宇宙(そら)の魔王

鳴門蒼空

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青の星 青の星戦域⑨ ニーナの迎えと地球崩壊と秋菜の最後

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 ドラグナイトに進化したドラグニルを何とか退け、小型戦艦ナノグリフに救援信号を送ろうとしたニーナたちは、何とか尖兵の攻撃をかわしつつ、旧電波塔である東京タワーに向かって歩いていたのだが、落下する隕石群とともに、無尽蔵に増え続ける尖兵たちによって、とうとう囲まれ身動きが取れなくなってしまっていた。

 「次から次へとわいてきやがってっなんなんだよっこいつらっ!」

 「尖兵。つまり魔王の作りだした機械兵だ。隕石に隠れてこの星に攻め込んできている」

 「ってことは何か、あの流星群すべてが敵ってことかよ」

  フォトンブレードを手にしたニーナに守られながら、秋菜を背中に背負った裕矢が地球を目指して空に大挙して押し寄せる流星群を見上げながら毒づいた。

 「おそらくな」

  ニーナが手近にいた尖兵の一体を切り伏せながら、裕矢の言動を何でもないことのように肯定する。

 「くそっそんなもんっ一体どうしろってんだよっ」

 「そう愚痴るな。とりあえず我々が生き残るには、今は目の前の敵を一体づつ確実に屠っていくしかない」

  ニーナが絶え間なく地球上に落下してくる流星群に視線を向けながら言った。

  それにしても数が多すぎる。エリスたちドジを踏んだか? もしそうだとすればまずいな。未だエリスたちにこちらの現状を伝えるための連絡も緊急の救難信号も送れていない。もしこのままわたし一人で裕矢たちを守りながら戦っていれば近いうち、必ず手が回らなくなる。

  ニーナが若干の焦りをh組んだ考えを巡らせながら空を仰いでいた矢先、裕矢とニーナの視界いっぱいに青白い光が満たされる。

  青い光が消え去った後には、数千以上はいたと思われる尖兵たちは、そのほとんどすべてが跡形も残さずに消え失せていた。

  どうやら今の青い光は、何者かが放った砲撃のようだった。

  こんな真似ができるのは……あれしかない。

  そう思い上空を見上げると、案の定そこにはニーナの予想通りのものがあった。

  そう、青い閃光で尖兵たちを吹き飛ばし、曇天の空を割り舞い降りてきたのは、ニーナを迎えに来たエリスたちの乗った流線形をした純白の小型戦艦、ナノグリフだったのだ。

  数十メートル以上ある巨大なビルほどの戦艦を目にしながら裕矢が呟いた。

 「また、新手かよ」

  だがニーナは、裕矢の呟きには答えず、ただ思った言葉を口にする。

 「赤い電波塔まで行かなければこちらを見つけ出すことはできないと思っていたのだがな。これだけ近づけば、ナノグリフの高出力レーダーなら可能か」

 「?」

  ニーナの言葉を聞いて裕矢が顔に? マークを浮かべる。

 「ああ、そういえば紹介がまだだったな裕矢。あれが今のわたしの母船。ナノグリフだ」

  ニーナは裕矢の方へ視線を向けてそれだけを口にする。

 「あれがニーナの母船……でけぇっ!」

  裕矢はニーナに紹介され、初めて見る巨大な宇宙戦艦に、目を丸めながらあっけにとられたように大きく口を開け驚きの表情を浮かべていた。

  そうこうしていると、小型戦艦ナノグリフがニーナたちのいる方へと近づいてくる。

  近づいてくる。と言っても、せいぜいが東京スカイツリーほどの高さまでだ。

  そして、ジャンボジェットの出入り口と同じような形でできているナノグリフの出入り口が開くと共に、両手にライフル。肩に砲台を乗せた一人の人物が勢いよく空に体を躍らせる。

  彼女は空に体を躍らせると、自由落下を始めながら残存している尖兵たちのいる方に向かって、肩に乗せていた二メートルほどの大きさの陸戦用に小型化された砲台、フォトンキャノンで砲撃を開始する。

  砲撃された尖兵たちは、すでに崩れ去った周囲の廃ビル群ごと、爆発し粉微塵となっていった。

  そうして、残存してる尖兵たちを吹き飛ばしながら、戦艦から飛び降り自由落下してきた女性は、地面にたどり着く寸前に重力制御装置と、足に装着されている小型のバーニアを巧みに使って、ニーナたちの前へと降り立つと、戦闘の真っただ中だというのに、やたら楽しげな声で笑いかけてきたのだった。

 「おーいっニーナ。迎えに来てやったぜっ」

 「ジーン。お前は相変わらずだな」

  戦闘の真っただ中だというのに、笑顔で笑いかけてくるジーンに対して、ニーナが呆れたような表情を浮かべながら言う。

 「まぁなっようやくあの狭い戦艦から出て思いっきり暴れられるんだぜっこれが楽しくないわきゃねぇってのっ」

  ガハハハハッと、まるで男のように豪快に笑いながら、ジーンがニーナの肩をバシッバシッと豪快に叩いた。

 「ニーナ。こいつは?」

  ジーンのニーナに対する態度を目にしていた裕矢がニーナに声をかける。

 「ああ、青の星。と、地球という呼び名だったな。それにともに来た。わたしの連れであり、戦友のジーンだ

  ニーナがジーンを紹介してくる。

 「ジーン?」

  裕矢はニーナに紹介された自分よりはるかに大柄で、ニーナと同じ色合いをした短く切った金髪を逆立たせている筋肉したの大女であるジーンをしげしげと見つめる。

 「おいニーナ。こいつが青の星に住んでる地球人って奴か?」 

  自分を見つめてくる裕矢の頭を、わしゃわしゃと撫でまわしながら聞いてくる。

 「ああ」

 「そっか、ずいぶんとちっこいんだな」

  今度は自分よりかなり背丈の低い裕矢の頭をポンッポンッと楽しげに叩く。

 「いやこの星の生態系から分析すると、たぶんまだ子供なのだろう」

 「なるほどな~」

  ジーンがまるで裕矢を値踏みするかのように、上から下までしげしげと眺める。

 「で、こっちのはメスか?」

 「ああ」

 「へ~ほ~」

  裕矢を眺めたのと同じように、裕矢の背負っている秋菜を上から下まで興味深げに見つめる。

  ジーンの態度を見ていたニーナが、このままでは話が進まないと思ったのか、迎えに来たジーンに話しかけようとしていると、こちらの状況をすべて把握しているようなエリスの声がジーンのコンソールから木霊する。

  どうやらさすがにこれだけ近づけば、いかにジャミングがかかっていようとも、船との連絡はできるようだった。

 「いい加減にしろジーン。今はそんなことを悠長に話している場合ではない」

 「ちっわかってるって」

  ジーンが船からのエリスの呼びかけに素直に返事を返す。

  そこへニーナが戦艦で直接迎えに来たエリスに、思い出した疑問を投げかける。

 「エリス。迎えはジーンの惑星上陸用の小型艇ではなかったのか?」

  コンソールを操作し、その上辺りに映し出されたエリスの顔を見つめながら問いかける。

 「ああ、当初その予定だったのだがな。こちらの状況が変わった。ニーナ。すぐにこの星を離れるぞ」

 「了解した」

 「話は聞いていたなジーン。ナノグリフのレーダーで確認した周辺に潜んでいる尖兵たちの最新のスキャンデータをお前のレンズに直接転送する。さっさと片付けろ」

 「ちっわかった。わかったって。なら、さっそく行くぜ」

  それだけ言うとジーンが肩に担いだフォトンキャノンを、右目に着けているコンタクトのようなレンズに転送されてきた座標軸をもとに、誰もいない廃ビルを狙って躊躇なくぶっ放した。

  フォトンキャノンから発射された光の軌跡は、容赦なく廃ビルを撃ち抜き爆発させ、倒壊させると、爆発を逃れた何者かが廃ビルの中から飛び出してくる。

  尖兵だ。

  先ほどの船の砲撃を運良くかわした先兵たちが廃ビルに潜んでいたのだ。

  爆発から逃れようと飛び出してきた先兵たちを、ジーンが今度は手に持っていたフォトンライフルで撃ち抜き、やけになり飛び掛かってきた先兵たちは、フォトンマシンガンで次々とハチの巣にしていった。

  数多く固まっている敵は、千社程度なら余裕で撃ち抜く威力のある高出力のフォトンキャノンの破壊力で一掃し、飛び出しいてきた敵はフォトンライフルで狙い撃ち、飛び掛かってきた相手はフォトンマシンガンでハチの巣にする。

  まさしく力自慢の動く重戦車と言われるジーンだからこそできる重装備による掃討戦だった。

  またジーンが攻撃を加えている間にも、エリスはエリスで小型戦艦ナノグリフの高出力のフォトンレーザーを限界まで出力ダウンさせて、レーダーに映った敵兵である尖兵たちを、数十の廃ビル群ごと一斉に撃ち抜いていた。

  レンズに移っていた敵影をあらかた片付け終えたのか、ジーンがコンソールの通信機に向かって声をかける。

 「エリス。敵兵の掃討完了したぜ」

 「ああ、こちらのレーダーでも確認している。これでこの地区の敵兵はほぼ制圧した。今からお前たちを艦の牽引ビームで回収する」

 「牽引ビーム?」

  ジーンたちの会話を耳にした裕矢が、疑問の声を上げていると、突如裕矢の体が地面から浮きあがった。

 「うおっなっなんだっ体が浮きやがった!?」

  裕矢がいきなり自分の体が重力の楔から離れたことに慌てた声を上げる。

 「しっかりつかまっていろ」

  慌てた声を上げた裕矢に、ニーナが少しばかり気遣って声をかける。

 「って、言われてもよっつかまるものなんてなんもないって!?」

  裕矢がニーナに気付かわれて声をかけられたにもかかわらず、未だパニクった声を上げる。

 「地球人。牽引ビームは初めてかよ?」

  裕矢の態度を目にしていたジーンが、小ばかにしたように声をかけてくる。

 「初めてで悪いかよっ仕方ねぇだろっ牽引ビームなんて技術。地球にはなかったんだからっ!」

  裕矢は初対面のジーンに小ばかにされたのが少しばかり頭に来たのか、むっとした声を上げた。

 「わりいわりい。そんな怒るなって地球人」

  裕矢の態度を見たジーンが裕矢の頭を叩きながら、愛想笑いを浮かべて謝ってくる。

 「でもよニーナ。まさか牽引ビームすら知らない奴が存在するなんて思いもしなかったぜ」

  裕矢にわびの言葉を言ったあと、ジーンがニーナに声をかける。

 「未だ宇宙に出たばかりの惑星なのだ。仕方あるまい」

 「まぁ確かにそうだけどよ」

  納得するジーン。

  ニーナとジーン。二人の会話を聞いていた裕矢は、地球の技術水準が低いのを、少しバカにされたような気がしたのだが、とりあえずそのことを指摘したところで、地球の技術が未だニーナたちの持っている水準に達していないことは明らかだったので、そのことは置いておくことにして、わからない牽引ビームのことを素直に聞いてみることにした。

 「で、牽引ビームってのは何なんだよ?」

  裕矢がふてくされたように言った。

 「牽引ビームとは、船などをドックに入港させるための重力ビームのようなものだ」

 「重力ビーム?」

 またまた聞いたことのない単語が出てきたので、裕矢は頭に? マークを浮かべる。

  そのためニーナが裕矢にもわかるように、わかりやすく説明を始めた。

 「ありていに言えば、磁力のようなものだ」

 「磁力?」

 「ああ、磁力の性質ならば知っているだろう?」

 「ああ」

 「簡単に言えば牽引ビームは磁力を使い、あるものをある場所へ正確に移動させる技術のようなものだと思っていればいい」

 「あ~なるほどな」

  ニーナの説明を聞いた裕矢は納得気な声を上げた。

 「それと裕矢。背中に背負っているその娘。確か秋菜とか言ったか? もうおろしても問題ない。あとは牽引ビームが運んでくれるからな」

 「あ、ああ、わかった」

  ニーナに促された裕矢が、背負っていた秋菜をゆっくりと下すと、牽引ビームの中にいる秋菜の体も裕矢同様に宙に浮いていた。

  ニーナたちが牽引ビームによって、船に引き上げられ、もう数分で小型戦艦に辿り着くと思われた矢先、事態は急転する。

 「ジーン。ニーナ。でかいのが来るぞ」

  エリスが牽引ビーム内の皆に聞こえるよう、船外用通信回線を開き警告の声を発する。

 「エリス。でかいのてなんだよ?」

  ジーンが聞き返している間にも、東京のビル群がそのまま落下してくるような、巨大な隕石の破片が数百個。地球に向かって、東京の街に向かって、すでに肉眼で確認できる位置にまで迫っていた。

 「でかいのってこれかよ!?」

  宇宙から東京の街に降り注いでくる、さすがに想定外の大きさの巨大な隕石群を目にしたジーンが思わず上ずった声を上げる。

 「衝突するぞっ皆っどこかにつかまっていろっ」

  エリスが艦内でけたたましく鳴り響く警報音を伴いながら、船外用通信を使って緊迫した声で警告してくる。

 「どこかってどこだよ!?」

  裕矢が見渡す限りなにもない牽引ビーム内を見回している間に、エリスの警告通り先ほど肉眼で確認した巨大隕石群が、地球に落下してきたのだった。

  そして、その時の衝撃でけん引ビーム内が激しく揺れて、未だ気を失たままでいる秋菜が牽引ビームの枠外へと飛び出してしまう。

  そのため反射的に裕矢が牽引ビームの枠外へと身を躍らせて、秋菜の腕を掴み、またもう一方の手で必死に何かを掴もうと手を伸ばした。

 「裕矢っつかまれっ」

  激しい揺れに襲われた牽引ビーム内から、秋菜を助けようと外に飛び出してしまった裕矢の手をニーナがとっさに掴む。

 「裕矢っ今引っ張り上げるっ秋菜を離すなよっ!」

  牽引ビームから外に飛び出して、宙づり状態になっている裕矢の手を掴んでいるニーナが声をかける。

 「ああ、わかってる」

 「行くぞ」

 「頼む」

  未だ絶え間なく地球に落下してくる隕石群のせいで、牽引ビーム内が激しく揺らぐ中、秋菜の腕を掴んでいる裕矢をニーナが引っ張り上げようとした時だった。

  地上から放たれたであろう一条の光線が、秋菜の腕を掴んでいる裕矢の腕をかすめたのは。

  地上からの銃撃だ。

 「ちっまだいやがったのかよ!」

  ジーンが舌打ちしつつ、揺れる牽引ビーム内で、フォトンライフルを使ってピンポイントで、正確に地上からこちらに向けて銃撃してきた遠距離攻撃型と思われる尖兵を撃墜する。

 「てめえら無事か!」

  ジーンが牽引ビーム内を振り返りながら叫ぶ。

 「問題ない。裕矢が腕をかすめただけだ」

  ニーナがジーンの問いかけに何でもないことのように答える。

  だが、もちろん問題は発生していた。

  銃撃に腕をかすめられた裕矢が、その拍子に掴んでいる秋菜の手を離してしまったのだ。

 「あきっ!」

  裕矢が秋菜の名を叫びながら、必死になって手を伸ばすが、その手は秋菜の指先をほんのわずか握り締めただけだった。

  その間にも、地上を目指して落下してきた巨大隕石群が、次々と東京の街に落下して、廃ビルや地面と衝突を始める。

  巨大隕石群が次々と廃ビルや地面と衝突したことによって、幾つものクレーターが出来上がった。

  そしてその上、さらにその上に次々と落下してくる巨大隕石の衝突によって、クレーターが折り重なっていく。

  そのために隕石の衝撃に耐えきれなくなった地面に、強制的に地割れが発生して、地下から溶岩が吹きあがり東京の街に溢れかえった。

  東京の街に溢れかえる溶岩は、まるで大震災で起きた津波のようだった。

  だが、中身が違う。水は、すべてを燃やさない。熱はすべてを燃やし尽くす。

  ビルの間を縫って流れる溶岩に触れたものからは煙が立ち上り、間違いなく体に悪影響を及ぼすと思われるような悪臭が立ち込め黒煙を上げていた。

  さながら今の東京の街は、原始時代恐竜を絶滅させたと思われる巨大隕石が、流星雨の如く地球に降り注いだ時のような様相を呈していた。

  何とか秋菜の指先を掴むことに成功した裕矢は、必死になって秋菜を引っ張り上げようとする。

  だが、先ほど受けた地上からの銃撃によってできた傷口から、血液が裕矢の腕を滴り落ちてきて、秋菜の指先を掴む手を血に濡らす。

  そのせいで次の瞬間ズルゥッと、ギリギリの線で耐えてきた秋菜の指先が、裕矢の手の中から滑り落ちてしまう。

  そのため次の瞬間には、裕矢の手を離れた秋菜の体は、度重なる隕石群の落下で溶岩が溢れかえり、さながら地獄の釜のような様相を呈している東京の街目がけて自由落下を始めたのだった。

 「あきっ!」

  秋菜の名を叫びながら、裕矢が秋菜を追いかけ飛び降りようとするが、裕矢の手を掴んでいたニーナが、力を籠め一気に裕矢を牽引ビーム内に引っ張り上げる。

 「裕矢っここはわたしに任せておけ!」

  声を上げたニーナが裕矢の代わりに、東京の街を目指して落下していく秋菜を助けようと、牽引ビームから飛び出そうとする。

  だが、ジーンがとっさにニーナの腕を掴んだ。

 「離せジーンッ」

 「離さねぇ!」

 「ジーン!」

  ニーナが怒気を含んだ声音で叫ぶ。

 「ニーナッ諦めろっもう無理だっ!」

 「いやっまだ間に合うっはなせっジーンッ!」

 「断る! いくら後で小言を言われようが、恨み言を言われようが構わねぇ! むざむざ仲間を死地に行かせられっかよ!」

 「あきっ待ってろ今行くぞっ!」

  ニーナが秋菜を追って牽引ビーム内から飛び出せなかったために、裕矢が剣ビーム内から飛び降りて、秋菜を助けに行こうとするが、それはニーナを繋ぎ止めていたジーンのもう片方の手によって阻まれる。

 「てめぇっ放しやがれ!」

  裕矢が手足をばたつかせてジタバタと暴れまわるが、簡単にジーンの力に押さえつけられてしまう。

 「もう間に合わねぇっ諦めろっ地球人!」

  ジーンが一喝してくる。

  だが諦めきれなかった裕矢は、身動きの取れない状態のまま目を見開き届かないと分かっている腕を必死に秋菜へと伸ばしながら、力の限り秋菜の名を叫んだ。

 「あき――っっ!!」

  秋菜の名を叫ぶ裕矢の声が、溢れかえる溶岩によって、グツグツと煮えたぎる地獄の釜とかした東京の空に響き渡る。

  その時だった。普段声を荒げないエリスが珍しく警告の声を張り上げたのは。

 「ちぃジーンッニーナッ本命が来たぞっ急げぇ!」

 「本命だと!? どういうことだジーンっエリスが言っていたでかいのが来るというのはさっきの巨大隕石群ではなかったのか!」

 「んなこと俺が知るかよ! はっまさか!?」

  何事か心当たりがあったのか、ジーンが声を上げた。

 「『星喰い』だ! ジーンッニーナッ牽引ビームの出力を最大にするっしっかりつかまっていろ!」

  エリスが皆に聞こえるように、船外用通信回線をフル活用して警告すると共に、牽引ビームの出力を最大にする。

  そのためニーナたち三人は、最大出力になった牽引ビームによって、小型船を収容する船内のドックへと収容されていったのだった。

  ニーナ。ジーン。裕矢の三人が小型戦艦ナノグリフに回収されたのを確認したエリスが声を上げる。

 「ナノグリフ。最大船速。急速離脱だ!」

  エリスの声に応じて、ナノグリフが『星喰い』が地球に激突する衝撃に巻き込まれないために、最大千足で地球からの離脱を始めたのだった。

  そして何とか小型戦艦ナノグリフが地球から離脱することに成功すると、それとすれ違いざまに、地球に小惑星ほどもある第一種危険指定生物宇宙怪獣『星喰い』が、地球のコアを喰らおうために地球に激突した。

 「まずいっ『星喰い』と青の星の激突で宇宙波が来るぞ! 皆なにかにつかまれええぇぇぇ!」

  小型戦艦ナノグリフの艦内にいるエリスが声を張り上げる。

  ほぼ同時刻。『星喰い』がクレーターを穿つほどの速度で、地球に激突し、激突による衝撃で閃光が放たれると共に、ありとあらゆる大地が裂け、地球の中心核であるコアが剥き出しになり、ありったけの溶岩が地面から吹き上がると共に、川の水がすべて蒸発枯渇し、裂けた大地の中で海と溶岩が混ざり合い、大陸棚に穴をあけるほどの水蒸気爆発を巻き起こす。 

  そして水蒸気爆発によって宇宙にまで噴き上げられた水滴は、宇宙の寒さによって一気に冷やされ凍り付き宇宙に氷の花を咲かせた。

  小惑星規模の宇宙怪獣が激突したたったの一撃。たったの一撃で、惑星外からは青の星と呼ばれ、星に住む人々からは地球と呼ばれていた美しい青色をしていた母なる星は、完全に生命の住めない死の星となったのだった。
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