宇宙(そら)の魔王

鳴門蒼空

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青の星 青の星戦域⑬ 決戦ダークスター対レヴァティーン艦隊② 総攻撃とカウンターシールド

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「エリスティア艦。我が艦の後方で停止しました。どうしますか艦長? 戦闘宙域より離脱する旨を伝えますか?」

 こちらの命令を聞き前線から後方には下がるが、いつでも戦闘に加われる戦闘宙域にはとどまるか。こちらの顔を立て、気の荒いジーンや仲間たちを納得させるには、まぁこれしかあるまい。レイラは一人心の中で納得気に頷く。

「かまわん。エリスティア艦はそのまま我が艦の後方で待機させておけ」

「はっ」

 通信担当オペレーターが返事を返すと、別のオペレーターが声を上げる。

「艦長レヴァティーン艦隊全艦、ワープアウト完了しました」

 レーダー担当の返事を聞いたレイラは次の指示を飛ばす。

「では我がレヴァティーン艦隊はこれより、魔王への総攻撃を仕掛ける。総員気を引き締めてかかれっ」

 乗組員全員に命令を下しながら、双方に遺恨が残らずうまい具合に仲間の感情を抑えていたエリスティアのことに思いを馳せる。

 相変わらずエリスティアは現状をよくわかっている。

 相手があの魔王である以上自分たちがこの宙域にとどまる限り、この宙域において一番安全なのは、レヴァティーン艦隊旗艦にして、艦隊最大の大きさと攻防力を誇り、惑星破壊砲を有する巨大戦艦レヴァティーンである我々の背後だからな。

 ならばエリスティア。我々の背後から魔王が惑星爆発に巻き込まれ、最後の瞬間を迎えるその時を、その目に焼き付けているがいい。

 レイラはそう思いながらも、頭の回転の速さといい。目に見えぬしたたかさといい。やはりエリスティアはよほど自分より指揮官に向いているなと思っていた。

 レイラは、レヴァティーンのメインブリッヂに映し出されているダークスターを見据えながら指示を飛ばす。

「我々はこれより、現宙域に到着したレヴァティーン主力艦隊の力をもって、ダークスターのコアを臨海させビッグバンを引き起こし魔王を仕留める!」

 レイラは声高に宣言すると、腰に差していた剣を引き抜き床に突き立てて声を上げる。

「全艦に映像通信回線開けっ」

「全艦通信回線開きます」

 全艦隊のブリッヂや艦内になる3Ⅾモニターにレイラの姿が映し出される。

「艦長。レヴァティーン全艦隊との通信回線開きました」

 レイラはコクリと頷くと、モニターから各艦隊乗組員の瞳を射抜くようにまっすぐに見つめながら、右手の平を前面に押し出して叫ぶ。

「レヴァティーン艦隊全乗組員に告ぐっこれより我々は仇敵である魔王との最終決戦に挑むことになる! だが憶するな! 我々は全宇宙を護る『星の護り手』として何十何百何千という長き時の中で魔王と死闘を繰り広げ、全宇宙を護ってきたヴァルキリーだ! 我々には魔王を退けるだけの実績がっ力があるっ!」

 空中に向かせた手の平を裏返し、わななかせながら拳を握り締めて叫ぶ。

「勇者たちよ! 私と共に今一度立ち上がれっ魔王から全宇宙の星々をっそこに住む声明をっ人々を護るためにっ!」

 レイラが床に突き立てていた剣を引き抜き、空高くつき上げながら声高に叫んだ。

 うわあああっという歓声が、全艦隊から沸き上がった。

 惑星イシュラ戦役において、魔王を退けた実績のあるレイラだからこその士気高揚であった。

「今現在ダークスターに巣食っている我々の仇敵である魔王は、星喰いを喰らい力の回復をはかっているっつまりそれはっ惑星イシュラでの戦闘において、奴がかなりのダメージを負っているということの裏付けに他ならないっこれは我々にとって魔王を討ち取る絶対的な好機、絶好機である! この機に乗じレヴァティーン艦隊の総力を持ち、一気に魔王との決着をつける! 全艦隊主砲発射用意っ全艦の主砲エネルギーがたまり次第、我々レヴァティーン艦隊は、魔王に総攻撃を仕掛けるっ!!」

 うわあああああっ先ほどの演説で指揮が向上したレヴァティーン艦隊内に、再び歓声が木霊すると共に、ヒュイイイイインッとエネルギーが充填されていく音が全艦隊の艦内に木霊する。

 全艦隊の機関であるレヴァティーンには、艦隊の指揮をする都合上。ブリッヂ中央に、地球儀を巨大化させたような大型の休憩モニター宇宙儀がある。

 モニターと言っても、実際にそこに球形のモニターがあるわけではなく、立体的な画像。つまり情報を3Ⅾ化して、最新鋭のホログラフィで映し出されているのである。

 そしてこのモニターは、広域の宇宙地図はもとより、多種多様な情報を宇宙儀上に映し出すことができる。そのため艦隊を編成している戦艦や巡洋艦などの船の位置や情報も宇宙儀上には事細かに映し出されていた。

 レヴァティーン艦隊の司令塔である旗艦レヴァティーンが、艦隊を指揮するうえで所属する艦の配置や能力。損傷具合などを瞬時に把握するためだ。

 さらにこの宇宙儀のすごいところは、常にリアルタイムで最新の情報が更新され続けているということだった。

 ブリッヂ中央の宇宙儀を目視していたオペレーターが声を上げる。

「艦長、戦艦ラフィニア、ラフェエロ、アスラ。巡洋艦イリス、シスター、アイン。及び他各艦主砲エネルギー充填完了しました。旗艦レヴァティーンの惑星破壊砲も間もなくエネルギー充填完了します。エネルギー充填80%。85……90……95……エネルギー充填100%! 艦長っ惑星破壊砲及び各艦主砲いつでも発射できます!」

「総員耐衝撃防御っ全艦砲門開けっ狙いダークスター中心核! 星のコア! 全艦ダークスターもろとも魔王を殲滅せよ! 全艦主砲発射! 惑星破壊砲レヴァティーン放てぇっ!」

 ダークスター中心核に向かって、レヴァティーン艦隊の一斉射撃が行われた。

 レヴァティーン艦隊から発射された小さな小惑星クラスなら撃ち抜き破壊できるほどの数十にも及ぶ主砲の砲撃は、旗艦レヴァティーンの放った惑星破壊砲を取り巻くように、ダークスターに巣食っている魔王とダークスターのコアに向かって突き進んでいった。

 このまま順調にいけば、数十秒後にはレヴァティーン艦隊の一斉射撃は、魔王の巣食っているダークスターのコアを撃ち抜きビッグバンを巻き起こして、確実に魔王に大打撃を与えることになるだろう。だが、ここで予期せぬ事態が起こる。

 けたたましい警報音と共に、オペレーターが焦ったような声を上げたのだ。

「艦長っ主砲及び惑星破壊砲レヴァティーンッ反射されました!」

「まさかカウンターシールドか!?」

 そうダークスターのコアに向かって順調に突き進んでいた艦隊の一撃は、ダークスターのコアに当たる寸前。まるで映し鏡に反射するようにして突如反旗を翻し、レヴァティーン艦隊に向かって襲い掛かってきたのだった。

 惑星イシュラでの経験で、惑星爆発を用いて魔王を撃退していたレヴァティーン艦隊は油断していた。

 皆艦隊の一斉射撃で星のコアを撃ち抜き、惑星爆発が起こると思い込んでいたのだ。

 そのため主砲発射後後の対応が、自然と攻撃後ビッグバンが巻き起こったときに襲い来る宇宙波に備えるものとなっていたためにわずかに対応が遅れる。

 そのわずかな対応の遅れが、近距離で魔王と対峙していたレヴァティ-ン艦隊にとって致命的な命取りとなる。

「どうしますか艦長!?」

「全艦シールド展開!」

「無理です艦長! 距離が近すぎます! 主砲発射した直後では戦艦はともかく巡洋艦クラスではシールドエネルギー確保できません! それにただの主砲ならともかく我が艦の惑星破壊砲です! これだけのパワー巡洋艦はおろか戦艦クラスのシールドでも防ぎきれませんっ! どうしますか艦長!」

「艦長!」

 主砲はおろか惑星破壊砲まで跳ね返されたことに少なからず動揺したオペレーターたちが、立て続けに声を上げる。

 レイラ自身絶対的な必殺兵器である惑星破壊砲レヴァティーンを跳ね返され少なからず動揺していたのだが、ほかの乗組員たちの動揺を目の当たりにして冷静さを取り戻し、すぐさま声高に叫ぶ。

「機先を跳ね返された惑星破壊砲に向け、全艦の艦首にエネルギーシールドを多重展開させろ!」

「艦首エネルギーシールド多重展開します!」

「多重シールドを展開できない艦は我が艦か他戦艦クラスの陰に入れ!」

 そして、レイラが命令を発し、オペレーターが復唱するとほぼ同時に、別のオペレーターが声高に叫ぶ。

「艦長っ直撃っ来ます!」

 オペレーターが声を上げるとほぼ同時に、魔王のカウンターシールドによって反射された惑星破壊砲を含むレヴァティーン艦隊の一斉射撃が、旗艦レヴァティーンを筆頭に、レヴァティーン艦隊に直撃し、強烈な光と轟音を伴いレヴァティーン艦隊を包み込んだのだった。
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