大な肉体を動かして、動作確認をしながら黒い卵に向かって走り出す。
そして走り出しながら右拳を握り締めて大きく振りかぶると、黒い卵目掛けて力一杯振り下ろした。
強大な地球のエネルギーと、ナノエフェクトによって生み出された半透明の青い巨人の拳が振り下ろされる。
決まれば黒い卵など一撃で砕ける。はずだったが予想外の出来事が巻き起こる。
ただの球形のエネルギーの固まりであったはずの魔王に青の巨人の一撃が激突すると思われた瞬間、球体を中心に黒い光が瞬いたかと思うと、その拳が青の巨人と同等、いや青の巨人よりひと回りは大きい黒い巨人の手の平によって受け止められていたからだった。
どうやら球形をとっていた魔王が自らを護るために、、向かってくる青の巨人を参考にして高密度エネルギーで瞬時に作り上げたようだった。
作り上げられた巨人の外観は、見た目は青の巨人同様筋肉質の体躯をしていたが、なぜか上半身のみで床から人の上半身のみが生えているような異様な形状だった。
青の巨人の右拳の一撃を難なく左手の平で受け止めた黒い巨人は、受け止めているその姿勢のまま闇を広げ続け星の光を命を喰らい続ける。
「これ以上やらせっかようおおおおっ」
闇を広げ続け、星の光を奪い続ける黒い巨人と化した魔王に、裕矢が怒りに任せて残った左拳も叩きつける。
だが、青の巨人の繰り出した左拳の一撃は難なく黒の巨人に受け止められて、図らずも両手で組み合う形となり巨人同士の力比べとなる。
「くううううっ」
しばらくは両者の力は拮抗していたのだが、下半身がないといっても自力で上回っていたのか、青の巨人が対格差もあって押し込まれ始める。
そして、ここが勝負どころと見て取ったのか、魔王が星の光を食らうのを一時中断して、頭に当たる部分に巨大な口を開きエネルギーの発射台である銃口のような口径を作り出すと、ヒュィィイイイインッと、体中のエネルギーを集約し始める。
何かする気だっこのままだと……まずいっ裕矢が本能的に感じとるも、青の巨人の両手はがっちりと黒の巨人と組み合っていたために、いくら力を入れてもびくともせず回避行動を取れずにいた。
そこへエネルギーの集約を終えた黒の巨人の口径から、まるでドラゴンの吐き出すブレスのように、旗艦レヴァティーンの惑星破壊砲を模した超高密度で強力なエネルギー兵器。デス・クリムゾンが吐き出される。
黒の巨人と化した魔王より吐き出されたデス・クリムゾンは、発射の衝撃で空間に波紋を広げ、周囲の空間に漂っていたちりあくたを吹き飛ばすと共に、青の巨人の顔面目掛けてほぼゼロ距離で突き進んだ。
さすがに両手ががっちりと組み合った状態で、これをかわすのは不可能だった。
だがデス・クリムゾンが青の巨人の頭部を貫くと思われたインパクトの瞬間。裕矢がふっと身体の力をぬきうまい具合に組み合った両手から身体をするりと抜け出して、イナバウアーのように後方に体を反らして、至近距離から放たれたデス・クリムゾンを何とかかわすことに成功する。
そしてそのまま一旦後方に下がって距離をとった。
裕矢がかわしたデス・クリムゾンは、青の巨人の後方にあった星に衝突して、その後方に在った星の輝きごと複数の星を消し去っていった。
その後裕矢が飛び退って一旦距離をとっている間にも、魔王は世界に闇を広げ続け星の命を吸収し喰らい続ける。
そうしていると、黒の巨人と化している魔王の身体に幾つもの星の輝きが浮かび上がり始めた。
「あれは?」
裕矢が疑問符を浮かべると、裕矢と『生体リンク』しているあおいが問いかけに答えてくれる。
「『星痕』」
「星痕?」
「魔王に食され奪われた星たちの命」
その単語一つで地球と『生体リンク』して様々な星の地球の知識を得た裕矢には、魔王がどのようにして星の命を喰らおうとしているのかが理解できた。
そうか魔王といっても強大な力を秘める星の命を一気には喰らえないってことか。多分人間や動植物と同じように、喰らった星の命を身体のどこかに蓄えて、少しずつ少しすつ消化して自分の身体の中にとりこんでいってるんだ。
とはいっても、少しずつだが確実に星の力を喰らって魔王の力が増しているのはわかる。
だったら、喰らった星の力を消化する前に吐き出させればいい。そうすれば魔王も力の回復が出来ないし喰われた星たちも助かるはずだ。
だけど喰らった星たちの命を吐き出させるにはどうすればいい? 普通なら力いっぱい腹を殴りつけて吐き出させてやればいいだけなんだけど。相手は魔王だ。そんな攻撃で星の命を吐き出すとは到底思えない。裕矢が考えを巡らしている間にも、魔王の広げる闇が星たちの命を奪っていっていた。
そして、奪っていった星の分黒い巨人と化している魔王の身体が得た力分膨張し、星痕が増えていった。
その様子を目にしていた裕矢が、こんなこと悠長に考えてる場合でもないか。とにかく魔王にダメージを与えて星の命を吐き出させるしかねぇ。とにかく狙うは腹。だめもとで一発入れる。それだけ考えて青の巨人と化している裕矢は走り出した。
「ウオオオオオオッ」
青の巨人が黒の巨人の背後に回りこみ雄叫びを上げながら突進する。
突進しながら青の巨人が右拳を振りかぶり振り下ろすと、黒の巨人化した魔王が、青の巨人の突進してきている方角に向かって、星の力を喰らい一回りは大きくなった腕を払うように振り回した。
青の巨人は頭をかがめてそれをかいくぐり、魔王のどてっ腹に振り下ろした右拳の一撃を突き刺した。
だが、魔王にまったくひるむ様子はなく再度青の巨人を振り払おうと野太い腕を振り回してくる。だが野太くなった魔王の腕はその分スピードにかけて鈍重になっていたために、難なく青の巨人化している裕矢にかいくぐられてしまう。
魔王の攻撃をかいくぐった裕矢は、両の拳に力込めると、容赦なく腕をぶん回してがら空きのボディ目掛けて両の拳を叩き込んだ。
裕矢が拳を叩き込んだ直後。魔王が裕矢の頭上から両手を組み合わせて振り下ろしてくるが、魔王の動きが鈍重だったために、裕矢は難なく身を反らしてかわしていた。
その後青の巨人と黒の巨人は、一定の距離で拳を交え続ける。
だが、青の巨人と化している裕矢が魔王に向かって何度も何度も拳を叩き込んでいると、魔王の体のある変化に気付き声を上げる。
「どういうことだ? さっきより魔王の動きが明らかに鈍くなってやがる?」
「疲弊している」
裕矢の独り言に答えたのはあおいだ。
「疲弊?」
コクリ、あおいが頷いてくる気配が、あおいと『生体リンク』している裕矢の『星の感覚』を通じて伝わってくる。
「どういうことなんだ?」
「魔王はなぜこの世界に訪れた?」
相変わらず突拍子もないことを口にする。
「それは、俺達のいる世界で力の大半を失ったから、その失った力を取り戻すために、この世界に飛んだとか言ってなかったっけ?」
自分が口にした言葉で裕矢が何かに気付いたのかはっとする。
この世界に来る前に、戦艦による攻撃や惑星を破壊するほどのエネルギー爆発をまともに喰らいすでに魔王は力の大半を失っていた。
そうか、だからさっき口からエネルギー波を撃ってきた時、どうして追ってこなかったのかと思ってたらそう言うことだったのか、魔王はエネルギー波を吐き出してきた時、追撃してこなかったんじゃなくて追撃できなかったんだ。
つまり度重なる戦いのせいでいくら星の命を喰らったといっても魔王はまだ、疲弊している。
攻めるなら、魔王が完全に力を取り戻す前、今ならまだ何とかなるかもしれない。そう思った裕矢は攻勢に打って出ることにした。
そして青の巨人と化している裕矢は黒の巨人と化した魔王の懐に飛び込むと、まるでプロの格闘家のように何度も何度も拳を振るい攻撃を仕掛ける。
そして、攻撃を繰り出しながらふと思う。なぜ今まで一度も格闘技などやったことの無い俺がこんなふうに拳を繰り出せるのかと、それはきっと、地球の言う『星の記憶』が関係しているのかもしれない。『星の記憶』は星で起こった出来事の記憶。つまり今まで地球上の生物が人類が歩んできた歴史そのもの。だから、人が生み出した格闘術が使えるようになったとしてもおかしくは無いからだ。
今、俺の中には地球のみんなの力が流れているんだ。
だから、負けるわけにはいかない。決意を新たに一心不乱に立ち向かう。
だがそれでも、何度拳を繰り出し魔王に叩きつけようとも、裕矢の攻撃は魔王に致命的なダメージを与えることはおろか、一つのダメージすら与えていないようだった。
「くそっ拉致があかねぇってか、本当に効いてるのかよ!?」
繰り出した攻撃がことごとくヒットしているにもかかわらず、大したダメージを与えているとも思えないために裕矢が焦りの声を上げる。
そして戦いの最中、何度目かの拳を振り下ろした瞬間、『助けて』という声が裕矢に聞こえた気がした。
いや、それは声と言うよりも、心の中、頭の中に直接呼びかけられているような感じだった。
「誰だ?」
聞こえてきた声のようなものに答えるように裕矢が声を上げる。
だが返事は無い。
「気のせい……か?」
裕矢が首をかしげていると、再度、声。いや、これは『言葉』といよりも、意志そのもので伝えてきているような感じだった。
「なんだ。これ?」
裕矢が呟きを発すると、裕矢の機微を感じ取ったのか、いつものようにあおいが端的に述べてくる。
「星の声」
「星の……声?」
どうやら裕矢の解釈は間違っていなかったらしく、コクリ。とまたあおいが頷くような気配を感じた。
そうか、これは、言葉で伝えてきてるわけじゃない。地球と言う星と『生体リンク』して鋭敏になった『星の感覚』が伝えてるんだ。星の星たちの声を。
もしかして、魔王の身体に星痕として浮かび上がっている星たちが俺に助けを求めてるのか? 裕矢がそう考えていると、その考えを読み取ったのか、魔王に浮かび上がっている星痕が一瞬その輝きを増した。
「どうやら正解みたいだな」
一瞬光を増した星痕の輝きを見逃さなかった裕矢が声を上げた。
裕矢が理解したのを感じ取ったのか、あおいが再度言葉を紡ぐ。
「『星痕』」
あおいの発したその単語でわかった。理解した。
あおいは魔王に浮かび上がった星痕を撃てと言ってるんだと。
「うおおおおおっ」
いくら攻撃しようとも魔王に大したダメージが与えられず、八方塞がりだった裕矢はあおいの言うとおり声を上げて、星痕のある場所を一か八か全力で殴りつけにいった。
数秒後青の巨人の放った拳の一撃が魔王の星痕のある箇所に叩きつけられて巨人の拳がめり込むが、黒の巨人の体躯が分厚すぎて青の巨人の拳が星痕まで届かなかった。
そのため先ほど星たちの思いを知った裕矢は、星たちを助けるために拳にありったけの想いと力を込めて、黒の巨人の肉体に埋没した拳をさらに深く押し込もうと力を込めて叫んだ。
「とどけえぇぇ――っっ!!」
裕矢がありったけの力と想いをこめて、星痕目掛けて拳を押し込んだ瞬間、魔王が今までにない機敏な反応を見せる。
魔王がいきなり青の巨人の胴体を両手で力任せに締め上げて逃げられないように拘束すると、青の巨人の頭部目掛けて、口を開きあっさりと星を貫くことの出来る凶悪な口径を開いたのだ。
来る。あのエネルギー波だ。ここまで必死になるってことは、星痕を狙って正解ってことかよ。魔王の行動を見ていた裕矢はそのことを瞬時に理解して、回避行動に移ろうとするが、すぐに思いとどまる。
なぜならすでに魔王によって青の巨人の胴体は拘束されていたというのもあったが、それよりなにより、星痕を狙っただけでこれほどの反応を示したのだ。もしここで引いて次にまた星痕を狙いにいけば確実に警戒されて、今以上の反撃に合うことは誰の目から見ても明らかだったからだ。
そうなってしまっては多分、もうここまでたどり着くことは出来ないだろう。
だから、裕矢は覚悟を決めた。魔王の放つ星をも破壊する強力無比なエネルギー兵器。デス・クリムゾンが自分に到達するのが先か? それとも、青の巨人の拳が魔王の肉体にある星痕に届くのが先かだ。
コンマ数秒で勝敗が決する。どっちが先にたどり着くかの命がけの競争が始まった。
とどけぇ! とありったけの想いと力を込めて裕矢が星痕目掛けて拳を突き入れると、魔王が口径にエネルギーを充填するより一瞬早く青の巨人の拳が星痕に触れた。
瞬間、魔王の両手によって拘束された青の巨人の頭部目掛けて、強力無比なエネルギー兵器。デス・クリムゾンが超至近距離から放たれた。
さすがに超至近距離で発射されたこの攻撃はかわせないと裕矢が覚悟を決めて腹をくくった瞬間。
「任せいっ」
『星の感覚』を通じて裕矢の中に、聞いたことのないしわがれた老人のような声が聞こえてきた。
そして煙が治まった跡に姿を現したのは、魔王の放った強力無比なエネルギー兵器。デス・クリムゾンに貫かれた青の巨人の姿ではなく、たやすく星を貫通するデス・クリムゾンを弾き返して青の巨人を護った。いつの間にか青の巨人の左腕に装備されていた赤道色の盾の姿だった。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
カ・ル・マ! ~水の中のグラジオラス~
后 陸
SF
新たに見つかった電波帯を使い、これまで不確かな存在だった霊体を視覚化しコンタクトに成功。
この電波帯をEG帯と呼び、霊体を自在に操る者たちをEG使いと呼んだ。
四ヵ月前に大阪で起こった巨大結界事件後、環境が激変した結界内で争うEG使いたち。
その争いに巻き込まれる主人公安倍まゆらと彼女を取り巻くデンタイや能力者、術師たちの話。
EG使い、ユキオンナ、FF、くれいじーモコの三人が高野山に眠る空海の暗殺術式の一つ、『嘘実哭怨』を狙って行動を開始する。
高野山が防衛に当たるが、ユキオンナの前に惨敗する。
しかしそこには応援として来ていたデンタイと波付、四術宗家からも水属性の上水流家の縁の者が来ていたが、それぞれの思惑が食い違い現場は混乱を招く。
ユキオンナの攻撃は抑えたものの、肝心の空海の『密秘』を修行僧である顕正に盗まれてしまう。
個々に絡み合う個人の思惑が見え隠れする中で、デンタイは『密秘』を奪還できるのか、、、?
本当にあった怖い話
邪神 白猫
ホラー
リスナーさんや読者の方から聞いた体験談【本当にあった怖い話】を基にして書いたオムニバスになります。
完結としますが、体験談が追加され次第更新します。
LINEオプチャにて、体験談募集中✨
あなたの体験談、投稿してみませんか?
投稿された体験談は、YouTubeにて朗読させて頂く場合があります。
【邪神白猫】で検索してみてね🐱
↓YouTubeにて、朗読中(コピペで飛んでください)
https://youtube.com/@yuachanRio
※登場する施設名や人物名などは全て架空です。
ユニーク職業最弱だと思われてたテイマーが最強だったと知れ渡ってしまったので、多くの人に注目&推しにされるのなぜ?
水まんじゅう
SF
懸賞で、たまたま当たったゲーム「君と紡ぐ世界」でユニーク職業を引き当ててしまった、和泉吉江。 そしてゲームをプイイし、決まった職業がユニーク職業最弱のテイマーという職業だ。ユニーク最弱と罵られながらも、仲間とテイムした魔物たちと強くなっていき罵ったやつらを見返していく物語
日本が日露戦争後大陸利権を売却していたら? ~ノートが繋ぐ歴史改変~
うみ
SF
ロシアと戦争がはじまる。
突如、現代日本の少年のノートにこのような落書きが成された。少年はいたずらと思いつつ、ノートに冗談で返信を書き込むと、また相手から書き込みが成される。
なんとノートに書き込んだ人物は日露戦争中だということだったのだ!
ずっと冗談と思っている少年は、日露戦争の経緯を書き込んだ結果、相手から今後の日本について助言を求められる。こうして少年による思わぬ歴史改変がはじまったのだった。
※地名、話し方など全て現代基準で記載しています。違和感があることと思いますが、なるべく分かりやすくをテーマとしているため、ご了承ください。
※この小説はなろうとカクヨムへも投稿しております。
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる